| 2024年09月29日(日) |
カオルの葬式、ホワイトバードはじまりのワンダー、雨の中の慾情 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『カオルの葬式』 TBS傘下の木下プロダクションで数々のドラマ演出やプロ デュースを手掛け、監督した短編映画で内外17冠に輝いたと いう湯浅典子共同脚本・監督による葬儀がテーマの作品。 女性脚本家が亡くなり、その遺言書で10年前に離婚した元夫 が喪主を務めることになる。そして指定された岡山県の山奥 の寺にやってくるが…。そこには彼女が遺した女の子とマネ ージャー、業界の先輩や彼女の親友などが集まっていた。 そして地元の葬儀社と婦人会が取り仕切る葬儀が始まり、田 舎特有の荘厳な儀式が進められて行く。そんな中で主人公は 彼女との出会いや別れた理由などに想いを巡らせる。果たし て遺された子どもの父親は? 出演は主に舞台で活動している関幸治、浅草生まれロンドン 育ちで2013年『47 RONIN』に出ていたという一木香乃、それ に2019年7月28日付題名紹介『駅までの道をおしえて』など の新津ちせ。 さらに足立智充、田中モエ、滝沢めぐみ、川島潤哉、蔵本康 文、木村知貴、大岩主弥、錫木うり、黒沢あすか、原田大二 郎。また1000人を超えるオーディションで選ばれた地元岡山 の劇団員らが脇を固めている。 なお共同脚本には湯浅監督の短編作品にも協力の西貴人が名 を連ねている。 試写会で配られたプレス資料には『お葬式』『おくりびと』 の題名が掲げられていたが、1984年の伊丹十三監督作品は同 監督のマニュアル映画の走りな訳だし、2008年6月紹介の本 木雅弘主演作も主旨はちょっと違う気がする。 強いて言うなら2009年10月23日付「東京国際映画祭」で紹介 の『青い館』や、題名が出てこないが確か中国映画でもよく 似た葬儀を真正面から描いた作品があったと思う。どちらも 宗教などのしがらみが巧みに描かれていたものだ。 そんな作品だが本作では如何せん登場人物が多過ぎる。それ はまあ過去の話などが出て来て、そこはスクリーンサイズを 変えるなど分かりやすい配慮はあるのだが、それにしても過 去の話は必要だったのかな。 女性脚本家の人生を描きたかったなら他のやり方もあったと 思うが、葬儀のすったもんだとは全く脈絡のない話だし、そ の間を繋ぐ工夫がもう少し欲しかった気もしたものだ。ただ 吉田美和の唄を絡めた辺りはほろりとさせられたが。 公開は11月22日より、東京地区は新宿武蔵野館他にて全国順 次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ムービー・アクト・プロジェク トの招待で試写を観て投稿するものです。
『ホワイトバードはじまりのワンダー』“White Bird” 2018年3月紹介『ワンダー 君は太陽』の原作者R・J・パ ラシオがその成功を受けて発表したとされる作品。その映画 化に前作のプロデューサーらが再結集した。 登場するのは前作で苛める側だったという少年。彼はそのせ いで学校を退学処分になっているが、本人は別の理由で自主 退学したとして反省の色はあまり感じられないものだ。そん な少年が祖母の許にやってくる。 そんな少年を前にした祖母は、自分が若かった頃のある出来 事を語り始める。それは少女とポリオに罹患した少年の夢見 るような交流の物語だったが、その背景には重い歴史の事実 が横たわっていた。 出演は前作と同じ役を演じるブライス・カイザーと、オスカ ー女優のヘレン・ミレン。他に若手のアリエラ・グレイザー とオーランド・シュワート、ジェム・マシューズ。 さらにジリアン・アンダースン、イシャイ・ゴラン、オリビ ア・ロス、ジョー・ストーン=フューイングスらが脇を固め ている。 監督は、ドイツ生まれでスイス育ち、ニューヨーク大学映画 学科卒という2013年7月紹介『ワールド・ウォーZ』などの マーク・フォースターが担当した。 物語は原作の通りなのだろうけど、子供どうしの苛めとナチ スが行った国家犯罪とを一緒にすることには釈然としないも のを感じる。さらに被害者であるユダヤ人の国家が現在中東 で行っていることを重ねると、この映画自体が否定されてい るような感覚にも陥ったものだ。 正直に言って今回この記事を書くのにはかなり逡巡したが、 逆に今この時点でこれを発言しておく必要があると感じたの で執筆を決めた。それにしても最近このような作品が多いの も気になるところだ。 これが抑止にならず、後押しになっているのだとすれば恐ろ しいことだが、映画の主旨が抑止であることは間違いない。 ただそれでも曲解して後押しと考えてしまう連中がいること も事実と言える。 そんな連中が世界情勢を動かしているのだ。恐ろしい時代に なったものだ。 公開は12月6日より、全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を 観て投稿するものです。
