日記

2004年09月05日(日) 『スノーホワイトミステイク』


なんとなく。なんとなく、そういう気分。
何かが見えたような分かったような怖いような。そんな。


こんばんわ、なんとなくオリジを載せてみたり。もえぎです。
ちょっと前に書いたオリジのお話をひょっこりと。
だからなんだと言われてしまえばそれまでですが。
おかしなふたごのおはなし。ふたごがこんなにふしぎにおもしろいものとは。

今日は親戚のねえちゃんちで色々とお喋りをして。
着物を見せて貰って、話して貰って。
地震がとても長い揺れで体を強張らせてみたり。
大丈夫ですか。どなたも怪我なさってませんか。
……駄目ですね。もう地震はやたらと過敏になってしまいます。
ともあれ今日はなんとなくなんとなくな気持ちがしたので。
わたしにどんな道があるのかどうかなんなのか。

と。その前に。拍手のお返事をさせて頂きますね。
つくづく遅くって本当に申し訳ありません。
王子とか王子とか王子とかで無駄に体力使いすぎなのです(笑)

>三日
・0時の方
ハレンチVSセクハラ対決感想ありがとうございます(笑)
このコンビは書いていて何かとても怪しくて楽しいです。
ちょっと楽しみ方を間違えているような気がしないでもありませんが。
エルボーかましている人が気合入っているのは、こっそりケビシオ主張です。
わたしはやはり関西人ゆえに、時々こういうアホ話書きたくなるのです。
シリアスも好きなのですが、ネタに走るのも楽しいのですよ。楽しんで頂けて嬉しいです。

>四日
・0時の方
み、身もだえなさったのですか!?(笑)
いったいどの話をご覧になったのでしょう……。
ともあれ、良い意味での身もだえで良かったです。
これが悪い意味での身もだえならば、わたしあわあわする所です。
うーむ、しかしどのお話でしょう。今回、身もだえするようなものって……。
まだまだぬるいお話ばかりですけれど。感想ありがとうございました。頑張ります!

・19時の方
秩序の娘さんの計算感想、ありがとうございます。わたしの中でコスモスは、
『パパの遺言に従い未亡人のママを守る宇宙最強の娘』なので。
全てはブラックボックスに込められたパパの願いのままなのです。
というかコスモスの場合ブラックボックス任せにしたら何でも可能です。
あのお話は、別名『ちう迎撃態勢』だったりするのです(笑)
身長差についてやいやい書いているのはその所為だったりします。

・20時の方
いえいえ不審だなんてことありませんので。
どうかお気になさいませんよう。連打オゥケイですから(笑)
と、申しますか。連打なんて大層なことしてくださって、ありがとうございます。
だってそれは凄いことだと思うのです。ですよね?
それに報いることが出来るようなお話を書いていきたいです。
ケビシオ強化月間にしますか…いっそフェイエリィ礼賛祭りにしますか……。

>五日
・12時の方
しあわせなふたり。さて、どのふたりでしょう?
ケビシオにせよフェイエリィにせよ、今回は台詞無しのお話ばかりで。
それはそれで書いていて楽しいのですが、ちょっと寂しくもあるのです。
ともあれ、い、癒しだなんて…でもあのふたりがしあわせであるならば。
見ているだけでほんやりしてしまうのは、とても嬉しいことですものね。
感想、ありがとうございます。励みになります!





『スノーホワイトミステイク』


 むかしむかし、あるところ。
 とある国の王妃さまは、寒い冬の日、やんわりとあたたかな微笑を灯しておおきなおなかをさすりながら思いました。
『雪のように白く、黒檀のように黒く、この血のように赤い子が生まれてきてくれたなら』
 その笑みと指先は、いくら冷えた夜の底でもまどろんでしまうような、春の陽めいたうららかなひかりを綿毛のごとくぽわぽわと零しているようでした。
 そして王妃さまの願いがかなったかどうかは、誰しもが知るところ。

 さてさて。そんなにむかしでもない、あるところ。
 王妃さまでもなんでもないおかあさんが、清涼な初夏の朝、洗濯物を干しながら、ちらりと笑みを宿すとおおきなおなかをさすりました。盛んにコミュニケーションを求めてくる見えないこどもの相手をしているのです。と、ふと、ぴんと何かを思いついたおかあさんは、やや大儀そうに顔を仰向けると、あきれるくらいの青空に目をすがめて、眩しそうに手をかざしました。
「雲のように白く、漆黒のように黒く、暁のように赤い子が生まれてきてくれるなら」
 いたずらっぽい眼差しは、ちゃめっけたっぷりで、女のコみたいで。けれどもたまらないくらいの慈しみを込めて、おっきなおなかを撫でるのです。
 そしておかあさんの願いがかなったのかどうかは、これからのおはなし。



