井口健二のOn the Production
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2008年11月30日(日) ポチの告白、制服サバイガール、三国志、はじめはコドモだった、かさぶた姫、約束の地、ロルナの祈り

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ポチの告白』
菅田俊、野村宏伸、井上晴美の共演で、日本警察の横暴と、
警察機構+検察+裁判所+報道機関の癒着による警察腐敗の
隠蔽工作を告発した作品。
裏金作りや囮捜査、さらには悪徳警官による暴力団との取り
引きなど、マフィアものではよく観る物語が日本の警察でも
行われていることを描き出す。その一端はすでに裏金問題で
明らかにされているが、それが氷山の一角であることを描い
ている。
警察問題ジャーナリストの寺澤有氏の資料提供及び原案協力
を得て創作された物語で、社団法人・日本外国特派員協会が
撮影に協力、日本映画では初めて同協会の記者会見場での撮
影が実現している。また、記者や通訳などもエキストラ出演
しているようだ。
上映時間3時間15分。この手の意識の高すぎる作品の陥りが
ちな、ダラダラとした作品かと思いきや、初っぱなから警官
の横暴ぶりを描いて、観客をいらいらさせる掴みも見事な構
成で、そこから後は強引な展開ながら引き摺られるように観
てしまった。
主人公はノンキャリアながら刑事に抜擢された元巡査。同僚
巡査の横暴さとは対照的な実直さで住民の評判もよく、それ
が刑事課長の目に留まって刑事に選抜昇進されたものだ。し
かし、彼の実直さは上司への盲従となり、組織ぐるみの腐敗
に巻き込まれて行く。
一方、警察の不正を告発しようとしていた男が、覚醒剤で暴
れた男の逮捕劇の中、居合わせた新聞社のカメラマンにその
決定的な写真を撮影させる。しかし、大手の新聞社が記事に
するのは警察の公式発表だけで、その写真は握り潰される。
さらに、拳銃取り引き現場の逮捕劇でも、決定的場面の撮影
に成功する男だったが、その情報も握り潰された挙げ句、男
は何者かに襲われて姿を消してしまう。
やがて歳月が流れ、刑事になった主人公は完全に悪の水に漬
かり、日夜上司のための金集めに奔走していた。そんなとき
姿を消していた男が舞い戻り、新たに起きた刑事殺しと過去
の事件のつながりを調べ始める。それに対して警察は…
実直だった1人の巡査が、上司の命令の下、あっという間に
落ちて行く姿が描かれる。それは弱みを握られたとかの理由
もなく、ただ上司の命令であれば正しい、それが国民のため
になると信じて行う行為だ。
そんな恐ろしい警察組織の実体が描かれる。上映時間は長丁
場だが、それなりの見応えはあった。
ただし結末はこれでも甘い感じで、もっとガツンとした衝撃
的なものが欲しかった。確かに衝撃的な結末だが映像が静か
すぎる。野村のシーンを後にした方が絵的にも良いし、空し
さも強調されると思うのだが、そのためにはそれなりの伏線
がもっと必要になりそうだ。