『雨の中の慾情』 2004年2月紹介『リアリズムの宿』などのつげ義春の原作か ら、同作を映画化した山下敦弘監督や韓国ポン・ジュノ監督 の許で研鑽した片山慎三監督が脚本・映画化した作品。 映画のタイトルにもなっている原作は、1981年に絵コンテの まま発表されたというものだが、2024年にはヨーロッパ最大 の漫画祭において歴史に残すべき作品としての表彰の候補に も挙がったものだそうだ。 そんな原作は短編で、その全貌が本作ではプロローグとして 映像化されている。そしてそこから同時期に発表されたつげ の原作に基づく現実とも夢ともつかないシュルレアリスムの 物語が見事に展開されて行く。 そんな物語の骨子は、富裕層の住む北町と庶民が住む南町に 分割された社会が背景。そこで主人公は南町のアパートで漫 画の執筆に明け暮れているが、時折、大家の命令で友人の作 家と共に雑用に駆り出されてもいる。 そしてその過程では男女の出会いや別れ、そして友人の意外 な行動など、様々なエピソードが綴られて行く。そしてその 背景には重い現実も潜んでいる。そんな物語が多重構造の中 で巧みに描かれた作品だ。 出演は、2019年2月24日付題名紹介『さよならくちびる』な どの成田凌と2014年1月紹介『愛の渦』などの中村映里子。 それに2023年8月紹介『白鍵と黒鍵の間に』などの森田剛。 さらに足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐�癲�伊 島空。そして台湾で多くの作品に出演の李杏。1991年につげ 原作『無能の人』を監督した竹中直人らが脇を固めている。 第2次大戦後の闇市時代を思わせる街中のシーンは台湾で撮 影されたものだそうだが、その雰囲気には圧倒された。しか もそれに付随する豪邸のシーンなど、台湾での撮影にはかな りのアドバンテージがありそうだ。 まあ正直に言ってかなり複雑な展開の物語で、それらを説明 しようとするとネタバレにも繋がってしまうものだが。映画 の全体としては適度のスケール感などもバランスが良く、気 持ち良く観られる作品だった。 面白くて考えさせられ、これぞ映画という感じの作品でもあ る。 公開は11月29日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社カルチュア・パブリッシャーズ の招待で試写を観て投稿するものです。
| 2024年09月22日(日) |
ビートルジュースビートルジュース、ベルナデッド 最強のファーストレディ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ビートルジュースビートルジュース』 “Beetlejuice Beetlejuice” 1988年に公開されてティム・バートン監督の名前を一躍世界 に轟かせたホラーコメディの続編が35年ぶりに登場。しかも 監督は勿論、出演者や音楽も前作のままの本気の作品だ。 お騒がせ者のビートルジュースが暮らす死者の世界で大事件 が勃発。ビートルジュースの元妻で、死者の魂を吸い取り、 文字通りの無き者にする力を持った魔女ドロレスがビートル ジュースへの復讐の念に燃えて復活したのだ。 一方、35年前にビートルジュースと交流をもったリディアは 死者を見ることができる霊能者として成功。今やTV番組を 持つほどの人気者だった。しかしその能力を信じない一人娘 アストリッドとの関係は上手く行っていないようだ。 そんなこんなのハロウィーンの夜。とある事情で娘のアスト リッドが冥界に連れ去られてしまう。このためリディアはビ ートルジュースを呼び出して娘を取り戻そうとするのだが、 そこにドロレスも参戦してとんでもない騒動が巻き起こる。 出演はビートルジュース役のマイケル・キートン、35年ぶり に同じ役に挑んだウィノナ・ライダー、それにキャサリン・ オハラが前作から再登場。そこにバートン監督のNetflix 作 品で話題になったジェナ・オルテガが加わる。 さらにジャスティン・セロー、モニカ・ベルッチ、アーサー ・コンティ、ウィレム・デフォーらが脇を固めている。 原案と脚本は2011年6月紹介『アイ・アム・ナンバー4』な どのアルフレッド・ガフとマイルズ・ミラー。また原案には 2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのセス・グレ アム=スミスも名を連ねている。 さらに音楽は前作も手掛けたダニー・エルフマンが担当して いるものだ。 バートン監督はホラー映画に関してはかなりマニアックな人 で、以前は記者会見などにこちらもマニアックな質問を用意 して、僕が質問すると実に嬉しそうに答えを返してくれてい たが…。最後は通訳の誤訳にやられてしまった(怨)。 それはさて置き、本作はそんな監督の良くも悪しくもマニア 度満点の作品。観客としてはその流れに乗れるかどうかが勝 負と言えそうだ。なお個人的には前作の結末に少し違和感が あったが、今回その違和感が解消したことも嬉しかった。 公開は9月27日より全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ワーナーブラザース映画の招待 で試写を観て投稿するものです。 またこの作品の試写は8月中に行われたが、情報解禁の関係 で今回の投稿となりました。
『ベルナデッド 最強のファーストレディ』“Bernadette” フランスを代表する女優のカトリーヌ・ドヌーヴが、1995年 から2007年まで在任した第22代フランス大統領ジャック・シ ラクの妻を演じた2023年製作のフレンチコメディ。 映画では巻頭でナレーションに換えたコーラス団の歌声を使 って「フィクションを交えている」という但し書きが提示さ れる。でもフランス人ならどこまでが真実かなのは自明なの だろうし、正直すべて真実の可能性も高い。 因に映画が描くのはシラクが大統領だった12年間だが、時間 軸などはかなりいじられているようで、映画では後半に出て くるフランスワールドカップは1998年、最初の任期の3年目 に行われたものだ。 そして映画では、元々地方議会議員で政治感覚もある妻が大 統領になった夫から疎まれ続け、それに対して壮大な復讐を 遂げて行く様子が見事に描かれている。同時にそれは夫の人 気を支えるものでもあったが…。 