井口健二のOn the Production
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2009年04月26日(日) Blood、マン・オン・ワイヤー、色即ぜねれいしょん、真夏の夜の夢、精神、BASURA、トランスポーター3

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『Blood』
2004年『花と蛇』などの艶技で話題を呼んでいる杉本彩が、
2000年『弟切草』などの下山天監督の許、女吸血鬼役に挑戦
した作品。
物語の主人公は、公安課から捜査1課に転属してきた刑事。
転属の理由は…多分熱血漢がそれにより詰め腹を切らされた
というところのようだ。その刑事が、時効を迎えようとして
いる14年前の殺人事件の再捜査を始めるところからお話は始
まる。
その事件は、古い屋敷のメイドが惨殺されたもので、内部の
犯行と見られるが関係者には全員アリバイが成立した。そし
て刑事は、その屋敷の主だった女性の許を訪ねるが…
この屋敷の主を杉本彩が演じ、刑事役を津田寛治、そして女
が犯人と名指しする黒沼と呼ばれる男を要潤が演じている。
他にモデル出身の山口小夜、元ジュノンボーイの松田悟志、
ガッツ石松らか共演。
またスタッフでは、企画原案脚本を2004年『IZO』などの
武知鎮典、音楽を『カンフー・ダンク』などの吉川清之、V
FXは現在円谷プロの副社長を務める1994年『河童』などの
岡部淳也が担当している。
つまりスタッフもキャストも、上映時間85分の作品にしては
そこそこの顔ぶれが揃っているもので、それなりに気合いの
入った作品と言えそうだ。
吸血鬼ものというのは、プレス資料にも作品リストが挙げら
れていたが、古典的な名作も多くていろいろな制約もある。
それを如何に活かし、また新たな展開を生み出せるかが注目
となるものだが、本作はそれなりに考えられているように感
じられた。
特に、本物の吸血鬼となる為には血液が適合しなければなら
ない。しかし一般人にも1滴の吸血鬼の血とワインの与え続
ければ不死性を保てる…という設定は、過去にもあるものか
どうかは知らないが、いろいろな辻褄も合って良いアイデア
に思えた。
そして、その血を持った男女の葛藤や争いが繰り広げられる
という展開は、閉じた空間の中での物語とするには上手く作
られている感じがしたものだ。また映画では、その閉鎖空間
から一瞬外に出る展開も良い感じだった。
ただ、本作の結末部分は尻切れトンボとまでは言わないが、
ちょっと呆気なかったことは事実で、ここにもう少しドラマ
か捻りが欲しかった感じもする。それを加えて100分ほどの
作品になっていれば、僕は大満足かな?というところだ。
なおプレス資料によると、監督は『ブレードランナー』を演
出の手本にしているのだそうで、従って津田と要の役柄は、
ハリスン・フォードとルトガー・ハウアー…。他にもいろい
ろとSF映画への思い入れがあるようで、その辺はちょっと
気になる監督だ。


『マン・オン・ワイヤー』“Man on Wire”
今年の米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した
作品。
1974年、当時はまだ建設途中だったニューヨーク・ワールド
トレードセンター(WTC)のツインタワー屋上間に密かに
ワイアーを張り、無断の綱渡りを敢行したフランス人曲芸師
フィリップ・プティの記録を再現ドラマを交えて描いたドキ
ュメンタリー。
プティはそれ以前にもノートルダム寺院やシドニーの河川橋
の基部のタワー間など、いろいろな場所で無断の綱渡りを敢
行してその度に逮捕されるなど、近年話題の高層ビルの外壁
を登る蜘蛛男のような活動をしていたようだ。
そしてその集大成とも言えるのがWTCだった訳で、この時
も逮捕はされるが、一般民衆には喝采を浴び、以後は各地の
イヴェントなどに招かれて公式に綱渡りをするようになった
とのことだ。つまりその宣伝効果は抜群だったということに
なる。
なお映画は、プティの若い頃からWTCに挑むまでを描き、
そこでは恋人と一緒に綱渡りをするシーンなど、根っからの
綱渡り師であることが紹介される。一方、WTCへの挑戦で
は、その準備段階から決行までの様子がインタヴューと再現
ドラマで描かれる。
ただし時代が1974年では、家庭用VTRも普及する以前とな
るもので、残されている映像はほとんどがスチル写真、それ
を何とか動画的に処理はしているが、正直には物足りなくも
感じてしまうところだ。
しかし本作は各地で評価の高いものだが、結局アメリカ人に
は在りし日のWTCが映っているだけでも評価が高くなって
しまう訳で、本作がそれを抜きにしても評価されたかどうか
には多少の疑問も湧く。
実際に本作では上記の映像が揃っていないことも問題だが、
その他にもドラマによる再現も正確ではなく、特にWTCの
屋上での作業には、本当は3日間掛った筈なのにそのことが
明確に描かれていないのも変な話だった。
つまり、本当は4人だけでできた筈のないことが、さも頑張
りましたという風な感じで描かれていることには疑問も生じ
てしまったものだ。実際に設営ではメインのワイアーの他に
ステイを張るなどもしている訳で、本当の作業はこんなに簡
単にはできるものではない。
それを、取り落としたワイアーを引き上げるために苦労した
ことばかりをメインに描かれても、何かなー…という感じに
もなってしまう。できたら、その辺も含めた本当の正確な記
録を観てみたいものだ。

とは言え、「偉業」を行ったことへの達成感みたいなものは
伝わってくるし、空中を歩くことへの爽快感のようなものは
あって、それらはそれなりに良い感じではあった。
監督は、2006年9月紹介の『キング/罪の王』なども撮って
いるジェームズ・マーシュ。また、音楽を『リバティーン』
などのマイクル・ナイマンが付けている。

『色即ぜねれいしょん』
「マイブーム」「ゆるキャラ」など流行語の造語でも知られ
る漫画家みうらじゅん原作の自伝的漫画の映画化。同様の自
伝的漫画『アイデン&ティティ』も先に映画化されており、
その際の監督田口トモロヲが本作も監督した。
その前作を僕は観ていないが、ロックミュージシャンを目指
す若者の話とのことだ。それに対して本作は、それより前の
主人公が高校1年生の時の物語となっており、1958年2月生
まれの原作者からすると1974年頃のお話となるようだ。
その主人公は京都の仏経系の高校に通い、本人的にはミュー
ジシャンを目指して曲作りなどもしているようだが、特に何
かの目標があるような生活ではない。そんな主人公が友人に
誘われて隠岐島に行く話と、秋の学園祭でデビューを飾るエ
ピソードが描かれる。
原作者については、個人的にはあまり興味が無くて、深夜の
テレビ番組でくだらない下ねたを垂れ流している××文化人
ぐらいにしか認識していなかった。従って上記の前作も、確
か東京国際映画祭に掛かっていたとも思うが敢えて鑑賞はし
なかった。
それで今回もあまり気乗りはしなかったのだが、貰った試写
状は無駄にしない建て前なので、舞台挨拶付きの完成披露試
写を観に行ったものだ。それで観ての感想は、これはありか
なという感じの作品だった。
有名人の青春思い出話みたいな作品もいろいろ観せられてい
るが、正直嘘っぽ過ぎて耐えられない作品が多い中では、本
作はそれなりに理解もできる範囲だった。特に隠岐島と聞い
てニヤリとするのは…まあそんな時代のお話ということだ。
それでいて、そこからの主人公の行動がそれなりに常識的な
ところも評価できるもので、結局のところ僕もいろいろな面
でこの主人公と同じような境遇だったから、その辺が理解し
易かったところなのかも知れない。
取り敢えず、体育会系でもなく全学連でもなかった当時の学
生の姿はこんなものだったというところだろう。その姿が現
代の若者に理解されるかどうかは判らないが、その時代を過
ごしたものにとっては懐かしくもあり、甘酸っぱい気分には
させられた。
出演は、高校生バンド黒猫チェルシーの渡辺大知、銀杏BOYZ
の峯田和伸、くるりの岸田繁などミュージシャンが多いが、
それなりの演技はしている。特に峯田は、先週紹介した『U
SB』の時とはかなり違う好感の持てる雰囲気で驚いた。
共演は、映画出演は23年振りという堀ちえみが主人公の母親
役を演じている他、リリー・フランキー、モデルの臼田あさ
美。さらに大杉漣、塩見三省、山本浩司、木村佑一、安藤サ
クラらも出演している。
なお脚本を、『リンダ・リンダ・リンダ』『ニセ札』などの
向井康介が担当しており、それもポイントだったようだ。

『真夏の夜の夢』
シェイクスピアのコメディ・ファンタシー戯曲を、『ホテル
・ハイビスカス』などの中江裕司監督が沖縄を舞台に描き直
した作品。
沖縄には昔、キジムンという精霊がいてそれぞれの島を守っ
ていたが、やがて人々の心が自然から離れるに従って消滅し
て行った。そんなキジムンが今でも島を守っている小さな島
=世嘉富島。主人公はそんな島で育ち、少女の頃にキジムン
に出会い奇跡を貰った。
そんな少女は、やがて都会に出て恋を求めたが、破れて島に
戻ってくる。その島では村長の息子の婚礼を控えて人々はそ
の披露宴の準備などに忙しかった。そしてキジムンは、その
披露宴で神称える歌“弥勒節”が歌われれば、人々の心にキ
ジムンが復活すると考えていたが…
物語の全体は沖縄芝居の構成を採っており、最初には口上が
あって、さらに劇中では披露宴の席で演じられる寸劇も挿入
されている。その沖縄芝居の構成演出は平良進・とみ夫妻が
手掛けていて、いつもの訥々とした感じとは違った平良とみ
が観られるものだ。
撮影は、沖縄本島の北西約27kmの東シナ海に浮かぶ伊是名島
で行われ、島のシンボルでもある三角形の山や、数年前に発
見されたばかりという巨大なガジュマルの樹などの大自然が
見事に映像に納められている。
主演は、大河ドラマ『風林火山』などの柴本幸。また『ホテ
ル・ハイビスカス』以来の映画出演となる蔵下穂波がキジム
ン役を伸び伸びと演じている。因に映画のクライマックスで
もある“弥勒節”のシーンは、蔵下自身が特訓の末に歌って
いるそうだ。
その他、『イエスタデイズ』などの和田聰宏、『血と骨』な
どの中村優子らが共演。さらに現地沖縄の演劇人も多数出演
している。また映画の終盤に登場する巨大魚ガーラは、海人
が特別に捕獲した本物とのことだ。
原作通りの恋の秘薬も登場してファンタスティックな物語が
展開されるが、その背景には自然破壊の乱開発や過疎の問題
なども描かれていて、正に現在の沖縄の実情を描いた作品に
もなっている。
中江監督の作品は、前作のドキュメンタリーはちょっと意味
が判らなかったが、本作では再びファンタスティックな沖縄
に戻って安心な気分になれた。

