井口健二のOn the Production
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2012年07月29日(日) 三大映画祭週間、やがて哀しき…、ひみつのアッコちゃん、カルロス、声をかくす人、ナナとカオル2、ふがいない僕は…+Time and Again

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『三大映画祭週間2012』
カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアとサン・セバスチャン映画
祭に出品された作品8本を揃えた企画上映会が、東京渋谷の
ヒューマントラストシネマで8月4日から3週間限定で開催
される。
その中から6作品を観せて貰ったので纏めて紹介しておく。
「ミヒャエル」
2011年のカンヌ・コンペティションに選出された作品で、昨
年の東京国際映画祭でも上映されたが、その際は見る機会が
なかった。
内容は、35歳の独身男性と彼が自宅に軟禁している10歳の少
年との交流を描いたもので、多少異常な感じもする作品だ。
しかし作品は何か不思議な雰囲気にも包まれていて、その辺
で映画祭の選出が叶ったものと思われる。

「我らの生活」
2010年カンヌで男優賞に輝いた作品。ローマ郊外の建設現場
で働く男性を主人公に、理不尽な世間の現状を描いてゆく。
物語自体はかなり悲惨なものだが、そこに見出される希望が
素敵に感じられる作品だった。

「フィッシュ・タンク」
2009年カンヌで審査員賞を受賞した作品。悲惨な環境の中で
も、真剣に生きていこうとする若い女性の姿を描いている。
最近こういう作品が多いが、これも映画が現実を写している
からなのだろう。そこに必死に希望を描いているのも、辛い
話なのかもしれない。
今年2月紹介『SHAME』などのマイクル
・ファスベンダーが共演している。
「俺の笛を聞け」
2010年ベルリンで銀熊賞を受賞した作品。少年刑務所に収監
されている少年を主人公に、これもまた理不尽な世間の仕打
ちが描かれてゆく。ただ本作の場合は主人公の行動にも問題
があるが、そうせざるを得ない心情も巧みに描かれていた。

「時の重なる女」
2009年ヴェネツィアで女優賞を受賞した作品。強盗団に襲わ
れて恋人を失い、自らも記憶を喪失した女性の物語。その記
憶が徐々に戻り始めるが、それは驚愕の真実を語り始める。
それなりにファンタスティックな展開もある作品だが、僕に
は結末が納得できなかった。

「ムースの隠遁」
2009年サン・セバスチャンで審査員賞受賞の作品。薬物依存
症の女性が、そのために恋人を失うが、彼は彼女の体に子供
を残していた。そして彼女は都会を離れ、隠遁生活を開始す
るが…。
フランソワ・オゾン監督の作品で、監督らしいムー
ドにも包まれた作品だった。
以上6作品の他にこの企画では、2008年カンヌ審査員賞受賞
「イル・ディーヴォ」と、2010年ヴェネツィア銀獅子賞受賞
「気狂いピエロの決闘」が公開される。いずれも映画ファン
なら見ておきたいと思う作品だ。

『やがて哀しき復讐者』“報應”
前回『コンシェンス/裏切りの炎』を紹介した「ニュー香港
ノワール・フェス」で上映される3作品の内の最後の1本。
2010年3月紹介『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』などで現
代香港ノワールの旗手ともされるジョニー・トー監督が製作
を務める作品。
物語の中心は不動産会社の社長。妻と死別し後妻を迎えるが
子供たちはそれに反発し、特に娘は父親に当てつけるような
放蕩生活を続けている。そんな娘が誘拐され、身代金の要求
が届く。しかし娘の狂言と断定した父親は警察にも届けず身
代金だけ用意する。
ところが事態は予想外の展開となり、その顛末に父親は真犯
人への復讐を誓う。そして腹心のボディガードの男と共に真
犯人の追求を始めた父親は、次第に一味の居場所を突き止め
て行くが…

出演は、2008年7月紹介『ハムナプトラ3』などのアンソニ
ー・ウォンと、2011年8月紹介『アクシデント』などのリッ
チー・レン。2人はトー監督の2006年作品『エグザイル』以
来の共演となるようだが、復讐に燃える社長と冷徹なボディ
ガードを息の合ったコンビで演じている。

監督は、トー監督の右腕として数多くの作品の助監督や編集
に携わってきたロー・ウィンチョン。また編集は『強奪のト
ライアングル』などのデヴィッド・リチャードスン、音楽は
『エグザイル』のガイ・ゼラファなどトー監督作品のチーム
が担当している。
この状況でこの展開というのは、まあ有りと言えば有りだと
は思うが、正しく邦題にある通りの「哀しき」物語で、その
シビアな展開には、何とも言えない空しさのようなものも感
じてしまった。それが今の時代に合っていると言われれば正
にその通りだろう。
以上で、今年の「ニュー香港ノワール・フェス」で上映され
る3作品は全て紹介したが、今回の3作品はいずれも主人公
が一般人であったり、警察関係者であるなど、いわゆる黒社
會の陰が見え隠れはするが、それ自体を描いたものではなか
った。これが香港の現状を反映したものなのかどうか、その
辺りにも興味を引かれた。

なお東京での上映は8月11日から9月6日まで、新宿武蔵野
館で連日3本が上映される。上映は各回入れ替え制だが、各
作品のポストカード付き前売鑑賞券は、3本纏めるとさらに
割引になるようだ。

『ひみつのアッコちゃん』
1962年に「りぼん」で連載開始された赤塚不二夫原作マンガ
の実写映画化。同原作からは過去に3度のテレビアニメ化が
あり、今回はその主題歌もフィーチャーした作品となってい
る。
主人公は小学生の女の子。しかし彼女は、呪文によって「な
りたいもの」に変身することのできる「魔法のコンパクト」
を鏡の精から託されていた。その魔法のコンパクトを使って
彼女は大人の世界に潜り込み、人々を幸せにするための大冒
険を繰り広げる。
その主人公が本作で潜入するのは化粧品会社。伝統はあるが
最近の業績は芳しくなく、怪しげな連中による乗っ取りも画
策されている会社を舞台に、小学生の知恵を活かした作戦が
展開される。
子供が大人に変身して、潰れかけた会社を子供のアイデアで
立て直すというお話では、トム・ハンクス主演、1988年『ビ
ッグ』なども思い浮かぶが、当然本作の原作はそれより古い
ものだ。
しかも本作では、そこに会社経営に関わる状況や株主対策、
それにさらなる陰謀なども絡んで、一筋縄では行かない作品
に仕上げられている。それが赤塚マンガかと言われると、多
少悩むところもあるが、現代の映画ということでは認められ
る作品になっていた。

出演は、綾瀬はるか、岡田将生。谷原章介、吹石一恵、塚地
武雅、大杉漣。さらにもたいまさこ、鹿賀丈史、香川照之ら
が脇を固めている。また小学生の主人公を、2008年2月紹介
『あの空をおぼえている』などの吉田里琴が演じていた。
小学生が変身した大人を演じる綾瀬のドジ振りが赤塚マンガ
らしいギャグを振りまくが、綾瀬は少し上擦った発声の台詞
回しで、なかなか巧みにこの役を演じていた。またその他の
変身した大人を演じる役者たちも上手くそれに合わせていた
ようだ。

脚本は、今年6月紹介『闇金ウシジマくん』では脚本・監督
も務めていた山口雅俊。監督は、昨年7月紹介『こちら葛飾
区亀有公演前派出所』の川村泰祐が担当した。
作品は、ギャグに頼ったお笑いではなく、社会的な要素も巧
みに取り入れた案外芯の通った内容に仕上がっていた。この
辺は、監督、脚本家の前作にも通じるところで、彼らには、
これからも注目したい。

『カルロス』“Carlos”
1994年に逮捕された伝説のテロリスト・カルロスの、1973年
から20年に及ぶ活動を描いた3部作、全5時間26分の作品。
ドラマの開幕は、1973年6月28日にパリで起きた親パレスチ
ナ・テロ組織「黒い九月」のリーダーの暗殺。それから程な
くしてカルロスはベイルートのPFLPに現れ、自ら欧州での戦
いに参加したいと申し出る。
こうしてパレスチナ開放を含む世界革命に身を投じたカルロ
スは、欧州での日本赤軍の活動を支援するなど、様々なテロ
活動を繰り返して行く。そしてその一方では実業家としての
隠蓑も持って、中東から欧州への武器の供給なども行う。
しかし世界は徐々に東西冷戦の解消へと向かい、やがてソ連
の後ろ楯を失ったカルロスはその活動の場を奪われて行く。
それでも最後まで夢は失わないカルロスだったが…
映画ではその第1部で日本赤軍の活動がいろいろと描かれ、
それは日本人の観客としては何か不思議な気分に襲われるも
のだ。それらは僕らの世代には間違いなく記憶に残っている
ものだが、果たして今の若い人たちにはどのように映るもの
なのだろうか。
そんな日本人にはちょっと意外な展開から始まる作品だが、
第2部、第3部と続いて行く中では、どちらかというとカル
ロスが歴史の流れの中に翻弄された哀れな男のようにも見え
る。その辺は意図的なものなのだろう。

出演は、2008年2月紹介『バンテージ・ポイント』や今年4
月紹介『タイタンの逆襲』などのエドガー・ラミレス。他は
主にヨーロッパ映画で活躍中の俳優たちが脇を固めている。
それにしてもこの時代の人々の生き生きとしていたこと。勿
論、テロは最悪の犯罪行為だが、この時代の政治家たちが人
命を尊重し、それによってまた政治が動いていた。そんなこ
とも理解できる作品だ。
それを、人の生命など歯牙にも掛けないブッシュが強引に終
わりにした。その恫喝姿勢が世界の活力を奪ったことも、こ
の映画は描いているようだ。因にカルロスはアメリカ人に対
する攻撃は行わなかったようで、このため合衆国からの訴追
はされていない。


『声をかくす人』“The Conspirator”
1865年の「リンカーン大統領暗殺事件」を題材にしたロバー
ト・レッドフォード監督による2011年作品。
大統領の暗殺が、俳優ジョン・ウィルクス・ブースによって
行われたことは知っていたが、襲撃が同時に3カ所で行われ
た共同謀議であり、共犯者の中に女性がいたことなどは全く
知らなかった。そんなアメリカ史の一面が描かれた作品。
そして主人公は、その女性メアリー・サラットの弁護人を務
めたフレデリック・エイケン。元北軍大佐だった弁護士エイ
ケンは、前司法長官で南部出身上院議員の跡を継ぐ形でその
裁判に関ることになる。しかしエイケン自身も、最初は彼女
を有罪と思っていたのだが…
南部出の未亡人で敬虔なクリスチャンでもあるサラットは、
2人の子供の養育のため下宿屋を営んでいた。その下宿屋に
ブースらが出入りし、そこで謀議が進められたことは確かな
ようだ。しかしそれを彼女が知っていたのか否か。その裁判
で彼女は身の潔白を主張した。
こうして裁判が進められる中、エイケンは徐々に彼女の無実
を信じるようになる。ところがリンカーンの側近だった陸軍
長官は、犯人らが民間人であるにも関らず軍事法廷を開催。
一気に彼ら有罪にして処刑することを主張する。
そこには国内の混乱を早期に終結し、国情を安定させようと
する政権の狙いもあった。こうして政治的な思惑も行き交う
中で裁判は続けられて行った。
サラットが有罪であったか無罪であったかについては、今も
解明されていない歴史の謎のようだが、物語はそのことより
も、裁判が政治的な意図で行われ、ある種の謀略であったこ
とは明白に描いている。