共演は、2012年9月紹介『最初の人間』などのドゥニ・ポダ リデス、2012年3月紹介『ミッドナイト・イン・パリ』など のミシェル・ヴェイエルモーズ、2019年11月紹介『9人の翻 訳家 囚われたベストセラー』などのサラ・ジロドー。 脚本(共同)と監督は、テレビ出身で本作にて映画デビューの レア・ドムナックが務めている。 シラク大統領は親日家としても知られているが、その点に関 して触れられていないのは良かったのか悪かったのか。本作 の流れではワールドカップの下りなどを見ると幸いだったの かな。 とは言え映画の全体はかなりの揶揄というか皮肉にも満ちた もので、政治の裏側を描いている点ではかなり小気味よい作 品にもなっている。それをドヌーヴが気品を持って気持ちよ く演じているのも面白い作品だ。 しかも家族の問題まで曝け出して、それでもしっかりと家族 を守り通して行く姿には人間性の問題なども見事描き出して いる作品とも言えそうだ。その辺を歌声によるナレーション が巧みに描き込んでいる。 日本でもこんな風に夫の政治にしゃしゃり出ようとした総理 夫人がいたけれど、やり方というか上手さが違ったのだろう な。そんなところに彼我の国の政治レヴェルの違いも感じて しまった。 公開は11月8日より、東京地区は新宿ピカデリー、ヒューマ ントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ファインフィルムズの招待で試 写を観て投稿するものです。
| 2024年09月15日(日) |
トランスフォーマー/ONE、忘れない、パレスチナの子どもたちを、国境ナイトクルージング、火の華、フード・インク ポスト・コロナ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『トランスフォーマー/ONE』“Transformers One” 2011年7月『ダークサイド・ムーン』から2023年7月『ビー スト覚醒』まで紹介している日本製玩具を基に描かれた実写 の俳優と CGIキャラクターの共演によるシリーズから、今回 はその起源を描いたフルCGアニメーションによる作品。 過去の作品では地球を舞台に戦いを続けてきたオプティマス プライムとメガトロン。しかし故郷の惑星サイバトロンでは 同じ階級で暮らす親友同士だった。そんな2体がなぜ敵対す る関係になったのか? その経緯が解き明かされる。 舞台はエネルギー資源の枯渇した惑星サイバトロン。そこで 2体はエネルギーの原石を採掘する労働者。しかしオプティ マスはエネルギー資源を再興する失われた装置を探し出し、 惑星を元の姿に戻すことを夢見ていた。 そんな中で開催された観客熱狂のレースに2体は割り込みで 参戦するが、実はトランスフォームの能力を持たない2体に は勝ち目のないレースだった。ところが偶然の作用で2体は 目覚ましい活躍を示す。 その結果は…。しかしその中でオプティマスは失われた装置 の在りかに繋がる重大な情報を見つけ出す。こうして2体は 仲間と共にその在りかを目指すが、そこには彼らの社会を揺 るがす陰謀が潜んでいた。 そしてその陰謀に対抗して行く中で2体は、それぞれの方向 性の違いから袂を分かつことになってしまう。 声優はクリス・ヘムズワース、ブライアン・タイリー・ヘン リー、スカーレット・ヨハンソン、キーガン=マイクル・キ ー、スティーブ・ブシェーミ、ローレンス・フィッシュバー ン、ジョン・ハム。 日本語吹き替えは中村悠一、木村昴、吉岡里帆、木村良平、 玄田哲章、諏訪部順一、柚木涼香、稲田徹、佐藤せつじ、上 田耀司、星野貴紀、杉田智和らが務めている。 脚本は原案も提供した2018年『アントマン&ワスプ』などの アンドリュー・バレル&ガブリエル・フェラーリと、2021年 『ゴジラvsコング』などのエリック・ピアソン。 そして監督は2019年『トイ・ストーリー4』のジョッシュ・ クーリーが担当した。 物語は『トイ・ストーリー』を髣髴させるバディ物で、その 中に描かれるエピソードにはいろいろな作品へのオマージュ というか、良いとこ取りの若年層が喜びそうなシーンがてん こ盛りという感じの作品になっている。 とは言え突っ込みどころも満載で、例えばオプティマスやバ ンブルビーが、トランスフォームの過程でトラックや乗用車 になるのはご愛嬌? 確か前の作品では地球で見つけた事物 をスキャンして変身するという説明があったと思ったが…。 でもまあそんな枝葉末節のことは考えずに楽しめばよい作品 なのだろう。 公開は9月20日より、全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社東和ピクチャーズの招待で試写 を観て投稿するものです。 またこの作品の試写は2週前に行われたが、情報解禁の関係 で今回の投稿となりました。
