Movin'on without you
mako



 記憶から消せない限り。

たった1人だけ、
何だって話せる、友達がいる。

彼とは。
高校も大学も、しかもバイト先まで同じで。

初めて会ったのはあたしが高3の時だったと
ぼんやりと記憶してるんだけど

何が原因で仲良くなったのか分からないんだけど
あたしも彼も1年ずつ浪人してて
なんかその過程で人生とか将来とかについて
多分に語り合う機会があって。

その延長であほな話をいっぱいして
けっこう滅茶苦茶してることも話したりして
そしたら彼はいつも笑ってくれるから
そんなこんなで話すようになったのかな。
人には決して言えないようなことも、沢山。



あたしが、いかせんと寝たことを
世界中で唯一知ってる、友達。

あたしが、無意味な浮気をしたことも
世界中で唯一知ってる、友達。

だから、あたしがすんごい阿呆なことを
世界中でいちばん知ってるのが、彼。


あたしの今付き合ってる、すごく大切な人には
一生言えないようなことも、彼だけは知ってる。


彼の存在が、あたしを助けてる。
そんな馬鹿なこと以外にも、いつも助けてくれる
支えてくれる、大切な人。




こないだ、その友達と電話してた時
「そういえば、こないだ、いかせんに会いました」

不意にそんな風に言われた。


「どこで?」

「バイト先です。元気か?って聞かれましたよ」


彼は、あたしと同じときに、
たまたま、バイトを辞めてる。

だけど久々にバイト先に顔を出した時に
本当に偶然、いかせんに会ったのだという。


「元気か?」ってちょっと笑いながら言う、
いかせんが瞬時にあたしの頭に浮かんだ。

あたしの想い出の中のいかせん。
だから、ちょっと笑顔で。優しくて。

すごく、羨ましくて。
あたしには一生向けられることの無いその笑顔が。


欲しくて欲しくて、堪らない。



元気か?
元気か?
元気か?


まるであたしが聞かれているような
心地の良い妄想。



聞いてよ。いかせん。あたしにも。
「元気か?」って。そして頭をこづいて。



いかせんにだったら、あと100万回だって
抱かれたいと願うのに。



逢いたいのに。



田舎に帰りたい。
あの街に帰れば、何万分の一かの確率で
街を歩くいかせんに、逢えるかもしれない。

この街で、いかせんと同じ車を見つけるたびに
それがいかせんの物かと思ってしまうあたしを
当たり前のように違って泣きそうになるあたしを


救えるのは、やっぱり今でも
そうさせてる、あなただけなんだと

ほんの少し話を聞いただけで
やっぱり心が戻る。



忘れようとしてたけど
忘れられるわけもなく。



今でも、大好き。


そばに居ないから好きなのでもない。
幻想を愛してるわけでもない。


どんなんでも、いかせんだったら好き。





2005年03月01日(火)



 想い出と春の匂いと。

一年中、どんな季節にだって
あたしといかせんの想い出はあるんだけど。

もとい、あたしの中に
いかせんの想い出は、山ほどあるんだけど。

とりわけいちばん多いのは
やっぱり、秋と、この季節なんだと思う。


そうして、思い出した。
明日が、卒業式だということを。


――――――――――――――――――――――――

あたしが卒業した高校は、
明日が、卒業式を迎えるはずです。


信じられない。
もう6年も経ったんだね。


卒業式の日、卒業証書を嬉しそうに見せるあたしに
あなたが向けた、優しそうな眼差しが
あたしには未だに忘れられません。

あたしの頭をぽんぽんってして
優しそうに笑うあなたの笑顔が
あたしには忘れられません。

あの頃のあたしは
大人になれば、何かが変わると思ってた。

確かに変わったのだけれど
失ったものばかりだよ。

あなたの優しい笑顔は
もう二度と、手に入らない。


――――――――――――――――――――――――


あたしと、いかせんが働いていた会社は
この時期が、多分一年でいちばん忙しくて
だからあたしといかせんの想い出も
自然となぜかこの時期が多かったりする。

もう何年も昔に優しくされた記憶が
この季節の匂いと共に甦るのは

あたしにとって、情緒不安定のもと。



些細なことで、あんなに幸せになれたね。

一緒に桜を見たこと。
一緒に車に乗ったこと。
一緒にいろんな話をしたこと。

些細なことだと思うのに
些細な想い出であたしは何年も幸せになれる。


失ったから綺麗な想い出っていうのとは
違う気がするんだ。

あなたが目の前に居続けた5年間も
居なかったこの1年間も

あたしにとっては何も変わらない。


あなたはずっと大切な人で
大切な想い出で大好きな人で神様みたいな人で


もう一度、抱かれたい人。



神様がいるのなら
あたしとあの人をもう一度、出会わせてほしい。



そんな願いをいつもあたしはしてた。
でも結局会えないところにあたしは在る。

神様は。結構残酷だと。


2005年02月28日(月)



