井口健二のOn the Production
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2014年04月27日(日) メガ・シャークVSメカ・シャーク

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『メガ・シャークVSメカ・シャーク』
            “Mega Shark vs. Mecha Shark”
アメリカのジャンル系映画会社The Asylum製作による2014年
3月全米公開の作品。
物語の幕開けはエジプトのアレクサンドリア港。地中海に臨
むナイル河口のその港で、旱魃対策のために曳航中の巨大な
氷山が突然崩壊。中からメガ・シャークが姿を現す。それは
過去2度にわたって人類を襲った恐怖の再来だった。
この事態に国連は直ちに世界の海域を封鎖。海運の止まった
世界経済は危機に瀕する。しかし国連も手を拱いているだけ
ではなく、メガ・シャークに対抗する武器を開発していた。
そして緊急事態に試運転もしないまま出動させるが…
Asylum社は、2009年に“Mega Shark vs. Giant Octopus”、
2011年にも“Mega Shark vs. Crocosaurus”という作品を発
表しており、本作はシリーズ第3弾となるようだ。因に前の
2作は本国でも直接DVD発売だったようで、本作は初めて
の劇場公開作品となっている。
その第3弾では、今までの作品では主に巨大生物と闘ってき
たらしい巨大ザメが、人類開発の機械ザメと戦う。しかもそ
のメカ・シャークは海洋学者が研究用に開発していた装置を
巨大化/強化したもの。それにはAIも装備されている。
そんな巨大メカ・シャークがメガ・シャークに挑むのだが、
そこには思いもよらない落とし穴が待ち構えていた。

出演は、今年の米アカデミー賞を賑した『アメリカン・ハッ
スル』にも出ていたエリザベス・ローム、テレビ『スターゲ
イト』などのクリストファー・ジャッジ。それに本シリーズ
の第1作ではヒロインを演じたデビー・ギブスン。
監督は、一時はILMで2011年7月紹介『ランゴ』のVFX
などを担当していたエミール・エドウィン・スミス(本作の
VFXも担当)。脚本は、2012年に“40 Days and Nights”
というSF映画を発表しているH・ペリー・ホートンが担当
している。
登場する男女のコンビがしっかり夫婦という設定で、そこに
ごちゃごちゃした男女関係などもなく、いたってシンプルな
物語が展開される。その辺は好感が持てるというか、観せた
いものを観せるというコンセプトはあるようだ。
それに氷山から怪獣が登場するというのは『キングコング対
ゴジラ』のゴジラ登場を髣髴とさせるし、それが曳航中とい
うのは、同作のコングの姿も思い出させる。そんなことで何
となくニヤニヤしてしまう作品でもあった。
サーヴィス精神が旺盛すぎて食傷気味になってしまうところ
もあるが、とにかくやりたい放題を一所懸命にやっていると
ころは認めたい作品になっていた。

公開は5月18日から。東京は新宿シネマカリテにて「カリテ
・ファンタスティック!シネマコレクション 2014」の
1本として上映される。



2014年04月20日(日) ネクスト・ゴール!

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
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『ネクスト・ゴール!
     世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦』
“Next Goal Wins”
2001年に行われたワールドカップ・オセアニア地区予選で、
オーストラリアから歴史的な大敗を喫したアメリカ領サモア
代表チームが、2013年の地区予選に挑むまでを描いたドキュ
メンタリー作品。
2001年の予選というのは、2002年日韓共催ワールドカップに
向けたもので、この予選では最終的にオーストラリアが優勝
したが、当時の(現在も)オセアニア地区の出場枠は0.5し
かなく、優勝のオーストラリアは南米予選第5位のウルグア
イに負けて本大会出場を逃している。
という地区予選で起きた珍事だが、実はオーストラリア国内
でのセントラル開催で行われたこの大会に、米領サモアの代
表は招集された選手の内でゴールキーパーのニッキー・サラ
プ以外がパスポートの問題で出場できず、メムバーは15歳の
選手2名を含む寄せ集めであったとも言われている。
しかし記録は事実であり、特に本来の代表選手で唯一出場し
たサラプの心には大きな屈辱の思いが残っていた。しかも米
領サモアは2009年には津波の災害を受け、低地にあったサッ
カーグラウンドも大きな被害を受けてしまう。そんな中から
2013年に向けたチームが始動する。
そこで採られた方策が、アメリカ本国のサッカー連盟への協
力要請。そして連盟が行った募集に応じたのがオランダ人の
監督だった。しかし優秀だが、昔気質で口の悪い監督は周囲
の反感を買ってしまう。しかも代表選手にはサモアの文化で
ある第三の性の選手もいて…
原題は、草サッカーなどで双方の得点が判らなくなった時に
「次に点を取った方が勝ちだよ」というローカルルールだそ
うで、公式試合でそれはあり得ないが、10年間で200点以上
の失点、全敗のチームにはそんな言葉も掛けたくなる心境は
理解できるものだ。
自分自身、長年なかなか勝てないサッカーチームを応援して
きた身としては、この代表チームの関係者の心情も判るし、
そこに微かな希望を描いて進んで行くチームの姿にも感動を
覚えるものだ。しかも昔気質の監督が采配で行う歴史的な事
など。ある種のサッカーの夢が語られた作品でもある。

