| 2005年05月12日(木) |
■(３)卍の術理考/立体知覚 |
■前回、仰向けに倒す実験法は「（卍の立体知覚を）体感するのに良いと思われます」と書きました。では、卍の立体知覚とはどういうことでしょう。
拳士にとっては容易ですね。表卍を頭の中に描いて下さい。通常は平面的に左回りをもって卍の動態をイメージします。
それを、奥行きを作って回せますか？ するとどうなるでしょう。解答例は自転車のペダルです。ペダルは卍の、この場合クランク形の立体回転なのです。
■ペダル漕ぎを正面から観察しますと、左足が最下段にある時は表卍形となっていて、右足が最下段になった時は裏卍形になっていることが分かります。
形としてはクランク形が二つ繋がって、真中の横線が軸となる訳です。表卍裏卍の無限的な躍動のようで、感動を覚えます。
正面(後面)、上部方向だと分かりますが、側面からでは分かりません。これは以前、書きたい放題/2003年09月30日で述べました“一円二直の法則”があるからです。
また、(１)で書いた「人体を側面から観察しますと、頭部と臀部でクランク形になっています」をさらに述べますと、臀部と足もクランク形になっています。
■この場合、ペダルのような同一形の繋がりではなく、異形の繋がりとなります。すなわち人体を右側面から観察しますと、頭部と腰部は裏卍形で、腰部と足は表卍形なのです。
しかしある条件を与えてやると、例えば当て身、圧法などで頭部を後屈させると、頭部と足でクランク形、この場合は表卍形に変化します。
条件作りは様々であり、各自考えて下さい。
■卍はインド文明を起源とするのでしょうか…。昔、ニューデリーの博物館の中に陳列されていたお皿＝土器に、花模様のような、卍の原型と思われる柄を見つけました。
彼等インド人はゼロを発見した民族です。それは数学、工学、土木の根本となった単位です。ところがこのゼロは空であり､極めて哲学的な概念である、となにかの本で読みました。
理数系と文科系、我々でいうなら相反する物の調和を何千年という時間から感じ取って､陰陽の卍としてシンボル化したのでしょう。
ですので、私は卍は哲学的な概念ばかりではなく、理数的な概念をも含んでいる、と考えるに到りました。
■以前、インド武術の調査を少林寺拳法連盟が行いましたが、インドレスリング＝クシュティの紹介は無かったような…。
録画した番組を観ると、「人体に在る、というか生じる様々な９０°の角度を駆使した力の伝達法」(書きたい放題2005年04月23日)を実現しているのは間違いないようです。実際、我が少林寺拳法の中にもあります。
とにかく、今「卍形」が面白いのです。
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【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読む場合は数日後にお願いします。
表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。いずれ、リニューアル？＝改訂して行きたいと考えています。★印なんか付けますか…。
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↓本稿に関連すると思われることを掲示板にも書きましたので、記録しておきます。「曼荼羅の視点」は非常にタイミングの良い番組放映でした。2005.5.23
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曼荼羅の視点 投稿者： あつみ♂ 投稿日： 5月19日(木)11時42分17秒
◇「失敗から学ぶ」(アバウトです)というＨＰが出来た、とＮＨＫテレビで放映されました。実はこのニュースはラジオが先で、その後(一日か二日後)、同じ解説委員コイデ氏による番組担当なのでした。←ラジオは情報が速いですね。
失敗＝単なる事故の報告書に止まらず、そこから教訓を得て、データベース化して行こうという試みのようで、すでに１．３００件以上の事故が登録されているようです。
◇非常に興味を覚えたのは、その視点が「曼荼羅の視点」ということです。「失敗の背景の背景を探る」。つまり立体的な視点を持って失敗の原因究明と教訓作りをする、ということです。
科学万能の現代に、突如「曼荼羅」が効能ある言葉となって現れるとは驚き！です。
曼荼羅の視点とは、教範にある卍の図がそうで、私が「書きたい放題」していることは的外れではないようです。さしずめ拳士なら「卍の視点」を持つことが大切なのです。
