日記

2004年06月07日(月) 『フロォズン★フロォズン』



えらく間があきましたがお題をアップです。
うう、なんだか予想外に重い上に長い上に意味ない……(最低)


こんばんわ、チャットの航路はどうなることか。もえぎです。
はじめてのこころみー、チャット設置。
初日にお客様があって大変嬉しかったのです♪
お相手ありがとうございました!
け、けれど久し振りのチャットでやや舞い上がっておりました。
かなり雰囲気のおかしい口調になってしまっていて。
なにか失礼なことを申し上げてはいまいかと今更心配しています。
うあー、せっかく来てくださったのにー。アホー。

おしゃべりはいいものですねえ。
それが、同じものを好きな方とその好きなものについて話せるのなら。
ともあれこのままテンションを上げてゆきたいところです。
その一環としてゼノ音楽を聴きまくっているのですけれど。
見事に逆効果になりました(笑)
懐かしい、素晴らしい楽曲に思い出と共に酔いしれて。
けれどそのぶん、その奏で手、光田さんの不在が一層際立ってしまって。
またこっそり、へこり、となっているのです。アホですね。
クロノクロス(未クリア)のサントラをこっそり流してみたり。
早くクリアしたいなあとか思いつつ曲の凄まじさに涙してみたりで。

エピ2の音楽は。なんだか…足元がすうすうするのです。
ポプのおかげで、音楽の聞き取りが多少出来るようになりました。
身につけたそのアビリティで、どうしてすうすうするのか耳を澄まして。
わかりました。
光田さんの音楽はベースとドラムがぴったり寄り添う重低音が素敵なのです。
クロスの時にそれは最高潮に達したように思えます。
だって吉良さんのあのギターときたらいったい何ですか……!
ベースやドラムは、いちごタルトのパートシュクレ。
とろりとしたカスタードはギターや鍵盤、おっきないちごはボーカルさん。
それらがおいしいのは一番底でぺりぽりおいしいパートシュクレあってこそ。
あのどっしりとした縁の下のなんとやらがあるからこそなのです。
エピ2の音楽は…焼いたメレンゲみたいです。おいしいけれど。でも。
土と水と風と。
光田さんの音楽は、肺の中までたぷとぷ水に満たされます。
胸のうちが溺れてゆく。


本日のお題。アイスです。
なにやら予想外に重いわ長いわ意味ないわと最悪の方向です。
ちなみに昨夜、チャットに出ていなかったのはこれが原因です。
『明日にはアップできたら』ーなどとぬかしつつ書きあがらなくて。
それが申し訳なくて、三時までひたすら書いていたのです。
しかしスランプなのかなんなのか。えらくがちごちになってしまいました。
内容が内容ですので、タイトルで重さをカバーしようかと思ったのですが。
どうも嘘っぽくてうさんくさいですね。
こんなのパラフィン紙じゃありません。ごわごわの藁半紙……。
わたしが書きたいのはふたりの日常。ごくありふれた他愛のない平穏。
それが永遠でありますようにと願いますが、カトマサさんは仰います。
『風はすすり泣き 海は身をよじる
星々はきしみ 時ははじけ散る
みはてぬ夢は いつか終わり
そう 愛は永遠なんかじゃない』(SMALL TWO OF PIECES)
カトマサさんが仰るのです。う、と思いながらも押されてしまいます。
でも、この歌詞には当然のことながら続きがあります。とても素敵な。
『けれど……』と。
永遠なのかどうかなのかなんて分かりゃしません。
でも、わたしは書こうと思うのです。
あなたたちの一秒一秒をためいきのようにきりとって。
残るお題は、四つ。





『フロォズン★フロォズン』

 何を言い出すのかと思えば。
 突然の、彼の発表に、彼女は目をぱちくりとさせた。ただでさえ大きな紫苑の瞳が、いっそう印象的に際立って見える。しばしきょん、と見開いたあと、我に返ってしぱしぱ慌てて瞬く。かなりびっくりしている彼女に向かい、自信満々の彼は、もう一度高らかに宣言してみせた。
「今日は、俺が作るから!!」