監督は、元々大学時代にサッカーで知り合い、卒業後の再会
して物語性のあるコマーシャルの制作会社を立ち上げたとい
うマイク・ブレットとスティーヴ・ジェイミスンのコンビ。
ナイキやアディダスなどのコマーシャルも手掛け、ウェイン
・ルーニーやアンドレス・イエニスタ、アリエン・ロッベン
といった人気選手とも仕事をした2人が、長編デビュー作と
して完成させた作品だ。
公開は5月17日から、東京は角川シネマ新宿、大阪はシネ・
リーブル梅田ほか、全国順次ロードショウとなる。また同日
からオンデマンド配信もされるようだ。



2014年04月13日(日) 初夏のパン祭り、ゴール・オブ・ザ・デッド、メトロ42

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※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
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『影なきリベンジャー【極限探偵C+】』“C+侦探”
『冷血のレクイエム【極限探偵B+】』“B+侦探”
『コンスピレーター謀略【極限探偵A+】』“同謀”
『惨殺のサイケデリア』“追凶”
2007年5月紹介『ゴースト・ハウス』などのダニー&オキサ
イド・パン兄弟による4作品が「初夏のパン祭り」と称して
連続公開されることになり、纏めて観させてもらった。
上の3本はオキサイド監督による第1作が2007年、第2作が
2011年、第3作が去年発表された3部作で、1と2の間が少
し開いているが、タイトルはC→Bの順になっているから、
Aで終る3部作は予定通りだろう。
物語は、タイ・バンコクの中華街で開業している私立探偵が
主人公。彼は警察の捜査にも協力して実績も上げているが、
実は幼いころに両親が行方不明になり、探偵稼業の目的には
両親の行方を探すことも含まれている。
そんな主人公の許に1人の女性の捜索が依頼される。ところ
が彼が情報収集を開始すると、その行く先々で次々に遺体が
発見され…

出演は、3部作通じての主演が2010年4月紹介『殺人犯』な
どのアーロン・クォック。共演者として2013年12月紹介『大
捜査の女』などのリウ・カイチーらが登場する。
パン兄弟というと、2008年10月にハリウッド版リメイクを紹
介した2002年『the EYE』を始め、かなり鮮烈なホラー作品
で注目されるが、本作は比較的まともな探偵もの。
第1作では被害者の霊が主人公を導いているような描写があ
り、第2作では多重人格が描かれるが、いずれも添え物程度
で、全体的にはストレートなサスペンススリラーだ。
ただしその裏側には主人公の両親の行方など、巧みで壮大な
物語が構築されている。しかもその物語を5年以上も掛けて
じっくり織り上げているのだから、かなり入魂の作品とも言
えそうだ。
とは言うもののホラーファンには少し物足りないかな。特に
第1作では仄めかしがあるだけに、ちょっと残念感は生じて
しまった。そんな気持ちをなだめてくれる
4本目は、ダニー
監督による2012年の作品だ。
作品は英語題名が“Fairy Tale Killer”とされているもの
で、そのタイトルの通りのお伽噺に擬えた惨劇が描かれる。
ただそれだけだと類似の作品は見つかりそうな感じだが、そ
こに展開される主人公の立場を絡めた物語が絶妙だ。
僕自身、最初の内は少し引き気味だったが、クライマックス
では思はず手を打ってしまった。テーマ的にはオキサイドの
3部作に通じるところもあり、これは見事な4作品だと思わ
せる。

上映は、オキサイドの『C』が5月3日から、『B』が10日
から、その後にダニーの作品を17日から挟んで『A』が24日
から、東京はシネマート六本木で、それぞれ1週間ずつの連
続公開となる。