出演は、ジェームズ・マカヴォイ、ロビン・ライト、ケヴィ
ン・クライン、トム・ウィルキンスン。さらにエヴァン・レ
イチェル・ウッド、ダニー・ヒューストン、アレクシス・ブ
レデル、ジャスティン・ロング、ジョニー・シモンズらが脇
を固めている。
脚本はジェームズ・ソロモン。11歳の時に観た『大統領の陰
謀』に感銘を受けてジャーナリストを目指したという脚本家
が1994年に裁判記録を発見し、以来18年を掛けて完成された
作品が、『大統領の陰謀』の主演者レッドフォードの手で映
画化されたものだ。

『ナナとカオル第2章』
2011年2月紹介『ナナとカオル』の続編。甘詰留太原作、白
泉社『ヤングアニマル』連載のソフトSM漫画が再び映画化
された。
お話は完全に前作の続きで、学力優秀スポーツ万能の優等生
ナナと、その隣に住む幼馴染みだが、こちらは落ちこぼれの
カオルの物語。ふと目覚めたナナのM気質の息抜きのため、
以前からSMに興味のあったカオルが協力して行くというも
のだ。
そして今回は、春休みに以前の担任から信州の旅に誘われた
ナナが、訪れた大自然の中、何故か現れたカオルと共に、伝
説を背景にしたSMプレイを繰り広げる…。と言っても内容
はいたってソフトだが、前作より多少エスカレートしている
のかな。
また作品では、羽衣伝説に纏わる信州の自然の風景や、多少
謎めいた古民家なども登場して、都市部に住むものにはそれ
なりの観光的な楽しさも味わえるように作られている。その
中での主人公らの行動も期待に添うものだ。

出演は、カオル役に前作に引き続いての栩原楽人と、ナナ役
は新たに青野未来。青野は以前に紹介していた「青春H」シ
リーズに出演があるようだが、本格的な映画主演は初めての
ようで、それなりに際どいシーンにも挑んでいる。
脚本と監督は、前作も手掛けた1997年『ねらわれた学園』な
どの清水厚。またSMシーンの指導は、前作にも参加した女
緊縛師の荊子が当っている。内容はソフトだが、解説なども
それなりにされているものだ。
さらに音楽を『マクロスF』劇中歌などの山田稔明が担当し
主題歌「あさってくらいの未来」などを提供してる。
因に監督は、すでにオーディションで新人女優を見つけてい
るそうで、第3作の製作にも意欲的なようだ。本作でもカオ
ルの将来に対する不安などはかなり克明に描かれており、そ
れが決着する第3作は作られるものだろう。
ただし、描かれるプレイは徐々にエスカレートさせる必要が
ある訳で、本作の先に何が描けるか。それも気になるところ
だ。


『ふがいない僕は空を見た』
2010年「本の雑誌」ベスト10第1位、2011年本屋大賞2位、
第24回山本周五郎賞受賞の窪美澄原作による連作短編小説の
映画化。
平凡な高校生だった卓巳は、友人に誘われて行った同人誌の
即売会でコスプレの主婦里美にナンパされる。そして訪ねて
行ったマンションの部屋でコスプレをしたままのセックスに
耽るようになる。
そんな2人の蓬瀬と、助産院を営む卓巳の母親の許を訪れる
様々な女性たち、さらに卓巳の幼馴染みでコンビニでバイト
をしながら環境に埋もれそうになっている良太。その良太の
姿にそのままではいけないと諭す田岡らが絡んで、性と生を
巡る群像劇が描かれる。
実は映画に対する事前の印象では、卓巳と里美の話が前面に
あって、それはちょっと興味本位な作品の感じだった。しか
も映画の前半にもかなり際どいシーンなどもあって、これは
そういう映画だと思わされてしまったものだ。
しかし物語が訴えるのはその様なところではなくて、より深
く真剣な物語がここには描かれていた。

出演は、2010年8月紹介『マザーウォーター』などの永山絢
斗、2010年3月紹介『さんかく』などの田畑智子。他に原田
美枝子、窪田正孝、三浦貴大。さらに2011年10月31日付「東
京国際映画祭(2)」で紹介した『ももいろそらを』などの小
篠恵奈、今年6月紹介『闇金ウシジマくん』などの田中美晴
らが脇を固めている。
監督は、2008年4月紹介『百万円と苦虫女』などのタナダユ
キ、脚本は2004年2月紹介『リアリズムの宿』などの山下敦
弘監督作品や2009年2月紹介『ニセ札』などの向井康介が担
当した。
原作は1篇ごとに主人公が異なる連作短編となっているよう
だが、映画はそれらを1本の脚本に纏めている。従って形式
としてはアンサンブル劇となっているものだが、その割りに
は卓巳と里美の話に力点が置かれすぎて、全体のバランスが
取れていない感じだ。
しかもこの部分では時間軸の入れ替えなども行われているか
ら、これはこれで纏めて描かざるを得ないものになってしま
っている。そのため卓巳と里美以外のエピソードは一層取っ
て付けたような感じでしっくり納まらない。
僕はその点に違和感を感じながら観てしまったが、実際に試
写会などでの一般観客の反応ではそのような点に引っ掛かっ
てはいないようで、それはこの作品の持つメッセージの強さ
がそれを凌駕してしまったようだ。だからこれはこれで良い
とすることにしよう。

        *         *
 今回は待望の情報で、既にこのページでも何度も紹介した
ジャック・フィニー原作“Time and Again”の映画化が、遂
に動き出した。
 この計画に関しては、1990年代にはロバート・レッドフォ
ードが映画化を切望していたこともあり、またNYタイムズ
紙による「製作されていない小説」のNo.1にも選ばれたこと
があるなど、映画化が長年期待されていたものだ。
 その計画に今回は、監督にダグ・リーマンが発表され、製
作会社はサミットが担当することになっている。
 因にリーマン監督は、2002年11月紹介『ボーン・アイデン
ティティー』の映画化などで知られるが、SFジャンルでは
2008年『ジャンパー』がある程度で、目立った作品はない。
しかし本作は、SFの興味より過去世界の再現が重視される
もので、CGIで何でも可能な時代にどのような作品が製作
されるか、その点が楽しみだ。



2012年07月22日(日) ダークナイト ライジング、画皮 あやかしの恋、X年後、歌えマチグヮー、マダガスカル3、コンシェンス、セイフ、ペンギン夫婦のつくり方

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
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『ダークナイト ライジング』“The Dark Knight Rises” 
2005年5月紹介『バットマン・ビギンズ』、2008年7月紹介
『ダークナイト』に続く、クリストファー・ノーラン監督に
よる3部作の完結篇。
2005年作品では映像に圧倒され、2008年作品では物語に圧倒
された3部作の完結は、正にアクションに圧倒されたという
感じの作品だった。実は試写日は、前日大阪でのイヴェント
から夜行バスでの帰京で多少体力に不安があったが、そんな
ものは吹っ飛ぶ2時間45分だった。
物語は、前作、前々作の全てに決着を付けるもので、悪の同
盟から送られた刺客との壮絶な闘いが繰り広げられる。その
始まりは前作の8年後、ブルース・ウェインは前作の最後の
死闘から立ち直れていない。
しかも、ハーヴェイ・デントはその業績を称えられ、そのデ
ントを倒さざるを得なかったバットマンには悪のレッテルが
貼られている。ただしゴッサムシティにはデント法が施行さ
れ、犯罪者は即行刑務所に送り込むことで平穏が保たれてい
た。
従ってウェインには手も足も出ない状況だったのだが、彼が
立ち直れない理由はそれだけではない。この辺はオリジナル
のコミックスのコンセプトとも巧みに絡まって、見事なドラ
マが展開されて行く。
そして登場するのが最強の傭兵ベイン、それにセリーナ・カ
イル=キャットウーマンが、バットマン=ウェインを新たな
冒険の旅へと誘って行く。そこには悪の同盟の影も見え隠れ
していた。

出演はクリスチャン・ベール、マイクル・ケイン、ゲイリー
・オールドマン、モーガン・フリーマン。そしてアン・ハサ
ウェイ、トム・ハーディー。さらにはマリオン・コティヤー
ル、ジョセフ・ゴードン=レヴィットらが脇を固めている。
脚本は、3部作を支えたデヴィッド・S・ゴイヤーの原案か
ら、監督と弟のジョナサン・ノーランが執筆。
最初に本作ではアクションに圧倒されたと書いたが、VFX
からスタント、モブシーンまで、それはそれぞれが究極とも
言える壮大な映像が展開される。そしてその中でのブルース
からレイチェルへの想いは、個人的にも身近に感じられて心
に染みるものになっていた。
なお物語は、未来への布石も数多く置かれたものになってい
る。特にアルフレッドと、もう1人のシーンは期待されるも
のだ。しかし映画はこれで見事な結末を迎えており、そこか
ら先は無くても良い。ただ7年間楽しませてくれてありがと
う、ご苦労様、と言いたくなる。そんな感じの作品だった。
それに本作を観ると、最初から3部作を観直したくなる。そ
んな感じもする作品だ。


『画皮 あやかしの恋』“畫皮”
中国の秦から漢に変る時代を背景に、魔性の恋の行方を描い
た物語。
主人公の将軍は西域での闘いの中、とある盗賊に襲われた村
で美しい女を救出する。その身寄りの無いという女を自宅に
連れ帰った将軍は、愛する妻に事情を話し、女を自宅に置く
ことにする。ところがその将軍の家の周囲で連続殺人が起き
始める。
その犯人はトカゲの化身の妖魔で、将軍に助けられた女も狐
の化身。2人は人の姿に化けていたのだが、その姿(画皮)
を保つには、人間の心臓を食べ続けなければならなかった。
そこでトカゲの妖魔が殺人し、毎日それを貢いでいたのだ。
こうして将軍の家に入り込んだ狐の妖魔は、将軍の妻を亡き
ものにして、家督を奪う計画を進めていたのだが…。妖魔の
出没によって疑心暗鬼が生まれ、様々なドラマが展開されて
行く。
中国の妖魔と人間の関りでは『白蛇伝』などの作品が記憶に
あり、いずれも哀しい物語が綴られるものだが、その中でも
本作は抜群のドラマ性に溢れた作品だと言える。特に後半の
正体を明かしてからの展開はリアルで素晴らしかった。

出演は、2011年5月紹介『酔拳』などのジョウ・シュンと、
2011年3月紹介『処刑剣』などのヴィッキー・チャオ、さら
に2002年『小さな中国のお針子』などのチェン・クン。他に
2011年12月紹介『関羽』などのスン・リー、『処刑剣』など
のチー・ユー・ウー、ドニー・イェンらが脇を固めている。
妖艶なジョウと、いかにも賢夫人という感じのヴィッキーの
対比バランスが良く、そこに健気で一途なスンが巧みに絡ん
で、正に中国若手女優の競演という作品になっている。さら
にコメディー・リリーフ的な役割も担うドニーもベテランの
味を出していた。

製作・監督は、2011年7月紹介『レジェンド・オブ・フィス
ト』などのゴードン・チャン、アクション監督は2011年3月
紹介『孫文の義士団』などのトン・ワイ。また音楽を、読売
テレビ『デカ☆黒川鈴木』などの藤原いくろうが担当してい
る。
大体この種の話では、退魔師は損な役回りになることが多い
が、本作はそこにもドラマを設けて、それらのほぼ全員が主
役というかなり難しい構成にも挑んでいる。それも成功した
と言える作品だ。