『制服サバイガールI&II』
12月6日から東京のキネカ大森で限定公開される女子高生ア
クション映画2本立のDVDを送付してもらったので紹介し
ておこう。
作品は2部作だが、物語のテーマはそれぞれ異なっていて、
第1部は『ウェストワールド』の流れを汲む題名通りのサバ
イバルアクションであるのに対して、第2部は『ローズマリ
ーの赤ちゃん』を髣髴とさせるストーリーとなっている。
つまりこの作品は、出演者が共通するシリーズものでありな
がら、物語は同じ話の繰り返しではなくそれぞれが独立して
いるもので、正しく「1粒で2度おいしい」(byアーモンド
グリコ)という感じのお得な2本立なのだ。
その物語の第1部は、学校から美術のスケッチにやってきた
7人の女子高生が、その内の1人の叔父の経営する江戸の町
を模したアミューズメントランドを訪れるというもの。そこ
では敵役が客を襲うことはなく、客たちは思う存分銃撃戦を
楽しめるはずだった。
ところがその場所に、近くの遺伝子組み替え研究所で作られ
た謎の植物が入り込み、その植物は人間をゾンビ化し、ゾン
ビ化された人間は他の人間を襲うようになっていく。こうし
て、ゾンビ化によって突如客を襲い始めた敵役を相手にした
サバイバルが始まる。
そして第2部では、第1部を生き抜いた女子高生の1人がゾ
ンビたちを抹殺すべくランドを再訪する。しかしそこで彼女
は妊娠が判明し、その胎児は異常な速度で成長し始める。果
たして生まれてくる赤ん坊の正体は……となっている。
企画の成立がどういう経緯かは知らないが、元々1本に纏め
るのはかなり難しい話だし、それをあえて2本立とすること
で、それぞれの物語のテーマも明確化するなど、これはなか
なか上手い方策だとも思えるところだ。
まあ映画自体は低予算で、さほどの大仕掛けが観られるもの
ではないが、上記のアイデアでは見所があるようにも感じら
れ、2本で2時間28分の上映時間はそれなりに楽しめた。
出演は、飛鳥凛、有末麻祐子、紗綾、仲村みう、白石隼也。
いずれもグラビアやモデル出身の若手たちだが、それぞれい
ろいろな演技の経験も積んできて、それなりに観られるよう
になってきている。
なお、キネカ大森での上映は、出演者のトークショウなどイ
ヴェントも盛り沢山のようだ。

『三国志』“三國之見龍卸甲”
中国+韓国合作による「三国志」映画。数100人いると言わ
れる原作登場人物の中から、ジョン・ウー監督の『レッドク
リフ』ではフー・ジュンが演じていた趙雲の生涯を描く。
『レッドクリフ』では、最初の方で劉備の妻子救出に向かう
ぐらいでしか活躍していない趙雲だが、原作「三国志演義」
の作者である羅貫中には最も愛された英雄とも言われ、その
記述は多岐に渡っているとのことだ。
本作はその趙雲に焦点を当てて「三国志」の物語を再構築し
ているもので、もちろん劉備の妻子を救出に向かうエピソー
ドを含め、平民の出身でありながら五虎大将軍の1人にまで
上り詰めた武将の生涯が描かれる。
出演は、趙雲役に『LOVERS』『墨攻』などのアンディ
・ラウ。他に、『M:i:�掘戮覆匹離泪�ー・Q、『カンフー・
ハッスル』などのサモ・ハンらが共演。監督は、ジェット・
リー主演作『ブラック・マスク<黒侠>』などのダニエル・
リー。また、戦闘シーンのアクション監督をサモ・ハンが務
めている。
なお、「三国志演義」の中の趙雲は、記述は多いもののそれ
ぞれのエピソードの脈絡が乏しいようだ。そこで本作ではサ
モ・ハンが演じる同郷の武将を創作し、彼に語らせることに
よって物語の繋がりを構築している。
また、老境の趙雲が戦う敵の将軍として、マギー・Q扮する
曹操の孫娘(原作では義理の息子に当たる)を配し、冒頭の
救出劇との間に因縁話を作るなど、いろいろな工夫が施され
ているものだ。
ただし、脚色も手掛けたリー監督によると、「三国志」に記
述された全てのエピソードを詰め込むようなことはしなかっ
たとのことで、物語は極めて判り易く作られている。
しかも歴史が示すように、全体の戦いは趙雲の時代には終ら
なかったものだが、この映画には、その戦いの空しさの様な
ものも見事に描かれており、ただ戦うだけの「三国志」では
ない側面も見せているものだ。
なお、主要なシーンの撮影は敦煌など中国本土で行われてお
り、本物の雪の舞う中での戦闘シーンは迫力満点。また、故
郷に凱旋した趙雲を村人たちが讃えて演じる影絵芝居などに
も興味深いものがあった。