『ゴール・オブ・ザ・デッド』“Goal of the Dead”
今年のワールドカップを見込んでの作品かどうか判らないけ
ど、普段からサッカーを応援していると思わずニヤリとして
しまう今年発表のフランス映画。
主人公はトップリーグに所属するフォワードの選手。しかし
ベテランの彼が主戦力のチームはリーグ戦の戦績は芳しくな
いようだ。そんなチームがカップ戦のために主人公の故郷に
やってくる。それは主人公には凱旋のはずだが…。
どうやら主人公の地元チームからトップリーグのチームへの
移籍の際に確執があったらしく、地元では彼への風当たりが
かなり強い。その上、当時からの選手の1人は父親に謎の薬
品を投与されてモンスター化していた。
しかもそのモンスター化の症状には感染性があり、逃亡した
男がスタジアムに向かう道筋にモンスターが増殖。ついに男
がスタジアムに到着すると、地元のサポータまでもが次々に
感染してしまう。
果たして主人公はその窮地を脱出できるか? そこに主人公
の家族の問題なども絡んで、人情とゾンビのドラマが展開さ
れる。
物語の背景にあるのは、初めの方で「32強を決める」という
台詞があったから、日本で言えば天皇杯のようなプロ・アマ
の国中のチームが参加するトーナメント戦なのだろう。そこ
でトップリーグと対戦は地元チームには楽しみのはずだが、
過去に経緯があると簡単ではない。
特に下部リーグで活躍した選手が上位リーグに引き抜かれる
のは、主力を奪われる側には大きな痛手だ。それでも普通は
選手の将来を思って笑顔で送り出すものだが、トラブルがあ
ると難しい。
そんなこんなが色々描かれている作品で、これは僕が普段か
らサッカーを応援しているからかもしれないけれど、そんな
細かいことに一々反応できることがファン冥利と言いたくな
る作品だった。

出演は、2009年6月紹介『96時間』ではスタントマンを務
めていたというアルバン・ルノワールと、主にテレビシリー
ズで活躍中のシャーリー・ブルノー。他に大学で演技を勉強
中というティファニ・ダヴィオ、若手コメディアンのアメッ
ド・シラらが脇を固めている。
監督は、「死霊のキック・オフ大乱闘編」という副題の前半
戦が、2009年に『ザ・ホード‐死霊の大群‐』という作品を
発表しているバンジャマン・ロシェ。「地獄の感染ドリブル
編」という副題の後半戦が、数多くのCMを手掛けていると
いうティエリー・ポワロー。
状況説明などに追われる前半戦は多少もたつき感があるが、
後半戦はアクションも含めて観られる作品になっていた。前
半戦と後半戦を同じ上映時間にするという決め事があったの
かもしれないが、少し考えてしまうところもあった。
でもまあサッカーファンなら、それなりに楽しめる作品には
なっている。特に事情が判っているとニヤリの作品だ。

公開は5月3日から、東京はヒューマントラストシネマ渋谷
他で、全国順次上映となる。

『メトロ42』“Метро”
2012年8月紹介『リンカーン/秘密の書』などのティムール
・ベクマンベトフ監督を誕生させ、最近では2013年5月紹介
『オーガストウォーズ』なども生み出しているロシア映画界
が、ハリウッド映画のお家芸とも言えるパニック映画に挑戦
した作品。
主人公はは多忙な勤務医。そんな主人公は家庭サーヴィスも
ままならず、キャリアウーマンでもある妻は幼馴染のビジネ
スマンと不倫関係にある。しかし主人公はそれに気付いても
咎められないでいた。
そんな主人公が、その日は普段は車で送る娘の登校が妨害に
遭いやむなく娘と共に地下鉄に乗り込む。そしてその地下鉄
には、地上の渋滞を避けた不倫相手のビジネスマンも乗り込
んでいた。
一方、地下鉄の管理部ではベテランの職員が漏水に気付き、
その水の臭いから危険を感じるが、いつも酔っ払っている彼
の意見に耳を傾ける者はいなかった。そして満員の乗客を乗
せた地下鉄は走行を続けていたが…
主人公たちの乗った車両がモスクワ川の川底に差し掛かった
時、ついにトンネルが決壊し、濁流が路線に侵入してくる。
しかもモスクワの地下には冷戦時代に掘られた退避壕が縦横
に存在し、そのすべてに水没の危機が迫っていた。

