※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『親友かよ』“เพื่อน(ไม่)สนิท” 2025年3月紹介『おばあちゃんと僕の約束』などのタイの映 画会社GDH559による2023年製作の作品。なお本作は2024年の 第19回大阪アジアン映画祭で上映されて高評価を得た。 主人公は前の学校をある事情で退学させられ、恐らくは少し レヴェルの低い学校に転校してきた高校3年生男子。そして 教室で指示された席に座った主人公に隣の席の男子が親しげ に話し掛けてくるが、主人公は取り合わない。 そんな主人公は学業にも身が入らなかったが、父親からは大 学に行けなかったら家業を継げと厳命されてしまう。しかし ある日、先輩の大学生から映画製作で認められたら大学に無 試験で入れると聞かされる。 そんな中で隣席の男子が不慮の死を遂げ、遺品のタブレット で彼が懸賞に応募したエッセイを見付けた主人公はそれを映 画にすることを思いつく。それは親友に贈る作品として学校 側の許可も得られるが…。 元々亡くなった男子と親しかった女子から本当に親友だった かと問われ、それでも映画制作に拘った主人公に折れた彼女 と学校の機材を使えると知った映画オタクらが集まり、SF 的な要素も満載の撮影が開始される。 ところが撮影が進む中で、亡くなった男子に纏わるある秘密 が明らかになる。果たして映画は完成されるか…? 出演は、2024年4月紹介『ふたごのミーとユー―忘れられな い夏―』のアンソニー・ブイサレートとティティヤー・ジラ ポーンシン。それにTVドラマやCMで人気者となり本作が 映画デビューのピシットポン・エークポンピシット。 脚本と監督はミュージックヴィデオやCMで活躍し、本作が 初映画監督のアッター・ヘムワディー。また2018年6月17日 付題名紹介『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ ・プーンピリヤ監督が初プロデュースを手掛けている。 若者たちが映画製作に挑戦する作品は2011年6月紹介『スー パー8』や2022年12月紹介『Single 8』などいろいろあった が、本作は正にSNSの時代の作品というところかな。しか も映画製作+αの部分が実に巧みに作られている。 その一方で特に前半では映画に対するリスペクトが半端ない もので、それはもう僕らには嬉しくてたまらなくなるような 作品だった。それが一転後半ではSNS時代の陥穽のような 物も描かれ、これは本当に巧みな作品だ。 1991年生まれの監督に脱帽だった。 公開は6月13日より、東京地区は新宿シネマカリテ、渋谷シ ネクイント、池袋 HUMAXシネマ他にて全国順次ロードショウ となる。 なおこの紹介文は、配給会社インターフィルムの招待で試写 を観て投稿するものです。
| 2025年04月20日(日) |
囁きの河、「桐島です」 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『囁きの河』 2020年7月の熊本豪雨で壊滅的な被害を受けた人吉球磨地域 を舞台に、未だ災害の傷跡が残る中で制作された作品。 2020年10月、一人の男が母親の訃報を聞いて22年ぶりに人吉 に帰ってくる。しかし仮設住宅に暮らす実の息子は自分を置 いて出て行った男につらく当たる。男に出奔した理由は借金 だったというが…。 一方、男に訃報を送った地元旅館の主人は目の前で父親を豪 雨で失った痛手で、長く連れ添う妻にも心を開けなくなって いた。そんな妻は旅館の再開に奮闘していたのだが、その町 に行政から治水のための新たな計画が知らされる。 そして男の息子は、急流球磨川下りの船頭を目指して流れ着 いた船の修復に余念がなかったが、元々船頭だったらしい父 親が手を貸そうとしてもなかなか心を開かなかった。その中 で男は隣家の夫婦と共に農地の再開を目指す。 こんな物語ががれきに埋まった被災地を背景に繰り広げられ る。 出演は地元人吉市出身で1992年映画デビューの中原丈雄。息 子役に渡辺裕太。他に清水美沙、三浦浩一、元AKB48篠崎 彩奈、お笑い芸人のカジ、文芸坐出身の輝有子、寺田路恵。 