これを(胸から)取っちゃったんですからねー。
編集追加：解説者氏名は小出五郎氏。番組題名は「あすを読む/失敗の教訓を学ぶ」。五月十六日（月）放映でした。ラジオ放送との日時差は記憶が曖昧です。もしかしたら同日であったかもしれません…。
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皮肉にも… 投稿者： あつみ♂ 投稿日： 5月20日(金)10時45分5秒
◇考えてみれば、少林寺拳法の教義は密教にも通じるものがあります。教えを表した形＝法形、宇宙の実相を象徴している卍、不二一体観などなど、曼荼羅と共通する考え方です。
ですので今回の新マーク「そうえん」。多分これは偶然の一致と思うのですが、皮肉にも良い所をついたようです。なぜなら、真言宗Ｂ山派がすでに用いていたと言う意味で…。
したがって、新マークを「そうえん」（Ｂ山派は「輪違い」と読ませます）で行く、ということになると、少林寺拳法は（真言）密教と教義的に深い繋がりがあることを認めることになります。
ことは教義に関わる問題であり、書きたい放題に述べていますが、拳士にきちんと説明すべき、と考えます。
個人的には、密教の教義と共通点は深い、と考えています。
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教義論争？ 投稿者： あつみ♂ 投稿日： 5月21日(土)10時53分26秒
◇教範「力愛不二」の項、金剛界と胎臓界という語句は密教用語です。
胎臓界曼荼羅と金剛界曼荼羅は東西、南北の配置が正反対です。なので表卍と裏卍なのです。個人的には、両曼荼羅の関係＝不二一体を二つの円としたＢ山派もどうなのかなー、と思います…。←恐れ多いですね。
◇時間(過去、現在、未来)と空間の複雑なる縁起の関係を単純に円で表すのは、どうでしょう…。だから鎖状なのかな…。
森羅万象は「依って起こる」のが宇宙の法則なのであって、鎖状では宇宙のダイナミックな働きを表現できません。曼荼羅の図絵は、円状より角状の構図です。
卍が極まって「○」と円成するのですが、円は涅槃寂静を表す、と教範に書いてあります。つまり大統一の円ならば一つが正しい、と考えます。
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| 2005年05月06日(金) |
◆作山先生の論文掲載 |
【流気動：水になる、火になる、風になる】
ー武道から得た動きー 作山吉永
■１．武術から武道へ
敵と闘う技術である武術は、やがて武道へとその呼称が変化した。この呼称の変化は、日本人の武の技に対する考え方の大きな変化であると見ることができる。
道（どう）とは、行為の中に潜む修養性や教育性の概念であると言うことができよう。日本文化の特徴は、この『道』にあると言っても過言ではない。道の技芸は、書道、華道、茶道、そして剣道、弓道、柔道などの武道全般におよぶ。日本人は、技芸を行う行為そのものの中に精神修養の要素があることを見いだし、それを尊重したのである。
とくに武術は生死をかける技芸であるだけに、それを行う武士たちは身体と心が不可分の関係にあることを強く実感した。『身心一如』の自覚である。戦いの中では、恐れや戸惑い、躊躇など、わずかな心のゆらめきが命取りになる。心を平静に保つこと、換言すれば、無心になることが必須なのである。
一方、武士たちの台頭と期を同じくしてわが国に伝来した禅は、精神の統一、平定を目指す心法であるが故に、そのような心の在り方を求めていた武士たちに受け入れられていった。
将軍家指南役として、徳川家康、秀忠、家光の三代に仕えた柳生宗矩 は、その著『兵法家伝書』で、「兵法（武術）と禅には共通するところが多い」と言っている。禅僧沢庵が宗矩に書き贈った『不動智神妙録』には、「心を一所に止めず、無心になることが肝要」と説かれている。沢庵から禅の教えを受けた宗矩は、後に『剣禅一致』を唱えるに至った。また幕末の剣客、山岡鉄舟 は、剣と参禅によって悟りを開き、名人の境に至ったことはよく知られている。
このように、武の技を行うことが心の修養になり得ることは、武を尊ぶ者には少なからず理解されていたが、それはまだ武のために心を鍛錬するという段階に止まっていた。
心のために武を修めるという考え方が一般的になったのは、明治時代になり嘉納治五郎先生 が柔道を創始したことに始まる。
