幕末冗談蜃気楼!


::: log in ::: 2005年01月01日(土)


***基本的に書き捨てで適当です
全てフィクションです。



//////////幕末冗談蜃気楼!





これは幕末、お笑いにかけた熱い志士たちのくだらないお話である。


ーー突然、とある国のとある幕末、京都。

「今日もメシ、こんだけかよっ!こんだけにしちゃうのかよっ!!」

千秋が切れた。
千秋修平ーーどこか崩れた色男風の浪人である彼は、ぎりりと歯を噛み締めた。
すると隣の柿崎晴家が、あきれたように言った。こちらは山伏のような立派な体躯の持ち主。

「....だって、今日もあたしたちすべったし、誰も何もくれないんだもの」
「くそう....掴みはよかったのにな....お前のカマキャラも反応よかった...」
「ーーーカマじゃねえっていってるだろ」
「がっ!」

晴家が大きな身体で立ち上がって降りおろしたチョップで、千秋は後ろに倒れ込んだ。




ーー10分経過ーー

「.......と今日もそうやってお前達はねたを最後までやらずに終わったわけだな」

千秋が目覚めると、直江信綱が腕組みをして顎にこまったように手を当てていた。
直江信綱ーーこの貧乏長屋では目の醒めるような西洋風の男前である。ちなみに元生臭坊主だ。真面目そうにみえるが中身は快楽主義な上に頭のネジが全て違うネジで止めてあるような男だった。

「だってさー客も悪いよ。維新志士の生まれてこの方一度も笑った事ねーような顔のおっさんで」
「言い訳はいい。ようするに、今日の食べ物がないっということが問題なのだばか者」
「おっさんにばか者って言われるとなんか、裸で川に飛び込みたくなるぜ....」
「でもどうするのよ直江〜、今日のごはんは?千秋の小指でも食う?」

晴家が悲しげな声を上げた時、がらりと戸口が開いた。

「お前ら、秋刀魚だぞ」
「「 お、おとうさ〜〜〜〜〜ん!!!! 」」

二人に抱きつかれた高耶は顔を引きつらせながらも、我慢をした。ちなみにこの青年の名前は上杉景虎。(芸名)裏では高耶という名で呼ばれていた。

「直江、これ焼いとけ」
「御意」

直江は高耶の手から秋刀魚を受け取ると、ひょいとネコの子を掴むように高耶の後ろ襟を掴んで助け出した。そのまま膝に乗せられそうになったので、高耶はおもいっきり顔を引っ掻いて、向側に座った。

「ははは。爪が伸びましたね高耶さん、切ってあげましょうか」

高耶は高貴な血筋がうかがえる涼しげな顔をつーんとして、知らんぷりしている。彼は根っからの女王様気質なのだった。ちなみに当然男色もいける直江は、彼に夢中であった。

「な、直江、お前普通に超血がでてるって....!」
「直江〜え〜んこわいよ〜」
「なに、これはテレ線だが?」
「違うッ!」

この4人は新潟から京に昇って来た流しの若手のお笑い集団、「夜叉笑」(やしゃしょう)。

ただ今京都では倒幕派と左幕派、真っ二つになって争いが起きていた。
全て、「今の幕府はおもろない」という植木屋清彦の一言から始ったと言う未曾有の争いは、日本全国から笑いを極めようとする若者たちの心に火を付け、毎日あちらこちらで小競り合いが起こるようになっていた。
のちに幕末お笑い時代と呼ばれるまさにその時代だった。

秋刀魚を平らげた千秋と晴家は満足そうに白湯をすすりながら、高耶に尋ねた。

「ねえねえ、ここに秋刀魚があるってことはあ、あんたたち今日はうけたのね?」
「どのねたやったんだよ、お前等ねた合わせも昨日喧嘩ばっかりでしてねえじゃん」

高耶と直江は顔を見合わせ、心持ち肩を竦めた。

「...今日も....うけなかった....」
「ーーねたをやる前に高耶さんに殴られて昏倒しましてね」
「お......っ、同じ穴かよーーーー....!!!!」

高耶は勢い込んでいった。

「で、でもな、これ通りすがりの商家のおっちゃんにもらったんだぞ。お金がなかったらうちに来なさいねって」
「それ、ただの稚児すかうとだからーーーッ!」

この通り全く売れない芸人なのだった。

ちなみに幕末の勝負とは道で出くわした観客側(非お笑い)を突然笑わせるという一発勝負である。
非お笑いの観客は町人から、幕府側、倒幕側とさまざまだった。
幕府側はおもしろい武士を集め幕府を守ろうとし、倒幕側はゲリラ線で笑いの波状攻撃をしかけていた。
高耶達のような流しのどちらでもないものは、政治に関係ないので別に誰を笑わせてもいいのだ。

直江がぽつりと言った。

「実はな、幕府側が最強のお笑い集団を江戸から呼び寄せたと聞いてはいたが...それを見たのだ先程」

千秋と晴家が腰を浮かせた。

「え....見たの?」
「ああ。見た瞬間から高耶さんが笑ってしまってな、それでついでにどさくさで押し倒したら殴られた」
「それは景虎も悪いじゃねえか」
「だってさ.....」
高耶が思い出し笑いをしたが、すぐに顔を引き締めて下を向いた。
「奴等見るからにおかしいんだーーーー畜生、笑選組めいい腕してやがる」
「ーー笑選組ーーー」
「笑選組......」



夜叉笑の活躍はいまだにーー遠い。

(了)

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オチなし...

*...テレ線ーーまんがなどで顔に入る斜線の照れた様子を表す線


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