さらに不破万作、宮崎美子らが脇を固めている。 日本のグリーンツーリズム運動のリーダー的存在とされる東 洋大学社会学部名誉教授・青木辰司氏がエグゼクティブプロ デューサーを務め、脚本と監督はNHK出身で朝ドラ『おし ん』などを手掛けた大木一史が担当している。 時折牙をむく自然と対峙する人間の営みを描いた物語で、正 にここで描かれるべき作品だったと言える。それは自然と折 り合いをつけることでもあり、それが急流下りの操船に苦難 する息子の姿で象徴的にも描かれる。 多分その辺は「おしん」にも繋がるテーマかも知れない。そ の辺を監督が巧みに描き切った作品とも言えそうだ。しかも それが災害の後でも緑豊かな自然と瓦礫に埋もれた耕作地と の対比でも描かれ、人の営みも描き出す。 いろいろな意味で大きなスケールの作品だった。 公開は6月27日から熊本県先行で上映され、東京地区は7月 11日より、池袋シネマ・ロサ他にて全国順次ロードショウと なる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
『「桐島です」』 2024年1月29日に神奈川県内の病院で死亡した桐島聡と名乗 る男の半生を、2022年7月紹介『夜明けまでバス停で』によ り国内各所の映画賞で監督賞、脚本賞など数々の賞に輝いた 高橋伴明監督、梶原阿貴脚本のコンビで描いたドラマ作品。 映画の開幕は1974年8月30日に起きた三菱重工爆破事件。当 時のニュース映像なども挿入されるこのシーンで、事件の主 謀は東アジア反日武装戦線「狼」だったが、この爆破で8人 の死者が出たことに桐島は衝撃を受ける。 そこで桐島は宇賀神寿一らと共にグループ「さそり」を結成 して東アジア反日武装戦線に合流するも、爆弾闘争では人的 被害が出ない場所やタイミングを狙っていたという。しかし 一連の事件によって桐島も指名手配となる。 こうして地下に潜ることになった霧島は偽名「内田洋」にて 神奈川県藤沢市内の工務店に勤務。そこで数10年を過ごして いた。その間には様々な出会いなどもあったが、身分を隠す 桐島に幸せが訪れることはなかった。 出演は、1人で20代から70歳で亡くなるまでを演じて見せた 2025年1月紹介『初級演技レッスン』などの毎熊克哉。他に 2024年6月紹介『心平、』などの奥野瑛太と2023年9月紹介 『春画先生』などの北香那。 さらに白川和子、下元史朗、甲本雅裕、高橋惠子らが脇を固 めている。 『夜明けまでバス停で』にも爆弾テロの話が出てきたが、同 作の公開は桐島発見の前。このどちらにも東アジア反日武装 戦線「狼」が出版した冊子「腹腹時計」が登場するが、これ は高橋監督には運命だったのかもしれない。 そんな本作で高橋監督はかなり桐島に傾倒しているようにも 見えるが、監督と同い年の自分には桐島のような行動を起こ せない今のネット依存症で言論だけが達者な若者への苛立ち のような物も感じてしまう。 それは多分70年安保時代への郷愁でもあるのだろう。あの時 代の若者は間違いなく今の時代より活力があって、そんな時 代を謳歌していた。そんな見果てぬ夢を見ているような作品 でもあった。 公開は7月4日より、東京地区は新宿武蔵野館、アップリン ク吉祥寺、MOVIX昭島他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
| 2025年04月13日(日) |
未完成の映画、テルマがゆく!、OKAは手ぶらでやってくる、WE LIVE IN TIMEこの時に生きて、摩文仁、ら・かんぱねら |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『未完成の映画』“一部未完成的电影” 2023年9月紹介『サタデー・フィクション』(2019年製作)な どのロウ・イエ監督が、COVID-19パンデミック時の映画事情 を描いた5年ぶりの作品。 主人公は映画監督。彼は10年前に資金難で頓挫した作品の製 作再開を目論んでいた。そこで10年前にシャットダウンした PCを再起動し、以前に撮影した映像の再確認を開始すると 共に出演者にも声を掛け始める。 