『忘れない、パレスチナの子どもたちを』 “Eleven Days in May” 2021年5月の11日間。そこで行われたイスラエルによるガザ 空爆で犠牲になったパレスチナの子どもたち。その在りし日 の姿や遺族による追悼を記録したドキュメンタリー。 2021年5月7日に開始されたガザ空爆。映画の巻頭にはイス ラエル側が撮影したと思われる空爆の様子が提示されるが、 高層ビルが崩れ落ちる映像には9・11も思い出され、それを 今イスラエルが行っていることの矛盾も感じた。 そこからは空爆で犠牲になった子供たちの両親や兄弟姉妹た ちによる証言が綴られて行くが、そこには悔しさや虚しさな ど、哀しみに伴うあらゆる感情が表現されている感じもする ものだ。 そしてその証言に併せて、子供たちの在りし日の姿も紹介さ れる。そこでは夢や希望が語られ、また両親や兄弟姉妹への 想いも語られる。それが全て叶わなかったという現実を突き 付けられるものだ。 監督はパレスチナのムハンマド・サウワーフと、2011年2月 紹介『キラー・インサイド・ミー』などのマイクル・ウィン ターボトム。映画製作はニュースで状況を知ったウィンター ボトムがサウワーフに取材を依頼、送られてきた 100時間を 超える素材からウィンターボトムが編集したとのことだ。 また音楽を2019年5月紹介『荒野の誓い』などのマックス・ リヒターが手掛け、日本版のナレーションをミュージシャン の坂本美雨が担当している。 映画の中では2021年5月の空爆では少なくとも67人の子ども たちが亡くなったと紹介されるが、2023年10月7日に始まっ たイスラエルの攻撃では、2024年5月現在で15,000人の子供 の命が奪われ、その戦闘は今も続いているものだ。 イスラエルは病院や学校を攻撃する度にハマスの拠点だと主 張するが、本作を観ていると攻撃が無差別であることも明白 だし、正にイスラエルによるジェノサイドと言えるものだ。 つまりアウシュヴィッツの復讐をしているものだ。 しかもこれを世界中が座視し、さらにはアメリカおよびその 追随国はイスラエルを支援してさえいる。2021年の東京五輪 にも影を落としたユダヤ人が支配する世界の恐ろしさも感じ てしまう作品だった。 なお坂本美雨が担当する日本版のナレーションには疑義を唱 える人も居るかも知れないが、彼女は動物愛護や子どもの虐 待を無くす活動の発起者としても知られており、専門家では ないのでうまい訳ではないが心の籠った語りだった。 それに本作の場合は、遺族らの証言に吹き替えはできないも ので、字幕がかなり大量になっている。そこにさらにナレー ションの字幕まで挿入する余地はなかったとも言える。しか も日本版の制作に当っては本国から音響素材の提供も受けて 日本版のみ 5.1サラウンドの音響になっているそうだ。 そして本作の日本公開に当っては、配給会社から観客1人に 対して現金 100円をガザの子どもたちを支援する団体に寄付 することも表明されている。 公開は10月4日より、東京地区は kino cinéma新宿、アップ リンク吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アップリンクの招待で試写を観 て投稿するものです。
『国境ナイトクルージング』“燃冬” 2013年の『イロイロぬくもりの記憶』でカンヌ国際映画祭の カメラドール(新人監督賞)を受賞、さらに東京フィルメック スでは観客賞を受賞した中華系シンガポール人監督=アンソ ニー・チェンが初めて中国語で撮った作品。 物語の舞台は中国吉林省延辺朝鮮族自治州の首都延吉。北朝 鮮国境に位置する中国東北部辺境の町は、冬には最低気温が 零下20度を下回る極寒の場所だ。そしてそこには古くから朝 鮮族が居住し、異文化紹介の観光地にもなっている。 そんな場所で主人公は、観光客相手の1日観光を行うツアー ガイドの女性。彼女はある事情から実家を飛び出し、1人で 辺境の町で暮らしているが、そこには断ち切れない過去も存 在しているようだ。 そして彼女が案内するツアーに1人の男性客が乗り込んでく る。その男性は観光に興味があるようでもなく、何か別のも のを求めているような感じもした。ところがその男性がスマ ホを紛失したことから2人が接近する。 一方、彼女に想いを寄せる若者がいて、彼もまた故郷を飛び 出して親戚を頼ってその地にやってきたのだという。そんな 3人が巡り合い、極寒の辺境の町で普通ではない観光ツアー =クルージングを始めるが…。 出演は、2011年5月紹介『サンザシの樹の下で』でチャン・ イーモウ監督に見出されたチョウ・ドンユイ。因にアンソニ ー・チェン監督とは2度目のタッグだそうだ。 さらに2018年1月紹介『空海 KU-KAI 』などのリウ・ハオラ ン、2024年2月紹介『流転の地球』の1作目に出ていたとい うチュー・チューシアオが共演している。 撮影は現地で行われたようで、そこは2023年11月紹介『ビヨ ンド・ユートピア脱北』などでも写されていた場所と思われ るが、正しく表と裏なのかな。でもそんな表の街にも苦悩は あってそんな若者の想いが丁寧に描かれた作品だ。 ただ個人的には結末が暗示するものに承服しねる部分はある が、それを暗示に留めて前向きの希望を描いていることには 納得することにした。そんな若者の想いを雄大な自然が包み 込んでいる、そんな描き方の作品だ。 因に写されているのは長白山、韓国名の白頭山は大韓民国の 国歌にも歌われているものだが、実は中国領土のようで、そ の山頂にあるカルデラ湖=天池は世界最高度の湖だそうだ。 そんな大自然も観られる作品になっている。 公開は10月18日より、東京地区は新宿ピカデリー、ヒューマ ントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アルバトロス・フィルムの招待 で試写を観て投稿するものです。