『X年後』
1954年にビキニ環礁で行われたアメリカによる水爆実験をめ
ぐる愛媛県・南海放送製作のドキュメンタリー。
ビキニ環礁での水爆実験に関しては、1954年3月1日実施の
第1回実験で死の灰を浴びた第五福龍丸の被曝が知られるも
のだが、この作品を観て改めて被曝したのはその1隻だけで
はなかったことに気付かされた。
第五福龍丸に関しては、当時子供だった僕の印象は、同船が
規制区域に侵入していたか、たまたま風向きか何かの関係で
死の灰を浴びたものと思わされていた。僕自身は事件当時は
5歳だから、この印象も後日の報道や学習によるものと思う
が、僕らはそう教え込まれていた。しかしその印象の全ては
陰謀だったようだ。
この作品を観た後では当然とも思えるが、当時被曝した船は
第五福龍丸だけではなかったし、死の灰を浴びた漁師もその
乗務員だけではなかった。しかし当時の日本政府は、アメリ
カ政府から送られた200万ドルの保証金だけで、全てに口を
噤んでしまった。
この作品は改めてその事実にスポットライトを当て、明らか
に放射能の影響と思える死亡率やガン発症率の高さを示し、
広島長崎に継ぐ被曝者でありながら何の保障も受けられなか
った漁民たちの姿を描いて行く。
そしてもう1点、28年前にその事実に気付き、以来地道にそ
の調査を続けている高知県の元高校教師の活動を追い、生存
者や遺族もすでに高齢となって、国家的大事であるはずの出
来事が、歴史の闇に消えてしまう恐ろしさも描いている。

なお作品は、今年1月「NNNドキュメント」枠で全国放送
された映像にさらに増補されたもので、その作品が9月15日
から東京は東中野と愛媛でも一般公開される。その後は草の
根的に全国で公開したいとのことで、事件を葬らせないため
の努力が続くようだ。
また試写会で挨拶に立った監督に訊いた話では、作品中の元
高校教師の調査は、書籍化はされているがほとんど知られて
もいないとのこと。一般上映では、そのデータなどをWebに
公開するためのボランティアの募集もしたいそうだ。

『歌えマチグヮー』
沖縄県那覇市にある栄町市場の再興への運動を描いたドキュ
メンタリー。
タイトルの「マチグヮー」というのは琉球方言で「市場」の
ことだそうだ。その舞台となる栄町市場は戦後60年の歴史を
持ち、およそ4000坪のアーケード街の中に120の店が並んで
いる。しかし最近ではシャッターの降りている店舗も増えて
いたようだ。
そしてお決まりの再開発の計画が提案され、歴史ある市場は
消えようとしていた。しかもこの敷地は戦前には沖縄女子師
範及び第一高女のあった場所で、市場の消滅と再開発は、そ
の「ひめゆり」の歴史も消す恐れがあった。
そんな市場を救うため、住民たちが立ち上がる。そして彼ら
が始めたのは歌作り。元々音楽の好きな沖縄の人たちが、こ
こぞとばかりに才能を発揮。ついには「おばあラッパーズ」
まで誕生してしまう。

撮影・監督・編集は新田義貴。元は1992年NHK入局だが、
中東・アジア問題などの番組制作を続ける中で、沖縄放送局
配属となり2009年に独立。その後もドキュメンタリー作品の
制作を続けて、本作が劇場公開第1作となるようだ。
その制作態度はあまり出しゃばりもせず、しかしそれなりに
被写体との交流もあって、被写体目線での問題提起などは巧
みに行われている感じだ。ただまあ本作の場合は結末が成功
裏に終わっているから、それはそれで作り易かったとも言え
るのだろう。
それにキーワードが音楽というのも映画としては作り易いと
ころで、独特の沖縄旋律に乗せて披露される歌や踊りが作品
の全体を見事に彩ってくれる。そしてその音楽に誘われるよ
うに集まったり帰ってきた人々が、今の市場を支えていると
いう展開も素敵だった。

日本全国、シャッター商店街は数知れないが、僕自身がサッ
カーの応援で各地を訪れてみると、地方の中核都市であって
もその浮き沈みはかなり顕著に感じられる。そんな中で音楽
を通じて再興に成功した栄町市場の記録は、それなりの参考
にはなりそうな感じだ。
勿論そこには各地ごとの事情もあるだろうが、何かを見つけ
てそれ懸命に応援すること、それが第1歩のようにも感じら
れた。

『マダガスカル3』
        “Madagascar 3: Europe's Most Wanted”
2005年6月紹介『マダガスカル』で始まったニューヨーク市
立動物園の人気者、ライオンのアレックス、シマウマのマー
ティ、キリンのメルマン、カバのグロリアを主人公にしたシ
リーズの最新第3作。
実は、2008年公開の『2』の試写は観ていなくて、今回は久
し振りの再見となった。その第2作はアフリカのサバンナが
舞台だったようだが、そこで主人公たちはペンギンズの裏切
りに遭っていたようだ。
でもまあそれはお決まりのもの、観客はそうだということを
認識していさえすればよい。そんなところから今回のお話は
始まる。
そこで、ようやくペンギンズの裏切りに気付いた主人公たち
は、ニューヨークに帰るための最後の手立てと思われるペン
ギンズの後を追って、彼らが向かったモンテカルロにやって
くるのだが…
そこには、自宅の壁を自らが「保護」した世界中の動物の剥
製で一杯にしたいと考える女動物保護官と、その組織が待ち
構えていた。しかも彼女は、まだライオンを手に入れていな
かったのだ。
こうしてモンテカルロに到着するなり保護官に追われること
になった4人組らは、貨物ヤードに停車中のサーカス列車に
隠れる。そしてそのサーカスの動物たちがニューヨーク公演
を夢見ていることを知った主人公たちは、サーカスの立直し
を開始する。
作品はシリーズ初の3Dで制作されているが、このサーカス
のシーンはかなりの見ものになっている。実際、サーカスを
舞台にしたアニメーションは過去にもあると思うが、その出
し物は現実のサーカスに制約されている感じがしていた。
しかし、従来のサーカスのイメージを打ち破った「シルク・
ド・ソレイユ」が、本作でもその制約を取っ払ってしまった
ようで、本作では実に奔放な技が展開される。そんな技が映
画としても巧みに描かれているものだ。

脚本と監督はシリーズ全てを手掛けるエリック・ダーネル。
また監督にはトム・マクグラスとコンラッド・ヴァーノンも
協力している。さらに脚本には、2006年9月紹介『イカとク
ジラ』などのノア・ボーンバックが参加して物語を完成させ
ているようだ。
声優は、僕が観たオリジナル版では、ベン・スティラー、ク
リス・ロック、デヴィッド・シュワイマー、ジェイダ・ピン
ケット=スミス。さらにブライアン・クランストン、ジェシ
カ・チャスティン、マーティン・ショート。それにフランシ
ル・マクドーマンド。
日本版は、玉木宏、柳沢慎吾、岡田義徳、高島礼子らになる
ようだ。

『コンシェンス/裏切りの炎』“火龍”
前々回紹介『強奪のトライアングル』と共に、「ニュー香港
ノワール・フェス」と題して8月11日から東京・新宿武蔵野
館で上映される3作品の内の1本。今年3月紹介『ビースト
・ストーカー/証人』などのダンテ・ラム監督による2010年
作品。
映画の開幕は、かなりトリッキーな映像。その中から最初の
事件がスタートし、そこから警察内部も巻き込む重大犯罪が
描かれて行く。しかもそこには、追跡劇や銃撃戦、さらには
街頭での爆発など、正にアクションが盛り沢山に描かれた作
品だ。
物語の始まりは娼婦の殺害事件。その捜査に任命された主人
公は、実は身重の妻を通り魔に殺され、以来ミニバンに寝泊
まりしてその犯人を追い続けてもいた。しかし捜査を任じら
れた主人公は腹心の部下や女性刑事らと共に殺人犯を追い詰
めて行く。
ところが、囮捜査などでようやく犯人を捕えても、自白した
犯人が護送中に犯罪組織と思われる連中に奪還されるなどの
事態が繰り返される。このため主人公らは警察に内通者がい
ることを疑い始めるが…
1970年代の香港警察の腐敗ぶりは物凄かったそうで、それが
ジャッキー・チェンの『香港国際警察』を生み出したのだそ
うだが、本作の背景は携帯電話なども登場する現代でも、そ
の図式は変わっていないようだ。
しかも本作では、警察側の真犯人が最終的にそのことを自分
の弁明にしているのだから、これはもう究極とも言えるもの
になっていた。これでよく香港警察が文句を言わないものだ
と思ってしまうほどだ。
恐らくは壮絶なアクション映画を作るためのフィクションと
して認められているのだろうが、それにしても…

出演は、2008年12月紹介『花の生涯』などのレオン・ライ、
2011年8月紹介『アクシデント』などのリッチー・レン、そ
して2010年11月2日付「東京国際映画祭」で紹介した『ホッ
ト・サマー・デイズ』などのビビアン・スー。
上記の警察官が犯罪に走る理由などが多少不明確な感じもす
るが、それを補う壮絶な銃撃戦などの展開で、映像的には存
分に満足できる作品だった。


『セイフ』“Safe”
2010年4月紹介『プリンス・オブ・ペルシャ』などの脚本も
担当したボアズ・イェーキンの脚本・監督、ジェイスン・ス
テイサム主演によるアクション作品。
主人公の1人は、賭けボクシングで本当は負けるはずだった
のに相手を1発で倒してしまい、八百長の仕掛け人から追わ
れることになってしまった男。もう1人は、中国本土で天才
的な数学の能力を示し、ある目的でアメリカに連れてこられ
た少女。
何しろ男は滅法強く、少女は観た数字は絶対に忘れない。そ
んな2人がニューヨークで出会い、中国マフィアとロシア・
マフィアを向こうに回して、共に窮地からの脱出劇が描かれ
る。
戦闘能力に長ける男がいたいけな少女を守って敵地を脱出す
るという作品はいろいろあったと思うが、本作では少女の頭
が良くて各所で必要な行動を取る。そんなところが新機軸の
作品と言えそうだ。

共演は、2011年8月紹介『リミットレス』などのロバート・
ジョン・バーク、『ダークナイト ライジング』にも出演の
レジー・リー、2002年4月紹介『ノット・ア・ガール』など
のアンソン・マウント、さらに2008年2月紹介『燃えよ!ピ
ンポン』などのジェームズ・ホン。
それに1975年映画デビュー作の『狼たちの午後』でオスカー
ノミネートされたクリス・サランドンと、オーディションを
勝ち抜き本作で長編デビューした12歳の新星キャサリン・チ
ェン。見るからに東洋系のチェンはこれからの活躍も楽しみ
だ。
物語では、少女しか覚えられないはずの情報を主人公が簡単
に記憶してしまうなど、アレレと思うシーンも登場するが、
ここは本来なら暗号を少女の天分と男の経験で解読し、その
結果を男が記憶するというような流れが必要だろう。
上映時間が94分では、そこまで充分には描けなかったのかも
知れないが、もう少し何とかして欲しい感じはした部分だ。
その他では、後半の展開などは思わずニヤリとしてしまった
し、それはエンターテインメントとしては充分だった。


『ペンギン夫婦のつくり方』
平成12年に発売されて日本中に食べるラー油ブームを巻き起
こした石垣島辺銀食堂の辺銀夫妻を描いたドラマ作品。
物語は、中国人と日本人の国際結婚だった夫妻の夫が、日本
国籍への帰化申請をするところから始まる。それは国際結婚
で認められる夫婦別姓に夫が不満を感じ始めたせいだった。
ところが偽装結婚を警戒する日本政府は、帰化申請に対して
夫婦個別の聞き取り調査など厳重な審査を実施。しかもその
間には夫妻が不正行為を働いていないか調べる、身辺調査な
ども行っていた。
こうして進められる調査によって徐々に明らかにされる夫妻
の姿が描かれて行く。
最近各地を訪れると、何処に行ってもご当地食材を使った食
べるラー油が氾濫している。そんなブームの立て役者がこの
辺銀夫妻なのだそうだ。そんな訳でこの映画もそのラー油の
開発秘話なのかと思っていたら、これは本当に夫婦の作り方
の物語だった。
そこには勿論ラー油開発の話も出ては来るが、メインとなっ
ているのは夫婦の話。2人の愛情が如何にして育まれていっ
たか、そんな夫婦の歴史がラー油開発と共に描かれて行く。
それは波乱万丈と言うものではないが、夫婦はこうありたい
と思えるものだ。