主演は、今年はジュード・ロウとの共演作も控えているとい
うセルゲイ・プスケパリス。
その脇を、『オーガストウォーズ』にも出演のアナトーリー
・ベリィ、2012年2月紹介『裏切りのサーカス』COFCA賞を
受賞し、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』では敵役を演じ
ていたスヴェトラーナ・コドチェンコワらが固めている。
監督は、ドキュメンタリー出身でその作品では受賞歴もある
というアントン・メゲルディチェフによる劇映画は3作目の
ようだ。
主な舞台になるのはモスクワの地下鉄。路線網も広大で乗降
客も多く、ソ連時代に施された社会主義リアリズムの装飾で
世界一美しいとも言われた首都の足も、老朽化と整備の不足
でこんな危険に曝されているようだ。
もちろんこれはフィクションだが、この種のパニック映画で
は水の侵入速度など時間経過が問題になるところ、本作では
実に巧みな仕掛けでそれも納得できるように作られていた。
また登場人物の配置や小動物の活躍なども巧みな脚本だ。
それにしても、数年前に公開された日本のパニック映画でも
新橋の廃線駅が登場したが、どこの地下鉄にもこういう駅は
あるものなのかな? そんなものが描かれているのもマニア
には嬉しい作品だった。

公開は5月17日から。東京は新宿シネマカリテにて上映され
る。



2014年04月06日(日) her/世界でひとつの彼女、最近妹のようすがちょっとおかしいんだが、黒四角

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『her/世界でひとつの彼女』“her”
2009年11月紹介『かいじゅうたちのいるところ』などのスパ
イク・ジョーンズの製作・脚本・監督により、今年の米アカ
デミー賞でオリジナル脚本賞を受賞した作品。
主人公は、個人の手紙の代筆を行っている男性。代筆といっ
ても文章は音声入力で作成し、それをPCが筆記体の書体で
プリントアウトする仕組みだ。そのため主人公はいつもPC
に向かって独り言のように手紙文を語っている。
そんな主人公が自分のPC用に新開発のOSをインストール
する。その新OSはAIを持ち、音声対応でその応対の仕方
にはあたかも個性があるかようにプログラムされていた。し
かも学習能力もあるという。
その音声として女性の声を設定した主人公は、OSをガール
フレンドのように扱い、OSもあらゆる文献を検索しながら
その検索結果を主人公に提供するようになる。それは主人公
にとって正に適切なアドヴァイスばかりだった。
こうして聡明なパートナーを得た主人公は、代筆の仕事にも
磨きが掛かり、さらには友人にもOSをパートナーとして紹
介して「Wデート」を楽しむようにもなって行くのだが…。
このデートの様子は最高に美しかった。

主演は今年1月紹介『エヴァの告白』などのホアキン・フェ
ニックス。共演は、2013年5月紹介『オン・ザ・ロード』の
エイミー・アダムス、同7月紹介『サイド・エフェクト』の
ルーニー・マーラ、今年1月紹介『ラッシュ/プライドと友
情』のオリヴィア・ワイルド。
そして2013年2月紹介『ヒッチコック』などのスカーレット
・ヨハンソンが、声の出演だけで第8回ローマ国際映画祭の
主演女優賞を受賞している。
PC上のプログラムに恋をする話はSFとしては前からある
アイデアだと思うが、日常生活の中で唐突にPCに人格が現
れても元々がSFファンでもなければ、それを単純に受け入
れることは難しいと思われる。
その点で言うと、本作の描き方の巧さでは正に唸ってしまう
展開だった。特に主人公とPCの関係など導入の仕方に無理
がなく、またPCの性格が徐々に変化して行く様も見事に描
かれている。
しかもそれらの展開が、現実的な技術手段などの巧みな織り
込みと共に描かれており、夢と現実が見事に錯綜する展開と
なっている。そして結末には正にSFの王道とも言える結論
が用意されていた。
小説や映画も含めてSFでは数多くのAIが作品の中で描か
れてきたが、その中で本作は最も現実的で、且つ夢に溢れた
作品と言える。しかもその結論は最も観客の心にしみる作品
になっていた。

公開は6月28日から、全国ロードショウとなる。

『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』
現在も月刊誌に連載中で、すでに刊行された単行本6巻では
累計75万部を突破。テレビアニメやノヴェライズ本の展開も
進んでいるという松沢まり原作コミックスの映画化。
バツイチ連れ子同士の両親の再婚で、義理の兄妹になってし
まった男女の物語。しかも父親の転勤に母親が同行し、家に
は血の繋がらない兄妹だけが残されている。そんな妹を兄は
気遣うのだが、妹はツンツンしていて…
ところがそんな妹が突然別人のように兄を誘惑し始める。そ
の訳は、実は妹の前に幼い頃に兄に救われたという女性の霊
が現れ、その霊は妹の身体を奪って兄への思いを遂げようと
していたのだ。
その上で彼女は妹に貞操帯を着け、妹の心に反応するゲージ
が満タンになると外れる貞操帯が外れるごとに、黄泉の国に
続く階段を1段ずつ登れると説明。そして彼女が黄泉の国の
門を通れば妹は解放されるというのだが。