『火の華』 2021年の長編デビュー作 『JOINT』で新藤兼人賞銀賞を獲得 した小島央大監督が、同作主演の山本一賢とプロデューサー 兼俳優のキム・チャンバと再結集して自衛隊による海外派遣 の闇を描いた作品。 2011年から2016年までアフリカの南スーダンで行われた自衛 隊による平和維持活動(PKO)。それは憲法9条の下、改正 自衛隊法に基づいて行われたもので、その活動範囲は非戦闘 地域に限られるとされていた。 しかし一度は隠蔽され、その後に開示された現地派遣部隊の 日報によれば、その中に戦闘という言葉は何度も出てきてい る。そこで隊員に死傷者は出ていないとされているが…。そ んな報道された事実を踏まえて描かれた物語だ。 主人公は南スーダンでPKO活動に従事する自衛隊の隊員。 そんな主人公が基地の外れで隊員が孤立したとの連絡でその 救援に向かう。そこには国内難民のテント村があり、その難 民も連れて帰還しようとするが。 そこに反政府軍の狙撃兵が現れ、先頭で両手を挙げていた自 衛隊員が銃撃を受け、主人公は相手の少年兵を撃った後、隊 長を残したまま辛くも脱出することになる。そして撃たれた 隊員は死亡してしまう。 ところが帰隊した主人公を待っていたのは隠蔽工作。そこで は隊員は交通事故で亡くなり、隊長は逃亡したとするものだ った。こんな重荷を背負った主人公は、自衛隊を辞め、火薬 を扱った経験を活かして花火師の門をたたく。 こうして華やかな花火師への道が拓かれるが、主人公の心の 傷は容易に癒えるものではなかった。 出演は、上記の2人に加えて2018年7月29日付題名紹介『純 平、考え直せ』などの柳ゆり菜、2023年10月紹介『笑いのカ イブツ』などの松角洋平。さらにダンカン、伊武雅刀らが脇 を固めている。 映画の後半ではかなり強烈なフィクションが展開され、それ はそれで面白いが。それに並行して新潟長岡の花火師が監修 した打ち上げ花火のリアルな製作課程も描かれ、それらが結 末で見事に収斂する。 その結末で、僕が観た上映では現地教師の英語の台詞に敢え て字幕が付けられていないと思ったが、聞き取り易いその英 語の台詞が監督らの期待する未来を見事に物語っている感じ がした。この結末は秀逸だ。 公開は今年12月より、東京地区はテアトル新宿、渋谷のユー ロスペース、さらにT・ジョイ長岡他にて全国ロードショウ となる。 なおこの紹介文は、配給会社アニモプロデュースの招待で試 写を観て投稿するものです。
『フード・インク ポスト・コロナ』“Food, Inc. 2” 2010年9月紹介『フード・インク』の続編。2009年製作の前 作から15年、スタッフが再結集してCOVID-19パンデミックを 経たアメリカの食物事情を改めて問うたドキュメンタリー。 前作ではドラマ化されたリチャード・リンクレイター監督の 『ファーストフード・ネイション』(2007年)でも描かれたよ うにハンバーガーやフライドチキンのようなファストフード チェーンを中心に、食品業界の問題点を提起していた。 そして監督らは前作で全てを描き切ったと思い、続編を作る 気はなかったそうだ。ところがパンデミックが起き、その際 に全米で食品が不足する事態が生じた。その原因を考察する 中で食品をめぐる新たな問題が見出された。 その一つは食品業界の寡占化。アメリカは本来事業の独占に は厳しい国だったはずだが、トランプが前の政権に就いてい た時、パンデミック下で食品業界に対して独占禁止法の緩和 が執行され、寡占化が進んだ。 その一方で、前作で指摘された糖分、塩分、脂質の取りすぎ による健康被害を上回る新たな過剰な添加物の問題が生じて いた。それは超加工食品=Ultra-processed foods (UPFs)と も呼ばれ、事業の寡占化がそれを増長した。 そんな新たな食品をめぐる問題点が本作では描かれる。 監督は前作を手掛けたロバート・ケナーと、前作ではプロデ ューサーだったメリッサ・ロブレロが共同監督として参加。 さらに前作にも関ったエリック・シュローサーとマイクル・ ポーランも共同プロデューサーとして参画している。 映画では上記の他に未来の食肉への展望なども語られるが、 この辺は確か前作でも取り上げられており、さらにそれが進 化した様子も紹介される。ただそれが前作と同様に視点を動 かしてしまうのは痛し痒しの感じも持つ。 とは言え今回は上記の2点が強烈で、観客としては充分な見 ごたえを感じた。しかもそれはシステムの輸出という側面も 持ち、日本を含む全世界がその危険に見舞われている。そん な恐ろしさも感じさせる作品だった。 前作も多方面に影響を及ぼしたが、本作もそれを上回る警鐘 となることを期待したい。 公開は12月6日より、東京地区は新宿シネマカリテ、ヒュー マントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他にて全国順 次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観 て投稿するものです。
| 2024年09月08日(日) |
ぴっぱらん!!、チネチッタで会いましょう、海の沈黙 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ぴっぱらん!! 비바람』 2009年9月紹介『ゼロ年代全景』など出演の俳優で、2022年 『北風アウトサイダー』にて監督デビューしている崔哲浩が 再度自らの出自に絡む物語を描いた作品。 監督自らが演じる主人公の要は祖父が創設した百鬼組の若き 組長。要は兄の峻、弟の湊と共に中学時代から百鬼三兄弟と 怖れられる存在だった。しかし祖父がヤクザの抗争で惨殺さ れ、復讐に向かった兄は返り討ちに遭ってしまう。 こんな経緯で組を引き継いだ要は、関東のヤクザ連合の一員 となって組を守ってきたが、祖父の遺志を継いで薬物には手 を出さないと誓ってきた要の方針が連合内に確執を呼び始め る。そこには政治家も絡んでいた。 出演は崔監督の他に、山口祥行、福士誠治がトリプル主演。 他に森本のぶ、中野マサアキ、許秀哲、上松大輔、玉木惣一 郎、新宮里奈、櫂作真帆、遠藤綱幸、幸将司、植松洋、ムン ス、奈良坂篤、原元太仁、マコト、玉木順一郎、深見亮介、 上久保慶子、夏井世以子、有希九美。 