『みんな、はじめはコドモだった』
大阪の朝日放送が新社屋完成記念に製作した5人の監督によ
る子供をテーマとしたオムニバス。最初は記念イヴェントと
しての上映のみの予定だったが、評判が良かったために一般
公開されることになったそうだ。
その1本目は阪本順治監督の『展望台』。通天閣を舞台に、
閉館してエレベーターも止まった後に取り残された中年男と
子供の姿が描かれる。正直かなりシビアな物語。でも、最後
の子供のせりふに、いきなり涙腺を直撃されてしまった。子
供を侮ってはいけないというお話。その前のVFXもきれい
だった。
2本目は井筒和幸監督の『TO THE FUTURE』。小学校を舞台
にした、ちょっと異常な教師と、その生徒たちの物語。見方
によっては問題にされるかも知れないストーリーだが、ある
意味これが今の子供たちの置かれた現実なのかも知れない。
そんなことを考えるとかなり恐ろしい作品で、納得できた。
3本目は大森一樹監督の『イエスタデイワンスモア』。時代
劇仕立てのファンタシー。あまり儲かっていない食堂の女将
の幼い一人息子が誘拐され、身の代金が請求されるのだが、
それは女将には払えない大金だった。…ネタバレは承知の上
だが、ここからの展開が予想以上に見事な作品だった。
4本目は李相日監督の『タガタメ』。余命わずかと宣告され
た男と死神の物語。男には1人では食事もまともに取れない
精薄の息子がいて、その息子を残しては死ねないと男は訴え
る。しかし死神はそんな話は受け付けない。そして男の死期
は徐々に迫ってくるのだが…結末が見事な作品だった。
5本目は崔洋一監督の『ダイコン』。題名の意味は「ダイニ
ングテーブルのコンテンポラリー」だそうで、老夫婦と娘の
3人家族の食卓の情景が淡々と綴られる。それは本当に何気
ない会話の連続だが…。我が家も良く似た状況で、正しくこ
こに描かれた通りの情景が展開している。見事にやられたと
感じた。
「子供」という共通テーマでも、それは親にとっての子供で
あったり、社会における子供であったり、幼かったり長じて
いたりと、その捉え方は監督によっていろいろだが、それぞ
れ素敵な物語が描かれている。数年前からオムニバス映画は
何本か紹介しているが、玉石混淆が多い中、本作は一番の粒
選りに感じられた。

『かさぶた姫』
avexニュースター・シネマ・コレクションと題するavex製作
による長編作品集の1本。
かさぶたを見ると無性に剥がしたくなるという性癖を持つ女
性が、合コンで出会ったイケ面の男性を好きになったことか
ら始まるちょっとオタクな恋物語。
主人公はOL3人組の1人。大学生との合コンなどにも精を
出しているが、主人公自身はちょっと他人とは違う性癖のた
めに、なかなか男性とは付き合えない気分だ。だがその合コ
ンで1人の男性が気になり始める。
その後、ちょっとしたきっかけで思いの男性と付き合い始め
た彼女だったが、自分の癖のことはうかつには話せない。し
かも仲間のOLからも、「相手が引くから、絶対に話しては
駄目!」と忠告される。
しかし、隠せば隠すほど2人の関係はぎくしゃくし、ついに
は誤解から破局。その上、彼の傍に仲間のOLの姿を認めた
主人公は姿を隠す。ところが、ふと見たサイトで自分と同じ
嗜好の仲間を見つけた彼女は、一躍その世界のアイドルとな
ってしまい…
大学の合コンサークルにフェチサイトやオタク、正しく今の
若者文化が満載という感じの作品だ。監督は、TBSで「花
より男子2」などを手掛けているディレクターとのことで、
その辺の感覚は持っているということなのだろう。
だが問題はそこから、元々「相手が引く」としているものを
扱っているのだから、それを上回るドラマが必要なのにそれ
が出来ていない。つまり引いている観客をそれでも映画に引
き摺り込むパワーが、それ以外の部分に感じられないのだ。
はっきり言ってしまえば、合コンサークルでの集団レイプや
暴行などは、かなり前に事件化したものでいまさら旬ではな
い話題だし、彼女を持ち上げたサイトの主催者が豹変するの
も、何とも古くさい展開としか言いようがない。
フェチ文化というのは、それなりに面白い着眼点だと思うの
だが、基本それをネガティヴに捉えているから、その他の部
分がステレオタイプになってしまっている。それが結局、映
画全体を引いたものにしている感じがした。