『精神』
2007年5月に紹介した『選挙』の想田和弘監督による「観察
映画」の第2作。民間の精神病施設にカメラを持ち込み、そ
こで観察された現在の精神病医療の実態が写し出される。
因に映画の中では撮影の協力を求める文書なども紹介され、
そこでは前作の評判も謳われていた。つまり監督はその実績
を踏まえて本作に取り組んでいるもので、それがこの作品を
可能にしたということでもある。それにしても重大なテーマ
を選んだものだ。
撮影されているのは「こらーる岡山」という無床診療所。そ
こは山本昌知医師という精神病医が中心となって1997年に設
立されたもので、精神病患者の社会復帰を目標に、軽作業の
作業所やショートステイの施設などが運営されている。
その施設の中にカメラが入り、診療の様子や患者の生の声な
どが、すべて実名でモザイクなどの処理も一切なしに描かれ
ている。そこに写る患者たちの姿は、正直に言って健常でな
いことは明らかだが、同時にその苦しみも共有できるほどに
鮮明に描かれている。
精神病を扱ったドキュメンタリーでは、昨年11月にも『彼女
の名はサビーヌ』と『破片のきらめき』を紹介しているが、
どの作品も希望と絶望が表裏にあるようなものばかりで、そ
の現状の厳しさが心に残ったものだ。
そして本作でもそんな患者たちの現実が描かれると共に、さ
らに本作では日本の医療保険制度も見渡した厳しい現実も描
かれている。特に、保険制度の変更によりこのような診療所
の経営自体も立ち行かなくなると言う指摘には唖然とさせら
れた。
因に、映画のエンドクレジットには「追悼」として映画に登
場する3人の患者の名前が出てくる。それを観るだけでもこ
の患者たちの置かれた現実の厳しさが理解できるようだ。
なお本作は、昨年10月釜山国際映画祭でプレミア上映され、
上映後には当初40分の予定だった質疑応答が終電間際までの
1時間半に及ぶほどの関心を集めたそうだ。そして同映画祭
の最優秀ドキュメンタリー賞も受賞している。
精神病というのはとかく偏見が付き纏うものではあるが、こ
の作品を観ていると偏見を持つことの愚かしさは明確に理解
できる。だからといって自分が何か行動が起こせる訳ではな
いが、少なくとも偏見を解消する努力はしたいと思った。

『BASURA』
1995年に『忘れられた子供たち』という作品で、マニラ市郊
外のごみ捨て場スモーキーマウンテンでごみ拾いをして生活
する子供たちを描いた四ノ宮浩監督が、2001年の『神の子た
ち』に続いて3度フィリピンの実情を描いたドキュメンタリ
ー作品。
僕は前の2作は観ていないが、スモーキーマウンテンに関し
てはテレビの情報番組などである程度の知識は持っていた。
その状況は、特に衛生面に関しては過去の映画で観てきたリ
オやムンバイのスラムとは違った過酷さを感じたものだ。
そんな場所を再び取材した作品だが、実はスモーキーマウン
テン自体は1995年に政府の手で閉鎖され、その後2002年には
その傍に永住住宅が建てられて、以前にごみ捨て場に暮らし
ていた人々の多くはそこに住居を与えられていた。
しかし昨年来の世界不況では、フィリピンでも住まいはあっ
ても職が無いという状況になり、しかもごみを拾う場所も遠
く離れてしまっていては、生活の術を奪われている住人も多
くなってきているようだ。
そしてマニラの町にはストリートチルドレンが溢れ、その様
子は四ノ宮が取材を開始した20年前とほとんど変っていない
ようにも観えたとのことだ。もちろんここにも世界不況の影
響は否めないが、マニラの現状にはそれを超えている面もあ
りそうだ。
そんなフィリピンの主に子供たちの状況が、明確に描かれて
いる作品だ。そしてそれは、早急に援助の手を差し伸べなけ
ればならないような、かなり切迫した状況に陥っているよう
にも観えたものだ。
という作品なのだが、実は試写会では上映前に監督の挨拶が
あって、フィリピンの窮状が訴えられた。さらに上映の後に
も、僕は次の予定があって直ちに会場を出てしまったが、監
督からはさらにお話があったようだ。
一方、映画のエンドクレジットには、この映画の製作を支援
する人たちの長々とした名簿が上映されるなど、ちょっと異
様な雰囲気が漂っていた。
しかも映画の中では、他の取材チームから「クリスティーナ
(取材対象の名前)を支援している人たち」という呼び掛け
があったり、実際に監督がクリスティーナに仕事の手伝いを
させているシーンなども登場しているのだ。
従って本作は「やらせ」ではないけれど、被写体のクリステ
ィーナが意図的に動かされている場面もある訳で、これでも
ドキュメンタリーなのだろうか…とも感じられた。
もちろん映画をこのような窮状を訴える手段として利用する
ことは、方法としてはありだとは思う。しかしここまであか
らさまにされてしまうと、何か小首を傾げてしまうような気
分にもなってしまう。
しかもそれが、特定の個人に向けられているように観えるの
にも疑問を感じた。同様の作品では2月に『チョコラ!』を
紹介しているが、ドキュメンタリー製作者にはそれなりの冷
静さも欲しいものだ。現状がそれを許さない側面を持つこと
も理解はするが。


『トランスポーター3』“Transporter 3”
リュック・ベッソンの脚本製作で、2002年11月に初紹介した
ジェイスン・ステイサム演じるプロの運び屋フランク・マー
ティンが、2006年3月に紹介した第2作以来の復活をした第
3作。前作の紹介でも続きはありそうだと書いたが、その通
りの作品が2年振りに登場した。
しかも本作は、第2作がアメリカを舞台にしたちょっと小振
りの作品だったのに対して、ヨーロッパに舞台を戻し、正に
第1作の勢いを上回る大アクションの展開となっている。そ
してその舞台はヨーロッパ全土に拡大されているのだ。
物語の発端では、前作に続いて主人公は危険な稼業を引退し
たことになっている。しかしある経緯から現場に復帰。そし
て今回の荷物は、大きな防水の袋2つと車に同乗している若
い女。しかも彼女と主人公の手首には、車から約20m離れる
と爆発する装置が付けられていた。
この状況下で主人公は、携帯電話での指示に従いフランスか
らハンガリー、ドイツ、ルーマニア、そしてウクライナへと
車を進めて行くことになる。そしてその間に、コリー・ユン
振り付けの華麗なカンフーアクションと、思わず拍手したく
なるカーアクションが展開されるものだ。
しかもその背景には、ヨーロッパ国家間の環境保護条約締結
を巡って、危険な産業廃棄物の投棄を画策する政府間の陰謀
まであるという大スケールの物語が展開される。
共演は、テレビの『プリズン・ブレイク』が評判のロバート
・ネッパーと、本作でデビューを飾ったナターリャ・ルダコ
ワ。他にシリーズ共演者のフランソワ・ベルレアンもフラン
ス人刑事の役で再登場する。
因にルダコワは、ニューヨークで街を歩いているところをリ
ュック・ベッソン発見され、演技のレッスンから学んで本作
に起用されたとのこと。ちょっと『ジャンヌ・ダルク』の頃
のミラ・ジョヴォヴィッチに似た雰囲気もあり、彼の新ミュ
ーズとなりそうだ。
それにしても、主人公が車から離れられない設定の許、見事
なカーアクションが展開されるもので、そこには思わずニヤ
リとする部分まで絶妙の緩急で物語が進行されていた。この
手の設定は結構ボロが出やすいものだが、その点の神経は行
き届いていたようだ。
監督は、2003年8月に紹介した『レッド・サイレン』などの
オリヴィエ・メガトン。前作も高く評価したつもりだが、本
作でもそのアクション演出の切れ味は変っていなかった。た
だしロマンスシーンでは、実はベッソン自身が演出を担当し
ているそうで、新ミューズへの思い入れはかなり強そうだ。



2009年04月19日(日) USB、ボルト、フィースト2、海の上の君は…、そんな彼なら捨てちゃえば?、ブッシュ、消されたヘッドライン+製作ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『USB』
舞台作品における映像プランナーとして実績を持ち、2006年
ベルリン映画祭に出品された『カインの末裔』などの映画作
品も手掛けている奥秀太郎監督による最新作。
原子力施設を抱える町を舞台に、低濃度とされる放射能汚染
が始まり、その環境下で暮らす人々にいろいろな思惑が交錯
する。
主人公は、開業医の息子で医大を目指すも浪人6年目という
男性。その父親が亡くなり、病院は閉鎖、主人公にも多少の
焦りは見られるが、まだ悠長に暮らしている状態だ。そんな
主人公の周囲を放射能汚染が蝕み始め、またそれを利用しよ
うとする連中も現れる。
一方、主人公は浪人生活の中で手を出したギャンブルの借金
が嵩んでおり、地元の暴力団と思われる連中から、ドラッグ
の売人になることを強要される。さらに予備校で付き合った
女性が妊娠し、金の工面のために危険な医療実験の被験者に
もなるが…
この主人公を、2007年に『キャプテン・トキオ』を監督した
渡辺一志が演じ、脇役には桃井かおり、大森南朋、大杉漣、
野田秀樹らが配されている。他に、ロックバンド銀杏BOYZの
峯田和伸らが出演。
『キャプテン・トキオ』は、試写は観たがサイトにはアップ
しなかった作品で、何というか取り留めの無い物語の展開が
納得できなかった。今回の作品は、脚本も奥監督が書いてい
て直接の関係はないが、何となく取り留めの無さが似ている
感じもする。
それでこの2人の監督は、共に海外での評価は高いそうだか
ら、こんな作風が海外では評価され易いようだ。でも、僕は
あまり好きな感じではない。
今回の作品でももっと1本筋を通して描いた方が、いろいろ
とアピールもしやすいようにも思えるのだが、どうもそうい
う志向ではないようだ。でもまあ、何かを何となく感じられ
るところがそれで良いのかな。きっとそうなのだろう。
そんな作品だが、取り立てて嫌になるような部分は無かった
し、テーマが放射能汚染ということでは、現代における警鐘
でもある訳で、そんなことでこの作品は紹介しておくことに
したい。公開は6月上旬ごろのようだ。

『ボルト』“Bolt”
ピクサーの創設者ジョン・ラセターがディズニー・アニメー
ションの責任者になり、その第1作として製作された作品。
テレビの人気ドラマでスーパードッグとして活躍するタレン
ト犬が、誤ってハリウッドのスタジオからニューヨークに搬
送されてしまう。ところがそのタレント犬は、実はスタジオ
以外の世間を知らずに育てられ、自分を本物のスーパードッ
グだと思い込んでいた。
そんな世間知らずのタレント犬が、遠くハリウッドの飼い主
の許を目指して大陸横断の旅を開始する。そしてその旅に、
世間擦れした痩せこけの黒猫と、透明のボールに入ったまま
だがテレビには詳しいハムスターが道連れとなり…
飼われていた動物たちが遠く離れた飼い主の許へ向かって旅
をするお話というと、ディズニーの作品では1963年の“The
Incredible Journey”(邦題:三匹荒野を行く)が思い浮か
ぶ。本作がそこからヒントを得たのでは?という意見はアメ
リカでも出ていたようだ。
もちろん、現代のアメリカが舞台では背景は荒野ではなく、
主人公もタレント犬だったりと設定はいろいろ変ってはいる
が、飼い主を思う気持ちでその許を目指すというコンセプト
はディズニーが最も大切にしたいと思っているものだろう。
そして本作では、スーパードッグだと信じていた自分が、実
はただの普通の犬だったと判る挫折感のようなものが、現代
社会のいろいろな部分で共感を得られるような物語が作り上
げられていた。
声優は、アニメ初挑戦のジョン・トラヴォルタと、テレビの
“Hannah Montana”のマイリー・サイラス、他にマルカム・
マクダウェルも重要な声を務めている。
因に、本作はディズニーが初めて当初から3Dの設計で製作
した作品となっている。今回の試写は2Dで行われたが日本
公開は8月1日でまだ先なので、それまでには3Dでの試写
も観せて貰いたいものだ。
また本作の上映では、“Tokyo Mater”(邦題:メーターの
東京レース)という短編が併映される。作品は2006年『カー
ズ』に登場したレッカー車のメーターが東京に来てドリフト
レースに参加するというものだが、その途中に出てくるカタ
カナ書きの看板がファンには注目だ。