 ただひたすら悔やんでる。

浮気した、その事実より――

あんな男と寝た、自分に腹が立つ。

あたしの後悔は、それだけで出来上がってる。



いかせんといた、あの夜のことを思い出すたびに
あたしの後悔はもっと広がってく。

なんで、あんな男性とそんな風になったんだろう。
かっこいいわけでも、優しいわけでもなく、
平凡で、つまらない人。

そう。一言で表すとそれだけ。
平凡でつまらない、ただの男。


穢れた自分が消せない。

今になって、すごく後悔してるの。
本気で、後悔して、消せたらいいと思ってる。

人生のリセットボタンがあったら
あの夜からやり直す。


覚悟もないまま、あんな軽はずみなことをするから
何も考えないまま、好奇心に身を任せるから
こんな後悔が襲ってくる。


そして、
この後悔を

違う人に抱かれることで消したいと望んでいるあたしは

正真正銘の馬鹿なのかな。

・・・馬鹿だよね。


あんな奴の影を
早くあたしから消してほしい。


いかせんにとは言わないから。





2005年02月27日(日)



 浮気の代償。

あたしは知らない間に、


あたしが初めて会った時の
いかせんと同い年になってた。



あたしが18で
いかせんが24だった。

ちょうど、いかせんが24歳の秋だった。


だから、正確に言うと、越しちゃったね。





未だに、初めて会った瞬間のことすら忘れない。

自分ですごいな、と思う。


あたしは結構、
物が入ると同じ分だけ出てくタイプなので

人が覚えてることでも忘れてたりするんだけど




違う人と寝ても
思い出すのが結局いかせんのことで


なんだか、
たぶん罪悪感があまりないのは

結局のところいかせんと同じ、っていう自分に
安心してるんだと今思った。



ほんとは多分、動揺してた。
いかせんがあたしを抱いた翌日に
一瞬見せた戸惑いの表情。
あの時のいかせんの気持ちが、今ならあたし解るよ。
あれは素だったんだな、ってほんとに思うから。

それと同じような感情を
抱えてるのが今の自分のような
そんな気がする。


そう思うと安心するから。


たった一人、すべてを知ってる
仲のいい男友達にも
今回ばかりは非難された。


非難されて当然だと自分でも思うけど。


今こうやって画面に向かって
気持ちを吐き出してるうちにわかったことは、
いかせんと同じだっていうおまじないは
あたしには相当効き目があるみたい。


ちょっと、冷静になった。


ここに来て、よかった。



ちょっとだけまだ寂しい。

2005年01月24日(月)



 招待状

前のバイト先の上司から
結婚式の招待状がきた。

あたしが妙にかまわれていたそのひとは、
いかせんの奥さんに昔惚れてた。


彼がいた部署は、
正社員がたったふたりしかいない部署で
あとは全員バイトの学生で
いかせんの奥さんと、彼とふたり。
残業も打ち合わせも全部ふたりきり。

気が強くて美人の「彼女」に
惚れるまでに時間はかからない・・よね。


でも、そこに現れたのはいかせん。
彼女といかせんが付き合い始めるのは、
その後、すぐ。

そう。あたしが
いかせんに大切にしてる女性がいると知って
泣きに泣いた、18の皐月のころ。



その頃の彼はきっと、
いかせんに見事に好きだったひとを持っていかれて
毎日一緒に帰っていく姿を見なくちゃいけなくて

辛かったんだろうなーと思う。


そんな彼の辛い気持ちなんて、
正直どうでもよかったんだけど。

同情すらしないくらいに、
どうでもよかったんだけど。



あたしが彼と仲良くしていた理由はひとつだけ。
彼と仲良くしていることで
いかせんの奥さんに、ちょっとでも近づきたかった。
近づいて何かを壊そうとするほど
身の程知らずでも大人でもなかったけれど
ただ、目の届く範囲にいつもいたくて、

ただ怖くて多分に憎くて。


同情はしないけれど、
奪ってくれたらってどれだけ思っただろう。
彼が、いかせんの彼女であるあの人を
奪ってさらってくれたら、ってそんなことだけは考えた。




いかせんの奥さんが、帰った頃を見計らって
彼のいる部署に遊びに行った。

いかせんの奥さんの席にわざと座って
卓上のカレンダー、さりげなくめくって
彼の誕生日にわざとらしくついてるハートマークを
見ながら、それを心の中で笑ったりした。

会社のカレンダーにハートなんてつける彼女を嘲笑することで
あたしはなんとか気持ちを保っていたのかもしれない。

なんでも知ってるんだよ、って言ってやりたかった。

18歳にしては子供すぎたけど、
好きすぎて何もわからない子供だった。認めてる。




結婚式の招待状を送ってくるほどに
そのひとはあたしのことをかわいがっていた。
人生で初めて出来た女友達だ、と言われたこともあるし
妹みたいに思ってる、と言われたこともある。