ただしその作品はクィアがテーマのために完成しても中国国 内での上映はできないものだったが、監督の意思に賛同する スタッフ・キャストが集まり、武漢での撮影が再開される。 しかし撮影が終盤を迎えた2019年1月、事件が起きる。 それは最初、武漢の身分証明書を持つスタッフが、宿泊所の ホテルに入館を拒否されたことに始まり、その事態は瞬く間 に広がって行く。そしてホテル内でも罹患者が発生し、ホテ ル自体が隔離、パニックとなる。 そんな様子が、実際に当時撮影されたスマホの画面なども挿 入しながら、再現映像も含めてフェイクドキュメンタリーの ように展開されて行く。 出演はチン・ハオ、チー・シー、マオ・シャオルイ、ホアン ・シュエン、リャン・ミン、チャン・ソンウェン。他に撮影 監督のヅォン・ジェン、サウンドデザイナーのフー・カンら がスタッフと同時に演者としても登場する。 他にも編集担当、ヘアメイク担当、DITスーパーバイザー らもそのままの演者として登場し、映画撮影のドキュメンタ リーとしても通用するような作品だ。 因に本作は2024年のカンヌ国際映画祭にドラマ作品として特 別招待されたが、同映画祭のドキュメンタリー部門の作品と してもノミネートされたそうだ。まさにそういう評価の作品 と言える。 それにしても中国映画の抱える問題なども巧みに描かれた作 品だが、当時に起きたパンデミックの状況を忘れない、そし てそれを再確認する。そんな意味合いも含めた作品のように も思えた。 なお出演者のホアン・シュエン、リャン・ミンは10年前に頓 挫した作品の映像にも登場するがそれが2009年の『スプリン グ・フィーバー』。実は2人のシーンは上映版ではカットさ れており、ここでは貴重なシーンが見られるものだ。 公開は5月2日より、東京地区はアップリンク吉祥寺、角川 シネマ有楽町、池袋シネマ・ロサ、渋谷シネクイント他にて 全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アップリンクの招待で試写を観 て投稿するものです。
『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』“Thelma” 1929年生まれで撮影時に実際に93歳だった女優のジューン・ スキップ演じる高齢女性が、卑劣な犯罪の標的にされたこと から始まるアクション復讐劇。 主人公は高齢だが足腰も達者で、夫を亡くした2年前からは 一人住まいながらも平穏に暮らしていた。ただし近所に住む ニートの孫が時折見張りに来て、その孫と過ごす時間は楽し みでもあった。 ところがある日、その孫を自称する男からの電話が架かる。 そして事故を起こして収監され、緊急で1万ドルが必要と言 われ、娘に電話しても繋がらなかった主人公はやむなく現金 をかき集めて指定された住所に送ってしまう。 それはその直後にオレオレ詐欺と判るが、すでに封筒は配送 された後で、警察にもこの件は諦めるようにと言われてしま う。しかし諦めきれない主人公はある手段に打って出る。そ れは高齢者の仲間も巻き込んで…。 脚本と監督は、エディンバラ・フェスティヴァルで上演され た即興ミュージカルなどに出演し、本作が長編初監督となる ジョシュ・マーゴリン。因に脚本は監督の現在 103歳になる 祖母が巻き込まれた実話に基づくそうだ。 共演は2024年『グラディエーターII』などのフレッド・ヘッ キンジャー。1971年『黒いジャガー』などに主演し、本作が 遺作となったリチャード・ラウンドトゥリー。2023年12月紹 介『ボーはおそれている』などのパーカー・ポージー。 さらに2008年6月紹介『アイアンマン』などのクラーク・グ レック。そして1971年『時計じかけのオレンジ』などのマル カム・マクダウェルらが脇を固めている。さらにトム・クル ーズも…。 アメリカでオレオレ詐欺がどのくらい周知かは知らないが、 描かれる警察の態度などからは日本ほど問題視はされていな いのかな? 監督も自身の祖母が被害者になったからこれを 書いたと言っているから、認知度は低いのかもしれない。 実際に描かれる犯行もかなりいい加減で、これなら高齢女性 でも復讐できそうだが、その辺が映画と言える作品ではあり そうだ。日本の犯罪者に比べると微笑ましいのもこの作品の 良さと言える。 高齢者がなかなかのアクションを繰り広げるし、映画として は楽しめる作品だ。 公開は6月6日より、東京地区はTOHOシネマズシャンテ他に て全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社パルコ ユニバーサル映画の招 待で試写を観て投稿するものです。