『フィースト2−怪物復活−』
             “Feast II: Sloppy Seconds”
Project Greenlight受賞作品で昨年2月に紹介した『フィー
スト』の続編。
お話は前作の続きで、前作で荒野の一軒家を襲った怪物集団
が、本作では田舎町に襲いかかる。そこには前作で生き残っ
た老バーテンダーや、前作に登場した女バイカー=ハーレー
・ママの双子の姉妹(同じ女優が演じる)もいたりして、怪
物集団との戦いが繰り広げられる。
そして今回のサーヴァイヴァたちは、町中のとある工場に追
いつめられ、そこからの決死の脱出が敢行されることになる
のだが…
前作は、アメリカ映画では久しぶりの本格スプラッターだっ
たが、本作は前作にも増した仕掛けや映像が展開される。そ
れにお笑いのシーンも、前作にも増してブラックになってお
り、正にスプラッターの粋が凝らされた作品というところだ
ろう。
監督は、前作と同じくジョン・ギャラガー。本作にも出演し
ているベテラン俳優クルー・ギャラガーの息子だ。そして脚
本も前作と同じくパトリック・メルトンとマーカス・ダンス
タン。脚本家の2人は『ソウ4』『5』にも起用されるなど
売れっ子になっている。
出演は、前記のギャラガーに加え、『幸せのレシピ』のジェ
ニー・ウェイド、今回は妹役のダイアン・ゴールドナーが前
作から再登場。他に、『POTC』のマーティン・クレバ、
監督の弟のトム・ギャラガーなど、個性派というかいろいろ
な顔ぶれが揃っている。
因に本作は、アメリカ国内の映画祭で上映された他はDVD
での公開となっており、劇場で一般公開されるのは現在のと
ころ世界中でも日本だけとなっている。しかもノーカットの
無修正公開となるようで、日本は他の規制は多いがこういう
ものだけは寛容だ。
また、本作に続いては『フィースト3−最終決戦−』も公開
されるもので、これで3部作の完結となるようだ。
『ソウ』シリーズはまだまだ続く計画で、物語もそれを意識
した明確な結末のない作り方になっているが、その脚本家た
ちがちゃんとした決着を付けられるかどうかも興味が湧く。
第3部の試写は来月行われるので、それを観たらまた報告す
ることにしたい。
ただまあ、前作に比べると、怪物がかなり弱く感じるのは、
物語の進行上仕方ないのかも知れないが、その辺が最終話で
修正されるかどうかも気になるところだ。

『海の上の君は、いつも笑顔。』
2003年『星砂の島、私の島』、2005年『ライフ・オン・ザ・
ロングボード』といういずれも海をテーマにした作品を発表
している喜多一郎監督の最新作。
喜多監督作品では、昨年4月に『サンシャイン・デイズ』と
いう作品を紹介しているが、本作はそれに続けて茅ヶ崎を舞
台にしたもので、海を愛する若者たちの青春ドラマが繰り広
げられる。
主人公は、県立茅ヶ崎高校に通う女子高校生。顧問の教師か
らバスケ部の次期キャプテンに指名されるほどの運動神経の
持ち主だが、生活に目標が無いためか何をやるにも投げやり
な態度だ。
そんな彼女が、密かに憧れる同級生がサーファーと知り、兄
の遺品のボードを持ち出して海に挑む。ところが波に巻かれ
てボードを失ってしまい、しかも兄の三回忌も近付いて、彼
女は必死にボードの行方を捜すのだが…
実は彼女の兄は将来を属望されたサーファーだったが、プロ
デビュー戦の直前に交通事故で命を落としていた。彼女のボ
ード捜しは、そんな兄の軌跡をたどる旅にもなって行く。そ
してそこにはいろいろな出会いや新たな世界が開けて行く。

主演は『神様のパズル』などの谷村美月。共演は、『さらば
仮面ライダー電王』の桜井通、『エリートヤンキー三郎』の
山本ひかる、『コドモのコドモ』の甘利はるな。その脇を、
伊藤裕子、山本太郎、大杉漣、津田寛治、『サンシャイン』
の麻宮美果らが固めている。
もの捜しが亡き人の軌跡を辿り、そこに主人公の目標が生ま
れて行くという展開は過去の映画にもありそうなお話だが、
そこに茅ヶ崎から江の島までの海岸の風景が重なって、とに
かく明るく元気な作品を観せて貰った。

因に、隣町の平塚で生まれ育った僕は、今でも月に数回茅ヶ
崎通過してサッカーの応援に行くが、映画には以前に平塚競
技場に来てくれていた茅ヶ崎高校のチアリーディング部の姿
や、HANAダンスタジオの生徒の演技なども登場して嬉しく感
じられた。
ただ、その隣町の平塚の話が一切出てこないのも気になった
ところだが、実は『サンシャイン』の試写の時に「平塚市長
にも表敬訪問に行ったが、けんもほろろだった」というよう
なぼやき声が聞こえてきて、そんな影響かなとも思ってしま
った。
もっとも海流の関係で、茅ヶ崎で流されたものが江の島方向
に行くのは理に叶った話ではあるのだが…。現平塚市長の地
元意識の低さも地元民には良く知られたところなのだ。

『そんな彼なら捨てちゃえば?』
            “He's Just Not That Into You”
『SEX AND THE CITY』の脚本スタッフだったグレッグ・ベー
レントとリズ・タシーロ共著によるベストセラー本からの映
画化。男女の出会いも複雑な現代社会の中で、恋に憧れる男
女の姿がアンサンブル劇として描かれる。
アンサンブル劇の中心となるのは『ウォーク・ザ・ライン』
などのジェニファー・グッドウィン扮するジジ。失恋履歴多
数の彼女は出会った男のいろいろなサインに心をときめかせ
るが、『ギャラクシー・クエスト』などのジャスティン・ロ
ング扮するバーテンダーのアレックスには、いつも「それは
違う」と忠告される。
因に原題は「彼は君には興味が無い」というような意味だそ
うで、そんな男女の心のすれ違いが、上映時間2時間10分に
たっぷりと描かれている。監督は2005年9月に紹介した『旅
するジーンズと16歳の夏』などのケン・クワピス。この種
の作品はお手のものだ。
上記以外の出演者は、ジェニファー・アニストン、ジェニフ
ァー・コネリー、ドリュー・バリモア、スカーレット・ヨハ
ンソン、ベン・アフレック、ケヴィン・コノリー、ブラッド
リー・クーパー、そしてクリス・クリストファースン。
主役級を揃えた女優陣に比べて男優がちょっと弱いような感
じもするが、映画自体がそういうお話なのだからそれは仕方
がない。それにしても、アニストン、コネリーの2人が、正
に填り役という感じなのも面白かった。
なお映画の製作はフラワー・ピクチャーズ。従ってバリモア
は製作総指揮も兼ねているもので、彼女の交遊関係も伺われ
る作品でもあるようだ。脚本は、バリモア主演の1999年作品
『25年目のキス』などのアビー・コーンとマーク・シルヴ
ァスタインのコンビが担当している。
アンサンブル劇というのは、話が入り組んでくると結構観て
いて混乱することがあるものだが、その点では本作は整理も
うまく着いている感じがした。もっとも本作では女優陣に見
慣れた顔が多くてそれも判りやすかった所かも知れない。そ
の分、男優側ではちょっと混乱してしまったが…
いずれにしても、今まであまり描かれなかった男女の本音が
観える作品ということでは、今更こういう事態には陥らない
と思う者にとっても面白く観ることができた作品だ。

『ブッシュ』“W.”
1991年『JFK』、1995年『ニクソン』を手掛けたオリヴァ
・ストーン監督が、3度目に挑んだアメリカ大統領を描く作
品。しかもアメリカでは、本人が在職中の昨年10月に公開さ
れたものだ。
因に、『JFK』は撮影、編集のオスカーを受賞し、作品、
監督、脚本などの候補になり、『ニクソン』では主演男優、
助演女優などの候補にも挙がったものだが、本作は0。同じ
大統領ものの『フロスト/ニクソン』が5部門の候補になっ
たのと対照的だった。
とはいうものの、史上最悪とも言われた第43代アメリカ大統
領の最後を飾るには、この映画は全く相応しいものだったと
言えるだろう。因にストーン監督は、「ブッシュが笑える奴
だったから映画にした」とまで言い切っている作品なのだ。
アメリカ史上2組目の親子で大統領になったブッシュ父子。
しかし、父親の第41代大統領が本当に望んでいたのは、長男
ではなく次男のジェブ(前フロリダ州知事)を大統領にする
ことだった。
元々長男は、親の威光で名門大学に合格したものの学生生活
では問題を起こして警察に逮捕されたり、卒業後はどこに就
職しても長続きせず、それでも父親の大統領選挙では選対を
指揮して辣腕を発揮するものの、父親からは労いの言葉も貰
えなかった。
そんな男のエディプス・コンプレックスが、ふと出会った宗
教家に感化され、やがて神の啓示を聞いたと言い出して大統
領選に出馬。大統領になるも9/11後には湾岸戦争で父親も
行わなかったイラク侵攻を実施してアメリカを泥沼へと引き
摺り込んでしまう。
という、アメリカに不幸の道を突進ませたジョージ・W.・
ブッシュの「実像」が描かれる。確かに、実にお馬鹿な奴が
大統領になったことは判る作品だが、これを気楽に笑い飛ば
せるほどには、まだ彼の悪業の跡が消えていないことも事実
だろう。
主演は本人も名優の息子というジョッシュ・ブローリン。共
演は、父親役にジェームズ・クロムウェル、副大統領チェイ
ニー役にリチャード・ドレイファス、ラムズフェルド役にス
コット・グレン、パウエル役にジェフリー・ライト、ライス
役にタンディ・ニュートンなど、それぞれ名の知れた俳優が
実にうまく化けている。