さらに並樹史朗、丈、趙博、西原亜希、木ノ本嶺浩、西田聖 志郎、永倉大輔、金守珍、津田寛治、渡辺哲、三浦浩一ら、 この手の作品では錚々たる顔ぶれが並んでいる。 自分が団塊世代の人間としては、パチンコ屋が韓国人という のは自明のことだったし、正直、実家の隣家はそういう方の 家でその家のお祖母ちゃんが作るキムチが美味しかったこと はよく覚えている。 従ってこの物語は有り得るだろうなという感覚は持っている ところだ。とは言うものの、映画の始めの方では朝鮮人同士 の繋がりみたいなものが標榜されるが、後半になるに連れて それが希薄になってしまうのは残念かな。 でもまあそんなこと関係なしの激しい抗争が描写されるもの で、その辺が好きな人にはたまらない作品と言うところなの だろう。そこに前回紹介の『対外秘』のような陰湿さがない ところは、監督らしさと言える。 後は映画の中で旭日旗が出て来たり、皇軍の軍歌が堂々と歌 われるのは監督の考え方なのかな。これでは韓国での上映は 難しくなってしまう感じもするが、敢えてそこを描くのも監 督の意気と感じた。 公開は11月1日より、東京地区はテアトル新宿、アップリン ク吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社渋谷プロダクションの招待で試 写を観て投稿するものです。
『チネチッタで会いましょう』“Il sol dell'avvenire” 2001年12月紹介『息子の部屋』でカンヌ国際映画祭の最優秀 作品賞(パルムドール)を受賞したナンニ・モレッティ監督に よる2023年の最新作。 物語の舞台はイタリア映画の中心地チネチッタ。世界最大級 ともされるそのスタジオで、1人の監督が新作の準備を進め ている。監督はそこまで5年おきに新作を発表していたが、 彼の頭の中にはアイデアが溢れ返っているそうだ。 そんな監督の傍にはプロデューサーでもある妻がいて、音楽 家の娘も彼の作品の作曲を手掛けるまでになっている。つま り彼の今までの監督人生は、順風満帆を絵にかいたようなも のだった。 ところが今回は、妻が売り出し中の若手監督のプロデュース も手掛けることになり、それが徐々に彼の作品に影を落とし 始める。しかも娘にも問題が発生し、遂には妻から離婚の話 まで飛び出してしまう。果たして彼の運命は…。 出演は、主人公を監督自身が演じる他に、監督の作品には常 連のマルゲリータ・ブイ、15年ぶりに登場のシルビオ・オル ランド、チェコスロヴァキア出身のバルボラ・ボブローバ、 さらにフランスからマチュー・アマルリックらが脇を固めて いる。 劇中で監督が撮っている作品は、1956年のイタリア共産党の 話。その伝で共産国ハンガリーのサーカス団を招請するが、 比較的自由が認められていた国家にソ連軍が侵攻し、母国を 愛する団員たちがモスクワへの抗議を開始してしまう。 この事態に板挟みになったイタリア共産党の苦悩を描く政治 的な物語のはずだったが…。出演するゾウの手配が上手く行 かなかったり、女優は勝手に恋愛沙汰を持ち込んだり、そこ に家庭内の問題も生じてしまうというものだ。 ここでこのハンガリーのサーカス団の話に何となく聞き覚え があって、そこは多分実話に基づいていると思うのだが、そ の原典が見つからなかった。でもそこを乗り越える主人公の 姿に映画を感じたものだ。 そしてその撮影がチネチッタで行われていて、そのステージ やバックステージが丁寧に描かれているのも素敵な作品だ。 因にモレッティ監督は2001年以降は5年おきに新作を発表し てきたが、本作は前作から3年目。これも面白い。 公開は11月22日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺他にて全国順次 ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社チャイルド・フィルムの招待で 試写を観て投稿するものです。
『海の沈黙』 テレビで『北の国から』や『やすらぎの郷』を手掛け、映画 でも1982年『駅/STATION』で日本アカデミー賞脚本賞を受賞 している脚本家・倉本聰が、1988年『海へ See you』以来の 映画脚本を手掛けた作品。 発端は権威のありそうな美術館での展覧会。そこで文科大臣 と共に作品を観ていた老画家が、自作と記された油絵の前で 足を止める。その絵は自分の代表作とされるものだが、そこ に飾られていたのは自分の筆のものではなかった。 そしてその場は黙ってやり過ごした老画家だったが、後日に 記者会見でその事実を暴露。そして関係者が自死する事態に 発展する。その状況に美術鑑定士などが動き出すが、老画家 の妻にはある確信があった。 出演は倉本聰作品には初挑戦という本木雅弘。他に小泉今日 子、清水美砂、仲村トオル、菅野恵、石坂浩二、萩原聖人、 村田雄浩、佐野史郎、田中健、三船美佳、津嘉山正種、中井 貴一。 監督は、2019年12月紹介『Fukushima 50』などの若松節朗が 務めている。 折しも徳島県の美術館などで西洋絵画の贋作問題が世間を騒 がしているところだが、元作者が亡くなっている場合はまだ しも、作者が存命中というのはかなり大胆な話になる。そし てそこにザ・人間ドラマが展開されるという作品だ。 それは骨太とかいうものではなくて、決してあるはずはない と思いながらもそのドラマに引き摺り込まれる。正に人間ド ラマの極致という感じの作品になっていた。いやはやこれが 匠の技なのだろう。 しかも物語のキーで大きなドラマがあったはずの過去の事件 は、台詞としては語られるが詳細は削除され、逆に現在進行 形のサブストーリーが巧みに物語を彩る。そんな展開にも酔 わされる感じがした。 そして最後の謎解きまで、見事に鼻づらを掴まれて引きずり 回されるような感覚の作品だった。 さらにそれを支える俳優陣。チャラチャラしたアイドル俳優 にはない、しっかりした演技がザ・人間ドラマをスクリーン に焼き付けてくれる。特に中井は、一方で『嘘八百』シリー ズを持ちながらの出演には興味を引かれた。 公開は11月22日より、全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ オの招待で試写を観て投稿するものです。