出演は、2011年3月紹介『八日目の蝉』などの小池栄子、台
湾俳優ワン・チュアンイー。他に6月紹介『るろうに剣心』
などの深水元基、沖縄出身の山城智二、吉田妙子らが脇を固
めている。
脚本と監督は、2009年6月紹介『僕らはあの空の下で』の平
林克理。脚本には2010年8月紹介『裁判長!ここは懲役4年
でどうすか』のアサダアツシも参加している。
辺銀(ペンギン)というのは夫妻の実際の苗字だが、日本で
唯一のこの苗字が誕生する理由がちょっと面白くて、これが
正に法律の落し穴。こんなことが許される(許さざるを得な
かった)日本の法律の面白さも描けていた。
それに全編が石垣島でロケされた風景も素敵な作品。因に、
劇中の登場する料理は全て辺銀夫妻の調理によるものだそう
で、それも本当に美味しそうな作品だった。

なお10月20日の公開に先駆ける前売鑑賞券の発売では、現在
入手6カ月待ちと言われるペンギンラー油付きペア鑑賞券も
発売されているそうだ。因に試写会では、15gのパック詰め
が配られたが、これは本当に美味しかった。



2012年07月15日(日) WIN WIN、よだかのほし、演劇1/演劇2、旅の贈りもの2、放課後ミッドナイターズ、東京スカイツリー、ウェイ・バック+特撮博物館

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『WIN WINダメ男とダメ少年の最高の日々』“Win Win”
ポール・ジアマッティ主演で、人生に行き詰まった男性と、
進路を見失いかけている少年を描いたヒューマンドラマ。
主人公は田舎町で開業している弁護士。その仕事のほとんど
は老人問題だが、その依頼もほとんど無くなっているのが現
状だ。そんな主人公は、ある一線を超えた仕事にも手を出し
てしまう。
一方、主人公はアルバイトで地元高校のレスリング部のコー
チもしていたが、地元や主人公の雰囲気も反映してその戦績
は芳しくない。その主人公の前に1人の少年が現れる。その
少年はたちまちレスリングの実力を発揮してみせるが…
主人公の一線を超えた仕事と、少年のレスリングでの活躍が
絡み合って、かなりの苦みも伴うwin-winの物語が展開され
て行く。

製作・原案・脚本・監督は2009年11月紹介『2012』など
の出演者で、2009年9月紹介『カールじいさんの空飛ぶ家』
の原案も手掛け、監督は本作が3作目のトーマス・マッカー
シー。なお名前は本作から表記を変えているようだ。
ジアマッティ以外の出演者は、2010年2月紹介『グリーン・
ゾーン』などのエイミー・ライアン、2006年9月紹介『スネ
ーク・フライト』などのボビー・カナヴェイル、2010年10月
紹介『宇宙人ポール』などのジェフリー・タンバー。
さらに『ロッキー』シリーズのバート・ヤング、2011年1月
紹介『お家さがそう』などのメラニー・リンスキー。そして
もう1人の注目は、ダメ少年を演じたアレックス・シェイフ
ァー。
監督の希望で、実際にレスリングのできる少年がオーディシ
ョンされ、選ばれた映画の舞台ニュージャージーで高校生の
チャンピオンに輝いたこともあるというシェイファーには、
すでに次回作も決まっているそうだ。
老人問題や親子関係など様々な社会問題が巧みに織り込まれ
た作品で、主人公の立場になくても誰でもが陥ってしまいそ
うな出来事が描かれていた。


『よだかのほし』
宮沢賢治の童話にインスパイアされた現代が背景の物語。
主人公は東京の企業で研究職に就いている女性。しかし同僚
の間では浮いた感じで、上司との間もうまくは行っていない
ようだ。そんな彼女が川縁の遊歩道でジョギング中に同郷の
老女と知り合う。
その老女はようやく田舎に帰れると話し、主人公にあるもの
を託す。そして主人公は約束の日に老女の姿を探すが見つけ
ることができない。こうして彼女は託されたものを届けるた
め、大学に進学して以来帰っていなかった田舎に行くことに
するが…
賢治の童話との関連で言うと自分が疎まれた存在だと思い込
んでいる主人公の姿が童話の主人公に通じるところがあり、
また主人公が研究者であることも賢治が農業技術者であった
ことへのオマージュとも言える。
しかし物語は、そんなことを詮索するより、もっと純粋に故
郷に対する現代人の思いが描かれたものであり、そのため映
画では主人公と賢治の故郷でもある岩手県花巻の祭りや風景
が存分に描かれているものだ。

出演は、2011年12月紹介『わが母の記』などの菊池亜希子、
2008年1月紹介『死神の精度』などの眞島秀和、1939年生ま
れ岩手県出身女優の北上奈緒。
脚本と監督は、2004年9月の短編集『Movie Box-ing』の中
で『夏服と巡査』という作品を紹介している斉藤玲子。正直
に言って内容は全く記憶していないのだが、紹介文を読み返
すとかなり気に入っていたようだ。
その監督は、ニューシネマワークショップの出身で、2005年
にはNCWの支援による作品『AnimusAnima』で長編監督デ
ビュー。その後も短編を作り続け、本作は長編2作目となっ
ている。
なお、『AnimusAnima』の紹介文の中の監督のプロフィール
によると、「これまでの女性監督とは違ったニュータイプの
クリエーター」とされていたが、今回の作品はどちらかとい
うとオーソドックスな女性映画で、その点では信頼の置ける
監督のようにも感じられた。


『演劇1』『演劇2』
2007年5月『選挙』、2009年4月『精神』、2011年4月『Pe
ace』を紹介している想田和弘監督による「観察映画」。因
に前作は番外編で、今回の2作品が第3弾、第4弾と称され
ている。
その想田監督が今回「観察」したのは、劇作家平田オリザ。
『演劇1』ではその舞台人としての本質に迫り、『演劇2』
ではその演劇を通じた現代社会との繋がりなどが描かれて行
く。
そして『演劇1』では、「ヤルタ会談」「冒険王」「サンタ
クロース会議」「火宅か修羅か」の練習風景と、その間に各
地で行われるワークショップや実践授業の様子を通じて、平
田の演劇に対する姿勢やその本質が描かれる。
そこにはスタニラフスキー理論を明確に否定する発言や、そ
の平田の演出に対してそれを克明に表現して行く俳優たちの
考え方なども紹介され、なるほどこれが平田演劇なのだと納
得させられる作品になっている。
これに対して『演劇2』では、最初に「冒険王」の舞台面か
ら始まり、続いて民主党若手議員との懇談の様子などが描か
れる。さらに鳥取県での実践授業の様子や、同県で行われる
演劇祭での様子など、社会との関りが描かれる。
その中では、文化庁の助成金を得るためにいろいろな方策を
講じている様子や、劇団経営の厳しさなども語られ、諸外国
の実情に比較した日本の演劇に対する政治の冷たさも指摘さ
れる。
そしてこの『演劇2』では、前記の他に平田作品の「隣にい
ても一人」「働く私」「砂と兵隊」「森の奥」が紹介され、
特に世界初と称されたロボットと俳優共演による「働く私」
ではその製作風景なども紹介されているものだ。
正直に言って僕は演劇はほとんど観たこともないし、平田オ
リザや青年団の名前も映画との関りの中でしか知らないもの
だが、本作ではそんな僕にも平田という人物が良く理解でき
たように感じられた。
なお中では、青年団所属の2011年7月紹介『東京人間喜劇』
の森田晃司監督や、2011年12月紹介『きつつきと雨』などの
俳優古舘寛治らも登場しており、僕にはその辺でも興味を引
かれた。


『旅の贈りもの、明日へ』
2006年8月紹介『旅の贈りもの−0:00発』に続く列車旅行を
テーマにした作品の第2弾。と言っても物語に繋がりはなく
独立した作品だ。
本作の主人公は建設会社を定年退職した男性。25年前に離婚
した彼には家族もなく、家にいても何もすることもない。そ
んな彼が始めた身辺整理の中で1枚の焼け焦げた葉書が見つ
かる。それは彼に42年前の初恋の思い出を呼び起こす。
こうしてその思い出を頼りに福井へと旅立った主人公に、あ
る出会いがもたらされる。この主人公に、結婚式を控えて最
後の1人旅で福井に来た女性と、スランプに陥ったヴァイオ
リニストの男性が絡んで、新たな未来に向かう人たちを暖か
く包む物語が展開される。

出演は、前川清、山田優、酒井和歌子、ヴァイオリニストの
須磨和声。他に、徳井優、きたろう、二木てるみらが脇を固
めている。前作も歌手の徳永英明が主演だったが、歌手を主
演に据えるのがコンセプトなのかな。
また、須磨には元「ニューハード」の黄金期のメンバーで、
現在は福井中心に活動する日本有数のアルトサックス奏者・
白井淳夫との競演シーンも用意されており、それはサウンド
トラックが欲しくなるくらいのものだ。
さらに今年2月紹介『トテチータ・チキチータ』に出演の葉
山奨之と、今夏公開『桐島、部活やめるってよ』などの清水
くるみが主人公らの42年前を演じる。因に清水は、顔は女優
の若い頃に似ていないが雰囲気を良く似せていた感じだ。

監督は2008年7月紹介『ブタがいた教室』などの前田哲。脚
本は2006年の前作も手掛けた篠原高史と前田監督が執筆して
いる。前作同様、ファンタスティックと言える作品ではない
が、メルヘンな感じの物語にはなっていた。
それと今回もJR西日本の協力による車両の登場は鉄道マニ
アには垂涎のもので、特にサンダーバードではない特急雷鳥
が、JNRのロゴをつけて走ってきたシーンには思わず声が
出てしまった。
まあ前作同様のセンチメンタルなお話だが、鉄道ファンの目
も楽しませてくれるし、全体としてちょっと仕掛けがあるの
も楽しめる作品だった。


『放課後ミッドナイターズ』
1992年製作の『BANANA』が同年の広島国際アニメーションフ
ェスティバルで審査員特別賞を受賞し、同作はニューヨーク
MOMAのコレクションにも加えられているという竹清仁監督に
よる長編デビュー作。
名門小学校の放課後を舞台に、学校怪談の代表ともいえる走
り回る人体模型や、骨格標本が活躍するギャグアニメーショ
ン。因に本作には2008年の文化庁推薦を受けたオリジナル短
編があり、こちらはフランスCanal+が買い付けたそうだ。

そして本作は、長編デビュー作には異例の、日本、香港、シ
ンガポール、台湾、韓国での同時公開が決まっている。つま
り、それだけの注目作ということだ。
物語は人体模型のキュンストレーキと骨格標本のゴスが主人
公。2人は長年、子供たちを脅かしては、危ない理科室に勝
手に近づかないようにしていた。しかしそんな努力の甲斐も
なく身体は悪戯書きでぼろぼろだ。
しかも2人に一大事が到来する。理科室のある旧校舎の取り
壊しが決まり、2人も理科室と共に廃棄処分になってしまう
のだ。それを阻止するべく2人はある作戦に打って出る。折
しもその日は学校見学会、訪れた3人の幼稚園児に目を付け
た2人は…
基本的にギャグアニメは、ギャグの感性が合わないと悲惨な
思いになる。
しかし本作は、学校の怪談がベースのギャグも秀逸で、そこ
からの展開も上手く、さらに結末が見事に決まっていて、こ
れは文句の付けようのない作品だった。さすがに世間の評価
は狂いがなかったというところだ。