『消されたヘッドライン』“State of Play”
イギリスBBCで2003年に放送されたミニシリーズをアメリ
カを舞台に映画化した作品。ただし、製作は『ミリオンズ』
などのアンドリュー・ハウプトマンが担当、監督には『運命
を分けたザイル』などイギリスのドキュメンタリー監督ケヴ
ィン・マクドナルドが起用されている。
首都ワシントンの街角で、ヤク中の男とピザ配達人が銃撃さ
れる。その取材に現場に現れたのはワシントンの有力紙の記
者カル・マカフィー。それはただの麻薬絡みの殺人事件に見
えたのだが…
その翌日、兵器企業の疑惑を追求中の議員の女性スタッフが
死亡。その報道で涙を見せた議員に不倫疑惑が高まる。その
議員はカルの大学時代からの親友だった。しかし政界の問題
は彼の取材対象ではなかった。
ところがその2つの事件が繋がりを持ち始める。果たして、
女性スタッフの死は不倫が基の自殺だったのか? それとも
疑惑の追求を妨害しようとする兵器企業の陰謀か? カルの
取材の前に次々に謎が生じ始める。
この新聞記者カルをラッセル・クロウ。議員役を『ペイチェ
ック』のベン・アフレック。他に、『きみに読む物語』のレ
イチェル・マクアダムス。『ナショナル・トレジャー2』の
ヘレン・ミレン、『ベオウルフ』のロビン・ライト・ペン、
『ハンコック』のジェイスン・ベイトマンらが脇を固めてい
る。
政治陰謀ものはその基になる疑惑が大きいほど面白くなる。
本作のそれはアメリカの国防に関るもので、それは現実には
起こらないと信じるしかないほどに驚愕のものだ。でも、ア
メリカでは起きなくても日本ではどうなのかな、そんなこと
も考えてしまった。
ただし映画は、その陰謀そのものを描くのではなく、事件の
真相を暴こうとする新聞記者の執念を描いていくもので、そ
こには既に大企業に乗っ取られている本社の思惑や、締め切
り時間との競争、そして挫折などいろいろな要素が詰め込ま
れている。
さらに複雑な人間関係など、その多様性が、この作品をいろ
いろな人に楽しめるエンターテインメントに仕上げていると
も言えそうだ。
なお試写会の後で、事件の発端部分の理由が判らないと息巻
いている若者がいたが、その理由は明白、それが大人の世界
なのだよとだけ教えて上げたかった。
それから、オリジナルのミニシリーズは昨年NHKBSで放
送されたようだ。
        *         *
 最後に製作ニュースを一つ。
 2004年6月に紹介した『フォッグ・オブ・ウォー』などの
ドキュメンタリー監督エロル・モリスが、初めてのドラマ作
品として人体の冷凍保存=クライオニクスを題材にした作品
を計画している。
 この作品は、1960年代からクライオニクス運動に参加して
きたロバート・F・ネルスンの回想録“We Froze the First
Man”に基づくもので、この回想録はドキュメンタリー番組
“This American Life”でも、“You're as Cold as Ice”
の題名で取り上げられたとのことだ。そしてこの原作から、
2006年『主人公は僕だった』などを手掛けたザック・ヘルム
が脚色を進めているもので、映画化の題名は未定だが、内容
的にはダークコメディになるとされている。
 クライオニクスは、金魚を液体窒素に漬けて凍らせた後に
常温水に入れると再び泳ぎ出すという実験にヒントを得たも
ので、死んだ直後の遺体を冷凍して、いつの日かその死因を
取り除ける未来において復活させようというもの。本当は死
ぬ前に冷凍保存すべきだが、それは法律上問題があるため、
死の直後に行うことで何とか辻褄を合わせているものだ。
 そしてアメリカでは、すでに何10人もの遺体が冷凍保存さ
れているようだが、現実にはそこから復活された人はまだ確
認されていない。しかも、人間のような高等な脳は冷凍に耐
えられないなどの問題も指摘されており、そこまでも含めた
再生技術が完成するのはまだ近い未来とは言えないようだ。
 そんな未来の技術を題材にしたダークコメディとなるが、
もちろんSF映画の世界では、1973年のウディ・アレン作品
『スリーパー』から、『エイリアン』『スター・ウォーズ/
帝国の逆襲』のハン・ソロまで枚挙に暇のないもので、それ
を今回はどのように脚色、映画化するかにも興味が湧く。
 ドキュメンタリー出身の監督では、上でもケヴィン・マク
ドナルドの作品を紹介しているが、ザック・ヘルムの脚本と
共に切れ味の良い作品を期待したい。



2009年04月12日(日) HACHI、美代子阿佐ヶ谷気分、佐賀のがばいばあちゃん、蟹工船、湖のほとりで+製作ニュース

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『HACHI』“Hachiko: A Dog's Story”
1987年に新藤兼人脚本、神山征二郎監督により映画化された
『ハチ公物語』のアメリカ版リメイク。と言うより、当時日
本を訪れていた日系アメリカ人の女性がその物語に感動し、
新たなアメリカ版の脚本を得て製作映画化した作品。
その脚本に、俳優のリチャード・ギアと監督のラッセ・ハル
ストレムが賛同し、ギアは製作を買って出てまでの主演とな
っている。
元々の「実話」は、戦後の民主主義教育を受けてきた僕らに
は、戦前の軍国主義者が忠君物語とするために美談に仕立て
上げた物語としか映らなかったものだが、それを新藤監督が
脚本にし、さらにアメリカナイズすることで、大元のイメー
ジは払拭された感じだ。
そして今回のアメリカ版の脚本では、敢えて発端を日本に置
き、西洋犬とは異なる日本犬(秋田犬)の特徴なども描き込
むことで、特に犬好きの心を存分に掴み取る作品に仕上げら
れている。
そしてその脚本から、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や
『サイダーハウス・ルール』『ショコラ』などのハルストレ
ム監督が、いつもの優しさと淡々とした筆致で丁寧に物語を
描き上げている。
オスカー候補にも名を連ねる名匠が何故日本映画のリメイク
とも思えるところだが、監督は元々がギアと共に愛犬家とし
て知られているとのことで、そういうコンビならこれも頷け
るものだろう。少なくとも愛犬家には堪らないお話だ。
物語は、山中の寺と思われる場所から1匹の秋田県の仔犬が
送り出されるところから始まる。その仔犬は海を渡りアメリ
カの東海岸にやってくるが、檻に付けられた荷札が破れ、檻
も壊れてとある駅に置き去りにされる。
そこの駅に現れたのが、ちょうど出張帰りだった大学教授の
主人公。一目でその仔犬が好きになった主人公は、本当の持
ち主が現れるまでという約束でその仔犬を自宅に連れて行く
のだが…
ここからは、ほぼ原作と同じ物語が展開されるが、その間に
はいろいろとアメリカらしいエピソードも挿入されている。
そのエピソードがまた犬好きが創作したらしい素敵な物語と
なっているものだ。
因にアメリカ版の脚本は、新人のスティーヴン・P・リンゼ
イという人が担当している。
共演は、ジョーン・アレン、サラ・ローマー、ケイリー=ヒ
ロユキ・タガワ、エリック・アヴァリ、ジェイスン・アレク
サンダー、ダヴェニア・マクファデン。
ただ、プロローグに登場する寺が、映像は山形県にある山寺
のイメージなのだが、脚本では山梨県とされていたり、日本
人の僕にはちょっと引っ掛かるところもあった。別段物語の
本筋には関係ないし、どうでもいいことではあるが。


『美代子阿佐ヶ谷気分』
1971年ガロ3月号に発表された安部愼一原作漫画の映画化。
と言うより、元々が私小説のような原作を含めて安部愼一と
後に妻となる美代子の姿を描いた作品。
因に映画製作は、2004年に木村威夫監督の『夢幻彷徨』など
も手掛けたワイズ出版という会社が行っているが、同社では
表題作を含む安部作品の出版も手掛けており、最近再評価が
進んでいるとされる漫画家のプロモーションという意味合い
もある作品のようだ。
物語の始まりは1970年。福岡から上京して漫画家を目指して
いた安部は東京の阿佐ヶ谷に同郷の女性美代子と暮らしてい
た。その作品は、私生活を描いたものが中心であり、その中
で自らの不倫や、美代子と他の男性との性行為なども描こう
とする。
しかもそれらを実践の中で描くとしていたために、実践はし
たもののその後に罪の意識に苛まれる事態となったり、それ
らが重なって精神を病んでいってしまう。そんな1970年代を
漫画家として必死に生き抜こうとした男の姿が描かれる。
原作者の安部は1950年生まれとのことで、僕とほぼ同年代の
人のようだが、僕もこの時代から業界の隅っこにいた人間と
しては、自分の周囲にもこの主人公と同じような人たちがい
たことは記憶にある。そんな記憶が甦ってくる作品だ。
一方、本作を監督した坪田義史は1975年生まれのようだが、
飲み屋の風景などはこれが定番の撮り方だとしても、1970年
頃の雰囲気をよく捉えているように観えた。自分たちもあん
な風に飲んでいたことは確かだ。その辺ではちょっと身に詰
まされる作品でもあった。
出演は、漫画家役に水橋研二、美代子役に舞台女優の町田マ
リー。他に本多章一、松浦祐也、あんじ。また編集者役で佐
野史郎。さらに漫画家の林静一ら「ガロ」ゆかりの人々多数
がゲスト出演している。
映画の後半では、一時行方不明だった安部のその後が描かれ
たり、音楽には安部の息子たちが結成しているインディーズ
バンドがフィーチャーされるなど、映画の全体が安部への賛
歌のようにも描かれていた。
観ていて自分自身の青春時代が甦ってくるような作品でもあ
り、いろいろな意味で興味深い作品であった。

『島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん』
漫才師の島田洋七が、幼少時を佐賀県の極貧の祖母の家で暮
らした思い出を綴ったベストセラー本から、自らの企画・脚
本・監督で映画化した作品。
同じ原作からは2006年に吉行和子主演による映画化、2007年
に泉ピン子主演によるテレビドラマ化、その他に漫画やゲー
ム、舞台化などもあるようだが、今回は原作者本人の監督で
再度の映画化が行われたものだ。そのため題名にも監督名が
追加されている。
内容は、広島県から家庭の事情で佐賀の祖母の家で暮らすこ
とになった少年の成長に併せて、極貧の中での祖母の生活の
知恵や当意即妙の言行録が綴られているもので、特にその言
行録には現代にも通じるものが数多く含まれている。それは
正に今の時代にも活かせるものと言えるかもしれない。
その一方で、今では失われてしまった人間と自然との共生の
ようなものも描かれている。実際映画の中では、川で冷やし
たトマトを食べるシーンなどもあるが、僕自身の子供時代を
考えても、滋賀県にあった両親の実家を訪ねたときには、ト
マトやスイカなどが川や井戸で冷やされていて、それこそ天
然の冷蔵庫だった。
そんなことが当り前だった時代もそれほど昔のことではない
のだが、それを記憶に留めているのも僕や原作者の世代まで
なのかもしれない。この映画を観ながら何か大きなものを失
ったような気持ちにもさせられた。
出演は、ばあちゃん役に香山美子、母親役に高島礼子、そし
て徳永昭広(洋七)少年の役を瀬上祐輝、原田祥、森田温斗
が演じている。また島田紳介、東国原宮崎県知事や、監督本
人らもゲスト出演している。
因に、昭広少年は野球がかなり得意だったようで、映画の後
半ではそれに纏わる物語も展開される。それはちょっとした
感動の展開ともなるものだが、僕自身は、この展開をもう少
し盛り上げても良かったのではないかと感じた。
多分、監督には自慢話になってしまうことに気兼ねがあった
のかもしれないが、これでは少し中途半端な感じだ。その努
力する理由などももう少し丁寧に描いて欲しかったもので、
この辺が自分で映画化していることの難しさかなあ…とも感
じられた。


『蟹工船』
昨年来突然ブームになっているという小林多喜二の80年前の
原作を、『弾丸ランナー』などのSABU監督で映画化した
作品。
僕はSABU監督の作品はあまり観ていなくて、過去に真面
に鑑賞したのは2003年東京国際映画祭で特別招待上映された
『ハードラックヒーロー』のみ。従って監督の作品の印象は
明確ではないが、何となく現代風のアクションのイメージを
持っていた。
その監督が、1929年に発表された日本のプロレタリア文学の
代表作とされる小説を映画化したことには、正直に言って多
少の違和感も感じながら完成披露試写を観に行ったものだ。
しかし観終えた感想は単純に面白かった。
物語は、北洋で蟹を漁獲しながらその船内で蟹缶に加工する
工場も内設する蟹工船を舞台に、高価な蟹缶を製造しながら
も不当に安い賃金と過酷な労働環境で作業をしていた労働者
たちが、自らの立場に目覚め団結し、資本家と対立して行く
姿が描かれる。
そこにはロシア(ソ連)との関係や帝国海軍の介入など、現
代社会とは異なる背景もありはするが、全体的な労働者と資
本家などの図式は現代にも共通するし、特に前半の労働者の
自覚の無さには、現代の若年労働者の姿がオーヴァラップし
てくるものだ。
そんな原作からの脚色も手掛けたSABU監督は、現代的な
要素も融合させた見事な脚本を作り出している。そこには、
原作に込められたメッセージを明瞭に残したまま、さらにド
ラマティックに物語が展開されている。
また、絵コンテも描くというSABU監督はセットや衣装、
CGIなどにも見事な雰囲気を作り出した。それは特にセッ
トでは、蟹缶工場という特殊な空間を、匂いまで漂ってくる
ようなリアルさで描き出しているものだ。
そしてそれはレトロでありながらポップ(上映後の記者会見
では監督はこの言葉を嫌っていたようだが…)であり、現代
の若者にもアピールする感覚で描かれている。特にSF映画
ファンには『メトロポリス』を思い出させる魅力が感じられ
た。
出演は、労働者役に松田龍平、高良健吾、柄本時生、新井浩
文、お笑いコンビTKOの木本武宏と木下隆行。そして監督
官役に西島秀俊。原作は特定の主人公のいない作品だが、映
画では彼らが演じる登場人物が見事なキャラクターでアンサ
ンブル劇を展開している。
物語は間違いなく現代に通用するものだし、そのメッセージ
も力強く訴えてくるものだ。この作品を現代の労働者の全て
の人々に観てもらいたい思いがした。
それから試写会場では、来場者にお土産としてカニカマの缶
詰が配られた。その時は本物じゃないんだと笑っていたが、
後で説明を聞くと映画の撮影でも小道具として使われたもの
とのこと、見た目もそっくりだし味も良いものだった。

