井口健二のOn the Production
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2015年09月27日(日) MDGP 2015(ロシアン・スナイパー/タイガー・ハウス/ザ・ファントム/暴走車/悪魔は闇に蠢く/400デイズ)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ロシアン・スナイパー』“Незламна”
10月31日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷で開催
の「MDGP 2015」で上映されるウクライナ・ロシア合作
の作品。
プロローグは1947年。第2次大戦後のモスクワを訪問した前
アメリカ大統領の未亡人エレノワ・ルーズベルトは、ソ連邦
首脳との会談を差し置いて1人の女性との面会を熱望する。
それは戦時中に309人のナチスを射殺したという女性狙撃兵
との再会だった。
その狙撃兵の名前はリュドミラ・パブリチェンコ。1941年に
ナチスドイツによるソ連邦侵攻が始まった時、まだ大学生の
リュドミラは戯れで行った射撃で非凡な才能を認められ、戦
場に身を投じることになる。しかし派遣されたウクライナ戦
線で彼女は最大の激戦に巻き込まれる。
そして1942年、ソ連邦代表団の一員としてアメリカを訪れた
リュドミラは招かれたホワイトハウスでエレノワと出会う。
その訪米はルーズベルト大統領の再選に向けた運動の一環で
あったが、その中でリュドミラは堂々と自説を説き、その姿
にエレノワも関心を寄せて行く。
映画は、激戦が10ヶ月に及んだ1941年セヴァストポリ要塞の
攻防戦と、それに対比する平和な1942年のアメリカ国内の様
子が交互に描かれる。そして戦場のシーンでは激烈な戦闘の
様子と共に、リュドミラの恋心なども描いて行く。その2つ
のシーンの巧みな切り替えにも感銘を覚える作品だった。

出演は、リュドミラ役にユリア・ペレシドと、エレノア役は
イギリスのテレビで活動しているジョアン・ブラックハム。
他に2008年公開『ラフマニノフ ある愛の調べ』などのエブ
ゲニー・ツィガノフらが脇を固めている。実話に基づく脚本
と監督はセルゲイ・モクリツキーが担当した。
よく似た邦題では先に『アメリカン・スナイパー』が公開さ
れているものだが、イラク戦争を背景に戦争後遺症に苦しむ
狙撃兵を描いたクリント・イーストウッド監督の作品では、
結局は戦争英雄を称えることが目的であり、アメリカが行う
戦争を正義として賛美の映画でしかなかった。
それに対して本作は、確かに1943年にソ連邦英雄賞を授与さ
れた女性兵士を主人公にした作品ではあるが、映画の中で彼
女を英雄に祀り上げることもなく、むしろ彼女が1人の女性
として生きようとする姿を描くことで、反戦の思想も明確に
描かれる作品になっていた。
因に「MDGP」とは、「モースト・デンジャラス・シネマ
グランプリ」の略だそうだが、本作はアクション映画という
よりは女性の姿がしっかりと描かれた作品で、文芸作品とま
では言わないが、今回のシリーズの中では一味違った作品と
は言えそうだ。

公開は10月31日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

なお「MDGP 2015」では、『ロシアン・スナイパー』を
第1弾として全6作品が上映される。以下に第2弾以降の作
品も簡単に紹介しておこう。

『タイガー・ハウス』“Tiger House”
2017年に公開予定の“Pirates of the Caribbean: Dead Men
Tell No Tales”でヒロインを演じるカイヤ・スコデラリオ
と、10月公開『トランスポーター イグニション』で2代目
運び屋を襲名のエド・スクレインが共演するガールズ・アク
ション作品。
ヒロインの居る家に犯罪グループが押し入り、家人を人質に
現金の強奪が実行される。ところがその時ヒロインは2階の
部屋に隠れて犯罪者をやり過ごし、やがて反撃へと打って出
るが…。
ヒロインが一応アスリートという設定で、アクションもそれ
なりの納得ができるという展開。さらに終盤の物語には多少
の捻りも加えられている。ただそれがちょっと辻褄が合わな
いかな? でもまあB級のアクション映画としてはこんなこ
とでいいのだろう。
取り敢えず「モースト・デンジャラス」とは言える作品だ。