『OKAは手ぶらでやってくる』 2022年に71歳で他界したOKAこと栗本英世氏。東南アジア を舞台に「ひとりNGO」とも称された活動家の足跡と業績 を描いたドキュメンタリー。 栗本氏は滋賀県出身。16歳で上京して寿司店で見習いとして 働き始めるも、その後は新聞奨学生として定時制高校に通い ながら福祉活動にも従事。さらにキリスト教にも帰依してい たようで、19歳の時にその伝で台湾に留学する。 しかし30歳で聖職を目指して東京の神学校に通い始めたもの の、35歳の時に卒業を目前にして故あって退学。台湾で学ん だ中国語を活かして中国を経て東南アジアに渡り、タイでは 人身売買などの被害者の救済活動を始める。 そしてラオスでの活動の後に46歳でカンボジアに入り、ポル ポト時代の負の遺産とも言える孤児たちの救済事業を開始。 地雷原の村に寺子屋形式の学校を開設。それは寺子屋16校、 先生 100人、生徒は5000人の規模にも及んでいるという。 そんな栗本氏の活動が生前元気なころに撮影された映像と、 寺子屋の建設と運営に関った元スタッフやその他の現地での 関係者、さらに日本での支援者らへのインタヴューと共に描 かれる。 監督は近畿圏を中心に民俗行事や芸能を記録してきた牧田敬 祐。その傍らで市民活動やNGOを支援する映像活動も続け ており、その一環として栗本氏の取材も行ってきた中で本作 が生まれたとのことだ。 また挿入歌を、栗本氏に共鳴するシンガーソングライターの 友部正人が手掛けている。 東南アジアでの学校建設の募金という話は今までにも聞いた ことがあるが、集められた資金を送っても現地では既存の学 校の傍に新校舎を建てるなど、本当に必要とされている場所 に資金が回ることは少ないと作中では語られていた。 まあそんなことだろうなあとは思っていたが、生前の栗本氏 なら確実に必要なところに役立ててくれる。そんな寄付先を もっと早く知りたかったとも思ったものだ。まあ故人の遺志 を継ぐ組織はあるのだろうが。 因に題名の「OKA」というのはカンボジアの言葉で「チャ ンス、機会」という意味。栗本氏は難民を訪ねる際にはお金 も薬も持たずに行くそうで、それはお金などを渡しても本当 の役には立たないからだという。 そんなところには「慈悲魔」という恐ろしい言葉もあるそう だ。そんな支援の難しさも教えてくれる作品だ。 公開は5月10日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国 順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ミカタ・エンタテインメントの 招待で試写を観て投稿するものです。
『WE LIVE IN TIMEこの時に生きて』“We Live in Time” 2017年12月17日付題名紹介『ベロニカとの記憶』などの劇作 家ニック・ペインの脚本を、2003年『ダブリン上等!』や、 2015年『ブルックリン』などのジョン・クローリー監督で映 画化した人間ドラマ。 登場するのは男女のカップル。女性は新進気鋭のシェフで男 性は前妻から離婚の書類を送られてきたばかり。そんな2人 が最悪の出会いをし、やがて愛を育み始める。ところが女性 に癌が発覚する。 それでも女性は子供を産んで健気に生き続けようとし、男性 はそんな彼女を精一杯に支援する。しかし彼女に世界一の料 理人を決めるコンテストへの出場が打診され、当然それは彼 女の命を縮めるものだったが…。 そんな物語が、経過時間をシャッフルして目くるめくように 展開されて行く。 出演は2019年9月15日付題名紹介『ファイティング・ファミ リー』などのフローレンス・ピューと、2010年10月紹介『ソ ーシャル・ネットワーク』などのアンドリュー・ガーフィー ルド。史上最高の恋愛映画がこの2人で演じられる。 