『湖のほとりで』“La ragazza del lago”
2007年ヴェネチア国際映画祭で映画記者賞を受賞。2008年の
イタリア・アカデミー賞では史上最多の10部門受賞を達成し
たという作品。
湖のほとりの村で幼女が行方不明になり、その捜索のために
村に越してきたばかりの刑事が駆り出される。しかしそれは
思いも拠らない事件へと彼を誘うことになる。1人の女性を
巡って、村人たちの生活に隠されたいろいろな事情が明らか
にされて行く。
イタリアでは、1988年の『ニュー・シネマ・パラダイス』、
1997年『ライフ・イズ・ビューティフル』に続く10年に1度
の名作と呼ばれているようだ。確かに、1つの事件を巡って
人々の葛藤や、いろいろな思いが綴られたこの物語は深い作
品と言えるものだ。
しかし、もっと単純に人の喜びや哀しみを描いた上記の2作
品に比べると、本作の物語は相当に入り組んだものであり、
そこに描かれる人々の心の動きも単純明快なものではない。
その複雑さ故に、僕は本作を上記の作品と同列には評価でき
ないように思えた。
因に本作は、ノルウェーを舞台に2002年発表されたミステリ
ーの原作を、北部イタリアを舞台に描き直したものとのこと
だが、描かれている内容は単純な犯罪の謎解きだけではない
ミステリーの枠を超えるものだ。
その原作も、文学賞を受賞するなど評価の高いもののようだ
が、その複雑な人間模様を丁寧に解きほぐして描き直した脚
本も見事なものと言える。その脚本は2005年6月に紹介した
『輝ける青春』などのサンドロ・ペトラーリアが担当してい
る。
監督は、イタリアの人気監督ナンニ・モレティの下で助監督
を務め2001年12月に紹介した同監督の『息子の部屋』にも参
加しているアンドレア・モライヨーリ。本作は長編監督デビ
ュー作となるもので、上記の受賞10部門の中では監督賞と新
人監督賞も同時に獲得した。
出演は、昨年東京国際映画祭ワールド・シネマで上映された
『ゴモラ』に出演のトニ・セルヴィッロ、『レインマン』に
も出演の国際派女優ヴァレリア・ゴリーノ、『サン・ロレン
ツォの夜』などのオメロ・アントヌッティ、『ハンニバル』
などのファブリツィオ・ジフーニ、『イル・ポスティーノ』
などのアンナ・ボナイウートら、イタリアを代表する名優た
ちが見事なアンサンブル劇を展開している。
        *         *
 後は製作ニュースを紹介しておこう。
 まずはソニーから、日本では『ワンダと巨象』のタイトル
で知られているPlayStation 2用のヴィデオゲーム“Shadow
of Colossus”をアクション映画として製作する計画が発表
され、その脚本家として、現在McG監督がディズニーで進め
ている“20,000 Leagues Under the Sea: Captain Nemo”の
リライトも手掛けているジャスティン・マーカスと契約した
ことが報告された。
 この原作となるゲームは、2005年に発表されたもので、同
年度のGDC(Game Developers Conference)が選定する年
間最優秀ゲーム(Game of the Year)に日本作品として初め
て輝いたとのことだ。ゲームの物語は、ワンダと名告る主人
公が、死の淵にいる少女を救うために、荒野を旅して16頭の
巨大生物を倒して行くというもの。その全てに成功すれば、
少女に新たな生命が与えられるというもののようだ。
 因にゲームを制作したのは、宮部みゆきがノヴェライズし
たことでも話題になったゲーム『ICO』と同じチームで、
その世界観やヴィジュアルなどでも高く評価されている。ま
たこのゲームは、2007年にアダム・サンドラーが主演した映
画『再会の街で』で、9/11を引き摺る主人公が填っている
ゲームとしても画面に登場していた。
 そのゲームを新たにアクションドラマとして映画化するも
のだが、元々のゲームでは主人公の背景などはほとんど説明
されていないとのことで、そこからどのように物語を構築し
て行くかにも注目が集まりそうだ。
 ただし脚本を契約したマーカスは、上記の他にもワーナー
でDCコミックスを原作とする“Suicide Squad”と“Green
Arrow: Escape From Supermax”、さらに以前にも紹介した
“He-Man and the Master of the Universe”や“Voltron:
Defender of the Universe”“Hack/Slash”などといった計
画にも関っており、一体どの作品が先に進められるか定かで
はないようだ。
        *         *
 ワーナー傘下のニューラインで復活が計画されている“A
Nightmare on Elm Street”の殺人鬼フレディ・クルーガー
役にジャッキー・アール・ヘイリーの起用が発表された。
 1984年に製作されたオリジナル版でフレディを演じたのは
ロバート・イングランド。その後9作に及ぶシリーズや2度
のテレビシリーズでも主役を演じてきたが、今回の復活では
その席を譲ることになったようだ。因に以前のシリーズは、
『LOTR』以前のニューラインでは稼ぎ頭だったとされて
いる。
 その役柄を引き継ぐことになったアール・ヘイリーだが、
彼自身が2006年の『リトル・チルドレン』でアカデミー助演
賞にノミネートされて映画界に大復活したことは記憶に新し
いところで、元々は1976年に始まった『がんばれベアーズ』
シリーズの3作に出演するなど子役の人気スターだった。し
かし、1993年以降は映画界を離れ、運転手やピザの配達人な
どもしていたとのことで、2006年の復活劇には本当に喝采が
贈られていたものだ。
 というアール・ヘイリー主演による新版“A Nightmare on
Elm Street”は、脚本を1997年にヴァル・キルマー主演で映
画化された『セイント』などのウェズリー・ストリックが担
当し、ヴェデオ監督出身のサミュエル・バイヤーの監督で、
5月にシカゴで撮影が開始されることになっている。また、
フレディの標的となる10代の出演者として、テレビシリーズ
“Smallville”や“Veronica Mars”に出演していたカイル
・ゴルナーの共演も発表されている。
 なお今回の復活版は、ニューラインと“Transformers”な
どのマイクル・ベイ監督が主宰する製作プロダクションのプ
ラティナム・デューンズの共同製作で実現されるものだが、
この両社では先に“Friday the 13th”の復活も実現して、
2月13日の金曜日に全米公開された『新13金』は6500万ドル
を稼ぎ出しているそうだ。
        *         *
 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の映画化を担当し
たイギリスのマイク・ニューウェル監督が、1930年代に発表
されたジョン・メイスフィールド原作の児童書“The Box of
Delights”の映画化を進めると発表した。
 物語は、時間旅行を可能にする魔法の箱を手に入れた少年
を主人公としたもので、同じ原作からは、1984年にBBCで
テレビドラマ化されたこともあるようだが、ニューウェル監
督自身は、「子供の頃にラジオで放送されていたシリーズが
忘れられない」とのことだ。因にこのラジオシリーズでは、
「ハープ演奏のテーマ音楽に続いて、ファンタスティックで
ミステリアスな魔法の物語が展開していた」そうだ。
 そして今回の計画では、脚本は、2005年9月に紹介したダ
ニー・ボイル監督の『ミリオンズ』などを手掛けたフランク
・コトレル・ボイスがすでに執筆中で、それが完了し次第本
格的な準備がスタートするようだ。
 なおニューウェル監督の新作では、ディズニーでジェリー
・ブラッカイマー製作による“Prince of Persia”がすでに
撮影完了して、ポストプロダクションの段階となっている。
        *         *
 最後に続報で、4月1日付第180回で“Jonny Quest”の計
画を報告したアンディ・フィックマン監督の次回作として、
ディズニーが進めている“You Again”という作品と契約し
たことが発表された。
 作品は、自分の兄弟の結婚相手が高校時代の天敵同級生と
知った若い女性を主人公にしたコメディとのことで、ファン
タシー系の作品ではないようだが、取り敢えず前回紹介した
中には挙がっていなかった計画が突然出てきたものだ。因に
発表では撮影は今年の夏後半に行われるとのことで、現在は
主演女優を含むキャスティングが行われている。
 ところでフィックマン監督に関しては、前回も紹介したよ
うに各社からのオファーが殺到しているものだが、その中で
ディズニーは2007年の“The Game Plan”、2009年“Race to
Witch Mountain”に続けて3作連続の契約を結んだもので、
正に機先を制したという感じのようだ。
 今回の作品は、紹介された内容からはそれほど撮影に時間
が掛かるとは思えないが、撮影を順調に進めて、出来るだけ
早く前回紹介した作品群にも取り掛かって貰いたいものだ。



2009年04月05日(日) キング・コーン、チョコレート・ファイター、台湾人生、17アゲイン、ラスト・ブラッド、ロシア革命アニメーション、スティル・アライヴ

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『キング・コーン』“King Corn”
アメリカの大学で最終学年生の若者2人が食に興味を持ち、
コーン(トウモロコシ)の栽培に挑戦する。しかしそれは、
食の根本を探る壮大な旅路へと彼らを誘うことになる。そん
な若者たちを追ったドキュメンタリー作品。
ある科学的な分析によると、人間の身体の多くの部分はコー
ン由来の成分で占められているのだそうだ。そこに興味を持
った若者たちは、米国内では最大の生産地であるアイオワ州
に1エーカー(4047�屐砲稜醒呂鮗擇蝓⊆尊櫃縫魁璽鵑虜惑�
を試みることにする。
その栽培は、遺伝子組み替えによる強靱な種子を蒔き、強力
な除草剤を使うことで実質的な農作業はないに等しいもの。
それでもコーンは立派に育ち、驚くほど簡単に収穫が得られ
てしまう。
ところがその収穫で得られる収入は、コーン価格の下落によ
って土地代や種子、農薬代など経費の合計に満たない。それ
でも政府の保障制度などによってコーンは作り続けられる…
そこに隠された秘密とは。
アメリカの農業政策も、以前は規制優先で減反政策など価格
の維持に重きが置かれていたそうだ。しかし1970年代にその
政策が転換され、アメリカは世界有数の農業国に変貌して行
く。それは特にコーンの栽培に集中していった。
このためコーンの価格は暴落するが、それでも彼らはその生
産を止めない。それどころかコーンの利用法を次々に開発。
それによって人間の身体の多くの部分がコーン由来の成分で
占められる事態となって行く。
何故アメリカはコーンを作り続けるのか、そこにはアメリカ
の、そして全世界の食に関わる重大な問題が含まれている。
コーンによって育てられた牛の悲劇。砂糖を減産に追い込ん
だ甘味料コーンシロップの登場など、今まで多少疑問には感
じながらも見過ごしていたいろいろな問題提起がこの映画で
は行われている。
さらに映画では、牛の胃袋の中を直接覗くことのできる研究
所や、学校の理科室のような設備でコーンシロップを作る実
験など、様々な取材によってコーンの現状が描かれる。そし
て最後は、1970年代に施策を転換した当時の農務長官本人に
まで迫って行く。
映画の結論として若者たちはある決断をする。その姿は見事
に鮮烈な映像で提示される。しかしそこには空しさも漂う。
彼らの決断が正しいものであることは確かなのだが…これは
我々自身にも突きつけられた問題だ。