因に脚本は竹清監督と、『海猿』などの原作者で、内閣総理
大臣表彰となる海洋立国推進功労者表彰を受けている小森陽
一。声優は山寺宏一、田口浩正。その他に谷育子、茶風林ら
ベテランが脇を固めている。
アニメーションは日本の文化と言われて久しいが、オタク文
化の象徴のようでもあったアニメーションから一歩踏み出し
た新たな方向性のある作品。この夏これは見逃すことができ
ない作品だ。

『東京スカイツリー・世界一のひみつ』
今年5月に開業した世界一の電波塔の建設に関るドキュメン
タリー。
作品では「東京の守りバト」と自称する2羽の鳩を語り手と
して、彼らが鳥の領分に侵入したと主張する高層建造物の建
設に関るいろいろな謎が解明される。と言っても作品は、あ
くまでもお子様向けで説明も平易なのだが、これが意外と奥
深いものになっていた。
その内容は、スカイツリーの全体の形状に始まって、なぜ鉄
骨が円筒形なのかなど。それは今まで観ていたものが全く別
の側面を見せるものでもあって、その事実自体にも驚かされ
たが、それがまた子供にも判るように解説されていることに
も感心した。
さらにはゲイン塔と呼ばれるアンテナ部分の建設に関る技術
やそこで起きる様々な想定外の出来事。しかもクライマック
スでは2011年3月11日までやってくる。そのタイミングにも
驚かされる。
そして、高さが634mに達した日にその頂上に飛来した1羽の
鳩。その存在が本作の物語の全体を形成したと思われるが、
合成ではないその姿にちょっと神秘的なものも感じてしまう
光景も描き出される。
その一方で基礎工事に採用された特殊な構造や工事用機材の
数々。その運用の様子なども手際よく解説される。それらが
子供が観ていられる限界とも言える60分の上映時間の中で、
実に見事に描かれていた。

監督はNHK所属の野上純一、脚本は2008年1月紹介『死神
の精度』などの小林弘利。全体の構成がどちらの意向による
ものか判らないが、野上はスカイツリーに関してはすでに複
数のテレビ番組も手掛けており、その中で生まれたアイデア
とも思える。
先に書いたようにあくまでもお子様向けの作品ではあるが、
大人の鑑賞にも充分に耐えうる作品になっている。
それは僕自身が技術系の大学の出身者であるから、その辺は
補足して観てしまっているかも知れないが、逆に言えばこれ
をお子様向けだけとするはもったいない感じもしてくる。こ
れを観ているともっと深く描いた作品も観たくなってきた。

『ウェイ・バック〜脱出6500km〜』“The Way Back”
2004年1月紹介『マスター・アンド・コマンダー』などのピ
ーター・ウィアー監督による同作以来の新作。
1941年、西シベリアの矯正収容所にはロシア革命で共産主義
に殉じなかった各国の人々が送り込まれていた。そんな中で
妻の証言によって収容所送りとなったポーランド人の主人公
は、それでも妻を愛し、妻に許しの言葉を掛けることを夢見
ていた。
そして彼の許に集まったアメリカ人の元技師やロシア人の犯
罪者、それにポーランド人の仲間たちは、過酷な環境に耐え
兼ねてついに脱走を開始する。しかしそれは雪深いシベリア
の大地やゴビ砂漠などを、満足な食料、水もなく踏破する過
酷な旅となった。
原作は、1954年にロンドン・デイリーメール社がヒマラヤの
イェティ捜しを行った際、その事前調査の中で発掘された実
話で、原作本は1956年に刊行され、世界25カ国で翻訳がされ
ているそうだ。
そんな実話に基づく物語だが、映画は脚色が入っているにし
ても本当にこれが出来たのだろうかと思えるほどの過酷な状
況で、そんな極限状態が見事に描かれる。しかもそこには彼
らを駆り立てる理由づけもしっかりとなされていた。

出演は、2008年3月紹介『ラスベガスをぶっつぶせ』などの
ジム・スタージェス。他に、エド・ハリス、2007年12月紹介
『つぐない』でオスカー助演賞候補になったシアーシャ・ロ
ーナン、コリン・ファレル。
他に、『バトルシップ』に出演アレキサンダー・スカルスガ
ルドの弟のグスタフ・スカルスガルド、今年3月紹介『ジョ
ン・カーター』などのマーク・ストロング、2007年12月紹介
『4カ月、3週間と2日』などのアレクサンドル・ポトチュ
アンらが脇を固めている。
ブルガリア、モロッコ、インドなどでの撮影に2カ月間が費
やされたという作品は、戦時中の物語なのに戦闘シーンが一
切なく、過酷な運命に立ち向かった人々の姿を見事に描き出
していた。


『特撮博物館』
『新世紀エヴァンゲリオン』などの庵野秀明が館長を務める
標記の展覧会が東京木場公園にある東京都現代美術館で10月
8日まで開催されている。そのオープニングの前日に行われ
た内覧会に招待されたので、その報告をさせてもらう。
展覧会は「ミニチュアで見る昭和平成の技」と銘打たれたも
ので、『モスラ』以降の東宝怪獣映画を中心に、製作当時の
図面に基づくミニチュアの再現や実際に映画の中で使用され
た光線銃などの小道具の展示が前半を占めている。
またそこにはコンセプトアートの原稿なども展示されて、デ
ザインの変遷が解説されていたり、それはマニアには堪らな
い世界が繰り広げられている。特に展示物のほとんどが、ガ
ラスケースなどもなく直接観られるのは貴重なものだ。
そして中盤には、今回の展示の目玉とも言えるスタジオジブ
リ製作、庵野秀明企画、樋口真嗣監督による「巨神兵東京に
現わる」という短編作品の上映スペースがあり、ジブリアニ
メの『風の谷のナウシカ』に登場した巨神兵が、ミニチュア
特撮によって再現された。
その物語はまあ庵野流のものではあるが、それをCGI=ア
ニメではない特撮によって再現できているのには、日本の特
撮技術もしっかりと継承されていることが判ってうれしくも
思えたものだ。
さらに後半では、その短編映画のメイキングに絡めて日本の
ミニチュア特撮の歴史が展示され、工房や倉庫の再現、さら
に各種技術の解説などがかなり細かく行われている。中には
あっと驚く展示物も置かれていた。
そして最後は、短編映画に登場したミニチュアセットの再現
で、セットの中の通路を歩けたり、写真撮影も可能なのは来
場者には最大のサーヴィスとも言えるものだ。

CGIが全盛と言われるハリウッド映画の中でも、ミニチュ
ア技術は厳然と継承されており、ミニチュアは決して廃れて
しまった技術ではない。今回はそんなミニチュアの新たな次
元も観られる展覧会となっていた。
なお会期中は有料で貸し出される音声ガイドには、70項目で
計60分にも及ぶインタヴューなども含む音声が収録されてお
り、それはじっくりと聞きたくなるものになっていた。ここ
にも主催者たちの思い入れが感じられたものだ。



2012年07月08日(日) 聴こえてるふり、夏の祈り、ハンガーゲーム、東野圭吾“笑”、コッホ先生、強奪のトライアングル、プロメテウス、空飛ぶペンギン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
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『聴こえてる、ふりをしただけ』
大阪で看護師をしながら2児を育てる母親であり、主婦でも
ある今泉かおり監督による長編デビュー作。本作は、今年の
ベルリン国際映画祭・ジェネレーションKプラス部門で、準
グランプリに相当する子ども審査員特別賞を受賞した。
主人公は母親を突然の事故で亡くした11歳の少女。その葬儀
も一段落し、久しぶりに登校する。その彼女には「お母さん
が見守ってくれている」という言葉と共に、母親の遺品であ
る指輪が首に懸けられていた。
そんな彼女を教室の仲間たちは優しく迎えてくれるのだが。
そこにはまだ幼さゆえの気遣いの足りなさも感じられる。そ
してそんな彼女のクラスに、養護教室から少し遅れた女子が
転入してくる。
その女子は「お化けがいるから1人でトイレに行けない」と
言い出し、霊魂の存在を信じない年頃の学友たちは囃し立て
るのだが、母親が見守っているという言葉を信じたい主人公
は女子の言葉を一概に否定することはできない。
こうしてその女子がトイレに行くときの付き添いを主人公が
務めるようになって行くが…やがてその行為が仲間との間に
確執を生んで行く。そしてその女子との関係にも微妙な影が
落ちて行く。
「子ども審査員賞」というのは実際に11歳〜14歳の11人の子
供の審査員によって選出されるものだそうで、本作が子供た
ちの共感を得たということの証になりそうだ。しかもその内
容は日本人でなくても共感できるものだった訳だ。
因に、映画の中での霊魂に関する考察は監督自身が子供の頃
に考えたものだそうで、そのような実体験にも基づく作品の
ようだ。

出演は、野中はな、郷田芽瑠。いずれもオーディションで選
ばれた子役たちが瑞々しい演技を見せている。他に、杉木隆
幸、越中亜希、唐戸優香里という人たちが共演。
なお、監督の夫は自主映画監督の今泉力哉で、その点での家
族の理解はあったと思われるが、本作の制作は長女出産の育
児休暇中に行われたものだそうだ。子供の視点に立った細や
かな作品は、今後の活躍にも期待したくなるものだった。

『夏の祈り』
2011年9月紹介『ネムリユスリカ』の坂口香津美監督が、撮
影に2年間を掛けて制作した長崎原爆を巡るドキュメンタリ
ー。なお監督は、元々がテレビで200作品以上を発表してい
るドキュメンタリストであるが、本作は初めての映画館用の
作品となる。
作品は「原爆ホーム」と呼ばれる長崎の老人ホームを中心に
描かれる。それは名称の通り長崎原爆で被爆した人たちが暮
らしている場所だ。そしてその入居者の何人かを対象に、被
爆の状況や現在の生活ぶりなどが描かれて行く。
それは今までに見聞きしてきたものも多くはあったが、中で
被爆者たちが自ら被爆の様子を再現してみせる芝居には衝撃
を受けた。それは被爆直後に水を求めて彷徨う人たちを再現
したものだったが、看護師の人たちと一体になったその芝居
は見事だった。
また、大学病院の研究者の許に置かれた数多くの被爆者の遺
体。そこには被爆から70年近くが経った今でも遺伝子を傷つ
け続ける放射能の無気味な姿も写し出される、このようなこ
とを知っただけでも、本作には見る価値があったと言えるも
のだ。
なお本作の撮影は昨年の3月まで行われ、監督は帰京直後に
3/11に遭遇したそうだ。そしてそれに続く福島原発による
被曝。その実態はほとんどが隠蔽されたままだが、本作を見
ていると我々の70年後も思いやられるものだ。
そう言えば長崎の大学には、東京電力が「放射能の人類に与
える影響はない」とする研究のため多額の資金提供を申し出
たが、大学側がそれを拒否したという報道を思い出した。本
作を見れば放射能の末代に続く危険性は明らかになる。
そんな中で、どれだけの資金提供の結果なのか次々に原発の
再開が決定されて行く。この作品はそんな国に住む我々の未
来にも大きな警鐘を鳴らしている。

なお映画のナレーションは、2009年11月紹介『人間失格』な
どの寺島しのぶが担当。またサウンドトラックでは、『ネム
リユスリカ』にも登場したピアニストの小林愛実と、同じく
国際舞台で活躍するフルーティストの新村理々愛という2人
の10代の演奏家の初共演が実現している。
なお本作は、8月11日から東京渋谷アップリンクで一般公開
されるものだが、出来るだけ多くの日本人と、海外の人々に
も観てもらいたいものだ。