時間軸をシャッフルするというと2007年1月紹介『バベル』 のアレハンドロ・コンザレス・イニャリトウ監督を思い出す が、イニャリトウが演出効果を高めるためにその手法を駆使 したのに対して、本作では別の意味合いが感じられる。 それは正に「走馬灯」の例えで、人は死の直前に「走馬灯」 のように過去の記憶が甦ると言われるが、その「走馬灯」を 僕らは観ているのではないか。本作を観終えてそんな思いが してきたものだ。 ただしこの「走馬灯」は1人のものではなく、複数の人物の もののようにも思えるが、それは恐らくこの2人を見守って きた神的な存在のものなのかな。そんな愛に満ちた記憶が描 かれた作品のようにも思えた。 しかもそれが観客にとっても混乱することなく、巧みに描き 切られている。これは見事な作品としか言いようのないもの だ。そしてそれによって最高の感動が描き尽くされている。 脚本家は劇作家だが、これは映画でしか描けない作品だ。 いやはや脱帽の作品だった。 公開は6月6日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を 観て投稿するものです。
『摩文仁 mabuni』 2012年7月紹介『歌えマチグヮー』などの新田義貴監督が、 沖縄本島南端に位置する沖縄戦の激戦地=摩文仁の丘に林立 する慰霊碑の意味について検証するドキュメンタリー。 太平洋戦争末期の沖縄戦では、米軍側は548000人の陣容で沖 縄本島を攻め、それを116400人余りの日本軍が迎え撃つ。そ して那覇に置かれた軍司令部を放棄した日本軍は本島南部の 摩文仁に移動する。 そこには先に戦禍を避けた沖縄住民の多くが避難しており、 その地になだれ込んだ日本軍は容赦なく沖縄の人々を戦禍に 巻き込んで行く。そして最終的に188000人余りの戦死者が出 たとされ、その内の122000人余りは沖縄の民間人だった。 そんな摩文仁の丘には戦後数多くの慰霊碑が建ち、その中で も丘の頂上に立つのは、軍司令官だった牛島中将を祀る「黎 明の塔」だという。そこには沖縄駐留自衛隊の将校が毎年の ように慰霊に訪れていた。 ただし牛島中将は徹底抗戦を指示しさらには沖縄の民間人に 集団自決を命じたまま自殺した張本人であり、死んでいなけ れば戦犯になったであろう人物に、自衛隊は慰霊を続けてい たというものだ。さすがに近年は中止しているようだが。 その一方で旧摩文仁村の米須には「魂魄の塔」が建つ。これ は戦後この地に放置されていた戦没者の遺骸を地元の人たち が拾い集め、骨塚のようにして祀った最初の慰霊碑ともされ るものだ。 そしてこの慰霊碑の前には、集団自決を辛くも逃れた老女性 が手向けの花を売る小さな花屋が営まれている。ここには遺 骨の戻らなかった沖縄住民の遺族が数多く訪れている。そん な沖縄の風景が描かれた作品だ。 映画には慰霊碑の前で花を売る大家初子、元沖縄県知事の大 田昌秀、旧軍人の近藤一、ひめゆり同窓生の翁長安子、牛島 司令官の孫の牛島貞満、住民を守れと打電して自決した太田 海軍司令官の孫の太田聡らの各氏が登場して想いを語る。 沖縄戦を扱ったドキュメンタリーもいろいろと見てきている が、観る度いろいろな側面が見られるのも問題の深さを感じ てしまうところだ。その問題が現代にも尾を引いていること も忘れてはいけない。 そんなことも思い知らされる作品だった。 公開は6月21日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ユーラシアビジョンの招待で試 写を観て投稿するものです。