『チョコレート・ファイター』“ช็อคโกแลต”
『マッハ』『トム・ヤム・クン』などを手掛けたプラッチャ
ヤー・ピンゲーオ監督+パンナー・リットグライ/アクショ
ン監督による最新作。
2人の監督は前の作品でも、CGIなどを極力排したリアル
アクションを売りにしていたが、今回は、前作までの主役を
張ったトニー・ジャーに替って、新人のジージャーことヤー
ニン・ウィサタナンが、正に身体を張ったヒロインを演じて
いる。
物語は、母親が不治の病に冒された少女が主人公。そこで彼
女は、母親が過去に金を貸していた男たちを突き止め、治療
費を得るためにその集金に向かうのだが、男たちはなかなか
金を返してくれそうにない。
ところがちょっと自閉症気味の彼女には、カンフー映画を見
るだけでそこに展開される技を体得するという特殊な能力が
備わっていた。しかも自らもカンフー映画を愛する彼女は、
密かに鍛練も積んでいたのだ。
ということでうら若い少女が、彼女の前に立ち塞がる男たち
をバッタバッタと打ち倒す…そんな痛快なアクションが展開
される。
これに、彼女の関係者である日本人やくざや、過去にはその
やくざと抗争を繰り広げた現地マフィアのボスなどが絡んで
物語は進められる。因にこの日本人やくざを阿部寛が演じて
いるのも話題になりそうだ。
とは言うものの映画の主眼は、少女が大の男たちを相手に繰
り広げる強烈なカンフーアクション。特に後半のガード脇の
路地を舞台にしたアクションシーンは、もちろんワイヤーな
ども使用されてはいるものだが、それでも間違いなく痛そう
で壮絶なものだ。
そのアクションをスタントなしで演じているというジージャ
ーは、ピンゲーオとリットグライが6年の歳月を費やして、
手塩に掛けて育ててきた秘蔵っ子とのことで、魅せるアクシ
ョンを見事に展開している。
そしてそのアクションは、当然計算されたものであるはずな
のだが…。巻末に紹介されるNGシーンには、それを売り物
にするのもどうかと思うくらいの生傷映像が大量に登場して
いた。正に身体を張ったアクション映画というところだ。

『台湾人生』
戦前占領下の台湾で日本人教育を受けた台湾人の現在を追っ
たドキュメンタリー作品。
その人たちは、戦前の日本人教育で日本への愛国心を植え付
けられ、戦中はその愛国心のもと日本兵として戦争に赴く。
しかし戦場ではチャンコロと呼ばれて差別を受け、さらに戦
後は蒋介石率いる支那人の侵略によって長年の圧制に苦しめ
られる。
それでも彼らは日本が好きだと言い切り、今でも「天皇陛下
万歳」と言って死ねるという。
こんな人たちが台湾人口の何%いるかは明らかにされない。
しかし、元々の原住民の人から一般的に台湾人と呼ばれる人
たちまで、ここに登場する人たちは確かに今の台湾に暮らし
ている人たちだ。
もちろんこれは、戦前の日本人教育が正しかったということ
ではないし、またこの人たちは、1947年2月28日に始まる国
民党の迫害(戒厳令が38年間も続いた)によって、日本への
思いが純粋培養されてしまった人たちなのかもしれない。
しかし、今でも流暢に日本語を話す彼らの姿を見ていると、
日本が置き去りにしたこの人たちを僕らはどう考えれば良い
のか、心を痛めてしまうものでもあった。
そんな彼らは、日本政府に謝罪して欲しいという思いは語る
ものの、それ以上の要求などは一切口にすることがない。そ
れが日本への彼らの思いを、一層明白に物語っているように
も感じられた。
彼らが語る小泉の靖国参拝などに関しては、「問題はそこに
あるのではないよ」と教えてあげたくもなるし、蒋介石一族
への恨みなどには我々とは直接関わらない問題もあるが、彼
らが受けた苦難のいくらかは日本にも責任があることは確か
なものだ。
なお、映画の中に高座海軍工厰の話が出てきた。高座郡は相
模平野のほぼ中央に位置する場所で自分の生まれた平塚市に
も近いので興味を持ったが、調べてみると当時8400人を超え
る台湾出身の青少年がここで工員として働いていたのだそう
だ。
その他にも、二二八事件と呼ばれる国民党との抗争などは今
まで知ることもなかったし、日本人にとって台湾という存在
は一体何だったのか考えてもしまう。それは日中国交正常化
によって抹殺されてしまった歴史なのかもしれない。
それにしても、こんな風に学校が教えない歴史は、現在の日
本教育には他にもいろいろ隠されていそうだ。

『セブンティーン・アゲイン』“17 Again”
『ハイスクール・ミュージカル』のザック・エフロン主演に
よる最新作。17歳の時にした決断がもしかしたら誤りだった
かも知れない。そんな過去を引き摺ったまま生きてきた主人
公がその過ちを正せるかも知れない奇跡に見舞われる。
主人公は17歳の時、高校のバスケットボールの花形選手とし
て大学のスカウトも見に来るほどの存在だった。しかしその
スカウトが見つめる試合で、彼は自分自身のある決断により
将来を棒に振ってしまう。
そして10数年。彼は妻と2人の子供と共に地道に会社勤めを
しながら暮らしていたが、何に付けても覇気がなく、ついに
は妻からも愛想尽かしをされてしまう。そんな時、ふと訪ね
た母校で、彼は人生をやり直せるかも知れないチャンスを掴
むのだが…
大人がその記憶を保ったまま青春時代の身体になる。こうい
う展開の映画は過去にもいろいろありそうだが、今回はそこ
にちょっと捻りがある。その捻りによって主人公は、親子の
断絶や自らの家族への思いに直面して行くことになる。
それにしても、離婚天国と言われ夫婦や家族の繋がりが希薄
になっているとも考えられるアメリカで、こんなにも家族の
ことを真剣に考える作品も珍しい。それはちょっと古くさい
考えかもしれないが、人が本来持つべき姿を描いている作品
のようにも思えた。
と言うメインストーリーだが、さらにこの物語には僕らを喜
ばせるサブストーリーも用意されている。それは主人公の高
校時代からの親友がオタクという設定のもので、これがなん
とも僕らの心をときめかせてくれるのだ。
元々メインの物語もファンタシー系だから、その手の観客が
ターゲットだと思われるが、そのオタク振りが尋常でない上
にその展開が見事に決まっている。その内容は、定番のSW
からLOTRまでレヴェルも高く、特に本作はニューライン
の製作なので、後者に対する思い入れには素晴らしいものが
あった。それはファンには必見とも言えるものだ。

共演は、『無ケーカクの命中男』などのレスリー・マンと、
『燃えよピンポン』では脚本も執筆していたトーマス・レノ
ン。他にマシュー・ペリー、メロラ・ハーディンらが出演し
ている。
エフロンのファンには彼の踊りも楽しめるし、オタクのファ
ンにも充分に満足できる作品だ。

『ラスト・ブラッド』“Blood: The Last Vampire”
『猟奇的な彼女』などの韓国女優チョン・ジヒョンが、セー
ラー服の戦士に扮して闘うアクション作品。
戦国時代から続く鬼との闘い。その鬼を退治するのはその使
命のために数100年を生きてきた女剣士サヤ。そして本作の
時代のサヤはセーラー服に身を包み普段は女子高生として過
ごしながら、ことが起これば日本刀を抜き放ち鬼を一刀両断
にする。
そんなサヤの背後には組織があって、彼女が退治した鬼の後
始末などもしてくれる。しかし彼女と組織の間にも軋轢があ
り、さらに非公式な組織は時として米軍など政府機関とも対
立することがある。
本作の時代背景はヴェトナム戦争が泥沼化し始めた1970年。
混沌の時代には鬼どもも勢力を増加させ始めている。そして
鬼どもが勢力を強める中でサヤは、ついに父親の仇でもある
奴らの首領オニゲンの所在を突き止める。
オリジナルは2000年に製作され、Annie賞や確かアカデミー
賞の予備候補にも挙げられた北久保弘之監督によるアニメー
ション作品。本作はその実写による再映画化だ。僕はこのオ
リジナルを観たかどうか記憶が定かでないが、今回の実写版
では、その映像表現が如何にもアニメーションという感じに
も作られている。
その実写版を監督したのは、フランスで2005年『エンパイア
・オブ・ザ・ウルフ』などを手掛けたクリス・ナオン。製作
は、2000年『グリーン・デスティニー』などのビル・コン。
香港を拠点に置く映画製作者が『昴』に続けて日本が舞台の
作品に挑んでいるものだ。
共演は、アジアを代表する女優の称号も似合い始めてきた小
雪と、『17アゲイン』にもザック・エフロンの17歳の時の
恋人役で出演していたアリソン・ミラー。また、汎アジアで
活躍してきたアクションスターのベテラン倉田保昭が元気な
姿を見せてくれている。
因に、1981年生まれのチョン・ジヒョンは、試写前の舞台挨
拶で「セーラー服はちょっと恥ずかしかった」と語っていた
が、元々ちょっと幼い感じもする顔立ちは、充分に通用する
雰囲気で演じていたものだ。
それにしても画面には、トンキン湾空爆のニュースが繰り返
し登場するが、これは空爆開始が鬼の差し金で、サヤの働き
によってそれが失敗に終ったという意味なのだろうか。

