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―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2007年02月01日(木)
いわないタイプ。いえないタイプ。


体裁を取り繕う事を全く理解らないとは言わないし、何が恥かは人其々なのだから。
それでも日頃は嘘を嫌いながら自らを守る為なら露程も厭わず追求すればなんたらも方便と言うでは無いか、なんて言い逃れだろう。笑顔で自論を繰り広げていく、それとも二人共愚かなのかも知れない。
例えば彼女が自分の真実を話すのがいやで隠すのなら、各々の勝手どうという事は無い。
けれど彼女は自分の身内を、本人がなんとも思っていない事を、別の嘘を吐く物事の場合は諦めという受け止めかも知れないけれど、過敏に反応しては正直に話さないのはあなたの為よと嘯いて、まるで自らの汚点のように次々言い逃れを繰り広げる。
困ったのは付き合わされる方で、適当に相槌は打てるけれど、彼女のそういった欲の為にひたすらに嘘を塗り重ねて、誰かに引き起こされた上塗りを手伝うのは面白く無い。

然る時、彼女の別の身内と問題が起こり、ストレート且つ大雑把且ついい意味でも無論悪い意味でも自らの物差しできちっと計ってはずばずばと事を決めていく、そんな彼女だから信頼される事もトラブルも多いのです。
自ら色々と策を講じた後、本人に彼女がどのような思いを懐いているのか、どのような場をセッティングして打ち明けるのか、という場面があった。当事者以外は殆どの身内に知れていた問題。
愈々舞台が整い、後は彼女が本心をぶちまけるだけ、となった時問題の一端である暴力からの防護策として事を知っている者と核心の二人での会合が予定されていた。
しかしこの時、問題児が一人だけ何も知らず周囲は知っていたという状況は焦りと共に恥を招くのではなかろうか。でなくとも成人男性の、それでいて彼女のお眼鏡に適わないから取り沙汰されている訳だが、知識はありそれをこそプライド高く誇る彼だから、その状況は宜しく無いのではと。体面的にも。
故に話は流れ文をしたため気持ちを明かす、といった算段に事は落ち着いた訳ですが、細かなところは違っても、彼女の体裁の為の仕打ちはこれと接点が多いのではと考え、だからこそその矛盾をどう感じているのか、知りたかった。
反発というよりも楯突いた、或いは意地悪な質問なのかもしれない。昔気質で妙なところを拘る人だからそういった嘘もよしとする訳だが、その体裁の為に腐れ縁の知人に嘘を吐き、その人以外皆が知っている事を敢て隠す、事にそれだけのプラスが有るのか、予々一度伺ってみたかった。
その結果が嘘も方便と繋がる訳だけれど、自分の中で彼女の、少し株を落としてしまうのは短絡的とも取られるかもしれない。ほんのちょっと、失望しただなんて、買い被っていた自分へも気持ちは同じ。
彼女は自分の身内のちょっとした汚点、彼女が汚点と考えていると思われるけれど他の周囲は本人の意思が全く拘っていない事から腹はどうにしろあまり気にしている様子は無い、けれどほんのちょっととか思っているのはその本人つまり自分だけかもしれない、それさえも面白いとかほくそえんでいる、汚点を隠す為に旧友に嘘を吐く事も、周囲に嘘を吐かせる事も厭わない。
そういった利己的考えは誰にだってあるだろうし咎めるつもりは無いけれど、結局何処まで言っても彼女が重んじたいのが自らの面子であるのだと白々しい台詞を繰り返し遠回しで伝えられると、うっかり哀れんでしまいたくなる。尤も哀れまれているのは自分の方こそ、なのかもしれませんが。
そこまで、体裁って大事だろうか。守りたい、ものなんだろうか。役にも立たない得にもならない面白くもない、若しかしたら真実に気付いた時不快に思わせてしまうかもしれない、そういった嘘はあまり好きになれない、それともそんな心自体がナンセンスなのか。人の為は、所詮偽りだからね。


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