『ら・かんぱねら』 佐賀県有明海の海苔漁師がフランツ・リストのピアノ曲“La Canpanella”を弾きたいと思い立ち、譜面も読めない素人が 独学でプロのピアニストでも難曲とされる曲の演奏を成し遂 げるまでを描いた実話に基づくとされる作品。 有明海の海苔漁は養殖を行うものだが、毎年抽選で決まる場 所の優劣や海上での日々の作業などが極めて過酷とされる。 主人公はそんな海苔漁を父親と2人でやってきたが、父親が 病で倒れ、負担が主人公に圧し掛かる。 そんな主人公が漁の合間に自宅でうたた寝をしていた時、ふ と耳にピアノの演奏が聞こえてくる。そして目を開けた主人 公が見たのは、フジコ・ヘミングが演奏する『ラ・カンパネ ラ』だった。そして主人公は自分も弾きたいと思い立つ。 しかし主人公は譜面も読めない。それでもネットで演奏する 指の動きの映像を見付け、それに合わせて指を動かし、正に 1小節ずつの亀の歩みのような時間を掛けた練習で難曲を克 服して行く。そこには様々な出会いや支援もあった。 出演は伊原剛志、南果歩、不破万作、緒形敦。他に枝元萌、 鹿毛喜季、川崎瑠奈、どぶろっく(江口直人、森慎太郎)、田 中がん。そして大空眞弓らが脇を固めている。 企画、製作、監督は横浜映画放送専門学院(現日本映画大学) の出身で2003年5月紹介『さよなら、クロ』や2017年12月紹 介『野球部員、演劇の舞台に立つ!』などの製作を手掛けて きた鈴木一美の監督デビュー作。 脚本は主にテレビでドラマやドキュメンタリーを手掛けてき た洞澤美恵子が担当している。 このピアノ曲には少し思い出があって、実は自分の娘が幼少 期にエレクトーンを習っていた時の昇級試験の課題曲がこの 曲だった。その時の自分は親としては何もしてやれなかった のだが、一緒に受験しいた子の親が真剣だった。 その子の課題曲はヘンリー・マンシーニの『ひまわり』で、 何とその親は小学生の娘に映画を見せたというのだ。そんな 幼い子供があの映画を観て何が判るのだろうかというのは疑 問だったが、演奏するのはそういうことだと思わされた。 そこで本作を観ていて、僕には主人公の演奏に対するモチベ ーションが理解できなかった。それはフジコ・ヘミングの演 奏に感動したからということになっているが、それだけでこ のモチベーションを保つことは可能だろうか。 もちろん本作は実話に基づいているものだからそうなのだろ うし、実話の人たちもそう語っているのだろうけど、自分が 観客として理解できなかったことも事実だ。ここにはひょっ とするともっと別のエピソードがあるのかもしれない。 そんなことも考えてしまう作品だった。 公開は九州などでは既に先行終了しており、東京地区は5月 9日より渋谷のユーロスペースにてロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社コチ・プラン・ピクチャーズの 招待で試写を観て投稿するものです。
| 2025年04月06日(日) |
くまをまつ、たべっ子どうぶつ THE MOVIE、雪解けのあと、リライト |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『くまをまつ』 助監督として今泉力哉監督作品や、2022年11月紹介『餓鬼が 笑う』などにも関ってきた滝野弘仁による初単独監督作品。 監督の出生地でもある石川県小松市を舞台に、少しファンタ スティックな要素もある物語が展開される。 主人公となるのは幼い少年と女性の脚本家。映画の巻頭では 少年が祖父の葬儀に参列している様子が描かれる。そして数 年後、少年は母親が海外出張に行った夏休みを祖父が遺した 家で脚本執筆中の女性と共に過ごすことになる。 その女性は父親の日記を基に映画の台本を書こうとしていた のだが、そこに記された文言に謎が生じる。その謎はある疑 念へと発展していったが…。一方、少年は女性から聞かされ た祖父の思い出によって不思議な世界に誘われる。 そんな物語が、小松市滝ヶ原町にある実際に監督の祖父の家 だったという古民家とその周囲の素晴らしい大自然、謎めい た石切り場の跡地などを巡って展開される。 出演は、2019年染谷将太の脚本監督主演の短編作品に共演し ている平野鈴と、5歳から広告、CM等に出演し今回が映画 初出演の渋谷いる太。他に中村映里子、大場みなみ、内田周 作、松浦りょう、竹内啓らが脇を固めている。 上では少しと書いたけれど、ファンタシーの要素は少年の絡 むシーンではかなり明確に描かれている。ただそれが現実な のか妄想なのかはあいまいにされていて、そのムードの作り 方はかなり巧みに感じられた。 それは例えばアンドレイ・タルコフスキー監督の1979年作品 『ストーカー』で少女の超能力がさりげなく描かれている感 覚にも似ていて、ファンタシーをこんな風に描ける監督が日 本にもいたのか…、という感動にもなった。 