『ロシア革命アニメーション』
旧ソ連時代の1924〜79年に製作された短編アニメーションを
集めたコレクション。全16作品がA、Bの2プログラムに分
けて公開される。
旧ソ連のアニメーションというと1957年製作の『雪の女王』
や、オリジナル版は1947年発表の『イワンの仔馬』(昔は違
う名前だった)が、芸術性の高さや日本のアニメーターたち
に与えた影響の大きさなどで有名なものだ。
しかしここに集められた作品は、旧ソ連のプロパガンダ用に
製作されたもので、その内容の陳腐さなどでは正に珍品と言
えるものばかりだ。
上映されるのは、Aプログラムが『ソヴィエトのおもちゃ』
(1924)、『用心を怠るな』(1927)、『ファシストの軍靴
に祖国を踏ませるな』(1941)、『百万長者』(1967)、
『予言者と教訓』(1967)、『狼に気をつけろ』(1970)、
『電化を進めよ』(1972)、『射撃場』(1979)の8本。
Bプログラムは、『惑星間革命』(1924)、『レーニンのキ
ノ・プラウダ』(1924)、『勝利に向かって』(1939)、
『映画サーカス』(1942)、『ツイスター氏』(1963)、
『株主』(1963)、『生かされない教訓』(1971)、『前進
せよ、今がその時だ』(1977)の8本。
という16作品だが、どの作品もブルジョアや資本主義への批
判というより青臭い非難のアジテーションばかりで、正直に
言ってアニメーションのレヴェルも低く、特に観て何かを得
られるようなものでもない。
特に、Bプログラムで上映の『惑星間革命』には、題名から
ちょっと期待もしたのだったが、内容は革命を逃れて火星に
逃亡したブルジョワジーを、革命戦士たちが追い掛けて行っ
てやっつけるというだけのもので、何とも低レヴェルの発想
と言うか、あまり頭の良い作品には見えなかった。
その他では、Aプログラム『射撃場』とBプログラム『映画
サーカス』がそれなりに面白くはあったが、これらはプロパ
ガンダというより風刺劇という感じで、それも、だから…?
と言うくらいの程度のものだ。
いまさら失敗に終った政治体制をとやかく言っても始まらな
いが、結局こういう部分から考えの甘さと言うか青臭さが観
えてしまうのも、体制の未熟さを感じてしまうところだ。所
詮は机上の空論でしかなかったものなのだろう。
戦時中のプロパガンダで言えば、日本でも『桃太郎の海鷲』
や、アメリカではディズニーが戦争協力映画を作ったことは
知られているが、政治体制のプロパガンダが重なるとこうも
浅薄な物になってしまうのか、その原因は上映時間の短さだ
けではないように思えた。
もう少しは、共産主義の明るい未来を描いた作品でもないの
かと期待して観に行ったのだが、それも期待外れの作品ばか
りだった。
僕自身、制度としての共産主義は否定するものではないが、
どんなに理想的な制度でも、それを実行する人間が駄目だと
うまくは行かない。今回上映される作品群を見ていると、こ
んなプロパガンダを押しつける連中では、うまく行かなくて
当然とも思わせた。
それは結局1世紀も持たずに制度を潰してしまったロシアの
現実でもある訳だ。そんなことも理解できる作品群だった。

『スティル・アライヴ』“Still Alive”
『デカローグ』や『トリコロール』3部作などの作品を残し
て、1996年に54歳の若さで急逝したポーランドの映画監督ク
シシュトフ・キェシロフスキの業績を称えて2005年に製作さ
れたドキュメンタリー作品。
実は、僕は上記の作品は観ていないのだが、彼の遺稿脚本を
映画化したトム・ティクヴァ監督の『ヘブン』(2002年12月
に紹介)と、ダニス・タノヴィッチ監督の『美しき運命の傷
痕』(2005年12月に紹介)は、どちらも見事なドラマとして
感銘を受けたものだ。
その脚本を遺したキェシロフスキは、最初はドキュメンタリ
ーで頭角を現すが、フィルムに写されたものが必ずしも真実
ではないと気付き、あえてフィクションにすることで人間の
心の奥底にあるものを描き出そうと考える。そして次々に名
作を生み出して行く。
そんな監督の作品を網羅して、生前の監督自身の声も交えな
がら、監督と親交のあった映画監督ヴィム・ヴェンダース、
主演女優のジュリエット・ビノシュ。さらに作曲家や脚本の
共同制作者らの証言が綴られている。
もちろん追悼作品であるから、彼を称えることが主眼の作品
ではあるが、彼が政治体制や個人的な環境に苦しみながら自
分の作風を作り上げて行く過程は、監督のファンならずとも
感銘を受ける。
政治問題を描いた彼の作品が国内では上映禁止などの処分を
受けながらも、徐々に国内外に認められて行く過程は、当時
同じ境遇だった人は他にも多いとは思うが、時代と歴史を語
る上でも重要なものだ。
なお本作は、6月20日の東京渋谷ユーロスペースを皮切りに
全国順次開催される特集上映「キェシロフスキ・プリズム」
の一環として上映されるものだが、この特集上映では、上記
の代表作を始め日本未公開だった作品も公開される。
特にこれらの未公開作品は、版権の関係でDVD化もできな
い作品とのことなので、監督のファンにはぜひこの機会に観
ておきたいものだ。
ドキュメンタリーとフィクションの関係は、今年1月に紹介
の『四川のうた』と2月15日付第177回の記事でも話題にし
たところだが、特にドキュメンタリーから出発した監督の発
言には納得するところも多いものだった。