公開は11月7日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

『ザ・ファントム』“Охота за призраком”
2003年7月紹介『ターミネーター3』で女性型のターミネー
ターに扮したクリスタナ・ローケンが出演する近未来を背景
としたカザフスタン製作の作品。
物語の背景は、犯罪の増加に手を焼いた各国政府が自国民の
頭に位置表示チップを埋め込んでいる未来世界。そのファン
トムと呼ばれる装置は全世界に普及し、開発した会社は世界
の�癸唄覿箸箸覆辰討い襦�
しかしファントムにはいくつかの弊害も発生し、その存続を
巡る国際会議が開かれている最中、開発会社の本社がテロリ
ストに襲われる。しかも捕えた犯人にファントムの埋め込み
のなかったことが判明し、その重要性が謳われるが…。
裏でいろいろ陰謀も絡んでSF的には興味満載の作品だが、
如何せん上映時間91分には話を詰め込み過ぎ。展開もばたば
たで変だなと思ったら、今回の上映は国際版でオリジナルは
2時間の作品だった。アイデアは面白いので出来たら完全版
も観てみたいものだ。
なお主人公の名前がティムールというのは、カザフスタン出
身で2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのベクト
マンベトフ監督へのリスペクトなのかな?

公開は11月14日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

『暴走車 ランナウェイ・カー』“El desconocido”
最近秀作の多いスペイン製のサスペンス・アクション作品。
本作もヴェネツィア、サンセバスチャンなどの著名な映画祭
に正式招待されたようだ。
主人公は銀行支店長。ある朝、彼が通学の我が子2人を乗せ
て車を運転していると、突然携帯電話が鳴り始める。その電
話で彼は運転席の下に爆弾が仕掛けられ、降りようとすると
爆発すると知らされる。
そして犯人の要求は、警察には知らせないこと(知らせたら
即座に爆破する)と、多額の現金。しかも彼の目の前で通報
しようとした同僚が爆殺される。ところがその爆発で同乗の
息子が重傷を負ってしまい…。
犯人の要求や警察の対応を含めて判り易い内容の作品だが、
何と言うか全体の物語の展開が緩い。それは犯人側の性格付
けの曖昧さなどもあって、その辺で何となく共感を呼べない
作品だった。でも現実はこんなものかな?

公開は11月21日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

『悪魔は闇に蠢く』“맨홀”
日本文化排斥時代にリメイクされた『リング』や『黒い家』
では日本版より怖いと言えたコリアンホラー。その流れを受
け継ぐ2014年の作品。
物語の開幕はソウル市内でも繁華街を少し外れた夜の街路。
1人の少女が帰り道を急ぐ前と後で街灯が明滅する。そして
一瞬生じた暗闇の中で少女の姿が消える。そこにあったのは
下水道へと繋がるマンホールの口だった。
その街区ではすでに10人以上の行方不明者が報告されていた
が警察の動きは鈍い。そんな中で停職中の1人の刑事が事件
に興味を持つが…。ソウル市の地下に広がる下水道網を背景
に殺人鬼との対決が始まる。
出だしは1977年『サスペリア』に似たところもあって、中々
の雰囲気が醸し出されていた。しかも物語の主な背景となる
下水道網にはいろいろな仕掛けや罠もあったりしてヴァラエ
ティのある展開となっている。
ただ犯行を繰り返す犯人の意図があまり明確でなく、ここは
もう少し説明が欲しかったな? そこには失われた家族への
思いなどがあったはずで、それを描いたらもっと深い作品に
なったとも思え、勿体ない感じもした。

公開は11月28日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

『400デイズ』“400 Days”
2006年7月紹介『スーパーマン・リターンズ』でスーパーマ
ンを演じたブランドン・ラウスが主演する有人火星探査計画
を背景にしたサスペンス作品。
巻頭にはオバマ大統領の演説が引用され、2030年代に有人火
星探査を目指す計画が告げられる。そしてその計画に向けて
火星到達に必要な400日間を探査船を模して密閉された空間
で過ごす訓練が開始される。
ところが400日の期間も終盤を迎えたころ、突然外部との連
絡が途絶えてしまう。果たして施設の外では何が起きている
のか…。施設に閉じ込められた4人の男女に究極の判断が迫
られる。
この様な訓練というか実験は実際に行われているものだが、
本作の物語の後半にはちょっと『ミステリーゾーン』のよう
な雰囲気もあって、その辺は良いかなという感じがした。た
だ結末がこれではちょっとSFファンは納得できない。
もっと何かファンタスティックなエンディングがあったら、
これは面白い作品になったと思うのだが。本作の制作者には
その考えは無かったのかな? これはこれで現実的ではある
のだが…。何かもう一味欲しかった。