主演は、映画『夜のピクニック』『さくらん』にも出ていた
という近野成美と、『カフェ代官山』などの相葉弘樹。ドタ
バタの演技は演出としてそれは悪いとは思わないが、話し全
体のオタクっぽさに僕はちょっと引いてしまった。

『約束の地』
avexニュースター・シネマ・コレクションと題するavex製作
による長編作品集の1本。
千葉県九十九里町を舞台に、父親の残した愛馬を再びレース
場に立たせたいと奮闘する若い女性の物語。
主人公の父親は地元の競馬場の厩務員だったが、その競馬場
が廃止されて失職、大学進学を目指す娘のために出稼ぎに向
かった東京で事故に遭ってしまう。そして残された娘は、父
親が残した愛馬と共に叔父の経営する乗馬クラブに居候して
いるが、すでに母親も亡くしていた彼女は周囲に心を閉ざし
ている。
そんな彼女のいる乗馬クラブの近くに、東京から3人家族の
一家が引っ越してくる。一家の幼い息子は喘息持ちで、その
転地療養のためこの地にやってきたのだが、息子は道沿いの
乗馬クラブを発見して大はしゃぎ、一家は早速そこを訪ねて
くる。
しかしそんな一家を疎ましく感じる主人公は、子供にも辛く
当たってしまうのだが、一家の父親は彼女に暖かい目を向け
る。
その父親が転職した町役場には、毎日のように主人公が現れ
ていた。彼女は、競馬場の再開を嘆願していたのだが…それ
は亡き父親が彼女と交わした約束でもあった。
中央競馬はそこそこの収益を挙げているようだが、地方競馬
は若者のギャンブル離れなどもあって赤字の場所も少なくな
く、廃止して跡地の再活用が検討されることも多くなってい
るようだ。従ってこの映画の物語のようなことも、少なから
ず有ることかも知れない。
そんな状況の中で夢を語ることはなかなか難しいものだが、
本作では亡き父親の残した夢という形でそれが設定されてい
る。しかしそれは、ある意味、主人公にとっては負担でもあ
り、いろいろ微妙な部分も含んでしまうものだ。
さらに本作では、次々にいろいろなことが起きて、物語を飾
って行くが、その出来事の多さが、逆にそれぞれのエピソー
ドの底を浅くしてしまっている感は否めない。それが映画全
体も軽い物にしてしまっているようにも思える。結局、監督
は何を描きたかったのか、監督の描きたかったものを、もっ
と明確に追った方が良かったように感じられた。

主演は、CM「午後の紅茶」などの伊藤ゆみ、乗馬はかなり
特訓の成果のようだ。他に、菅田俊、赤星昇一郎らが出てい
た。

『ロルナの祈り』“Le Sileuce de Lorna”
2003年9月に紹介した『息子のまなざし』、2005年9月紹介
の『ある子供』などのダルデンヌ兄弟の監督による最新作。
今年のカンヌ映画祭で脚本賞を受賞し、兄弟の作品は2度の
パルムドールを含む4作連続の主要賞受賞となった。
常に社会問題を作品の根底に置いてきた兄弟が今回選んだ題
材は、偽装結婚による国籍取得。主人公の女性は旧東欧圏の
出身者で、EU圏内での国籍を取得するため、ベルギーで麻
薬中毒の男と偽装結婚をしている。
彼女には、同郷の男性の恋人がいて、2人の夢はベルギーで
カフェを開くこと。ようやく国籍取得の目処も付き、銀行の
融資も受けられることになって夢は実現に向かっている。
ところが、裏の組織の手引きで国籍を取得した彼女には、次
に今度はロシア人男性の国籍を得るための偽装結婚の話が舞
い込む。その報酬は大きいが、そのためには今の麻薬中毒の
男との離婚を早急に成立させる必要が生じる。
その手っ取り早い方法は、麻薬中毒男の死だったが、彼女の
ために麻薬を抜こうとし始めた男の苦しむ姿に、何時しか彼
女は情を移していた。
彼女の出身国はアルバニアという設定になっている。歴史的
には常に他国に占領され、戦後ようやく勝ち取った独立は共
産主義独裁者によって踏みにじられた。そんな国がようやく
自由を得たとき、その国民は海外へと出稼ぎに出発したが、
その道も不況によって閉ざされ始めている。そんな現実がこ
の物語の背景には有るようだ。
日本でも、就労のための偽装結婚の話は報道で耳にするが、
ヨーロッパのそれは日本以上に厳しい現実と、まさに犯罪組
織との繋がりによる危険も孕んでいる。そんな危険な状況下
を気丈に生き抜く女性の姿が描かれる。
その描き方は、ダルデンヌ兄弟特有の余分な描写を全て排除
したドライなものであるが、そのドライな描写の中で見せ付
けられる主人公の情愛が、崇高にさえ思えてくる見事な物語
を生み出した。
主演は、コソヴォ出身のアルタ・ドブロシ。それに、『ある
息子』に出演のジェレミー・レニエとファブリツィオ・ロン
ジョーネが共演。
それにしても、余分な描写の排除は見事なものだ。それでも
ストーリーが保たれる、その構成力も見事と言える。そして
見事に断ち切られた最後のシーンに希望は有るか無いか…、
その判断は観客に委ねられる。