「ね、わたし、あれがほしい!」
 いつものたそがれ金色帰り道。かおかおカラスがさよなら言う時間。そんな時に、いきなりかくん、と腕をひっつかまれました。でもそんなに驚くことではありません。おひさまのかけらをばら撒くようにきらきらとした声と笑顔で、彼をひっぱった相手は、おんなしくらいの背をした六つのおんなのこなのですから。
「あれ!あれがほしいの、とりにいくの!」
「どれ?どんなのがほしいの?」
 ねえねえとねだるように、腕をきゅ、としてくるおんなのこに、ずっときゅ、とされているおとこのこは、静かに聞き返しました。それは、おんなのこのきらめくような声音ではなく、どこかしら清冽で。おつきさまがゆったりと銀細工に微笑んださざなみのようでした。
 おんなのこはここできゅうに、ぴたりとひっぱるのをやめました。その代わり、真っ直ぐにおとこのこを見つめると、嬉しくて嬉しくてたまらないように、にっこり微笑みました。その笑い方は、あの、初夏のおかあさんに少し似ているように見えました。
 おとこのこと瞳がひとつに繋がれたまま、おんなのこは、そっと、ちいさな指を伸ばしました。沈みかけの日輪に射られて、おもちゃみたいな爪がちまりと光りました。
「あれなの」


 それにしても、この、おとこのことおんなのこ。ちっちゃなふたり。なんて、ふしぎな子たちなのでしょう!おんなのこがなにかを指している間に、ちょっと説明してみましょうか。
 そもそも。このふたりは、とてもよく似た顔立ちなのです。ちょっとおんなのこのほうが、やわらかい面立ちですけれど、背はほとんどおんなじで、ふたりが顔を向き合わせると、ほとんど同じ高さに鏡のようなふたつの瞳を見つけるのです。そして、その中に、それぞれ自分の顔を見つけるのです。見る人が見れば、だれか一人くらいは、このふたりがふたごであると気付いたでしょう。
 そう。ひとり、くらいは。

 だってこのふたごは、とてもよく似ているのに、ちっとも似ていないのです。

 今、おんなのこに言われるがまま、示されたほうをしげしげと眺めているおとこのこ。ざっくりと切りそろえられた短い髪は、驚くほどに純粋な乳白色をしています。それは、どうしても日焼けとは思えないなめらかなココア色の肌と、とても鮮やかなコントラストを描いていました。そして、彼を目にした人は、誰もが、その幼い顔をどこか大人っぽく凛とさせている、明星のような冬りんごの瞳にどきりとするのです。
 じゃあ、おとこのこの前で、満開のひまわり畑みたいな笑顔で、空に近い場所に微笑んでいるおんなのこは?ルビーの髪を肩口でふんわりとさせて、まるで赤い雲のよう。わくわくでいっぱいにした、宵闇にきらめく夕星の双眸と、そろいであつらえたみたいです。触れたらとけそうな淡雪の肌には、季節外れのかわいい桜がほんのりと咲いています。
 おとこのこは簡単なシャツに、くるぶしが見えるくらいのズボン。おんなのこは飾りっけのない、裾が少しふくらんだ袖なしワンピース。鼻緒が色違いのちんまりとしたぞうりはおそろいでした。
 ふしぎなふたごの夕暮れ小道。早くお家に帰らなきゃなのに、はてさて何を見ているのやら?