公開は12月5日より、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
にて上映される。

「MDGP 2015」として上映されるのは以上の6作品。最
初の1本も含めて、まあ広い範疇ではアクションと呼べるか
な。内容もヴァラエティに富んだものでいずれも楽しめた。
中でも1本目は絶対にお勧めだ。



2015年09月20日(日) サバイバー

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『サバイバー』“Survivor”
『バイオハザード』シリーズのミラ・ジョヴォヴィッチと、
『007』シリーズのピアース・ブロスナンが対決する国際
テロを背景としたアクション作品。
ミラが演じるのはロンドンの米国大使館に赴任したエリート
外交官。彼女の任務は申請された入国査証を審査してテロリ
ストの米国への侵入を阻止するというものだ。そして早速、
1人の医療関係者の申請に疑問を持つ。
そこで彼女はその医療関係者の背後関係を調査し始めるが、
その調査行為は英国への主権侵害として厳重に注意されてし
まう。それでも直属の上司の信頼を得て密かに調査を続行す
る彼女だったが…。
彼女の向かおうとした店で爆弾テロが起き、生存者プロトコ
ルに従って行動した彼女に爆弾テロの実行犯の濡れ衣が着せ
られる。それは“時計屋”と呼ばれる国際テロの陰の主謀者
が仕組んだ罠だった。
こうして米英両国から追われる身となった彼女は、それでも
国際テロを阻止しようとするのだが。彼女の後任によって査
証を発行されたテロリストは続々と米国に結集し、100万人
をターゲットにした大規模テロの刻限が迫る。

共演は、いずれも2013年4月紹介『エンド・オブ・ホワイト
ハウス』に出演のアンジェラ・バセット、ディラン・マクダ
ーモットとロバート・フォースター。それに2012年12月紹介
『クラウド・アトラス』などのジェイムズ・ダーシー。
監督は2012年9月紹介『推理作家ポー最後の5日間』などの
ジェームズ・マクティーグ、製作はマーティン・スコセッシ
の盟友で、12個のオスカーに輝くアーウィン・ウィンクラー
が担当している。
脚本はミステリー作家から転身のフィリップ・シェルビー。
来年公開予定の次回作にはジェイスン・ステイサム、ジェシ
カ・アルヴァ、トミー・リー・ジョーンズ、ミシェル・ヨー
が共演しているそうだ。
ミラの役柄が一介の女性外交官のはずなのに、後半では尋常
でないアクションを繰り広げるというのは、実はCIAとか
の設定があるのかな? その辺はいろいろ想像を広げる余地
がありそうだ。
それはともかく本作では、国際テロリストが仕掛けるテロの
仕組みがユニークで、もちろん実現はかなり困難な荒唐無稽
なものだが、これなら厳重な米国本土の防備も掻い潜れるの
かな? その辺は面白いと言える作品であった。

公開は10月17日から、東京は新宿バルト9ほか、全国ロード
ショウが予定されている。



2015年09月13日(日) アース・トゥ・エコー

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『アース・トゥ・エコー』“Earth to Echo”
『ジュラシック・パーク』のVFXチームが手掛けたという
映像が売り物のジュヴナイルSF作品。
登場するのは新興住宅地に住む男子小学生の3人組。しかし
突然、彼らの住む街のど真ん中を高速道路が通過することに
なり、彼らの内の2人は別の町に引っ越すことが決まってい
る。そんな最後の日の晩のこと…。
彼らの携帯電話に謎の画像が着信し、それは近くの砂漠の中
のある地点を示していた。そこで彼らは互いの家に泊まると
称して家を抜け出し、最後の夜の冒険に乗り出すが。それは
政府の陰謀も絡むとんでもない出来事だった。
実は彼らの住む住宅地の地下には巨大なUFOが存在してお
り、それが飛び立つと甚大な被害の恐れがある。そこで政府
は高速道路建設と偽って住民を追い出し、密かにUFOの乗
員とのコンタクトを目論んでいた。
しかしUFO側はそれを望まず、代わりに少年たちに救援を
求めたのだ。果たして巨大UFOは飛び立つことができるの
か? その影響は? 少年たちとさらにもう1人の少女も巻
き込んだ大冒険がスタートする。