実は自分の孫が今年から小学生なので少年の祖父は自分ぐら いなのかなと思って親近感が湧いたが、実際には監督の祖父 の話なのでもう少し上の世代なのかな。戦中戦後の混乱期が 背景にある作品とも言えそうだ。 そんな時代背景が直接世相を描いているものではないけど、 ノスタルジーとはちょっと違うファンタスティックなムード を醸し出していた。これも良い感覚を味わえたものだ。こん な作品を作ってくれるならこれからも期待したいものだ。 公開は6月7日より、東京地区はポレポレ東中野他にて全国 順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社kine A houseの招待で試写を観 て投稿するものです。
『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』 1978年に発売開始され、現在は世界47カ国で販売されている というお子様向けのお菓子をモティーフに製造元ギンビス社 との協同で映画化したCGIアニメーション作品。 物語のコンセプトは宇宙から(?)の光線でお菓子が生物に変 身した世界。そしてお菓子と人間が一緒に暮らすスイーツラ ンドではたべっ子どうぶつのメムバーがアイドルグループを 結成して世界的な人気を博していた。 そんなグループが世界ツアーを成功させて帰還したとき、ス イーツランドはとんでもない事態に見舞われていた。それは 街がわたあめで覆われ、帰還を祝う式典に招かれたメムバー は仲間があめで固められているのを目撃する。 その元凶はキングゴットン。そいつはお菓子をわたあめだけ にして世界を征服することを目論んでいたのだ。しかも正体 を見破られたキングゴットンはたべっこどうぶつのメムバー にも刃を向ける。果たしてメムバーは世界を救えるか? 声の出演は、Travis Japanメンバーの松田元太。2023年の朝 ドラ『ブギウギ』などの水上恒司。2025年後期の朝ドラ『ば けばけ』でヒロインを務める高石あかり。そして漫才コンビ ・オリエンタルラジオの藤森慎吾。 さらに蒼井翔太、小澤亜李、水瀬いのり、東山奈央、立石文 彦、間宮くるみ、大野りりあな、関智一、大塚明夫、大塚芳 忠、速水奨らの声優陣が脇を固めている。 脚本は2019年4月14日付題名紹介『劇場版パタリロ!』など の池田テツヒロ。監督はアヌシー国際アニメーション映画祭 などで評価され、1991年制作の短編作品がMoMAのコレクショ ンになっているという竹清仁。 また主題歌Would You Like One?を7人組のTravis Japanが 担当。さらにCGIアニメーションは、2020年2月23日付題 名紹介『ソニック・ザ・ムービー』などのマーザ・アニメー ションプラネットが手掛けている。 物語の骨子は非力なアイドルグループのメムバーが如何にし て巨悪と戦うか…、というところなのだけれど。そこにリー ダー論やいじめ問題みたいなものが巧みに織り込まれて、か なり見ごたえのある作品になっていた。 しかもそこに往年の名作映画やアンデルセン童話までもが加 えられて、これは完全に大人も楽しめる作品になっている。 最近の日本アニメーションでは「大人も楽しめる」は定番の 宣伝文句だが疑問に感じるものも多い中でこれは見事だ。 俳優名池田鉄洋でもある脚本家にはこれからも注目したい。 公開は5月1日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社クロックワークスの招待で試写 を観て投稿するものです。