『ハンガーゲーム』“The Hunger Games”
アメリカでは2008年から刊行されて3部作の合計が2650万部
に達しているといわれるスーザン・コリンズ原作ヤングアダ
ルト小説の映画化。本作はもちろん第1巻に基づくもので、
以降の巻の映画化も計画されている。
物語の背景は何時かとも知れない独裁国家の時代。過去には
12の地区が国家に反旗を翻した歴史があり、それを鎮圧した
政府は毎年、各地区から10代の男女1名ずつを選び競わせる
「ハンガーゲーム」を実施している。それは、24人の男女が
1人になるまで殺し合いを繰り広げる熾烈なサヴァイヴァル
ゲームだ。
そして今年もその季節が到来し、主人公の暮らす第12地区か
らは主人公の妹とパン焼き職人の息子が選ばれる。しかしま
だ幼い妹にはゲームを勝ち抜き、生きて戻れる可能性はほと
んど無に等しかった。
こうして妹の身代わりになった主人公とパン焼き職人の息子
は、高速列車で首都へと向かい、様々な準備の末にゲームの
主戦場へと連れて行かれる。そして開始された「ハンガーゲ
ーム」の中で、主人公は様々な危機に直面するが…
作品の概要だけ聞いて、以前の日本映画のような無意味な殺
し合いのオンパレードだったら嫌だなと思っていた。しかし
さすがにハリウッドは、ただ殺しのテクニックだけを羅列す
るようなレヴェルの低い作品は作らなかった。
そこでハリウッドが描いたのは、適度なアクションと多彩な
VFXの加味されたアドヴェンチャーであり、その中に様々
な感情が交錯する正しくヤングアダルト向けの作品と言える
ものだ。ただまあ御都合主義はかなりのものだが、それも一
興という感じだ。

出演は、昨年8月紹介『ウィンターズ・ボーン』でオスカー
ノミネートを勝ち取ったジェニファー・ローレンス、前回紹
介『セブン・デイズ・イン・ハバナ』などのジョッシュ・ハ
ッチャースン、『マイティ・ソー』を演じたクリスの弟のリ
アム・ヘムズワース。
他に、2009年7月紹介『2012』などのウッディ・ハレル
スン、今年4月紹介『崖っぷちの男』などのエリザベス・バ
ンクス、2007年11月紹介『潜水服は蝶の夢を見る』などのレ
ニー・クラヴィッツ。
さらに、昨年8月紹介『キャプテン・アメリカ』などのスタ
ンリー・トゥッチ、昨年9月紹介『モンスター上司』などの
ドナルド・サザーランドらが脇を固めている。
監督は2003年11月紹介『シービスケット』などのゲイリー・
ロス。脚本はロスと原作者のコリンズ、それに2008年2月紹
介『アメリカを売った男』などのビリー・レイが担当した。
まあヤングアダルト向けの作品ではあるのだけれど、上映時
間2時間23分はヴァラエティに富んだエンターテインメント
が満載で、大人でもたっぷりと楽しめる作品になっていた。

『東野圭吾ドラマシリーズ“笑”』
2010年10月紹介『白夜行』などの人気作家・東野圭吾の原作
によるそれぞれ「黒笑小説」「怪笑小説」「毒笑小説」と題
された短編集から選ばれた3つの作品の映画化。なお本作は
J:COMオンデマンドで配信されるもので、鑑賞したDVDで
は3作が纏まっていたが、配信は、それぞれ8月1日、9月
1日、10月1日から1本ずつ行われるようだ。
第1笑「モテモテ・スープ」
主人公は今までに一度もモテたことがないという男性。しか
しどうしても好きな女性が現れ、モテたい一心のネットの検
索で怪しげな研究所に辿り着く。そして研究所の博士からモ
テるようになるスプレーを受け取るが…

出演は濱田岳、倉科カナ、津川雅彦。博士が『BTTF』のドク
そっくりなのは笑えたが、全体的には常識通りかな。後半に
は何かもう少し別の捻りが欲しかった感じだ。でも一般の観
客にはこれでも良いのかも。

第2笑「あるジーサンに線香を」
老人が掛り付けの医師から医療実験への協力を求められる。
それは特殊な手術による若返りの医療だった。その実験には
高額の報酬もあり、手術を受けた老人は見る見る若返り始め
る。そして医師からは日記を付けるように言われ…

出演は笹野高史、菅田将暉、AKB 48の宮澤佐江。他にムロツ
ヨシ、有森也実らが共演。題名から判るように『アルジャー
ノンに花束を』のパロディと言っていいのかな。これもテー
マを除けば常識的な展開で、それは観客には安心して観てい
られる作品だ。

第3笑「誘拐電話網」
夫婦で蕎麦屋を営む家に、突然「子供を誘拐したから、身代
金1000万円を払え」という電話が架かってくる。しかし夫婦
には子供はなく悪戯電話かと思った主人公に「電話は無作為
に架けた。子供が死ねばそれはお前たちのせいだ」と告げら
れる。

出演は三上博史、ミムラ。他に鷲尾真知子、石丸謙二郎らが
共演している。発端は『キングの身代金』だが、そこからの
展開はなかなか面白かった。特にクライマックスは良いし、
結末も笑えた。テーマがSFでない分、僕も気楽だったとも
言える。

脚本は、3作とも『世にも奇妙な物語』などのふじきみつ彦
が担当し、監督は、いずれもCM出身の水落豊、石井聡一、
それにCM出身で2011年2月紹介『高校デビュー』などの英
勉が担当した。
全体は脚本家も参加している『世にも奇妙な…』の乗りで、
それぞれの上映時間も23分程度なので気楽に観たい作品だろ
う。まあ正直なところはもう少し捻りや、深みも欲しいとこ
ろだが、今回の作品のコンセプトはそこにあるものではない
し、これはこれで充分だ。


『コッホ先生と僕らの革命』“Der ganz große Traum”
ワールドカップ3回優勝の強豪国ドイツにおけるサッカーの
創始者とされるコンラート・コッホの姿を描いた作品。
1874年、帝政ドイツの古都ブラウンシュヴァイクの名門カタ
リネウム校に1人の教師が赴任する。その学校は、帝政ドイ
ツの当時の風潮を色濃く反映し、生徒は教師に全く服従の世
界だった。
そんな中でイギリス帰りの教師は、自由な風を生徒の間に吹
き込もうとしていたが、生徒の中にも親に絶対服従の態度を
示す者もいた。それでも比較的に進歩的な校長の許、生徒の
意識改革を試みた教師は…
当時の帝政ドイツは、フランスとの戦いに勝利して軍事色が
強く、学校の体育授業は行進や器械体操など軍事教練的なも
のが中心だった。一方、次の敵はイギリスとの世論もあり、
そのためイギリス発祥のサッカーなどは嫌われるスポーツの
筆頭だったようだ。
そんな中でイギリス帰りの教師がサッカーを教え、仲間の大
切さやフェアプレーの精神を説いて行く。それ自体が危険を
伴う困難なものであったことは間違いない。そして教師と生
徒はその困難に立ち向かって行くことになる。
因に、実際のコンラート・コッホはイギリス帰りではなく、
軍医だった義理の父親を通じてサッカーを知り、体育教師の
協力も得て球技の普及に務めたようだ。しかし映画はコッホ
の教育方針などを明確にするため脚色されているものだ。
でもまあ、本作はドイツ映画であるから、帝政ドイツ当時の
風潮などは本作に描かれた通りであったのだろうし、そんな
中でサッカーを普及させた功績は充分に称えられるべきもの
と言える。

主演は、2005年3月紹介『ラヴェンダーの咲く庭で』などの
ダニエル・ブリュール。他に2010年9月紹介『白いリボン』
などのブルクハルト・クラウスナー、2005年5月紹介『ヒト
ラー最後の12日間』などのユストゥス・フォン・ドーナニー
らが脇を固めている。
監督は、アシスタントディレクターの出身で本作が長編デビ
ュー作のセバスチャン・グロブスラーが担当した。
まあ史実とはかなり異なるようだし、その辺がどうなの?と
も思えるが、映画の物語自体は感動的に作られているし、特
にスポーツを通じた人格形成という意味では、理解しやすい
作品になっていた。できたらサッカー協会の推薦でも得たい
ところだ。


『強奪のトライアングル』“鐵三角”
2005年9月紹介『セブン・ソード』などのツイ・ハークと、
1996年『マキシマム・リスク』などのリンゴ・ラム、2010年
11月紹介『MAD探偵』などのジョニー・トー。香港映画を
代表する3人の監督が協力したクライムサスペンス。
物語は、1人の男性が宝石店強盗に誘いを受けているところ
から始まる。ところがなかなか乗り気にならない男に、別の
男性がもっと大きな儲け話を耳打ちする。それはビルの地下
に眠る宝箱で、男性はそれを奪う克明な計画も立てていた。
こうして主人公の家族も含む一味と、強盗団と警察も絡み、
欲に駆られた男たちの奇想天外な一夜の闘いが開始される。
計画はハークが発案し、ラムとトーに持ちかけたそうだが、
最初のパートをハークが監督してその作品をラムに渡し、ラ
ムはそこから続きを監督してその作品をトーに渡す。そして
締め括りをトーが作り上げたようだ。
しかも3人の監督はそれぞれが指名する脚本家で物語を作る
が、監督と脚本家は他のパートのスタッフと話し合ってはい
けないとのこと。こうして3監督が30分づつの短編を作り、
それらを繋げて1本の長編とした…というものだ。
そういえば昔、横田順彌、かんべむさしらの当時の若手SF
作家がリレー小説を書いたことがあったが、前の監督の作品
だけを観てその続きを描くというのは、それと似たようなも
のだ。
そしてスターターを務めた横田氏が当時話していたところで
は、最初を書くのは勝手にやれるから簡単だが、続きを書く
方がいろいろ考えて書けるので面白いかもしれない。書いた
自分が気づかなかった伏線で話を展開されたのには驚いた…
とのことだった。
多分本作の3人の監督もそんな気分だったと思われるが、そ
れにしてもその展開はかなりの奇抜さで、1人の監督では恐
らくこうはならなかったと思えるもの。その展開の無茶苦茶
さが、本作の面白さだとも言える。

出演は、サイモン・ヤム、ルイス・クー、スン・ホンレイ、
ケリー・リン、ラム・カートン、ラム・シュー。香港映画界
のベテランたちが3人の監督たちの挑戦に協力している。特
にシューの登場は強烈だった。

『プロメテウス』“Prometheus”
1979年『エイリアン』1982年『ブレード・ランナー』など、
映画界に数々の金字塔を打ち立ててきたリドリー・スコット
監督による最新超大型SF作品。
物語の始まりは2089年、スコットランドの孤島で35000年前
の洞窟壁画が発見される。そには年代を超えたあるメッセー
ジが描かれていた。それは、人類誕生の鍵を握る異星人の存
在を示すものとものと考えられた。
そして2093年。巨大企業ウェイランド社が巨費を投じて派遣
したプロメテウス号は2年間の冷凍睡眠から目覚めた17名の
隊員たちと共に、荒涼とした大地の広がる惑星を前にしてい
た。そして惑星に着陸した隊員たちは調査を開始するが…
隊員たちの医療管理を行う精巧なアンドロイドや、全自動の
手術台、さらに洞窟内を探査するシーカーボールのような探
査機や隊員の装備など、様々なギミックに彩られて人類発祥
の謎が解かれて行く。そこには新たな物語の始まりも示され
ていた。