2009年04月01日(水) 第180回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 最初に突然ですが、今回を持ちまして製作ニュースの更新
を終了させていただきたいと思います。元々このページは、
2001年にキネマ旬報に連載していたニュース欄のレイアウト
が変更されて掲載できるニュース量が減ったのを機に、掲載
漏れとなるニュースを紹介する目的でスタートしたものでし
た。しかし、そのニュース欄の連載も昨年打ち切りとなり、
本来の目的が無くなっていました。
 それに昨年来、試写で観る映画の本数が急増し、その紹介
を書くだけで手一杯となってしまったものです。それでも何
とか半年ほどは頑張らしていただきましたが、個人的な状況
の変化などもあり、ここらで終止符を打つことにしました。
とは言うものの情報の収集は止めませんし、映画紹介のペー
ジは毎週更新の予定ですので、作品が少ないときなどには製
作ニュースの情報も載せたいと思っています。
 今後もご愛読をよろしくお願いいたします。
        *         *
 と言うことで、製作ニュースとしては最後の更新となる今
回は、いろいろな話題を出来るだけ紹介することにしよう。
 まずはちょっと気の早い続編の情報で、5月8日に全米公
開される新映画版“Star Trek”に関連して、シリーズの再
構築を目指すパラマウントから続編の製作に向けた脚本家と
の契約を進めていることが発表された。
 発表された脚本家は5月公開の新映画版の脚本を担当した
ロベルト・オーチ、アレックス・カーツマン、それに製作を
担当したダモン・リンダロフ。因にリンダロフは、新映画版
の脚本には加わっていないが、元々監督を務めたJ・J・エ
イブラムスと共にTVシリーズ“Lost”の製作と脚本を担当
したことでも知られており、今回は新映画版の試写を観て、
「これは絶対続きを作るべきだ」と確信、直ちに脚本家たち
との協議に入ったとのことだ。また、3人はすでにドリーム
ワークスが進めている“Cowboys and Aliens”の脚本もトリ
オで手掛けている。
 その脚本家トリオと映画会社との契約が進められているも
のだが、脚本の進捗状況は、まだほんの胚芽状態とのこと。
しかし、脚本家トリオとしては今年クリスマスまでに完成し
て会社側に提出する計画で、それにより続編の公開は2011年
夏を目指すとのことだ。ただし、それも5月公開の新映画版
の目指した方向性がトレッキーの心を掴めるか否かに掛って
いる部分は大きいもので、観客の反応を観た上で全てが決定
されることになりそうだ。
 一方、新映画版の製作監督を務めたエイブラムスは、製作
者としての参加は表明しているものの、再度監督を手掛ける
か否かは未定としている。多分これも5月の結果及び続編の
脚本の出来次第ということになるのだろう。
 因に、アメリカパラマウント社が“Star Trek”に賭ける
意気込みはかなり強力なものだそうで、すでに全米では公開
6カ月前の昨年秋から最大級のキャンペーンを展開中。日本
にいるとそんな熱気は全く伝わってこないが、大型シリーズ
の再構築に向けて体制は万全のようだ。
        *         *
 シリーズの次は3部作の話題で、『第2章/カスピアン王
子の角笛』までは公開したものの、以後に製作される『ナル
ニア国物語』シリーズの配給からは手を引くことを表明した
ディズニーが、新たに“The Stoneheart Trilogy”と題され
た原作の映画化権を獲得したことを発表した。
 この作品は、1995年の『フェア・ゲーム』や2002年8月に
紹介したイギリス映画『ミーン・マシーン』などを担当した
脚本家のチャーリー・フレッチャーが2006年に作家に転向。
その第1作として発表した“Stoneheart”と、2007年発表の
“Iron Hand”、それに今月発表される“Silvertongue”か
らなる3部作とのことで、因に、第1作の“Stoneheart”は
イギリスの児童文学賞の候補にも挙げられるなど、相当の評
価を受けているようだ。
 物語は、現代のロンドンに住む12歳の少年を主人公にした
ちょっとだけ違う世界での冒険を描いている。その世界では
石像が命を持ち、少年が起こしたある出来事を切っ掛けに、
彼らが行動を起こし始めたのだ。そんな世界で少年は、協力
者を得ながら石像たちが動き出した原因を探り、その出来事
の裏に潜む謎を解き明かして行くことになる。評論家の評価
は様々なようだが、全体的には内容の新しさとスリリングな
展開の面白さが評価されているようで、さすがに脚本家出身
の作家という感じのものだ。
 そしてこの第1作の映画化権に関しては、その出版以前か
らパラマウントが獲得したとされていたものだが、その3年
間の期限が切れてしまったようで、新たにディズニーが権利
を獲得したとのことだ。そのディズニーは、ロバート・ゼメ
キス主宰のImageMoversと共同で権利獲得の交渉を行ったも
ので、両社ではモーション・キャプチャーによる映画化を目
指すことになる。それにしても動く石像というアイデアは、
正にモーション・キャプチャーそのものという感じだ。
 公開時期は未発表だが、ディズニー+モーション・キャプ
チャーは即3Dという図式も決っているようで、早い時期の
製作を期待したいものだ。
        *         *
 ところでディズニー+モーション・キャプチャーの計画で
は、先にティム・バートン監督の“Alice in Wonderland”
の全米公開日が2010年3月5日と発表されているものだが、
その際には、全米のIMAXシアターでも同時公開されることが
報告された。
 これは、2008年11月19日に報告されたディズニーとIMAX社
の共同事業の一環として行われるもので、この事業ではディ
ズニー製作の5作品をIMAX-3Dで同時公開することが謳われ
ていた。そして、その第1作となる“The Jonas Brothers:
The 3-D Concert Experience”が2月27日に全米公開された
ところのものだ。
 さらにその第2作には、当初は第1作になると見られてい
た年末公開予定のゼメキス監督作品“A Christmas Carol”
が決定されており、今回報告の“Alice in Wonderland”は
第3弾となる。この他“Beauty and the Beast 3-D”のIMAX
上映も計画されているはずで、ここまでですでに4作品。そ
の最後が上記の“Stoneheart”だと、3部作の第1話までと
いうことになってしまうが、さてどうなのだろうか。
 なお、日本のIMAX状況としては、昨年8月1日付第164回
でも紹介したように東急系の109シネマズが新たな展開を
計画しているものだが、その計画は当初の発表より少し遅れ
て、今年の夏に神奈川県川崎市と埼玉県菖蒲町に開館となる
ようだ。そしてこの計画では、IMAX社が直接運営にも関わる
ようなので、ディズニーとの共同事業である上記の作品は正
に優先上映の対象となるものと思えるが…
 一方、3D映画に関しては、以前にも書いたと思うが、視
野中にスクリーンの枠が入ると3D感が一気に減少してしま
うもの。その点でスクリーンが視野一杯に広がるIMAXは正に
理想的な上映システムで、しかも上下にも広がりのある本来
のIMAX作品なら究極の3Dが楽しめる。そしてモーション・
キャプチャーの作品は、基本的にCGIアニメーションとな
るものだから上下の広がりにも対応可能なもの。出来るだけ
IMAXサイズに合わせた作品を期待したいものだ。
 そんなことも含めて、今後のディズニー3D作品にはます
ます期待したいところだ。
        *         *
 今年2月1日付第176回で“He-Man”の計画を紹介した玩
具メーカーマテル社の男の子向けアクション人形で、1966年
に発表された“Major Matt Mason”の映画化がユニヴァーサ
ルで計画されている。
 この人形の職業は宇宙飛行士。軌道上の宇宙ステーション
に暮らし、月面探査を行うチームのリーダーという設定だ。
そしてこの人形シリーズは、1969年のアポロ11号による月面
着陸の前後には最大級のヒットを記録し一世を風靡したもの
だが、アポロ計画が終焉に向かった1970年代に引退、玩具の
ラインアップから姿を消してしまっていた。
 その宇宙飛行士人形の活躍を再び描くというもので、その
計画に、1995年の『アポロ13』では月面にあと1歩まで迫っ
たトム・ハンクスが主演。さらに脚本には、1998年ハンクス
製作総指揮のミニシリーズ“From the Earth to the Moon”
にも協力した『スピード』(1994年)などのグラハム・ヨス
トの契約が発表されている。因にこの計画は、マテル社側か
らハンクス主宰のPlaytoneに齎されたものだが、その会合の
席でハンクス自身が主演を希望したとのことだ。
 お話は上記の主人公の設定からも明らかなように、完全に
フィクションのものだが、ハンクス主演となれば宇宙開発を
描いた上記の2作品のイメージに繋がることは必至で、彼が
繰り広げる月面探査の物語は、現状では月面の再探査などに
も進捗の見られない宇宙開発に対して、期待を込めた夢を語
ることにもなりそうだ。前記の2作品を手掛けたハンクスは
NASAの関係者にも知人は多そうだし、そんな人たちの後
押しもあるのかも知れない。
 最近の出演作は、大体年1本となっているハンクスだが、
2009年“Angels & Demons”の公開後の予定は、“Toy Story
3”の声優を除くと、実写の出演はバリー・レヴィンスン監
督の“Boone's Lick”という西部劇が、2010年公開見込みで
プレプロダクション段階になっているだけで、具体的なスケ
ジュールは空白。今回の計画は、できることなら2011年の公
開ぐらいで実現してもらいたいものだ。
        *         *
 またまた3部作の話題で、『トワイライト』シリーズや、
『パニッシャー:ウォー・ゾーン』なども手掛けるライオン
ズゲートから、昨年秋に出版されたスサンネ・コリンズ原作
の未来小説“The Hunger Games”の映画化権を獲得したこと
が発表された。
 物語は、生放送のテレビ番組で命を賭けて闘う10代の少年
少女たちが、その社会のシンボルとして敬われている未来世
界を描いたもの…とのこと。生命を賭けた闘いをテレビで生
中継するというお話は、『華麗なる殺人』から『ローラー・
ボール』『デス・レース』まで枚挙にいとまがないが、特に
最近のアメリカでは、各種のリアリティ・ショウの人気など
で注目を浴びそうな題材というところだ。
 そしてこの原作本は、ニューヨーク・タイムズのベストセ
ラーリストに25週連続でランクインを果たした他、『トワイ
ライト』の原作者ステファニー・メイヤーが絶賛したとも伝
えられている。またこの原作は、3部作の第1巻を成してい
るとのことで、今年9月には第2巻の“Catching Fire”の
刊行が予定されているそうだ。
 その映画化権をライオンズゲートが獲得したものだが、さ
らに同社では、ジェリー・ブラッカイマーの許で“POTC: At
World's End”や“Deja Vu”の製作に携わったニーナ・ヤコ
ブスンが設立したプロダクションをパートナーに据えて、新
たなシリーズ化に向けて計画を進めるということだ。
 10代の少年少女が主人公というのは、時間の掛る映画製作
ではキャストの選定から慎重に行う必要があるが、本格的な
未来物ということでは期待も湧くし、楽しみに待ちたい作品
だ。
        *         *
 以下は続報で、2003年10月15日付第49回で紹介したボビー
&ピーター・ファレリー兄弟監督“The Three Stooges”の
映画化が、ソニー傘下のMGMで進められると発表された。
 しかもその配役に、ラリー=ショーン・ペン、カーリー=
ジム・キャリー、そしてモー=ベニチオ・デル・トロという
飛んでもない発表がされている。
 因にこの計画では、当初、監督兄弟はオリジナルの短編映
画が作られたコロムビアでの製作を試みたが合意に至らず、
その後の以前紹介の当時はワーナーでの製作準備が進められ
ていた。しかしそれも頓挫してしまったようで、このため今
回の製作を行うMGMでは、まずワーナーが所有していた脚
本の回収と、コメディアンの権利を所有する遺族との交渉を
行って、映画化の実現に漕ぎ着けたとのことだ。
 そして上記の配役が発表されたものだが、この内ではキャ
リーと、デル・トロのコメディは理解できるものの、ペンは
1989年の『俺たちは天使じゃない』以来となるコメディへの
再挑戦とのこと。その決断は相当のことだと思えるが、それ
を実現した元祖The Three Stoogesの魅力と、監督兄弟の実
力にも感心するところだ。
 一方、今回の作品は、以前の紹介のときにも書いたように
3人のコメディアンの伝記を描くのではなく、当時の過激な
コメディを現代の3人の演技で再現しようというもの。その
ため3人にはまず体型から似せることが要求されるが、特に
キャリーの肉体的改造レヴェルは相当のものになりそうで、
その役作りのためにキャリーは、すでに40ポンド(約18kg)
の体重増量を計画中とのことだ。
 The Three Stooges(3ばか大将)の短編作品は1934年に
第1作が発表されて以来、約190本の作品が製作されたとの
ことで、その中からの選りすぐりのコメディが3人の演技で
再現されることになりそうだ。撮影は今年の初秋に開始の予
定で、公開は2010年中に行う計画となっている。
        *         *
 2008年11月15日付第171回で紹介したエレクトロニック・
アーツ(EA)社のヴィデオゲーム“Dante's Inferno”の
映画化について、その脚本を『スーパーマン・リターンズ』
などの共同脚本を手掛けたダン・ハリスと契約したことが、
昨秋、争奪戦の末に映画化権を獲得したユニヴァーサルから
発表された。
 この作品については、以前の紹介の当時はまだ題名も明確
ではなかったものだが、結局この題名に落ち着いたようだ。
そしてゲームは、Xbox 360及びPS-3向けには来年の発売予定
とされており、映画化もその時期からあまりずれないように
行われることになっている。
 具体的な物語や展開は、ゲーム発売前なので詳細は不明だ
が、ダンテ『神曲』の内の『地獄篇』に基づくことは確かな
ようで、ゲームのプレーヤーは、真の恋人ベアトリーチェを
求めて地獄の奥底を彷徨うことになるようだ。そして映画化
を進めるに当っては、ゲームのクリエーターのジョナサン・
ナイトが全面協力することも発表されていて、つまり映画の
物語はゲームとほぼ一体のものになるようだ。
 ゲームをしない者にとってそれがどういう意味になるのか
はよく判らないが、映画は映画の単体として楽しめるものに
ならなくてはいけない訳で、ハリスにはその辺をしっかりと
見極めて脚本の執筆を進めてもらいたいものだ。
 という映画化の計画だが、その一方でEA社では、2008年
“Space Chimps”などの作品を手掛けたスターツ・メディア
との共同製作による同じゲームからのアニメーションの計画
も発表している。こちらの製作は、主にテレビアニメなどを
手掛ける脚本家や監督が中心になっているようだが、ゲーム
を構成する9つのサイクルからそれぞれスピンオフされた物
語によるオムニバスとなるようで、映画版とは異なる展開と
なりそうだ。
 1308年とされる『地獄篇』の成立からはちょうど700年が
経過しているが、ゲームや映画やアニメーションなど、この
展開ぶりを見たらダンテ本人は一体何と言うのだろうか。
        *         *
 2007年7月1日付第138回で紹介したツイステッド・ピク
チャーズによるRKO映画のリメイクについて、その第1弾
となる“I Walked With a Zombie”の映画化を、1993年公開
“Jason Gose to Hell: The Final Friday”などを手掛けた
アダム・マーカス監督で進めることが発表された。
 物語は、アメリカ南部ニューオリンズを舞台に、そこに建
つ古い商家の屋敷に家庭教師として雇われた主人公が、その
家の家族に隠された恐ろしい秘密を発見する…というもの。
1943年に公開されたオリジナルは、ゾンビ物の嚆矢となる作
品とも呼ばれ、数あるRKOホラーの中でも最も重要な作品
とされているものだ。
 その監督に起用されるマーカスは、上記のデビュー作以来
4作目という寡作の人だが、昨年にはヴァル・キルマーを主
演に迎えて“Conspiracy”(邦題:ゴッド・ランド)という
作品を約10年振りに撮ったところで、今回の起用に当っては
その際の共同脚本を手掛けたデブラ・サリヴァンも一緒に招
かれている。基本的にはB級アクションの監督と思うが、デ
ビュー作ではマニアックな評価も高かったようで、本作では
その面の期待も持たれているようだ。
 なお、今回の発表に際しては、以前の報告では挙がってい
なかった4本目のリメイク作品の題名も報告され、その作品
が1939年製作の“Five Came Back”になると発表された。オ
リジナルは、アマゾンの密林に不時着した旅客機の生存者た
ちが、ジャングルの危険や現地人の襲撃などと闘いながら機
体を修理し、生還するまでを描いたサヴァイヴァ物で、後の
大女優ルシル・ボールの出演作としても有名なものだ。
 この他には、以前のときに紹介した1945年製作“The Body
Snatchers”と、1946年製作“Bedlam”が予定されているも
のだが、まずは第1弾の“I Walked With a Zombie”がどう
なるか注目したい。
        *         *
 ドウェイン・ジョンスン主演の新作SF“Race to Witch
Mountain”が好評のアンディ・フィックマン監督が、2007年
8月15日付第141回で紹介したハナ=バーベラ・アニメーシ
ョン原作による実写版“Jonny Quest”を進めていることが
報告された。
 ワーナーで進められているこの計画は、『ハイスクール・
ミュージカル』のザック・エフロンが主演を希望しているこ
とでも期待されていたものだが、その計画に新たにフィック
マン監督とジョンスンの共演が加わり、数年間の停滞が一気
に解消されそうだとのことだ。
 物語は、科学者の父親と共に世界を旅する主人公ジョニー
・クェストが、インド人の義兄弟や愛犬のブルドッグと一緒
になって科学的な神秘の謎に挑んで行くというもの。オリジ
ナルのシリーズは1964年に1シーズンだけ放送されたものだ
が、その後の1980年代と90年代にもリメイクが行われた。
 その作品にエフロンの主演となるものだが、実はそこに準
備された脚本を読んだジョンスンが、「こんな、信じられな
いようなアクションを描いた脚本には今まで出会ったことが
ない。こんなことができるんだ…」と絶賛したとのことで、
直ちにジョンスンが共演を希望し、フィックマン監督を巻き
込んでの計画が進められているようだ。
 まだワーナー側の正式発表は出ていないが、この顔ぶれが
揃ったら…これは実現を目指して貰うしかないものだろう。
ハナ=バーベラ・アニメーション原作による実写版は、企画
ばかりでなかなか実現に至らないが、今度こそは何とかして
欲しいと思ってしまう。
 ただしフィックマン監督には、この他にもパラマウントで
サラ・ミロノウスキー原作のヤング・アダルト小説“Gimme
a Call”(噴水に落とした携帯電話が、過去の自分に繋がっ
てしまう)や、ディズニーでグラフィックノヴェルが原作の
ファミリー・アドヴェンチャー“Monster Attack Network”
などの企画が目白押しとなっており、どの作品が先になるか
はまだ決まっていない。
 どの作品も面白そうで、取り敢えずはヒット作を手掛けた
ディズニーでの計画が優先されそうだが、何でもいいから早
く実現して、次々映画化して行って貰いたいものだ。


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井口健二