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―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2007年12月15日(土)
ずだだだだーん。どばばばばーん。


見てるんだか見てないんだか微妙な感じだったドリーム☆アゲイン。
おいおいおいどうなんだよそのラストはあぁぁぁああっ!
感動された皆様には申し訳ありませんが、大してファンだったという訳でもないんですが、どうしても納得出来ません。以降はそんな文句が続きます。進退は御自由に。

ざっと粗筋を纏めますと、天国側の手違いにより死ぬ筈のなかった小木が異議を申し立てた為担当の天使(なんだろうか)田中が、肉体を既に失ってしまった彼に、代わりに死ぬ予定の人間の体を使ってもう一度人生をやり直させます。
怪我の為閉ざされたプロ野球選手への道をもう一度歩むと生前彼女を振ってまで誓った夢の為、入った体のそれまでの人生なんてなんのその、会社も隠し子も割と二の次にしながらなんだかんだ上手く纏めて(語弊有り)、嘗ての監督や嘗ての恋人とも紆余曲折を経てようやくプロへの切符を手に入れます。

が。ここから最終回。仲を深めた(体の元の持ち主の)娘に死期が迫っていると判り、父性愛に目覚めた小木は自分の命を彼女に与える事でその運命を変えたいと田中に申し出、迫る別れに知人達と交流を深めながら、隠していたものの正体を悟っていた彼女に看取られながら、約束通り息を引き取ります。
願いを叶えてくれた天使との語らいも終わり今度こそ天に召されようと言う時、田中の計らいで小木が小木の人生で死ぬ筈だったその瞬間にあっちゅー間に戻り、死に進んでいた筈の道を引き返して、ある予定ではなかった別の未来を取った事で、そのまま生きていた、という設定に。
楽しいデートを重ねていると、彼は当然覚えていないけれど別の体で過ごしていた時に知り合っていた誰彼と別の形で出逢い、使っていた体の持ち主も死ぬ事無く娘と仲良くしていて、最後は天使が人の世界でサンタクロースに扮装して暮らしている、というところでEND。

それでは楽しいツッコミタイムに参りまーすv 野暮なのは判っていますが一つ粗が見えてしまうと彼是文句に変わってしまう性分です。
・漫画ではまぁ定番の話ですが、そもそも人の命を他人に分譲するというのはどういった定義なのか? 魔法やエネルギーに変えるといった前提も特に無く、一天使にそのような行為が可能なのか?
・更に言えば娘の場合は身体の損傷(というか病気)があって今の状態に陥っているのに、生命エネルギーだけでなんとかなるものなのか?
・彼は正体を(中身は小木であると)口にしたらば消滅するとされていたのに、幾ら召される運命を受け入れたからといって早々誰彼からの疑問を認めてよいものなのか?

この辺まではそれこそ粗探しですが、ここからが本番です。
・だから一天使に(幾ら肩入れしていると言っても)死の運命を変えるどころか時間の巻き戻しは可能なのか?(尤も死ぬの自体が間違っていたんですが)
・それならば小木は兎も角、体を使用していた朝比奈氏まで生きているのはおかしい。
・小木(魂)という接点があって出逢っていた筈の二人が、小木が関わっていなくても出逢うというのは、運命論を説いているのだろうか。どんな形であっても、出逢うべくしてなのだと。
・朝比奈氏というのは冷血漢で有名であったのに、笑顔で娘と関わっている?(登場に絆されたと言うならそれまでですが)

そして、一番問いたい点。自分が夢オチがきらいな理由にも当たりますが。
これまで、何週にも渡って見せてきた、行動であるとか、それは、なんだったんだろうか。運命を変えると言う姿勢に天使を感化させる為だけのもの?
恋人の死に泣く彼女も、
その彼女を思って今更な遺言を残したのも、
見ず知らずの他人の娘にどう接していいか判らなかったのも、
夢の為に肉体改造に勤しんだ日々も、
夢の為に会社に迷惑をかけたのも、
その上で方針を転換した会社も、
見知った監督に知らない人と扱われる寂しさや、
それでも認めて貰う為の努力や、
強請られたのが監督の夢の実現に関わったのも(というよりこれでは監督の夢は叶わないのでは?)(金を渡したのかどうか存じていないので難ですが)、
監督が別人の中に小木を見たのも、
彼女が別人の中に小木を見たのも、
不器用ながら少しずつ打ち解けた使用人と娘との暮らしも、
父親と娘になるまでの確執も、
交流で深めた絆も、
娘の小さな恋も、
お父さんと呼んでみせた勇気も、
もう一度恋人の死に泣く彼女も、

全てはなんであったのか。

ただただ、天使が小木の間違った運命をやり直させる為だけのものだったのか?
間違っていたからと本来の流れに戻して、始めから、上記のあれもこれもなんもかんも無いものにして、生まれた成長はそのままにしてあるのかも知れなくとも、小木として生きる彼にはもう、娘も使用人も会社の人も判らなくて、全員がハッピーな大団円に見えたけど、御都合主義だとか、そんなんじゃない。御都合主義のハッピーエンドだったら、笑って過ごすさ。
全部無駄だったと、言われたみたいだ。小木でなくとも朝比奈氏は変わり会社も変わり二人は出逢い、それが運命なら、これまでの何週間は、ねぇ、一体なんだったのか。
言っても、仕方がないけれど。
プロポーズ大作戦のラストも気に入らなかったけれど、それは感じ方の違いで、余韻肯定派か否定派かであって、自分としては最後のクライマックスをやらないのかよ! そんな気持ちでした。
それとは、違うよ。或いはこれまでの経験は持ち越しで、だったのだとしても、もう小木は、朝比奈氏にも会社にも一生関わる事はなくて? そんなの、そんなの、そんなの。

ちなみにトータルのツッコミポイントでは、初期の人物にあまり魅力がありませんでした。そこに少し見る気を無くして見ていなかったのですけれど。或いは、熱を持ってみていたらより傷が深かったかも知れませんから、それもまた、運命という事で。しょうかね。


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