日記

2004年06月19日(土) 『ケーゼファブリクシュラーフェン』



お題更新。ふーやれやれ。間に合いそうですね。
でもお題に必死で日記がちっとも書けません。書くの好きですのにー。


こんばんわ、あたまがつきつきします。もえぎです。
ズキズキなほど強くないのです。つきつきするのです。
んー知恵熱でしょうか(笑)
エピ2もうすぐなのに…どうしてこうも……。
やっと、やっと高橋監督のお言葉が聞けましたのに。
それでもまた、あたまがつきつきします。ああつきつき。もう嫌。

で、お題です。タルトです。たまにはこんなのもありかと。
手抜きとか仰らないでくださいね。
というか、タルトが一番悩んだお題だったりします。
ずーっと考えて、やっとぴかりと浮かんでしっくりしたのが今日のです。
これで残りはあとひとつ。
一番書きたかった最後のひとつ。早く書きたい……!
そしてまた題名が適当ですぐ変わりそうです。わあん。




『ケーゼファブリクシュラーフェン』

 ひかりがまどろみ風はねぼけて。
 全てのものにうつらうつらと舟を漕がせ、しあわせな航海に乗り出させてしまう、陽気。指を伸ばせば触れられそうな、うららかな昼下がりの木漏れ日が、シャンデリアのように窓から降り注ぐ。部屋中うちじゅうそこらじゅう、睡魔の吐息が満ち溢れ、逆らいがたく心地良いいざないがうふふと笑う。
 ふと、うとうと陽光が何かに気付く。おもい瞼をこすりこすり、部屋の中から聞こえる、かすかな音に耳を澄ます。どうもそれは規則正しく繰り返されて、しかもひとつではないようだった。ふたつの異なるささやかな音が、光の降り積もる音さえ響き渡りそうに静まり返った小さな部屋で、たいそう控えめな二重奏を演じているようだ。

 おっきなソファがそのうちにはあって。それはとてもとてもおっきくて、やわらかくて、大変具合の良いソファで。珍しいパターンなのは、彼女が偶然発見してとても気に入ったレトロなテキスタイルを、器用な彼が古いソファに新しく張りなおしたからで。
 それはとてもとてもおっきなソファで。だから、ふたりなら、何とか一緒に横になれる。

 ちょっとぎゅうぎゅうな感じをさせながらも、フェイとエリィはソファに転がり、すやすや寝息を立てている。狭いだろうに、と思えるのに、ふたりの寝顔にちいとも苦しげなものはなく、安楽この上ない。
 ソファの背もたれ側に彼は仰向けになり、けれどやや奥によるようにして、横たわる。片方の手は胸の上、もう片方の手は背もたれの上に。随分とリラックスした様子で、どうやらぐっすりと眠り込んでしまっているようだった。一方彼女は背もたれの反対側、ちょっとこづかれたら、ころりと床に落ちてしまいそうな危険な位置。なのに当の本人は、まるで快い海辺のカウチに身を預けているかのような安息っぷり。こなたは胎児のように、胸を抱えるかのように、少し猫めいて丸まっている。彼の肩辺りに横顔を沈め、少し奥へ身を引いてくれたお陰で出来た僅かな空間に、そっとその身を預けている。口の端に灯った微笑は消えることなくほのかにひかりを放ち続ける。
 お互いに、なんとも絶妙に均衡を保てる体勢を取っており、目が覚めても体が痛い、などということはこれっぽっちもなさそう。
 ではどうしてこうもふたりはおひさまさんさんの頃合に、眠りこけているのか。答えはすぐそこ。

 きらり。きらん。いたずらっぽい陽光が、テーブルの上を照らし出す。そこには―…きれいにからっぽ、なのに後片付けされていない、午後のおやつの支度があった。
 きらりん★銀のカトラリー。いつも彼女が丹精込めて磨いている愛用の銀器も、今はちょっとクリームにまみれて。僅かにたゆたう宝石のようなハーブティーは、雫となってガラスのカップにきらめいている。レモンのスライス、ハニーディッパー、どれもこれも並べられたままほっぽかれてしまって。中央に鎮座する真っ白い大皿はものの見事にからっけつ、でもそこに、答えを導く欠片がぽつり。
 ぺりぽり、さぞかし良い音を立てるだろう、タルトの欠片。どんなに上手に食べてみても、一欠けだって零さずに食べきるのは至難の業。ここから察するに、本日のおやつは何かのタルトだったのだろう。そして次に気にかかるのは、先程の。銀のフォークにくっついていた、金色とろとろクリームの正体。カーテンを揺らしながら、風がそろそろ近づくと、部屋中にぱ、とクリームの香が満ちた。
 ああ。と、ひかりも、風も、すべてが微笑んだ。

 見事な金色クリームは、うんとうんと濃厚なクリームチーズの黄昏黄金。

 チーズタルトは、いいやチーズがほんのちょっとでも含まれたおやつは、ほんのちょっと食べただけでもすぐおなかいっぱいになってしまう。なのにこのふたりは、おっきなタルトをふたりがかりですっかりおなかに収めてしまったのだから。そのおなかいっぱいっぷりは押して知るべしである。
 おなかはいっぱい、日差しはうららか、そしたら後片付けなんてかったるくなってしまうに決まっている。ずんずん重さを増してくる瞼をなんとかかんとか押し上げようという気概さえ起きなくって、片付けなんて後にしよう、と彼はとろとろしながら彼女に提案。どうしようかしらと、彼女は一瞬迷ったけれど、起案者は答えを待つこともなく、こてんとソファに転がってしまって。そしてよじよじと奥のほうに寄ると、きちんと彼女のスペースを確保すると、そのまますうと睡魔の手を取った。
 おひさまはこんなに高いというのに。こんなにすやすや眠り込んでしまうだなんて?こうなると彼女の答えがどうなるかは決まっている。あえかな微笑のまま、エプロンも外さずに、そっとソファへ細い体を滑り込ませた。
 たまにはこんな、悪甘いいざないがあったって。


 数時間後、ふたりを訪れた先生が、ソファに転がるわるいこふたりを見つけ、『おやおや、なんてお行儀でしょうね!』と笑みを噛み殺しながら呟いても、わるいこふたりはすやすや眠りこけていましたとさ。


 たまにはこんなわるあまい。ね。


 < 過去  INDEX  未来 >


もえぎ [HOMEPAGE]