『雪解けのあと』“雪水消融的季節” 2917年の早春に台湾人2人がヒマラヤ縦走中に遭難。47日後 に救助隊が発見するが1人はその3日前に亡くなっていたと いう出来事を描いた山岳ドキュメンタリー。 遭難したのは高校を卒業したばかりの若者。実は仲間はもう 1人いて、そのもう1人の女性は出発の直前に体調を崩して 同行を断念していた。そして遭難が発生し、残った女性は救 助を要請。それが2人を発見したのだが…。 亡くなった人物は遭難してから死ぬまでに彼女に向けての想 いを綴った数百ページに及ぶノートを残しており、その遺稿 は出版されて7刷を超え、2020年の台湾文学賞で金賞を受賞 するなど高く評価されたという。 そしてその状況を踏まえて、残った彼女は自らの監督で本作 を制作するに至ったのだが、そこにもまた紆余曲折があった ものだ。 監督は国立台湾大学で歴史学の学士号を取得したというルオ ・イシャン。大学生時代からフリーランスでライター、映画 評論家としても活動していたという女性の初長編ドキュメン タリー作品となる。 因に本作は、最初は2018年に短編ヴァージョンが制作され、 その後はCOVID-19の影響などで中断していたものの2023年の 山形ドキュメンタリー道場に監督が参加、その際に河�鹹照� 監督らの指導を受けて長編版の完成に導かれたそうだ。 ただまあ最初に山岳ドキュメンタリーとは書いたものの、内 容的にはそれのみが描かれたものではなく、登場人物や監督 自身の問題なども含めて思っていたのとは違った展開が繰り 広げられる。 それがトランスジェンダーなど正しく現代を象徴するような 方向性に進んで行くもので、それは高く評価できるものにも なっているし、実際にその方面での映画賞ノミネートなども 果たしているものだ。 実は僕はそういった背景を解らず観ていたので少し混乱した が、その点の理解が深まれば見事な作品ということができる だろう。 公開は6月14日より、東京地区は渋谷のユーロスペース他に て全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社テレザの招待で試写を観て投稿 するものです。 またテレザでは、今後も山形ドキュメンタリー道場関連の作 品を配給上映してくれるようだ。
『リライト』 ハヤカワ文庫JAで刊行されている法条遥の原作を、2018年 5月13日付題名紹介『君が君で君だ』などの松居大悟監督、 2005年『サマータイムマシン・ブルース』などの上田誠脚本 で映画化したSF作品。 舞台は2009年の尾道。高校3年生の主人公のクラスに謎の転 校生がやってくる。その転校生はある小説が切っ掛けその時 代に憧れ、タイムリープでやってきた未来人だった。そして その小説を書くのは君だと言い渡される。 しかもある事情から未来を覗くことになった主人公は転校生 から渡された薬を使って10年後に赴き、将来書く作品のタイ トルだけ教えられるが…。それから10年後、その小説を上梓 して実家で待つ主人公の前に過去の自分は現れなかった。 果たして過去の自分に何が起きたのか、史上最悪とされるタ イムパラドックスが開幕する。 出演は2019年12月紹介『一度死んでみた』などの池田エライ ザ、舞台『Endless SHOCK』などの阿達慶、2024年10月紹介 『私にふさわしいホテル』などの橋本愛。 他に久保田紗友、倉悠貴、前田旺志郎、山谷花純。さらに長 田庄平、マキタスポーツ、町田マリー、津田寛治、尾美とし のり、石田ひかりらが脇を固めている。 実は原作は読んでいないのだが、今回ハヤカワ文庫では映画 からのノヴェライズ版も刊行されるとのことで、映画は原作 からは多少離れて描かれているようだ。それにしてもとんで もないタイムパラドックスでこれは見事だ。 上田誠の脚本は2005年作も見事だったが、タイムパラドック スに関しては自家薬籠中の物にしている感じもする。そこに SFファンなら思わずうなる擽りも鏤めているのだから、こ れは本物と言えるのだろう。 何しろ舞台が尾道という辺りからSFファンなら先は見えて いるように思えるのだが、そこからの展開がこちらの予想の 一歩も二歩も先を行っているもので、いやはや参りましたと いう感じになっている。 ただしちょっとマニアック過ぎるのが、SFファンとしては 嬉しい反面、心配にはなってしまうかな。杞憂であって欲し いとは思うのだが。ただ過去の人間が現代に現れてドタバタ を繰り広げるようなものとは一線を画した作品だ。 公開は6月13日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社バンダイナムコフィルムワーク スの招待で試写を観て投稿するものです。
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