出演は、2009年10月及び2010年7月紹介『ミレニアム』3部
作などのノオミ・ラパスと、今年2月紹介『SHAME』などの
マイクル・ファスベンダー。他にシャーリーズ・セロン、ガ
イ・ピアースらが脇を固めている。
さらに『マイティ・ソー』のイドリス・エルバ、『ホット・
ファズ』のレイフ・スポール、『月に囚われた男』のベネデ
ィクト・ウォン、『アクロス・ザ・ユニバース』のローガン
・マーシャル=グリーンらの面々が隊員を演じている。
元々の企画はスコット監督によるもののようだが、具体的な
物語の展開が難しかったようだ。しかしその物語を、2008年
12月紹介『パッセンジャーズ』などのジョン・スペイツと、
昨年8月紹介『カウボーイ&エイリアン』などのデイモン・
リンデロフが完成。スコット監督もこれならということで映
画化が行われた。
今回、僕は残念ながら事前に情報を得てしまっていたが、長
年SF映画を見続けてきた人には最高の贈り物と言って良い
作品。しかも、現代最高のヴィジュアリストとも言えるスコ
ット監督がそれを3Dで映像化した。これはSF映画ファン
こそが観るべき作品だ。


『空飛ぶペンギン』“Mr.Popper's Penguins”
ジム・キャリーの主演によるファミリー・コメディ。全米で
は4週連続トップ10入りを果たした作品が、日本ではDVD
リリースとなり1回だけの試写が行われた。
主人公は、歴史あるニューヨークの不動産会社で物件の買収
交渉が専門のエリート営業マン。仕事は100発100中で近々経
営陣への参加も期待され、高級アパートに住む優雅な暮らし
だが、実は仕事一筋が禍して家族とは別居、子供とは週末だ
けの面会だ。
そんな彼の父親も冒険家で親子はあまり会えなかったもの。
その父親の死が伝えられ、彼に最後のプレゼントが届く。そ
れは保冷コンテナに納められたペンギン。しかも6羽が彼の
生活に雪崩れ込んでくる。そのペンギンに週末来た子供たち
は大喜びだったが…
この主人公に、交渉先のセントラルパークに建つレストラン
のオーナーや、ニューヨーク動物園の飼育員、さらにアパー
トの住人や主人公の秘書や勤務先の経営陣などが絡んで、都
会でペンギンを飼うという夢のようなお話が展開される。
原作は、1939年のニューべリー賞を受賞したリチャード&フ
ローレンス・アトウォーターによる児童書。原作では主人公
はビジネスマンではないし、ペンギンの贈り主も父親ではな
いようだが、その他の展開では原作を巧みに現代化している
ようだ。

キャリー以外の共演者は、『スパイキッズ』などのカーラ・
グギーノ、『ジェシカおばさんの事件簿』などのアンジェラ
・ランズベリー、2011年2月紹介『抱きたいカンケイ』など
のオフィリア・ラヴィボンド。
脚本は、2010年に“Hot Tub Time Machine”という作品を発
表しているジョン・モリス、ショーン・アンダースのコンビ
と、2009年4月紹介『ボルト』に関っているジャーリド・ス
ターン。因にモリスとアンダースは、キャリー製作の“Dumb
and Dumber Sequel”にも起用が発表されている。
監督は、2008年『スパイダーウィックの謎』などのマーク・
ウォーターズが担当した。
キャリーのコメディは、2009年1月紹介『イエスマン』など
は比較的判りやすいが、アメリカ文化に根差した作品はなか
なか難しい。しかし本作は、ニューヨークでペンギンを飼う
という発想がファンタスティックで、それに加えるペンギン
の愛らしさなどでは観客へのアピールも充分と言えそうだ。
なおペンギンはほとんどがCGIで描かれており、それは愛
らしい姿を存分に見せてくれるものだ。



2012年07月01日(日) ピラニア2、凍える牙、トガニ、セブン・デイズ・イン・ハバナ、かぞくのくに、DON'T STOP、鍵泥棒メソッド、LIGHT UP NIPPON+Valerian

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※
※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※
※方は左クリックドラッグで反転してください。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ピラニア・リターンズ』“Piranha 3DD”
2011年7月紹介『ピラニア3D』の続編。前作でリゾート地
の湖に現れた太古のピラニアの群れが、本作ではウォーター
パークを襲撃。その模様が3Dの画面に写し出される。
物語の舞台は、新装オープンの私設ウォーターパーク「ビッ
グ・ウェット」。所有者は若い女性とその義父だが、2人の
間には確執があるようだ。そして義父のアイデアで新装され
たパークには、大人向けの企画が満載だった。
一方、ウォーターパークには近くの水源地の水が引かれてい
たが、その水源地にピラニアが侵入。それに対してパークの
取水口には異物の侵入を防ぐフィルターが設けられていたが
…。ピラニアは思わぬところからパークに侵入を開始してい
た。
プロローグでは前作の騒動で廃虚になってしまったリゾート
地の風景が紹介され、そこから一転、華やかなプレオープン
のウォータパークにシーンが繋がる。それは前作に勝るとも
劣らないこれから起きる惨劇を期待させるものだ。
しかもそこには前作以上の乱痴気ぶりや、さらに前作でお馴
染みになったキャラクターも登場して物語が盛り上げられて
いる。

出演は、2011年6月紹介『ザ・ウォード』などのダニエル・
パナベーカー、2009年『ハロウィン�供戮覆匹離泪奪函Ε屮�
シュ、2011年Esquire誌で、生存中最もセクシーな女性No.1
に選ばれたカトリーナ・ボーデン。
前作から引き続きのクリストファー・ロイド、ヴィング・レ
イムス、ポール・シェアー。それに往年の人気TVシリーズ
『ベイウォッチ』などのデヴィッド・ハッセルホフ、2011年
10月紹介『宇宙人ポール』などのデヴィット・ケックナー、
2008年2月紹介『フィースト』などのクルー・ギャラガーら
が脇を固めている。
脚本は、『フィースト』シリーズや『ソウ』シリーズの後半
4作を手掛けたパトリック・メルトンとマーカス・ダンスタ
ン。監督は『フィースト』シリーズのジョン・ギャラガーが
担当した。
物語は前作以上に仕掛けたっぷりだが、前作でエリザベス・
シューの一家が見せたような人間ドラマは多少希薄になって
いる。でも本作の観客にはそんなものは不要かな。なお、日
本での鑑賞制限はR18+で、前作より1ランク上になった。


『凍える牙』“하울링”
1996年発表の乃南アサ原作・第115回直木賞受賞のミステリ
ー小説を、舞台を韓国に移して映画化した作品。
物語は、地下駐車場で男の身体が突然炎上して死亡するとい
う事件から始まる。状況から自殺と見られた事件の捜査は、
1人の窓際刑事と彼の許に配属されたばかりの新人女刑事に
任されるが、彼らは意外な事実を発見して行く。そして第2
の事件が起きる。
狼の血を引く大型犬による咬殺。それは特別な訓練を受けた
犬だけが為し得る犯行。やがて主人公たちはその訓練を施し
た訓練師の許に辿り着くが、事件はその逮捕だけでは終らな
かった。
映画の後半には疾走する大型犬をバイクで追尾するシーンな
ども登場し、回想シーンなども交えて犬の魅力も巧みに演出
されていた。

出演は、2004年1月紹介『殺人の追憶』などのソン・ガンホ
と、2005年3月紹介『英語完全征服』などのイ・ナヨン。脚
本と監督は、2004年『マルチュク青春通り』などのユ・ハが
担当した。
日本では先に、2001年に天海祐希主演と2010年に木村佳乃主
演によるテレビドラマ化があるようだが、背景風俗などは韓
国を舞台にしても違和感はなく、韓国でも初登場1位を獲得
したのは頷けるところだ。特にソンの板に着いた中年刑事ぶ
りが良かった。
ただ、最初の人体発火事件とその後の連続咬殺事件が、焼死
体に残された咬み傷だけでは繋がりが弱い気がするが、原作
もその通りなのかな。プロローグで人体発火の衝撃は映画的
には良いが、物語的にはもう少し明確な繋がりが欲しい感じ
はした。
その犬のシーンでは、上にも書いた疾走シーンの美しさや、
その他の名演技もなかなかのものだが、実は出演しているの
は訓練された犬ではないのだそうで、ディジタルで大量に撮
影された素材の中から名シーンを編集するのは大変な作業だ
ったそうだ。
しかし、疾走する犬とバイクと乗用車の映像を巧みに構成し
た一連のシークェンスは、登場人物(犬)の姿を見事に写し
出す名シーンとなっていた。
それにしても、日本でウルフドッグと言われても何か…な感
じだが、韓国が舞台だと納得できるような感じもする。これ
は僕の思い込みかな?


『トガニ 幼き瞳の告発』“도가니”
2005年に韓国の田舎町・霧津で起きた実際の事件に基づく小
説の映画化。
主人公は美術の教師。本来は画家だが、美術学校の恩師の斡
旋で食べるための職として養護学校・慈愛学園に赴任する。
しかしそこで職を得るためには、最初に大金の運営協力費を
要求されたりもする。
その金は母親が自宅を売って工面し、ようやく慈愛学園での
職を得た主人公だったが、彼が最初に目撃したのは、職員室
で殴打される障害者の男子生徒の姿。そしてその男子生徒の
同じく障害者の弟は最近鉄道事故で亡くなったという。
だが、慈愛学園で行われているのはそれだけではなかった。
こうして生徒と共に人権保護団体に援護を求めざるを得なく
なる主人公だったが、さらにそこには苦難の道が待ち構えて
いた。

出演は、ドラマ『コーヒープリンス1号店』や2011年5月紹
介『あなたの初恋探します』などのコン・ユと、2011年10月
紹介『人喰猪、公民館襲撃す!』などのチョン・ユミ。他に
キム・ジヨン、チャン・ガン、キム・ミサン、2008年3月紹
介『光州5・18』などのオム・ヒョソプらが脇を固めてい
る。
また障害児を演じたキム・ヒョンス、チョン・イソン、ペク
・スンファンも、多くの映画やドラマに出演する子役たちの
ようだ。
脚本と監督は、2007年『マイファーザー』という作品が高評
価を受けているファン・ドンヒョク。なお脚本は、韓国小説
文学賞などの受賞作家コン・ジヨンが2009年に発表した小説
に基づいている。
プレス資料には、日本でも約6日に1人の子供が虐待によっ
て殺されているという記事が寄せられていたが、主に家庭内
の事件である日本とは条件が違う話だ。ただ日々伝えられる
教職員による盗撮の報道などを見ると、日本人の品性も変わ
るものではない。
ただ映画の中で、示談で罪を逃れたり、執行猶予付きの「有
罪」判決で大喜びする被告たちの姿は良く判らなかったとこ
ろで、これはどちらも自らの罪の存在は認めているのだし、
そんな連中が復職しているという最後の字幕には唖然とさせ
られた。
日本もそうなのだろうか。


『セブン・デイズ・イン・ハバナ』“7 días en La Habana”
キューバのハバナを舞台にした月曜日から日曜日までの7日
間の物語を、それぞれ俳優のベネチオ・デル=トロや2010年
3月紹介『エンター・ザ・ボイド』のギャスパー・ノエら、
7人の監督によって描いたオムニバス作品。
「ユマ」と題した月曜日はアメリカ人観光客の若者、「ジャ
ム・セッション」の火曜日は映画祭に招かれた東欧の監督、
「セシリアの誘惑」の水曜日は地元歌手、「初心者の日記」
の木曜日はパレスチナ人のジャーナリスト。
さらに「儀式」と題された金曜日は地元の少女、「甘くて苦
い」の土曜日はテレビ出演もする精神科医、「泉」の日曜日
は朝早くから祭壇を作る女性。これらの主人公たちの行動な
どを通してハバナの人々が営む生活や伝統が描かれる。