| 2024年09月01日(日) |
SPIDERスパイダー�畤�、香港、裏切られた約束、対外秘、拳と祈り−袴田巌の生涯− |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『SPIDERスパイダー�畤�』“Vermines” 本国公開では過去20年間でジャンル最高のヒットを記録した という2023年製作のフレンチホラー作品。 プロローグは中東と思しき砂漠。そこで回教ゲリラと思われ る男たちが灼熱の地に生息する蜘蛛を採集する。そこでは犠 牲も出るが、蜘蛛は外貨を得るためにプラスティックの箱に 入れてフランスへと密輸されたようだ。 そして映画の舞台はパリ郊外に建つ公共アパート。円形の外 観が特徴的なその建物には、移民や低所得者など下層階級の 人々が暮らしていた。そんな中で主人公のカレブは妹のマノ ンと2人暮らし、スニーカーの転売を生業としていた。 一方、カレブには爬虫類園を作るという子供の頃からの夢が あり、彼はスニーカーの元売りの店に在った蜘蛛の箱を買い 取るが…。実はその蜘蛛には、他の生物の体内に卵を産み付 ける習性と、環境に応じて巨大化する特徴があった。 果たしてカレブが持ち帰った蜘蛛は箱を抜け出し、アパート の住人を襲って一気に増殖を始める。そして変死体が発見さ れ、事態の分からない警察は建物を封鎖、住人を閉じ込める 作戦に出る。それは地獄の始まりだった。 脚本と監督は、2021年にYouTube に載せた短編が 100万回再 生を記録したというセヴァスチャン・ヴァニセックの長編デ ビュー作。本作ではシッチェス・カタロニア国際ファンタス ティック映画祭で審査員賞などを受賞している。 出演は、2023年『グランツーリスモ』などのテオ・クリステ ィーヌ、2022年フランス版『キャメラを止めるな!』などの フィネガン・オールドフィールド、テレビのコメディ番組で ホストを務めたこともあるというジェローム・ニール。 さらにパリの劇団やパリ郊外のアートスクールなどで俳優部 門に抜擢され、本作で映画デビューのリサ・ニャルコ、カン ヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『レ・ミレザブル』など のソフィア・ルサーフルらが共演している。 蜘蛛が題材の映画というと、2002年10月紹介『スパイダー・ パニック』なんていう珍品もあったが、その時にも書いたが 蜘蛛の恐怖は大きさより大量発生な訳で、その点で本作は巨 大化と言っても相応で、正に期待した作品だった。 しかも文字通りの蜘蛛の子を散らすシーンもあって、子供の 頃に実体験のある自分としては、ぞくぞくする気分も味わえ たものだ。正に蜘蛛を蜘蛛として描いた作品と言える。その 点では1991年『アラクノフォビア』に匹敵するかな。 公開は11月1日より、東京地区は新宿武蔵野館、ヒューマン トラストシネマ渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社アンプラグドの招待で試写を観 て投稿するものです。
『香港、裏切られた約束』“因為愛所以革命” 2021年にイギリスに渡り2024年に難民認定された1987年中国 福建生まれ、1歳から香港育ちというトウィンクル・ンアン 監督が2019年の香港を捉えたドキュメンタリー作品。 元々新人脚本家だったンアン監督は、アルバイトで貯めた金 でヴィデオカメラを買って2019年6月4日にビクトリアパー クで開かれた天安門事件の追悼集会に向かい、その道筋でも 多くのデモ隊に遭遇した監督は撮影を開始する。 しかしその時の監督自身はまだデモの真の意味合いが何処に あるかは解っていなかったし、デモ参加者の多くにも明確で はなかったようだ。しかしそこから始まる香港政府による弾 圧が多くを語り始める。 実際に外部にいる我々にとっては香港から亡命した人たちの 発言なども耳にする機会があったから、逆にそこに潜む問題 は明らかなのかもしれないが、報道制限が徹底された現地で は民衆が知らないことも多いのかもしれない。 そしてそんな真実に気付いた監督はデモ参加者と行動を共に し、香港の現実を記録し続ける。だがそれは多くの危険を伴 い、ぎりぎりの脱出劇や外国メディアとの接触による救援な ども受けることになって行く。 実は数行前では外部の人間の方が知っている事実などと書い たが、この後からは外部への報道も制限され、外部の人間が 知り得なかった香港の現実が描かれ始めるものだ。それらは 多くのデモ参加者へのインタヴューで描き尽くされる。 その悲惨な現状や官憲の横暴さなどは、見聞きした知識で知 る以上の戦慄するものだし、正直にはそこを追求し切れない 本作のもどかしさも感じてしまったものだ。いや正に地獄が そこにある感覚だった。 僕自身は70年安保闘争時代の大学生で、それはいくら反対し ても条約は自動延長されるという現実に対してただ虚しさだ けがある感覚だったが。この香港の現実も強大な敵に対して 何ができる? という感覚も持つ。 しかしこの映画を観た世界の世論が強大な敵を追い詰める。 そんな夢を見たくなるような感じもした。そんな世論が巻き 起こることも願いたいものだ。因に映画の登場する賛成派は 北京の雇われ者なんだろうな、そんな印象も持つ作品だ。 公開は東京地区では8月30日よりアップリンク吉祥寺にて、 関西地区は9月6日よりアップリンク京都にてロードショウ となる。 なおこの紹介文は、配給会社アップリンクの招待で試写を観 て投稿するものです。