でも、そのひとが思っているほどに
あたしは彼のことを慕っているわけでもなく
ただ目的はひとつだけで、
あなたに会いたかったわけでは当然無く、
あなたのすぐそばにいた、
あなたが昔好きだった、
でも思いが叶わなかった、
今では一人の妻として母として幸せな人生を送っている

いかせんの彼女を、監視していたかっただけ。



招待状にあった幸せそうに笑う写真を見ながら
あたしが思い出すことは、いかせんのことだけ。



招待状には
「欠席」にマルをうった。



結婚式に行って
いかせんに会えるのなら
迷うことも無く、行くのだけれど。






2004年10月11日(月)



 また、秋がくる。

突然ですが。
この春から、新社会人になりました。


あたしの住む街に、いかせんはもういません。


あの、人口10万人足らずの小さな街から
あたしはこの夏、家を出て

どこを歩いても、人が大量にいる
大きな街に越してきました。



今は、彼氏と暮らしてます。
やっぱりあたしにとって、彼氏は大切な人です。

一緒に暮らし始めて
嫌な部分もうんざりするくらい見えたけど
喧嘩ばかりだけど

でも、あの人があたしを想ってくれる気持ちは
この先変わらない、ってことだけはわかりました。

だからあたしも、
あの人と人生を生きようと思います。





いかせんと過ごした日々が嘘のように、
知らない人の中で過ごす日々が始まりました。


6年間ずっと、いかせんに守られてきたから
新しい人間関係を創っていくことに最初は戸惑って


でもようやく、
新しい自分の居場所みたいなものが見えてきました。





それでもやっぱり時々思うことがあって

それは、いかせんに会いたい、ということ。





会ったらどうなるのか見当もつかないけれど
決して街を歩いていたら偶然出会う、
なんてことのない遠い街にあたしは来てしまったから



だから、あえないけど

でも、会いたくなるときが、あります。




2004年09月22日(水)



 こうやっていきてく。


忙しさに、
ほんと、助けられたと思ってる。


ここ2週間。
けっこう寝ない日も続くくらい
やらなきゃいけないことが多すぎる状態で
他のこと、考えてる暇も余裕も無くて
だから考えずに済んだ。いかせんのこと。

それがありがたかった。すごく。
考えなければ辛くもなり得ないし、
これ以上好きになる理由もできない。


会いたいとどんなに思っても
会いに行く時間すらなかったら

会えないでしょ?物理的に。




考え出したらとまらなくなるから。
わかってたくせに、落ち込むから。
絶望感と期待感と繰り返す。

自分を追い込んで満足感にひたって
可哀想だと思うことで自分に酔って
最悪だってさらに自分追い込んで

自分をそうやって潰してく過程に
さらに酔ってる自分があほらしくってさ、

そんな暇もなくてよかったと思う。
忙しいって凄い。ほんと。





こやって会わないまま
遠い街に行っちゃえばいいんだよね。
うん。きっとそう。
そしたら忘れなきゃだめになるし。
うん。きっとそうだ。



2004年03月03日(水)



 あたまうった。。。

頭を打ちました。
酔ってて男友達に投げ飛ばされて
もうがーん、と。
頭から落ちてくのが自分でもわかり。
あ、やっちゃった、と。
漫画で星が飛ぶ感じ。
おかげで一晩たった今も頭痛です。大丈夫なんかな。
頭が非常にくらくら。首も痛いし。

なんかね。
ただの打撲なだけだと思うんだけど
(むしろそうじゃなかったら困るし)
微妙に不安で、
不安だから、いかせんに会いたくなった。

目つぶると頭がまだふわふわして
平衡感覚がよくわかんなくなるから
やっぱりどっかでちょっと不安で
不安だから、いかせんに会いたかった。


もしもしもし、万が一
あたしが明日入院でもしたら

いかせんにお見舞いに来て欲しいって
まだ思ってしまう。

倒れた時には隣りに居て欲しいし、
目覚める時には手を握っていて欲しいし、
死ぬ間際にはあのひとの顔を見てたい。




不安って気持ちが気付かせる
ほんとうの気持ち。

最後の最後に思い出す人は
思い出す顔は、いかせんの顔なのかな。
いかせんだったら、いいな。


あの世に持っていけたらいいのに。
記憶も想い出もぜんぶ。




頭は相変わらず痛いまんま。
芯の部分からずきずき止まんない。


怖いよって言う事もできず。
ほんとはこんなに不安なのに。


それだけの関係だと思い知るのは嫌。
それなら近づかない。
そんなこと考えると、ほらまた、ずきずきする。




2004年03月02日(火)



