あまつばめの雑記
こんばんは。いらっしゃいませ。

2003年07月03日(木) 小話:「鉄と綿」

誰も、私の気持ちなんてワカラナイ。

苦しいとか
痛いとか
嫌だとか

そんな気持ち、伝わらない。

他人を見渡すと、凄くお気楽そうにみえる。
こんなに困っている私を尻目に、彼らはいつも笑っている。
でも、それは、綿100トンの苦しみなんだ。

私が持っている苦しみは、鉄100トンの苦しみ。

一見、重そうに見えるけど、実は同じ重さ。
固い表面に触れることで、冷たい痛みを感じている。
柔らかな綿は温かく、それには痛みがないように思える。
一緒の重さなのに、身に食い込む固さで、私はつらいと感じてしまう。
綿はかさばるから一度にたくさん持てず、何度も何度も往復する。
そんな彼らの苦しみを知らず、私だけが嫌な気分になっていく。

一人でいると、どこまでも食い込んでいくよ。

持ってあげよう。
彼らの綿を持ってあげよう。

持ってくれた。
彼らが鉄を持ってくれた。

綿に包まれた鉄は、身に食い込むことなく、なぜか温かかった。


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