『対外秘』“대외비” 1992年の釜山で行われた国政選挙を背景に、汚職にまみれ権 力闘争に明け暮れる男たちを描いて本国で初登場ナンバー1 ヒットを記録した韓国映画。 主人公は地元生まれで国政選挙に初挑戦を目指す男。地元の 人気は絶大で、後は与党の公認を得られれば当選確実の状況 だった。ところがその座が見も知らないパラシュート候補に 奪われる。 実はその裏には釜山で進められる再開発に絡む利権が動いて おり、そのフィクサーが自分の言いなりになる人間を公認の 座に押し込んだのだ。この事態に状況の分かる主人公は、再 開発に係る機密文書を使った逆転の策に出るが…。 フィクサー側はさらに悪辣な手段に打って出る。その結末や 如何に。 脚本と監督は、2020年5月紹介『悪人伝』のイ・ウォンテ。 出演は2019年5月紹介『工作 黒金星と呼ばれた男』などの チョ・ジヌンとイ・ソンミン。さらに『悪人伝』や本年7月 紹介『犯罪都市 PUNISHMENT』などのキム・ムヨル。 出演者の顔触れを見れば判る通りの悪い奴ばかりの映画で、 まあ政治を描けばこんなものだろうという感じではあるが、 日本と同じく韓国政界の実情も裏金や人脈にまみれているよ うだ。正に「政界アウトレイジ」。 映画の巻頭には登場する人物名などはフィクションと言う字 幕が出るが、時代も場所も特定されていれば韓国の人には実 際のところも透けて見えてくるのかな。日本映画にもこれく らいの作品は期待したいものだ。 もちろん日本映画でも『Village/ヴィレッジ』みたいな作品 はあったが、本作の凄いのはそこにしっかりと政治問題を提 起し、さらにエンターテインメントとしても十二分に仕上げ ていることだろう。 この辺は本当に韓国映画の素晴らしいところで、このような 政治意識は日本映画では大手はもちろん独立系でもなかなか 踏み込めないところのようだ。と言うか企画を立てても潰さ れるという声は聞いたことがある。 そんな韓国映画の実力が発揮された作品と言える。何しろエ ンターテインメントとして面白いし、政治問題も判りやすく 描かれている。見事な作品だ。 公開は11月15日より、東京地区はシネマート新宿、ヒューマ ントラストシネマ渋谷他にて全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を 観て投稿するものです。
『拳と祈り−袴田巌の生涯−』 2010年3月に高橋伴明監督『BOX 袴田事件 命とは』を紹 介している1966年に静岡県で起きた事件による死刑囚の姿を 追ったドキュメンタリー。 背景となる事件については2010年の映画で知っていたものだ が、そこから再審までに14年もの歳月が費やされた。ただし 再審は2014年に一度静岡地裁で認められたが、そこから検察 の抗告などで、さらに10年が費やされたものだ。 実際にはその間に高裁での再審取り消しなども挟むが、最終 的に最高裁が認めるものに何故にこのように抗うのか。日本 の裁判制度の矛盾も描かれている。因に海外では、検察側に 抗告を認めない国もあるようだ。 そんな中で2014年の判決で本人の釈放が認められており、本 作はそこから始まっている。ただし実際にはそれ以前から親 族、特にお姉さんとの接触は行われており、そこでの信頼関 係によって釈放直後からの撮影が可能になったものだ。 こうして収監から48年ぶりに解放された袴田巌氏の生活ぶり が描かれて行く。そこでは自分を神と呼ぶような異常性も垣 間見られるが、他の作品でも紹介されていた家の中を歩き回 る姿から、徐々に外出できるまでも描かれる。 そこには認知症と見られる症状もあって、それは長期の死刑 囚=いつ処刑の日が来るかわからない恐怖…なども原因かと も疑わせる。兎にも角にも、これが長く過酷な日々を送って きた人の姿だ。 そんな袴田氏の姿が正しく愛情をこめて描かれている。それ は長きに亙る取材での交流によるものかもしれないし、逆に 長きに亙る再審請求に対する司法への怒りの裏返しもあるの かもしれない。いずれにしても愛情のこもった作品だ。 監督・撮影・編集は山梨県出身の笠井千晶。2002年に静岡の テレビ局で報道記者となり、その2年目に袴田事件を知って 以来お姉さんとの交流を保ち、フリーランスとなってすでに 4本のTVドキュメンタリーも発表している。 本作はその劇場向け長編の第1作となる。つまりこれは監督 にとっても人生を捧げた作品と言えそうだ。 なお本作では、元プロボクサーだった袴田氏の姿にも焦点を 当てており、そこではほぼ同時期にアメリカで起きたプロボ クサーの殺人冤罪事件も紹介される。その取材記録やWBC からの名誉チャンピオンベルトなども貴重な情報だ。 なお再審公判は2024年9月26日となっており、映画の公開は それを見届けた後となる。 公開は10月19日より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて 全国順次ロードショウとなる。 この紹介文は、配給会社太秦の招待で試写を観て投稿するも のです。
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