嘉納先生は、東大の学生だった頃に柔術を学び、稽古の中に多くの教育的要素があることを発見した。経験的に上達していた技も、原理を発見しそれを応用することで格段の向上を見るようになった。そして嘉納先生の着眼の最も素晴らしいところは、格闘術であった柔術を教育手段として捉え直し、技や稽古法に改変を加えて新たな修行体系を編成したことである。嘉納先生はこの新しい修行体系を『柔道』と名づけた。人格陶冶や教育的意義を持つ『道』という名を付与することによって、従来の武術とは一線を画したのである。
武道は修養や教育を目的とするものであり、武の技はその手段であるとする嘉納先生の考えは画期的であった。明治の世になり剣術修行の意義が失われつつあった剣道界が嘉納先生の考えを採って、それまで剣術や撃剣と呼んでいたのを改め、『剣道』と称することとした。
以後、この考え方はまたたく間に日本の武術界全体に広まって、多くの武術が『道』を標榜するようになり、その総体としての武芸もいつしか『武道』と呼ばれるようになった。敵を殺傷する技術としての武術が、人格を磨き育てる教育手段としての『武道』に生まれ変わったのである。ここに至って初めて、武道は日本独特の文化になったと言えよう。
ただ残念なことに、現代の武道修行者の多くがいまだに競技で勝つことのみにとらわれて、先賢が唱道した精神修養や教育への配慮は置き去りにされているのが現状である。これはとくに戦後、多くの武道がスポーツ化の波に乗って競技偏重になり、その行き過ぎた結果として勝敗至上主義に陥ったためと言える。
■２．少林寺拳法
少林寺拳法は、宗道臣開祖によって、昭和２２年に日本で創始された最も新しい武道であり、人間完成のための行である。
開祖は、昭和の初期、十代後半から三十代中頃までを戦時中の中国で過ごした。その間、縁あって、各地に隠棲していた拳法の師父たちに出会い、絶えかかっていた各種の拳技を習得することができた。
やがて終戦により、日本に帰った開祖が見たものは、荒れ果てた国土と、心のすさんだ若者たちであった。祖国を復興するためには若者たちを教育しなければならないと考えた開祖は、ケンカに明け暮れる若者たちに、極限状態を生き抜いた自らの人生観を説き始めた。しかし説教だけでは誰も聞いてくれない。そんなある日、開祖は達磨の夢を見た。
その昔、仏法を伝えるためインドから中国に渡来した達磨は禅の始祖として、また拳法の祖として知られている。達磨は河南の少林寺に住み、静功である座禅と、動功である拳法を教えたと伝えられる。やがて少林寺は、拳法を以て天下に知られるようになったのである。
日本で武術が教育の手段として認識されだしたのは、やっと明治時代になってからだが、こと中国の少林寺においては、すでに１０００年以上も前に、仏弟子の修行法として行われていたことは驚嘆に値する。しかし長い年月を経る間に、拳法は少林寺から流出し、各地の様々な技とも混交して、しだいに精神修養的な目的は失われ、その技のみが重んじられるようになっていった。
従って開祖が学んだ技は、古の仏弟子たちが行っていたであろう精神修養のための拳であったとは思えない。しかしやがて開祖は、少林寺拳法を『覚道の行』と定義し、初めから人間完成の道として創始したのだった。ここに開祖の直覚と慧眼を感じ取ることが出来る。
「達磨がついてこいと言っている」。夢から覚めた開祖は、そう感じ取った。それに力を得た開祖は、人間を考察して最も深い教えであると確信していた釈尊の教えを思想的基盤に据え、自分が学んだ各種の拳技に創意工夫を加え、人間教育の手段としての指導体系を編成したのである。
開祖はこの新しい人間教育の体系に、達磨が住した少林寺の名を冠し、少林寺拳法 という名をつけた。１９４７年のことであった。
少林寺拳法の最も大きな特徴は、その修行体系に人間教育の教えが織り込まれていることである。
合掌で始まる少林寺拳法の稽古は、相手と共に向上するよう編成されている。強者は弱者を、上手は下手を導くような稽古方法である。これは少林寺拳法の基本思想、『自他共楽』の具現である。また武技として見ても、相手を殺したり傷つけたりするものではなく、襲いかかる相手を一時的に制圧するものになっている。
■３．現代における武の意義
武の技は手段である。使い方によって利器にも凶器にもなる。本来凶器であった武術を人間形成のための利器に変えたことは、武の進化と言ってよい。凶器が利器になるのは、それを行う者の心によってである。
従ってこれを学ぶときに最も大切なことは、相手を否定する心ではなく、相手と共に成長しようという心をもって行うことである。また、それを可能にするような修行体系が必要である。それこそが、他と共に生きる人間としての在り方であるからだ。
