キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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昨日「お別れ」の長いメールをしたけれど 結局、昨日も今日も、メールは返ってこなかった。
今朝目が覚めると、ものすごい喪失感に襲われて 朝から泣いてしまった。 前夜も泣いていたから、腫れた目が更に酷いことになって 人前に出られる顔じゃなかった。
Jと、話がしたかった。 Jの声が聞きたかった。 怒っているのか、哀しんでいるのか、もうどうでもいいのか、 何でもいいから聞きたかった。 自分から「別れる」と決めたつもりだったのに、全然ダメだった。 電話を、してしまった。 けれど、 「ただいまおかけになった電話は電源が入っていないか・・・」という、 命の吹き込まれていない女の人の声が聞こえた。 私は、 「話したいよ。」 と、メールを送ってしまった。
涙をこらえて、大学に行く準備をした。 誰とも会いたくなかったけれど、それは無理だったから コンタクトはやめて眼鏡にした。 少しは、目が腫れてるのを隠せるかなと思って。
大学に行っても、研究に力が入らずに、私はぼーっとしていた。 何も考えたくなかったし、人と話をしたくなくて 研究は切り上げて、大学を出てきてしまった。 何とか元気を出さなくちゃ、と思い、食糧の買出しをしたり ふら〜っとおもちゃ屋さんに行ったりした。 何を見ても、Jを思い出した。 おもちゃ屋さんで、Jと遊園地に行ったとき買ってもらったぬいぐるみを見つけた。 ふわふわしていて可愛かった。 まだ涙目になった。Jに会いたかった。 「もう一緒に何処にも行けないんだ。」と思うと 「なんで人は簡単に幸せになれないんだろう。」と、 また哲学的な方向に走ってしまうのだった。
家に帰って、眠った。 もう何も考えなくなかったから。 目が覚めたら、Jからメールが来ていたらいいのに。 Jからの着信音で、目が覚めたらいいのに。 そう思って眠った。けれど、目が覚めても状況は変わらずに 私は孤独のままだった。
Jとの、いい思い出ばかりが蘇る。 本当はJが酷くて、辛くて、それで別れたいはずなのに Jが優しくしてくれたことばかり思い出す。 研究室に居ても、家に居ても、Jからもらったものが周りに溢れていて 「もう会えないし声も聞けないんだ。」と何度も思った。 自分が手を離したはずなのに、辛くて辛くて何度も泣いた。 私は勝手な女だ、と心底思った。 どうしたらJを忘れられるだろう。 早く、1年でも2年でも経ってくれたらと願った。
夜になった。 私は我慢できずに、Jに電話をした。 もしかしたら着信拒否にされてるかも、と思ったけれど、コール音は鳴った。 けれど、何度電話をしても、どれほどコール音が鳴っても Jの声を聴くことはできなかった。
ねぇ、J。 今何をして、どんなこと思ってるの? 私のこと、本気で憎んだ? 何でもいいから教えてよ。
そう思って、今度はJとの専用ケータイに電話をした。 2回かけてみたけど、やっぱり出なかった。辛かった。 「やっぱりもうダメなんだ」と思って、何の元気も無くなった。
すると、1通のメールが届いた。Jからだった。 「冷え込んでるね。あったかくしてる? はるの声、泣きたいくらい聞きたいけど 電話するのが怖いよ。」 そう書いてあった。
それを見た瞬間、涙がボロボロ溢れてきて止まらなかった。 心の中でJの名前を呼び続けた。 好きだよ。ねぇ、J。好きだよ。バカみたいに。 キミは自分勝手だけれど、それでも私を愛してくれた。 それだけは、分かってたはずなのに。
「声が聴きたいよ。会いたいよ。 ほんとはお別れなんてしたくない。 Jと話したいよ。会いたいよ。」
私はそう書いてメールを返信した。 そして、電話が鳴るのを待った。 そして数分後、電話がかかってきた。
「はる・・・。」 いつもの優しい声。私の、世界一好きな声。 電話越しで、いつも聴く声。私の名前を呼ぶ、確かにJの声。
「電話するの怖かった。メールも送れなかった。 電話したら、『さよなら』って言われそうで怖かったから。 昨日お別れのメール見て、頭が真っ白になって、 はるがくれたリラックマと生茶パンダのストラップ、ケータイから外して・・・ 待ち受けも変えて・・・ 何にもやる気出なかった。 ふられた瞬間の、あの感じ。凄く久しぶりだった。 金曜日、内緒で会いにいくつもりだった。 そのために、今日学割もとったし。」
Jはそう言ってくれた。 私は、ごめんね、お別れしたくないよ、ごめんね。ごめんね、と言った。 私も辛かったよ、何もできなかったの。Jが居なくちゃだめって思った。 哀しかった。いい思い出ばっかり思い出したりして。 Jともうメールできないって思ったら哀しすぎて。 だって、付き合う1年以上前からメールもしてたから、 もう当たり前みたいに2年以上、メールしてたんだね。 もう会えないって思ったら、これからどうしようって思った。 そう、伝えた。
すると、Jが泣いた。
最初、咳き込んだのかな?と思ったら、彼は確かに泣いていて 「・・・もう、会えないかと思った・・・。」 と、声を押し殺しながら、泣きながら、そう言った。 Jが泣いたのは、初めてだった。自分の耳を疑った。
こんなに思いつめてたんだ、こんなに苦しんでたんだ、 私と同じように。それ以上に。 Jの泣き声を聞いて、私はまた余計に泣いてしまった。 「ごめんね。ごめんね、J、ごめん・・・。 私は、Jが居ないとだめだよ。」と言うと、彼は 「それは、オレだよ。」と、笑った。 お互いがお互いを必要としていて、でもすれ違うときもあって それでもまだこんなにお互いを好きなら、別れることはないと思った。 私はもう、「お別れ」メールを送ったあとから後悔していたから。 でも、そうしないと気付けなかったことが確かにあった。
明後日、会えることになった。 一ヶ月以上ぶりに、Jに会える。 「たくさん愛のはぐをしましょう。」 そう約束した。
まだこんなに好きで、別れられない。 Jを、心底嫌いになるまで、別れないでいられるといいな、 そう思った。
早く会いたい。君の笑顔が見たい。 君に包まれたい。 私はJとのはぐが、一番の幸せ。
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