2008年11月23日(日) 大阪ハムレット、ハイスクール・ミュージカル、ハルフウェイ、サーチャーズ、花婿は18歳、プライド、長江にいきる、NIGHT☆KING

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『大阪ハムレット』
森下裕美の原作による同名コミックスの映画化。大阪は南海
本線沿線の庶民の街を舞台に、ちょっと変わった…でもある
かも知れない一家の日々が綴られる。
一家の家族構成は、母親と男ばかりの3人兄弟。映画の巻頭
で父親が急死し、その葬儀の席に現れた父親の弟と称するお
っさんが家に居着いてしまう。
その3人兄弟は、中3なのに老け顔で大学生に間違えられて
しまう長男と、ヤンキーの次男、それに教室で「女の子にな
りたい」と宣言してしまった三男。そして次男は、教師から
「ハムレット」のようだと言われ、国語辞典を片手に原作を
読み始めるが…
原作者は、「ハムレットを大阪弁でやったら台無しだろう」
と言っているが、映画の中にはしっかりと大阪弁の「ハムレ
ット」も登場する。さらに父親の亡霊も登場して、「ハムレ
ット」が見事に下敷きにされた作品になっている。
そんな無茶苦茶な展開が、大阪の街の中にしっくりと填り込
んで、正に人情味あふれる物語が描き出される。
実は今夏に岸和田を訪れたもので、その風景などにも何とな
く親しみが湧いた。映画には南海本線の岸里玉出駅も登場す
る。もっとも僕が乗ったのは急行だったから、この駅には止
まらなかったようだが、同じ路線の駅の雰囲気などはどれも
似たり寄ったりだろう。
そんな思い出も心地よく映画に浸ることができた。
出演は、松坂慶子、岸部一徳と、森田直幸、久野雅弘、大塚
智哉が3兄弟を演じる。他に、加藤夏希、白川和子、本上ま
なみ、間寛平らが共演。加藤が今回も良い感じだ。
監督の光石富士朗は東京出身だが、3兄弟を演じた森田、久
野、大塚は全員が関西出身者とのことで、その自然な演技が
魅力的だった。中でも、劇中劇で演じられる「シンデレラ」
のシーンは、舞台の上から観客席までが見事に演出されてい
た。
東京が舞台だと昭和と宣言しなければならないような世界、
でも大阪ではこれが今でも通用するのかな? そんな憧れも
感じながら映画を楽しんだ。因に本作は、今年の東京国際映
画祭の「日本映画・ある視点」部門で上映されて、岸部が特
別賞を受賞したとのことだ。

『ハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー』
        “High School Musical 3: Senior Year”
2006年と2007年に、CS系のディズニーチャンネルで放送さ
れたオリジナルムーヴィ『ハイスクール・ミュージカル』の
第3弾が、今回は劇場用映画として登場する。
物語の舞台は、ユタ州ソルトレイクシティに実在するイース
ト高校。その高校のバスケットボールチームに所属する花形
選手と、転校生で数学と科学の天才少女を巡る物語。そして
その学校では、毎年、生徒たちによるオリジナル・ミュージ
カルの公演が行われていた。
第1作では2人の出会いが描かれ、第2作では夏休みのヴァ
ケーションを中心に、それぞれミュージカルの公演を頂点と
する生徒たちのいろいろな思いが綴られたらしい。そこには
公演の主役の座を巡る争いや、花形選手を巡る恋の鞘当てな
どもあったようだ。
そして本作では、それらの思い出の詰まった学校からの卒業
を控えた生徒たちの将来の夢や、そこに向かって行く勇気が
描かれる。
花形選手にはバスケットの名門アルバカーキ大学からの推薦
入学の誘いが来る。そこは彼の父親も学んだ場所だ。一方、
天才少女にはスタンフォード大学への進学が認められる。そ
れは彼女にとっては最高の学府と言えるものだ。しかしその
進学は、2人の間が遠く隔てられることも意味していた。
日本のように、ほとんどの大学が関東や関西に集中している
と、こんな悩みも少ないかも知れない。元々小さい国日本で
は全国どこに行っても然程変りはないだろう。しかしこれが
アメリカだと、簡単に千マイル単位の距離が生じてしまう。
そんな現実も背景となっている作品だ。
主演は、『ヘアスプレー』にも出演していたザック・エフロ
ンと、ヴァネッサ・ハジェンズ。他に、アシュレイ・ティス
デイル、ルーカス・グラビール、モニーク・コールマン、コ
ーピン・ブルーらが、シリーズを通じて共演している。
10月末に公開されたアメリカでは、『マンマ・ミーア!』を
1.5倍程度引き離してミュージカル映画のオープニング記録
を樹立。1978年の『グリース』が持つ興行記録を、30年ぶり
に塗り替えることにも期待が持たれているようだ。
ただし日本では、CSの普及率が今一つ低いことが気になる
部分だが、音楽や歌、それに踊りなどで若さが爆発する楽し
い作品であることは確かだし、来年2月の公開までに何とか
盛り上げて行って欲しいものだ。

『ハルフウェイ』
『ロング バケーション』などのテレビドラマ脚本家・北川
悦吏子による初監督作品。北海道小樽を舞台に、同じ高校に
通う3年生男女の、大学進学を控えて揺れ動く青春の葛藤を
描く。
主人公の女子は、バスケットボールが得意な男子に憧れてい
るが、ある日の偶然から本人は気付かずに彼にその思いを知
られてしまう。そして、ようやくの決心で彼に告白しようと
したとき、その思いを知る彼に先を越されてしまう。
しかしこの状況で、彼が本気でそう思っていたのかどうか判
らないのも、この脚本の上手さとも言えそうなところだ。そ
して2人は交際を始めるのだが、地元での進学を決めている
彼女に対して、彼の志望校は東京の大学だった。
しかも、彼が進路を決めたのが告白より前だったことを知っ
た彼女は…
彼氏がバスケットボールの選手で、彼女の志望校と離れた大
学への進学を希望している。いやあ何処かで聞いたような話
だと思いながらこの作品を観たが、まさかそれを連続で紹介
することになろうとは…しかも本作の公開も来年2月の予定
とのことだ。
もちろん、作品の成立時期から考えて、どちらかが真似をし
たというはずはないのだが、それにしても、先の作品の紹介
では「日本では成立しない」と書いておきながら、直後にそ
れが成立している物語というのも恐れ入ったところだ。
でもまあ、本作は歌や踊りで豪華に飾ってはいないものの、
その分しっかりと2人の気持ちが伝わってくるところもあっ
て、特に北川ワールドとも言われる脚本見事さでは、簡単に
はその甲乙もつけがたい作品だ。
主演は、『ラブファイト』の北乃きいと『天然コケッコー』
の岡田将生。また、『赤い糸』の溝端淳平と『ちーちゃんは
悠久の向こう』の仲里依紗が共演。さらに、成宮寛貴、白石
美帆、大沢たかおらが脇を固めている。
特に年長の3人が演じる教師たちが生徒の話を真剣に聞き、
実に判りやすくその悩みを整理してくれるのが見事で、こん
な教師がいてくれたら生徒も幸せだろうなあ…と思ってしま
うところだった。
高校生の悩みは今も昔も、世界中も(?)変わらないという作
品。青春の迷いや決断がピュアな映像で綴られていた。それ
にしても、北乃きいのフックはかなり利きそうだ。