出演は、2004年から3年間NHK教育『天才テレビくん』の
「てれび戦士」として活躍していた橋本甜歌と、2008年7月
紹介『シャカリキ!』などの小林ユウキチ(裕吉)。それに
グラビアアイドルで本作が映画デビューの繭。
監督は、2013年8月に紹介の映画『スクールガール・コンプ
レックス』の基になった写真集を手掛けた青山裕企。共同監
督と脚本に化粧品CMなどを数多く手掛ける伊基公袁。また
共同脚本に2010年5月紹介『結び目』などの港岳彦が参加し
ている。
主演の橋本と繭は、映画がR15+指定を受けるほどのかなり
体当たりの演技で、その辺の意気込みは買えるところだ。海
外の作品では驚く程でもないし、最近の若い女性は日本人も
あまり気にしないのかもしれないが、ここは褒めたい。
お話的にはプレス資料にも<自称幽霊>とあって、そこには
多少捻りがある。それはアイデアとしては現代風でもあって
面白く考えられているのだが、それが黄泉の国との関連性で
言うと多少破綻しているかな。
前半ではそのことをかなり言っている割には、後半でそれに
関わる説明は消滅して、一体何だったのだろうという感じに
もなった。辻褄の合う説明もできると思うが、それを上手く
映画の中で表現できなかった?
でもその点がこの物語の真のテーマのような感じもするし、
ここはもう少し丁寧に描いて欲しかった。まあ普通の観客は
そんなことは気にもしないのだろうけど、ちゃんと描ければ
それなりに面白いものになったとも思えたところだ。
脚本と監督にはもう少し頑張って欲しかったかな。

公開は5月17日から、東京は池袋シネマロサ他で全国ロード
ショウとなる。

『黒四角』“�郢由僉�
一昨年の東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、
映画祭では『黒い四角』の題名で上映された作品が一般公開
されることになり、改めて行われた試写を鑑賞した。
物語の背景は現代の中国。作品の制作に行き詰まりを感じて
いるらしい芸術家が、ふと見上げた空に悠然と飛行する黒い
四角を目撃し、その後を追った芸術家は荒野に着地した黒四
角の物体を発見する。そして芸術家が近寄って行くと…
突然そこから全裸の男が出現する。その男には記憶がなく、
芸術家は男を保護して同業者の集うコミュニティーで生活が
始まる。そこに新たな芸術発信基地を模索する芸術家たちの
動きなども絡み、さらに時空を超えた物語が展開する。

監督・脚本・編集は、1999年製作『タイムレス・メロディ』
で釜山国際映画祭のグランプリを獲得している奥原浩志。た
だし本作のプロデューサーは中国の李鋭で、撮影スタッフの
多くも中国人が務める中国映画だ。
出演は、2008年『海猿』や2009年中国映画『南京!南京!』
などに出演し、日中で活動する中泉英雄と、同じく中国映画
で活動する鈴木美妃。それにオーディションで抜擢された陳
璽旭と丹紅。
この作品は、2012年10月28日付「東京国際映画祭」でも紹介
したが、実はその時には物語の意味がはっきり把握できてい
なかった。それは毎日4、5本の映画を見続ける映画祭では
状況的に厳しい面もあったものだ。
ただし、映像的には『2001年宇宙の旅』や『地球に落ちてき
た男』を想起させるものもあって、心に引っ掛かるところは
あったが、全体的には印象が散漫でそのまま記憶の中に埋も
れてしまう可能性もあった。
そんな作品を再見することができたもので、今回はプレス資
料もあって作品の理解も進められた。因に映画祭では資料も
公式プログラム程度で、正直に言って映画の理解を深められ
るものではない。
ということで改めて作品に対峙したが、今回のプレス資料な
どで監督の意図したところは理解は出来た。とは言えそれが
作品に反映されているかというと、多少おぼつかない印象に
はなってしまう。
確かに日中関係が難しい時に、日本人の側からすればこのよ
うな過去の思いが存在することは事実かもしれない。しかし
それを言っても今の中国人にそれが通じるかどうかは、本作
に中国での上映が許可されないことでも判るものだ。
監督の思いは理解できるが、それはあくまでも日本人の思い
であって中国人がそれを拒否することも理解しなければいけ
ない。その辺の感覚がこの作品には欠けている感じがした。
日本人には真剣な思いに見えるのだが。
これは2重の意味で、日本人が真剣に対峙しなければいけな
い作品だ。

公開は5月17日から、東京は新宿K's cinema他で、全国順次
ロードショウとなる。


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井口健二