監督は、月曜日がデル=トロ、火曜日はアルゼンチンのパブ
ロ・トラペロ、水曜日はスペインのフリオ・メデム、木曜日
は2003年3月紹介『D.I.』のエリア・スレイマン、金曜日
がノエ、土曜日は2001年12月紹介『バスを待ちながら』のフ
ァン・カルロス・タビオ、日曜日はフランスのローラン・カ
ンテ。それぞれが独自の色彩の作品を描いている。
出演は、月曜日のジョッシュ・ハッチャースン、火曜日の映
画監督でもあるエミール・クストリッツァ、木曜日のスレイ
マン監督の他は、いずれも地元の水曜日はメルヴィス・エス
テベス、金曜日はオテロ・レンソリ、土曜日はミルタ・イバ
ラ、日曜日はナタリア・アモーレ。因に日曜日のナタリアは
実際にその家に住む女司祭だそうだ。
これらの人たちによって正に今のハバナの様子が描かれる。
そこにはもちろんフィデル・カストロの姿も登場するが、全
体的な印象は共産国というよりは自由で奔放な民衆の姿であ
り、ソ連の庇護がなくなって生活水準などはかなり低下して
いるかも知れないが、それでも逞しく生き続けている人々の
姿だ。
それらが軽やかなキューバの音楽と共に描かれる。中でもノ
エ監督の金曜日では、妖しいリズムと共に描かれるファンタ
スティックな映像が、『エンター・ザ・ボイド』にも繋がり
興味深かった。


『かぞくのくに』
2006年7月『ディア・ピョンヤン』と、2011年2月『愛しき
ソナ』という2本のドキュメンタリー作品を紹介している在
日コリアン監督ヤン・ヨンヒによる初のドラマ作品。
朝鮮総聯の幹部を父親に持つ一家の兄妹の物語。1970年代初
頭の帰国事業によって、当時16歳たっだ兄は北朝鮮に渡り、
幼かった妹は両親と共に日本に残った。それから25年、北朝
鮮で妻子と暮らす兄が、病気治療のための短期の来日で帰っ
てくる。
1997年の物語。許された滞在期間は3カ月。その間に兄は病
院の検査を受け、同窓会に出席してかつて思いを寄せた女性
と再会し、妹とショッピングに出掛けて自らの思いを妹に託
す。しかしそれらの行動は監視者によって見張られていた。
監督は、そこに現れたものしか写せないドキュメンタリーで
はない、真実の姿をドラマで描きたかったのだそうだ。特に
描かれた兄妹の会話は、正に真実の通りで、妹はその通りの
言葉を兄に返したとのことだ。
ただし、監視員との対話や別れのシーンは、実際にはそのよ
うなことはしていないが、監督自身の思いがそこに表わされ
ているのだそうだ。因に別れのシーンではシナリオにはなか
った場面が即興で演じられているようだ。

出演は、2009年6月紹介『空気人形』などの井浦新と2012年
3月紹介『愛と誠』などの安藤サクラ。安藤は2007年9月紹
介『風の外側』でも在日の役だったが、そういう風貌なのか
な。また井浦は最近ARATAの芸名から改名したそうだ。
他に韓国俳優で監督でもあるヤン・イクチュン。さらに京野
ことみ、宮崎美子、津嘉山正種、諏訪太朗らが脇を固めてい
る。因に日本側の配役には日本語が正確に喋れるとという条
件から日本人の俳優が起用されている。
結末の展開は事実の通りだそうだが、その理由はいまだに監
督にも不明とのこと。そしてその後のことは、監督の過去の
ドキュメンタリーにも描かれているものだ。
帰国事業の問題は、部外者の我々にはほとんどその実態など
は不明だが、今回の作品に関連した監督のベルリン国際映画
祭での発言などを読むと、日本人の側にもその原因の一部は
あるようで、その辺を描いた別のドラマ作品も期待したくな
った。

なお本作は、ベルリン国際映画祭のフォーラム部門で上映さ
れ、国際アートシアター連盟賞を受賞している。

『DON’T STOP』
2006年7月紹介『日本以外全部沈没』などの俳優小橋賢児が
2007年に俳優を休業し、渡米や世界放浪などを体験した後に
帰国。新たに映像作家として復帰した長編第1作のドキュメ
ンタリー。
起業家で作家の高橋歩と、元はバイカーだったが25歳で起こ
した事故により半身不随となり、以来20年間寝たきりの生活
を送っているCAPと呼ばれる男性が、ルート66を走行する
という男性の夢を実現するために出発した旅の記録。
作品では、最初に高橋とCAPの来歴や出会いなどが簡潔に、
且つ過不足なく紹介され、続いて旅の参加メムバーなども紹
介される。そしてエルパソから北進してルート66に合流、
そこからLAまでの西半分の旅が開始される。
ところがその旅というのが、初端から豪雨に見舞われるは、
車の破損や故障、さらにはバイクの事故まで、たった10日間
の旅なのにトラブルが続出、そしてメムバー内の対立など、
ドラマが展開されて行く。
さらにCAPの自らのもどかしさから来る感情の起伏や、それ
に応じ切れない周囲の人たちの心の動きなども丁寧に捉えら
れ、それらがバランス良く見事に描かれて行く。その一方で
ホワイトサンズやモニュメントバレーなども紹介され、そこ
での人々との出会いや交流などが描かれる。
いやあ、これが本当にたった10日間の旅の記録なのか、驚か
されるくらいのヴァラエティに富んだ内容で、状況から見て
演出があるとは思えないが、仮にあっても素晴らしい作品に
なっていた。そして題名に託されたメッセージも明確に伝わ
ってくる作品だった。

監督の小橋は、俳優の頃もちょっと甘いマスクで気に入って
いる役者の1人だったが、監督に転身して、しかも演出なし
のドキュメンタリーでここまでいろいろなものを呼び込める
才能というか運の良さみたいなものにも感心した。
なお本作は、昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映さ
れ、SKIPシティアワードを獲得して第2弾作品支援の対象と
なっている。ぜひとも第2作にも期待したい。

『鍵泥棒メソッド』
2008年『アフタースクール』が高評価の内田けんじ脚本・監
督による長編第2作。
主な登場人物は3人。売れない役者の男性と希代の殺し屋、
それに婚期に遅れた女性編集者。役者は自殺をし損ねて風呂
屋に行き、そこで殺し屋と遭遇。ある偶然から殺し屋に成り
済ます。一方の殺し屋は記憶を喪失し、自分は売れない役者
と思い込む。
そして女性編集者は役者と思い込む殺し屋と知り合い、彼の
人生を一途に見つめる人柄に引かれて行くが…。そこに殺し
屋に仕事を依頼した暴力団のボスや、標的の女性などが絡ん
で話が展開される。

出演は、6月紹介『るろうに剣心』などの香川照之、2011年
5月紹介『日輪の遺産』などの堺雅人、2009年2月紹介『GO
EMON』などの広末涼子。他に、荒川良々、森口瑶子。さらに
小山田サユリ、木野花、小野武彦らが脇を固めている。
最近は、再現ドラマのような実録作品やドキュメンタリーを
観る機会が多かった中で、久しぶりにドラマを観たという感
じの作品だった。
まあシチュエーションとしてはありそうもないし、こんなに
上手く行くことも有り得ないのだが。あったら面白いだろう
なと思わせる、そんな感じの作品だ。そしてそんな物語の中
で俳優たちが大芝居を繰り広げる。
特に香川は、冷徹な殺し屋と気弱な売れない俳優役を丁寧に
演じ分け、その中での恋愛感情なども巧みに表現していた。
一方の堺は気弱な中での大胆さを出す演技は、これは本領の
ような感じだ。そして広末も比較的表情を出さない中での健
気さを上手く演じていた。
それに物語上の伏線というか仕掛けが巧みで、それも正に映
画を観ている感じがして楽しかった。そこにお涙ちょうだい
の感動があるものでもないし、特別なカタルシスがあるもの
でもないが、これが映画だとはっきりと言える作品だ。
特にジグソウパズルのピースのようにばらばらにちりばめら
れた要素が、最後にピッタリと納まる快感はフィクションの
ドラマを観ているときの醍醐味と言える。それを気持ち良く
味合わせてもらった。


『LIGHT UP NIPPON〜日本を照らした、奇跡の花火〜』
2011年8月11日、3/11の震災の傷跡も生々しい東北の空を
彩った花火。その花火が打ち上げられるまでを追ったドキュ
メンタリー。
始まりは2011年の春。3/11以後の自粛ムードを受けて東京
湾大花火大会の中止が発表される。その中止の是非は本作で
は問われないが、その報道を見て「打ち上げられない花火は
どうなるのだろう」と、1人の男性が考える。
そして花火師に問い合わせた男性は、花火はすでに完成され
てあることを知り、それならその花火を震災の被災地・東北
で打ち上げられないかと考える。こうして東北地方の10カ所
以上の会場で、一斉に花火を打ち上げるという計画がスター
トする。
しかしそれは4月の時点、被災地はまだ混乱の中で、行政は
夏祭りの実施の検討すらできない状態だ。その中を実施に向
けて働きかけをする男性には当然批判の声や、単純に無理だ
とする声も聞こえてくるが…
昨年の官製の自粛ムードに関しては僕自身いろいろ考えると
ころもあったものだが、そこから一気に使われない花火を東
北で打ち上げようとは…。正にその発想の転換に拍手を贈り
たくなった。
しかもそこからの行動力の凄さ。プレス資料にはこの計画の
発起人の人物の情報は掲載されていなかったが、この行動力
には只者ではない感じがする。大体このドキュメンタリーに
してからが、最初からちゃんとした監督が同行している。
それはともかく、傍目にも無謀に見えるこの計画が、発起人
男性の熱意によって実現して行くまでの経緯は素晴らしいも
のだし、さらに計画が実施されたときの感動は観客にもスト
レートに伝わってきた。

監督は2011年11月紹介『UGLY』などの柿本ケンサク。CGI
なども使った映像は見事で、特に巻頭の実施状況をシミュレ
ーションする映像は、観客を巧みに当事者の感覚に誘導して
いる感じがした。
ナレーションを黒木瞳、音楽は坂本龍一が担当している。
なお、劇場公開及びDVDの売り上げによる本作の収益は、
今年の「LIGHT UP NIPPON」の実施のために使用されるそう
だ。
        *         *
 2006年3月紹介『アンジェラ』で「10本撮ったから監督を
卒業する」としていたリュック・ベッソン監督は、その後は
『アーサーとミニモイ』3部作に『アデル』『The Lady』と
以前に倍する勢いで監督作品を発表している。そのベッソン
監督の最新計画が発表された。
 その題名はまだ決定されていないが、作品は1967年に発表
された“Valerian”というコミックスの映画化。物語は宇宙
冒険を繰り広げる時間旅行者の捜査官を主人公にしたものだ
そうだ。因に原作はすでにアニメ化もされており、ウェブに
もいくつか動画が上がっている。
 ベッソンは元々コミックスの大ファンとしても知られてい
るが、このシリーズの作画を担当したジャン=クロード・メ
ジエールには、1997年『フィフス・エレメント』制作時のコ
ンセプトアートも依頼していたものだ。そしてベッソンは映
画化の脚本と監督も担当するというものだが…
 実はベッソン監督には、8月の撮影開始でロバート・デ=
ニーロ、トミー・リー・ジョーンズ共演による“Malavita”
というダークコメディが既にカンヌでのプレセールスを完了
しており、さらに2013年の最初の四半期にはアンジェリーナ
・ジョリーの主演によるアクションスリラーの監督も予定さ
れていて、その間を縫っての脚本の執筆と制作準備では、今
回の計画は少し先になりそうだ。


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井口健二