優しい嘘ほど痛いって、知ってるはずなのに。 なんで。 なんでまた。 嘘をつく計画練ってるんだよ、俺は!
ある女の子がいる。 最近、旦那と生き別れた子だ。 おなかには、赤ちゃんがいる。 妊婦独特の不安定さからだろうか。 ぬいぐるみに話しかけるようになった。 「れ〜いじv」 「今日ね、あたしこんなことがあったの」 でも、ちゃんとわかってはいるようで 「本物れいじ帰ってこないね」 と、言っているところを見ると、 まだ安心できる。 まだまだ末期じゃないからいいや。 そう、思ってた。
甘かった。
彼女は、食事をしなくなってしまった。
料理はする。 「れいじがいつ帰ってくるかわかんないもん!御飯作っとくの!」 エプロンを作って、それをつけて、料理をする。 「れいじが帰って来たら、きっとあたしを見て可愛いって言ってくれるの」 でも、食べない。 「れいじが帰って来たら、あたしも食べるの」 「ごはん冷めちゃった…固くなっちゃった…」 そして、捨ててしまう。 食べない。 旦那を信じて、待ってる。 常に、 料理をしているか エプロンを作っているか ぬいぐるみに話し掛けているかのうちの どれかだ。
俺には、もう言えない。 『れいじはもう、帰ってこないんだよ…』
だから、優しい嘘をつくことにした。 彼女が旦那のためにあんだマフラーを、 彼女の手元にあるマフラーを、 彼女の旦那に一番近い人に、あずけて。 マフラーをちゃんとあげたという事実をつくって。
「れんげがいないうちにれいじが帰って来たから、渡しておいたよ」
という、
旦那が一時的にでも帰ってきたという
大きな大きな嘘を
それで食事をするようになってくれれば、と、
考えて
いる。
だって、どうしたらいいのか。 もう、僕達にはわかんないんだ…。
人間は、ずるい。
今日のBGM>PIERROT HUMANGATE
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