出演は、9歳からキャリアを積みジェームズ・フランコ監督
作品などに出演しているというテオ・ハーム。2010年発表の
1stシングルがYouTubeで再生50万回を記録したというブライ
アン“アストロ”ブラッドリー。
2012年4月紹介『ザ・マペッツ』に出ていたというリース・
ハートウィッグ。それにテレビシリーズの『ザ・グレイズ』
などにゲスト出演しアパレルショップやデザイナーズブラン
ドとも契約しているというエラ・ワレステッド。
いずれも未来のハリウッドで活躍しそうな子役たちが揃って
いる。
監督は、2014年11月紹介『ミュータント・タートルズ』の次
回作にも抜擢が決まっているというデイヴ・グリーン。製作
を2000年公開『ペイ・フォワード 可能の王国』などのアン
ドリュー・パネイが担当している。
物語は『未知との遭遇』と『E.T.』の見事な融合という感
じのもの。そこに最新のCGI−VFXが絡むもので、特に
クライマックスのUFOの離陸シーンは、これはもう思わず
手で膝を打つ出来栄えになっている。
ただ物語の進め方がPOVというのはお手軽に過ぎる。これ
では全体が小さく纏まって物足りない感じがしてしまう。監
督が長編第1作なので仕方がないとは思うが、ちょっと小手
先に陥ったのは残念だ。

公開は10月24日から、全国ロードショウとなる。



2015年09月06日(日) CRASS:SEMI-DETACHED VIDEO COLLEGES 1978-84

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※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『CRASS:SEMI-DETACHED VIDEO COLLEGES 1978-84』
1977年から8年間だけ活動したイギリスのパンクバンドが、
ライヴの背景用に制作した映像のコレクション。当時VHS
でセルフリリースされたという作品集がDVDで日本初紹介
されることになり、サンプル版を鑑賞した。
収録されているのは5作品だが、その内の最大作“Yes Sir,
I WILL”のみがオリジナルの演奏とリミックスによる2つの
ヴァージョンで収められ、全体で107分に達する本格映画並
みの作品になっている。
その楽曲はアナーコ(無政府主義)と呼ばれる反体制的なも
ので、社会や風俗やあらゆるものに反抗的ないわゆる怒れる
若者たちといった感じの作品だ。その矛先は男女の関係から
反戦にまで向かっている。
実は最初にDVDだけ送られてきて、シャウトする歌詞はほ
とんど理解できなかったのだが、後から歌詞の対訳が届いて
それも把握できた。その内容は男女問題などは成程と頷かさ
れる一方で、反戦の部分は今こそ意味があると言える。
というのも彼らが活動した時期にイギリスはフォークランド
戦争を引き起こしており、その歌詞に歌い込まれている内容
は、今まさに日本が向おうとしている武力国家の姿を髣髴と
させるものなのだ。
そしてその背景の映像には、サッチャー、レーガンの演説の
映像と共に、非武装の市民が追い立てられる姿や、子供と思
われる遺体を無造作に放り投げて積み上げる映像などが繰り
返され、全体国家さながらの光景となっている。
この風景こそが、今の自民党政権が安保法制をその一歩目と
して思い焦がれている日本の近未来の姿だろう。そしてそれ
を止められるのは今しかないのだが…。それを止めようとい
う風潮も興らないのが現実と言える。
僕自身が70年安保世代の人間として、このような反抗精神の
末路の虚しさは痛いほど体感しているものだが、今こうして
これらの楽曲を聞いていると、止められなかったことの悔し
さが今更ながらに甦ってくる。
絶対に今度こそ止めて欲しい。そんな目的のためにも、この
DVDが今の時期に紹介されることに大きな期待を持つ。彼
らの意思を今こそ日本の若者に伝えることに意義を感じる。
こんなことを思わせる作品だ。

本DVDの発売は10月21日。英語・日本語歌詞ブックレット
付で価格4000円+税。発売元:キュリオスコープ。販売元:
ディスクユニオンでリリースされる。
なお、CRASSの関連では5月劇場公開された『Crass: There
Is No Authority But Yourself』というドキュメンタリーも
9月17日にDVDリリースされるようだ。


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井口健二