「……で?で??なに作るの?」
 お手伝いをしてくれるのはいつものこと。一緒になってまぜたりこねたり作業をしてから、一緒になっていただきます。それがふたりにとって常のこと。
 なのに今回、いかなる事象がかたむいて彼をうながしたのかはよく分からないけれど、とにかくフェイが主導となってお菓子を作ると言い出した。こんなの初めてのこと。
 だから、エリィが好奇心の権化となって、キッチンに立つ彼の手元を、すぐ横からのぞきこむように興味津々つきまとっても、無理のないこと。何を作るのどう作るのとだだっこのように質問やつぎばや。まとわりつくようにぴったりしてくる彼女をじゃまっけに感じることさえなく、彼はおかしみを宿したアーモンドの瞳を笑わせるだけ。しかしそろそろ、彼女が放つたくさんの質問にひとつくらいは答えようと、彼は言葉ではなく行動で示した。にんまりと口元をいたずらっ子にして。
 しぴん★と得意げにどこからともなく取り出したものを、彼女に向けて、じゃんっと掲げてみせる。

「なあに?……冷凍みかん?」
 じい、と彼の差し出したものを凝視してから、いぶかしげに半眼になる。そう、そこにあるのは、いかにも冷たそうに、ひえひえとした空気を周囲に撒いているみかん色みかん。ちょっとくたびれたような皮の感じが、それが生のものではなく、一度かちこちにされたものであることをものがたる。
 口にした名前が、どうも間違いではないであろうことを確認した彼女は、実にうろんげなものを見るような眼差し。彼の宣言、行為、思惑…この凍ったみかんによって成り立っているのだろう一連のもの。全ての根源は冷凍みかん。でもどうしてもこの繋がりが読めない。彼女の明晰な頭脳をもってしても。果てしなく激しくうさんくさそうにするエリィの態度もなんのその、彼は得意満面。嬉しそう。
「あたり。でも、ただの冷凍みかんじゃないんだ」
「どこからどう見ても冷凍みかんなのだけれど……」
「違う違う。半分解凍しておいたから、半冷凍みかん」
「みかんのかたまり加減はともかく、これがどんなおやつになるの?」
「まずは」
 そう告げると、彼は、鷹揚とさえいえるような動作で。まるで手品でもはじめるがごとき芝居がかった仕草で、彼女に向き直る。それがあまりに自信に満ち溢れた表情と指先で行われるものだから。めいっぱいあやしげに見ていた彼女も、ついつい手を引かれるように視線を吸い込まれてゆく。

「まず、皮、剥くだろ」
「ふんふん」
 ちょっと力ない風の皮が、めむめむとはがれてゆく。
「で、今度は白い筋取って」
「ああ、これ取らなきゃ美味しくないのよねー」
 人によっては意見が分かれるのだが、このふたりは同じらしく、筋をきれいに取り去ってゆく。
「そしたら袋から取り出して」
「うんうん、缶詰に入ってるのと同じ状態ね」
 凍らされてもなんのその。ぴかつやとしたあまずっぱいみかんが姿をあらわす。
「最後に冷凍庫にイン」
「そうそう……って、え?最後?」
 つい相槌を打ってしまったのをあわててきりかえして。けれどエリィが問い返す頃には、彼によって冷凍庫の扉はばたむ、と閉ざされていた。

 しいん。と。
 しばし沈黙が落ちて。
 冷蔵庫のう゛う゛う゛う゛とうなる音だけが響いて。
 中途半端な静寂に満ちて。
 で。

「……以上。」
「以上!?以上って、以上ってフェイ!」
 息もつかせぬ早業で、すぐさま彼女は問い詰める。というか、食ってかかる、のほうが真実に近いやもしれない。かなり険しい形相だったりするが、それでもその秀麗なかんばせは変わらないのだからたいしたものである。
 けれど、まあ、エレハイムの追求っぷりも、当然といえば当然だろう。なにせ、あれだけわくわくさせておいて。もったいぶって。さあさ今からはじまる稀有なるショウタイムをご笑覧あれ!とさんざ期待させておいて。その果てが冷凍みかん再冷凍。
 至極当たり前の反応に、彼は、あははと笑うだけだった。さも楽しそうに。そんな反応は予期していた、といわんばかりに堂々と。それがまた、彼女の気に入らないものだから、状況は一向に打破される気配すらない。
「これおやつじゃないわ確実に!誰がなんと言おうと!」
「ははは。俺はおやつだと主張するけど」
「だってこれ。これ。解けかけたふにふにみかんをただもう一度しゃっきりさせるだけじゃない!」
「ちゃんと皮剥いたりしてしたごしらえしたし。作業は色々としてるぞ」
「でも、混ぜたりこねたりふるったり、全然苦労してないわ!」
「作業工程で差別するなよー。立派にこれも、調理じゃないか」
「で、でも…そもそも、これどんなおやつだとあなたは言うの」
「これ?これはな」

