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―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2006年04月26日(水)
視界最悪のイマジネーション。


朝から疎らに降っていた雨が強烈な勢いを乗せて降りしきれば、駅のホームに人口は増して
皆不安げに外を見遣り、風に煽られ色付く水のカーテンに優しくはない視線を与える。
用事の相手も一同と同じ面持ちをする中で、一人だけ楽しげに、心底愉快気に、現れる靄を色彩を
指を差して笑う者がいる。家を出た当初から雨粒はあったが大した事は無いと油断すれば
小さな台風に包まれたかのような町並み。その状況下において持ち合わせるアイテムは自転車。
一般論では最悪としか言いようの無いバイクについで最悪なものだと、
理解しているらしいのだから魂消たもので、童謡においては雪を喜ぶ犬のように
はしゃぐ彼女は言うに事欠いて、帰り道が楽しそうと何度も告げた。何度も何度も、
刻一刻激しくなるだけの風雨に度合いを強めて楽しみだ。何度も何度も、そう告げた。
時の憂いか少しでも弱まればここぞとばかりに隙を見て駆け出す者やこの調子でと
期待する者が大勢の中で、誰かだけはそれはそれは残念そうに、嗚呼やっぱりあの時に
自転車に乗って駆ければよかったと呟いて、遂に水の世界へ消えた。

何の事かというと、実況中継でした。マイライフ。つまりこの戯け者は私以外の何者でも無く。
えー! だって、楽しくないですか雨の中、それも歩行でなく自転車ですよ!!
コンビニ寄るとかスーパー寄るとか他に何かあれば別ですが、行きも帰りも濡鼠である事を
何も気兼ねせずに楽しめるんですよ! なんって素敵なシチュエーション!!
声高に叫ぶその姿、人はそれを変態と呼びます。ま、あまりはしゃぐと自分でも思います(思うのか)。
あまり肌や髪といった身体的にいい雨ではもう無いのでしょうが、それでもいいんです。
その後風呂場に行って濡れたものを干さなくちゃいけないとかその間に歩いた家の水滴を
拭かなくちゃいけないとか面倒ごとを差し引いても、私は雨の中自転車で駆けたかった。
駆けていて、楽しいと思った。だから、いいんですよ。濡れるの万歳。風呂はきらい(なんでだよ)。
逆だったのならば少しは過ごし易かったのだろうに。ぽかぽかお風呂にいつまでも浸かってられるか。


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