 頭の中をぐるぐるしたこと。

終わりました。卒論発表会。
この4年でいちばんの、ビッグイベント。

今までありがとうって
あたしを支えつづけてくれた全員の人に言いたい。






終わった後は当然打ち上げで
もう十二分に気心の知れた友達たちと
飲みながらあたしは今、
この日記を書いてる今思ってる。


ある男の子と話をしてて
すごく彼を子供だなあって感じた。
同時に自分がすごく男前な気がした。
周りの女の子にもそやって言われた。

あたしは男なら、
めちゃめちゃかっこいい男になってたと思う。

あたし、
いかせんの生き方真似してるんだ。



・・真似したいんだあ。



いかせんみたいな人になりたくて
いかせんみたいになろうと思って




あたしは結局ずっといかせんに縛られてる。
あたしが望んでなんだけど。さ。
だって、いかせんみたいになりたいんだもん。
しょうがないじゃん。


ああいう人に愛されることができないなら
せめてああいうひとに、なりたい。





いつでも思い出すのがあのひとのことだなんて。
発表を聞いてほしいのもほんとはあの人で
終わった後も思い出すひとで。




やだなあ。なんかやだ。


2004年03月01日(月)



 確かにあたしを創ったもの。

今、居る場所がすごく好き。

本当に気の置けない友達と、
何も気を遣うことなく一緒にいられる彼女たちと
怖くて厳しくて心の狭い先輩はいるけど
そういう共通の敵に向かってちょびっとだけ頑張ってる
そんな、今の時間がすごく好き。

あたしがあたしでいても
誰もあたしを嫌わないでいてくれる彼女たち。

先輩にどんなけ酷いこと言われても
また明日も頑張ろうって思えるのは
全然落ち込んだりしないのは

あなたたちの、おかげだよ。ありがとう。







いかせんに会えなくて
そこまで会いたいわけでもないのに

なぜか会いに行ってしまうあたしがいて

そういうのって、もう執着なんだけど
別に会いたいと思ってないのに
それでも会いに行っちゃうってのが
会えなくて落ち込んでる自分が
すごく自分に酔ってて嫌なんだけど


あたし、あれからいかせんに会ってない。


自分で偉いなーってほめてみたりして。
会いに行ったらまた長引くから。
風邪とおんなじ。ひき始めと、ひき終りが肝心。
油断したらまたすぐぶり返す。

あたしの風邪はもう始まっちゃったから
なんかわかんないけど唐突に
自分でも整理つける前にいきなし始まって
もう風邪は終わりかけ。

いま会いに行ったら
今度はただの風邪じゃすまなくなる。
超重症のインフルエンザみたいに。

5年も見てきたから
それくらいはちゃんと理解してる。
自分が、そういう性格なこと。

だから、会いにいかない。
ほんとはすっごく会いたいけど
でも我慢してる。そのほうが多分あたしにとっていい。

本当に風邪は終わりかけなのかわかんないけど
確かめにいくこともしない。



もういま、
誰よりも好きになって
あんなに会いたくなっちゃうとか
そんな辛いことしたくない。

もういま、
誰よりも好きになっちゃって
離れなきゃいけないのに、
そんな時にあんなに好きになるとか
いかせん一色になっちゃうとか

そんなことしたくないし
あたしにはそんな時間も、残ってない。



春からは、べつべつの街。
べつべつの場所と、べつべつの空。

もう会うこともきっとない。








忙しいってすごいことかもしれない。
いま、とにかく忙しいから
だから、いかせんのこと考えずにすむから。

きっと春からも忙しい。
そしたら考えずにすむ。



考えなければ、いつか忘れる。

いつか、想い出になる。そう思いたい。
だから、ぜんぶ封印していきてく。





だけど。

いまあたしが大好きなこの空間も
いまあたしが大好きなあたしの友達も
彼女たちとの時間も


いかせんに造られたあたしが造ってる。
あなたに出会わなかったら
あたし、こんな人間じゃなかったからきっと。


あなたに出会えなかったら
彼女たちの大切さに気付かなかったかもしれないし
今のこの時間の大切さにも
もしかしたら気が付かなかったかもしれないし

こんなに素直に笑えなかったかもしれない。





あなたに会えなくても大丈夫になった自分。
あなたがいなくても、笑えるようになった自分。

でもそんなあたしを造ったのは
確かにあなただったなんて

皮肉なようで
なんて素敵なんだろう。


一生縛られて生きていくようなものじゃない。
あなたの面影に。

考えただけでぞくぞくするよ。




2004年02月26日(木)
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