『サーチャーズ2.0』“Searchers 2.0”
1984年公開の長編デビュー作『レポマン』で知られるアレッ
クス・コックス監督の5年ぶりの新作。ジョン・フォード監
督による1956年の作品“The Searchers”(捜索者)に準え
て、その撮影地のモニュメントバレーに向かって復讐の旅を
行う2人の老優を描く。
主人公の2人は、子役時代に参加した映画の脚本家から手酷
い虐待を受けたのだという。そして、その脚本家がその地で
サイン会を開くという情報を得て、積年の恨みを晴らしに行
くというのだが…そこに、一方の老優の娘も巻き込んでの旅
の模様が描かれる。
しかしこの2人、ことあるごとにチャールズ・ブロンスンや
クリント・イーストウッド、セルジオ・レオーネなどの復讐
がテーマの映画談義を繰り広げて娘は呆れ顔。そして最後は
奇想天外な三つ巴の荒野の決闘と、大団円へと雪崩れ込む。
しかもその間には、ブランド志向や中東戦争、さらには映画
の著作権までアメリカ合衆国及び映画産業に対するいろいろ
な風刺や批判も満載という作品だ。まあ映画ファンには結構
笑えると思うし、恐らく最後は呆気に取られることにもなる
だろう。
出演は、デル・ザモラとエド・パンシューロ。それぞれコッ
クス作品には8作目、7作目という常連と、新人のジャクリ
ン・ジョネット。また、製作総指揮としてロジャー・コーマ
ンが名を連ねている。
なお、試写後には監督へのQ&Aが行われたが、そこでは僕
もいろいろと質問させてもらえた。その最初には、本作をフ
ィルムでなくHDで撮影した点を訊いてみたが、その答えは
一長一短。長所は手軽なこと、短所は上映基準が確立してい
ない点とのことだ。因に本作の撮影では、ソニー製のHVR
−Z1Uが使用されている。
また、クレジットにフィル・ティペットの名前があることを
訊いてみたが、本作の製作に『ロボコップ』などを手掛けた
ジョン・デイソンが参加してくれた伝で、大団円のVFXを
頼んだとのこと。さらに、次回作はもう少し大型予算になる
ので、その作品でも使いたいとも語っていた。
因に、その作品“Repo Chick”は、『レポマン』を女性の主
人公でリメイクするもので、その主演には、本作で娘役を演
じたジョネットを起用したいそうだ。
一時は、反米のニカラグアで映画を撮るなどしてハリウッド
から干された経緯もあり、その後は、日本でテレビシリーズ
『濱マイク』のエピソード監督などを務めたこともあるコッ
クスだが、そろそろ巻き返しのモードに入ってきたようだ。

『花婿は18歳』
時代を超えて巡り会うことを運命付けられた男女が、現代に
おいても赤い糸で結ばれる。ところが今回の女性は38歳、ケ
ンブリッジ大学の研究者から叔父に請われて私立高校の校長
に就任するため帰国。男性は18歳、その高校の生徒会長とい
う間柄だった。
しかも校長には、前任者が生徒にラヴレターを送ったために
解任されて、学校内の風紀を正すという責務が与えられてお
り、一方の生徒会長は、嘘を吐こうとすると呼吸困難になる
という特異体質だった。
そこで、生徒会長が卒業するまでの3カ月間は、結婚してい
る2人の関係を秘密にしたまま過ごそうと決めるのだが…
脚本は『星空のむこうの国』などの小林弘利。この脚本家は
基本ファンタシーの人だと思っているが、だからこそできる
無茶苦茶な設定と、その無茶苦茶な設定の中で無理矢理辻褄
を合わせてしまう面白さという感じの作品だ。
大体、38歳と18歳の結婚を、ただ赤い糸で結ばれていたから
というだけで片付けてしまうのも凄いが、それを物語の終盤
ではちゃんと2人の愛として描いているのも、見事にやられ
たという感じの展開になっていた。
物語のベースには当然『おくさまは18歳』(1970〜71年)
がある訳だが、飛鳥→愛子、哲也→雅也という主人公たちの
名前の付け方にも、脚本家のこの時代のテレビ番組への思い
入れが感じられた。
主演は、『カフェ代官山』の大河元気と元宝塚娘役トップの
純名りさ。さらに加地千尋、小野健斗のフレッシュな2人が
共演。他に、長澤奈央、日向丈、白木みのる、麿赤兒、田中
要次、上田耕一らが脇を固めている。
監督は、『カフェ代官山』などの武正晴。かなりおふざけも
多い作品をそつなく撮っている感じで、特に突然のミュージ
カルシーンなども無難にこなしており、本当はもう少し洗練
されて欲しいが、まずは及第点だろう。後の希望としては純
名の踊りも観たかった程度だ。
まあ、突っ込みどころはいろいろある作品だが、それなりに
頑張ってはいるという感じで、評価をしておきたい。