「ねえ、みつ。どれ?」
「あれよ、なつ。みてみて?」
 どうもうまく、指さしたものが見えないらしくって、おとこのこが手をかざしながら、ふたごのかたわれの名前を呼びます。そしたら呼ばれたおんなのこも、自分の別々の半分の名前を言いながら、答えてみせます。どこー?どこー?言うものだから、ほらあそこなの、あそこなの!と背伸びしながら教えます。しばらく、ふたごが爪先立ったり屈んだりしていると、ようやくなつは分かったようでした。

 細いような、太いような、どっちかよく分かんないような。木。つやつやと青黒く輝くおっきな葉っぱを持っていて、あちこちにかかえたおっきなつぼみは、ほんのりオパールと黄金をまぶしたよう。
 そのうちのいくつかはあまい溜め息を零してほころんでおり、木蓮のようにぽってりとした、真珠を掃いた花は、レコードくらいの大きさがあります。
 真ん中に煌めきさんざめくラインの宝を抱いた純白の花は、バニラより甘くラムネより爽やかなかおりを撒いて、咲き誇っていました。

 ここでやっと、みつが『ほしいの!』と盛んに言っていたものの正体に気がついて、なつは、ああ、と声をもらします。ええと、とちょっと悩んでから、みつに向き直りました。
「……たいざんぼく?」
 こないだ、おかあさんに教えてもらったばかりの、ちょっとむつかしい名前。間違えてやしないかな、と確かめるように呟くと、みつはそりゃあ嬉しそうに、こくこくと首を縦に振りました。あんまり元気いっぱいにするものだから、ルビーの髪がかすみのようにふわふわ漂います。
 そういえば、となつは思います。何日か前、おかあさんにこの木の名前を教えてもらった時は、まだこんな風におおぶりのはなびらを振りかざして、お花は咲いていませんでした。けれど今は、そこらじゅうに、その日にはなかった、とてもいいかおりが満ちていました。まるでレモン水のにわか雨が通りすぎたみたいにかぐわしいかおりでした。
「わたし、あのお花がほしいの。だから、とるの!」
「みつ、届くの?」
 すぐにでも助走をつけて幹に飛びつきそうな彼女に、やんわりと尋ねてみます。その間にもなつは、どうしてみつがこんなにも泰山木の花を欲しがるのかが分からなくて、ずっと考えていました。確かにきれいなお花ですし、とってもいいかおり。でも、もっと手の届きやすい所にも、すてきなお花はたくさんあります。それなのに、みつはこの白いお花が欲しいと言います。
 だから、あらためて訊いてみます。ゆったりとした眼差しで、おっきな木を見上げながら。

「この木、ぼくらの背の、何倍もあるよ?」
「こないだふたりで、もっとおおきいのにのぼったわ!」
 ほら、こおんなに、と。両手をうんとひろげてみつは反論します。お社の側のおっきないぶきに、ふたりでがんばってのぼったじゃない、と。それは確かに本当のことで、のぼりきった時、なつも大変とくいな気持ちになったものです。でも彼は首をふるふるします。
「枝の感じが違うよ。ぼくらの手が届く高さに、いい枝ががないもん」
「じゃあ枝があるばしょまで、よいしょって、がんばってのぼるわ!」
「足ひっかけるとこもなくて、まっすぐだし」
「じゃあなつ、ちょっとだけかたぐるましてちょうだいな」
 ぴたぺたと、木の表面を触ってみます。そこはちょっとざらざらしていましたが、すっかりきっぱり真っ直ぐに伸びていて、いぶきのようなでこぼこは一つきりだってありはしませんでした。あのでこぼここそが、木登りの重要な足がかりだというのに!
 いいこと思いついた!とばかりにみつはかたぐるまを提案してくるけれども、それもどうやら無理のようでした。なにせ、お花の咲いている高さは、ちいさなふたりがふたりぶんでも、ちっとも足りない届かない場所だったのです。
 なつはとても残念に思いました。せっかく、こんなにもみつは一生懸命なのに、手伝ってやれないと、しっかり確信してしまったのです。だから、しょんぼりさせてしまうなあ、と少し切なく思います。
「枝までいけても、この枝はみんな細すぎるよ。いくらぼくらでも、途中で折れちゃう」
 決定的でした。もし、なにか魔法みたいなことが起きて、高い場所まで行けたとしても。とうの枝が細くっては、つかまることなどできません。うんしょと力をかけたが最後、あわれな小枝は、すぐにもぽきりとかなしい悲鳴をあげるでしょう。