■４．流気動
武技には、その巧拙が生死に関わるために、多くの武術家たちが研究に研究を重ねて会得した独特の身体操作や鍛錬法、呼吸法、心法などがある。これらの『身心操作法』は、単なる攻防の技術に止まらず、日常を活力的に生きるのに有用な多くの身体技術や知恵を内包している。
筆者は少林寺拳法修行によって修得した身心技法の中から、その根幹となる動作と意識の用い方を数種類の基本動作にまとめ、現代人の身心活性化の方法として体系化した。そしてこれに『流気動』という名を付けた。
流気動には攻防の技は無い。少林寺拳法、あるいは他の武術や運動で行われる身体操作のエッセンスのみを取り出して身心の訓練法としたものである。
流気動は、もはや武術とは呼べないだろう。しかしそれは、武技や様々な運動の基礎になる身体操作を集約したものであるから、必要であればこれに攻防の技を付加して武技とすることも、また他の技術を加えてそれぞれの運動種目に役立てることもできるのである。
流気動は、いわば根本運動である。この運動だけでも身心の活性化に役立ち、また様々な身体運動にも応用できる。
以降、流気動で重要ないくつかの要素を紹介する。
(１)身心一如（身体と心について）
生きている人間の、身体と心はひとつである。身体だけが、あるいは心だけが独自に存在することはない。
身体と心は、生命活動の異なる形での現れである。肉体を動かしたとき、その行為は心の働きに影響を与え、また、何かを考え、あるいは感じたときに、それは肉体に何らかの影響を与える。こうして身体と心はたがいに影響し合いながら一個の人間を形成しているのだ。良い身体活動と良い想念を持つことは、健康上も、また人間形成の上でも、ちょうど車の両輪のように大切なことである。
(２)緊張(tension)とリラックス（緩和、relaxation）
緊張とリラックスを上手に使うことによって、身心のバランスを取ることができる。
身心は一如であるから、身体の緊張とリラックスはそのまま心の緊張とリラックスとなる。したがって、身体操作によって心のコントロールが可能になる。
(３)調息（呼吸）
呼吸は、自律神経系の支配下にありながら、運動神経系の支配も受ける特殊な身体活動である。
したがって、呼吸活動を通して、通常意志的には行えない自律神経系の活動に影響を与えることが可能になる。
『息』という字は、自らの心と書く。東洋では古くから、呼吸と心が密接につながっていることが知られていたのだ。
(４)丹田（中心感覚）
身体の重心は丹田にある。身体の動きは丹田から起こるのが自然で無理がない。ところが人は、緊張したり色々考えたりすると肩に力が入りやすい。肩に力が入ると、重心が上がって正確な動作がしづらくなることはよく知られている。
肩の力を抜き、腰、あるいは腰の中心である丹田から動くことを習慣化すれば、身体操作が自由で楽になり、また心の安定にも有用である。
(５)流気動の基礎的なレッスン
�．螢薀奪�ス法
�顱イ罎世佑襦箆咫⊃搬痢� �髻イ罎襪瓩襦淵掘璽Ε�ード／わかめ運動） �鵝ゴ兇玄茲襦淵掘璽Ε�ード・ペア）
�∋以�向の動き
�顱ズ険Α●髻チ宛紂●鵝イ佑犬�
�� 波の動き（動きの伝播）
�� 腰からの動き（腰とはどこか）
�ケ進睨 並�さばき）
�Φご�
�Дぅ泪献諭璽轡腑鵝愎紊砲覆襦�火になる、風になる』
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注：段落は本文通りではありません。また、本文には開祖、嘉納治五郎先生、山岡鉄舟の写真。作山先生の演武写真。ビデオから転写した流気動の写真が載っています。
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お知らせ 投稿者： あつみ♂ 投稿日： 5月 2日(月)17時57分45秒
◇作山先生がＭ学院大学で講演した『身体と文化/流気動・武道から得た動き』が他の講演内容共々、一冊の本(カルチュール第２号/明治学院大学教育センター付属研究所・編)として出版されました。
１．武術から武道へ
２．少林寺拳法
３．現代における武の意義
４．流気動
の各編からなる内容です。今朝、届いたので拝読させて頂きましたが、教育としての武道の意義を非常に分かりやすく端的に解説してある、と感じました。
許可を得て後、書きたい放題に全文を掲載したいと思います。
↑連休中でＰＣに触れず、掲載が遅れました…。
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