 ここでフェイは、ふいに口をつぐんだ。口角を軽く、からかうようにあげてみせるけれど、それにはあまり説得力がなかった。なぜなら、彼の漆黒の双眸は今そっとやわらかに半分伏せられ、穏やかな原初の海めいた、けれどどこかしら掻きむしられるかなしさをおぼえる深海の凪をたたえていたから。
 深すぎた紺が闇色に達してしまった瞳の彩りに気付いて、エリィはどきりとして言葉を止めた。彼がそんな眼差しをするとき、というのは、特定のとあることに関するときであると知っているから。
 やさしすぎるひとの傷みがかすかに脈打つときだと。

「小さいころさ、母さんとよく作ったんだ。お手軽シャーベット!って」
「お母様と……?」
「そう。うんと小さいころな。凄く暑い日、俺がなにか冷たいのをすぐに食べたいってだだこねて」
「……」
「そしたら母さんが、じゃあ、一緒に作りましょうって」
「二人で、みかんのしたごしらえしたのね」
「ああ。あれくらいの作業なら、子供でも楽に出来るからな」
「ちいさなあなたは、得意になって手を動かしたのね」
「それくらいしか出来なかったから。あの、小さな手じゃ。だからとても楽しくて嬉しかった」
「お母様はそれを見越して一緒にしましょ、って仰ったのだわ」
「暑さも忘れたよ。たのしくって。母さんなりの避暑策だったんだろうな」
「あなたが夢中になってる間に、暑さはどこかへ消え去ってしまって」
「そして思い出すころには」
 ぎぎ、と冷凍庫の扉を開く。ゆっくりと。わずかな笑みをたたえて。冷えた空気は真っ白く、淡いもやが這い出たようだった。雪の女王が漏らした誘惑の嘆息か、それとも記憶を閉ざす忘却の抱擁か。いかなるいざないが指を伸ばしてきても、それは、『変わらず』。

「ほら。完成」
 にこり、と涙もとうに失せた微笑をもって、それを取り出してみせる。彼をみつめるべきか、それとも彼のもつものをみつめるべきか。一瞬悩んだのち、彼女は視線をフェイのてのひらへと移した。
 先ほどまでつやつやと、ゆたかな水気を含んでふふふとさざめくように笑っていた表面は、微かな霜を宿して。予想通りにふにふにっぷりはしゃっきりっぷりへと背筋を伸ばして。やわらかにはじける弾力性はもうないけれども、そこにはしゃくしゃくと小気味よく、そしてひえひえと甘酸っぱく、口内をおもしろく満たすであろう柑橘アイスと化したシャーベット状のみかんがあった。

 な?と同意を求めるように、肩をすくめておどけるように彼が笑いかけてくるから。その奥にある、薄れはしても消えることのない彼を彼たらしめる憂愁の色を感じ取って。それを感じ取れるのは同じ悠久の刻を共に生き続けた彼女だけで。だから。

「ええ。できあがりね」
 こぼせない涙はなにも全てが悪なわけでなく。彼女は、少し露を宿した紫苑をやわらかくたわめて、同意を込めて微笑み返す。とおく。とおい。なにかを内包した、どこか泣き笑いにも似た微笑で。
 ふたりはひえたみかんをお互い、手にとって。ひょいと口に放り込み、しゃりしゃりとその感触を楽しむように味わいながら、笑みを交し合った。ぱ、と体中にしみ渡るようなあまずっぱさがつめたさと共に駆け巡って。かなしいくらいに澄んだ微笑は、ようやくほっと一息ついたようだった。

「な?れっきとしたおやつだろ?」
「ええ。とっても素敵な、お母さんの味」

 しゃくしゃくいいながら透明な会話。
 口の中でまだひえひえしているみかんを感じながら、彼女はふいに片手をのばす。
 すこし、冷たいような指が彼の頬に触れた。
 冷たい頬を冷たい指がつつんだ。
 彼女は泣き笑いのように微笑んだ。


「とてもおいしいから。今はちょっと、ふたりで横になりたい気分だわ」


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