 けれども、驚いたことに、これだけ言ってもみつは諦めませんでした。ちょっとうるんでしまった闇色の瞳を気にかけることもなく、いやいやするようにかぶりを振ります。
「でも…でも、わたしは、のぼるの!」
「どうして?」
 心底から分からない、と言わんばかりに、なつは問いかけます。ちょっとしゅん、としてしまったかたわれの顔をなぐさめるように覗きこんで。いたわるような銀月の声音に、みつはゆっくりと顔を上げます。そこに浮かんでいた表情は、なつの驚いたことに、太陽の雫にぬれそぼったような極上の笑顔でした。
「だって、あのお花、すごくおっきいから。わたしの顔くらいおっきいから。髪にかざったら、わたしのあたま、まっしろになるでしょ?」
 わくわくと零れ落ちるのはひかりの花粉、おひさまに祝福された花が咲きました。
「そしたら。ね?わたし、なつとおそろいになるもの!」

 びっくりしてしまいました。なつは、すっかりびっくりしたのです。冬りんごのきれいな瞳がすっかりまんまるになっていて、本当のりんごみたいでした。
 どうしてみつは、そんなに白い花が欲しいのか、とってもふしぎで。そしたら、それはおそろいが欲しいから、というわけだと知りました。もうふたりはとっくにふたごで、おそろいで。一番近い半分の別々の片方ずつなのに。すっかり、びっくりしてしまいました。
 でも。じわじわと胸になにかがしみだしてきて、なつはゆるゆると口元を緩めました。潮が満ちてゆくように。どうしてだかは、言わなくても、もう、お分かりですよね?
 なつは、ゆっくり、ゆっくり。とっときのチョコレートを口にふくんだときみたいに、言いました。

「…いぶきに」
 くん、と顔を上げて、みつを見ます。笑いかけます。右手を、出します。
「こないだの、いぶきに、のぼりにいこ?」
 みつはきょん、とした顔をしています。まだよく意味が分かっていないみたいです。それは当たり前のことですね、だって、なつはまだ意味を言ってないのですもの。夜とおんなし色した目を瞬かせようともしないみつに、彼は続けます。
「いまの時間なら、太陽はうんとあまくにつめたアプリコットゼリーだよ。それを浴びたら、ぼくはまっかになるから」
 あ。と、みつの顔が輝きました。ぴん、と、なつの言おうとすることに気付いたみたいです。星の瞳がきらきらします。今にもはちきれそうなざくろみたいに、ちいさな胸から、ぱあんとはじけてしまいそうな様子でした。
 そして、りょうてのひらから零れ落ちそうないたずらっぽい笑顔が、ふたごの間で繋がりました。
「そしたらぼくはみつとおそろいになるよ。これじゃあ、だめ?」
「ううん!!」
 だめなものですか!と、相手の手のひら追い越して、なつにしっかり飛びつきながら、オレンジの呼気と一緒にみつは答えました。いきなり笑い声といっしょに飛びつかれて、倒れそうになりながらも、ちょっとふらふらしただけでなつはしっかり彼女を受け止めて立っていました。けれどすっごく勢いがついてしまったので、その場でいくつかくるくると回ってしまいました。ふたごはくるくるしながら、きゃらきゃらと声を零し、こつん、とおでこをくっつけあって、さも楽しそうに笑いあいました。
 そしてその日はふたりして、いつもよりうんと近い場所で、アプリコットのおひさまにおやすみなさいを言いました。


 でも、ふたりが本当におそろいになったのは、晩ご飯のオムライスを食べていて、おかあさんに『あらあらふたりとも、おんなしじゃないの!』と笑われた時でした。
 びっくりしたふたごが、スプーンを手に持ったまま、お互いのかたわれの顔をみました。鏡を合わせたみたいに向き合いました。そこには、顔じゅうケチャップまみれでくちゃくちゃに真っ赤になった、自分の半分がきょとんとしていました。
 たしかにおそろいなのだけれど。うん、おそろいね。しばらく身動きもせずにじぃっと見入りあった後、ふたごはたいそう満足したのか、一緒になって、おんなじ呼吸で、たまらないほど嬉しそうに楽しそうに笑いあいました。

 もちろん、きちんと後で、おかあさんがにこにこしながらごしごししてぴかぴかにしてくれましたけれどね。とってもしっかりタオルでごしごしするので、ふたごのほっぺがマシュマロみたいに、むにーと伸びてしまうくらいに。
『それでも、おそろい、ね』
 ふたごは、あたたかなおふとんの中で、も一度まじまじと向き合ってみて。ぺたぺた相手に触ってみて、やっぱりおそろいなのを確認してから、安心しきってふたりまるまって、眠りましたとさ。


 だから今更。『おかあさんの願いはかなったのかどうか』だなんて、ね?


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