『プライド』
一条ゆかり原作コミックスの映画化。漫画家デビュー40周年
記念とのことで、原作者初の映画化作品となっている。
女性向けコミックス特有のドロドロした女の戦いが描かれた
もので、最近の物語的にあっさりとした日本映画とは趣が異
なるが、こんな物語もたまには良いかも知れない。そんなと
ころに一種の新鮮さも感じられる作品だった。
物語は、オペラ歌手を目指す2人の女性が主人公。1人は、
高名なオペラ歌手を母に持つ資産家の娘で、しかも才能もあ
り、授業料の高い音楽学校に通っている。もう1人は、場末
のクラブ歌手の娘で、アルバイトをしながら庶民的な音楽学
校に通っている。
そんな2人が1枚のオペラの入場券をきっかけに巡り会い、
お互いをライヴァルとして競い合って行くことになるが…
この主人公の2人を、昨年の日本レコード大賞新人賞を受賞
した5オクターブの声域を持つという女性歌手ステファニー
と、『デスノート』の主人公の妹役、また『ウルトラマン・
マックス』のアンドロイド役の満島ひかりが演じている。
芝居は初めてというステファニーは、まあ演技の点はお世辞
にも名演とは言えない(中でも、ジョン・カビラとの親子の
会話シーンは…だ)が、さすがに後半のクラブなどでの歌唱
シーンは見事だった。
一方の満島は、本人も戸惑ったという程の裏表のあるキャラ
クターで、これは漫画的に面白かった。そんな中で、オペラ
コンクールのシーンでは、歌は吹き替えであるもののそのブ
レスのタイミングや口の開き方など、さすがに演技で対抗し
たいという思いがありありという感じで、物語だけではない
2人のライヴァル心が観えてくるのも心地よかった。
そして、クラブなどでの歌唱シーンでは、元女性ボーカルグ
ループFolder 5のメムバーという実力は発揮できていたよう
だ。ただし、試写前のミニ記者会見では、「仮にテレビ等で
歌う機会が出来ても口パクにしてください」としていたが…
他に渡辺大、及川光博、高島礼子、由紀さおり、新山千春ら
が共演。監督は『デスノート』の金子修介。特に及川と高島
は原作者の指名だそうで、会見では一条が満足そうだった。
なお、試写前のミニ記者会見では及川に、「主演作『クロー
ンは故郷をめざす』が同時期の公開になることの感想は?」
と、ちょっと意地悪な質問をしてみたが、「人との出会いを
大切にしているので、たまたまこういうことになったが、常
に自分はベストを尽くしているつもりだ」というスマートな
回答で、これには感心した。

『長江にいきる』“秉愛”
桂林の景勝を水没させる三峡ダム。そのダムは長江(揚子江)
の岸辺に住んでいた住民の生活基盤をも奪い、彼らに移住を
余儀なくさせている。その人口140万人。このドキュメンタ
リーは、その長江の岸辺に住み、移住を拒否し続けた1人の
女性を描いている。
彼女は夫と結婚する前には別の恋人がいたのだという。しか
し岸辺に住むのが何よりだという父親に説得されて夫の許に
嫁いだ。その夫とは2人の子供をもうけたが、夫は身体が弱
く、彼女は日々山の畑まで通って、果樹やトウモロコシなど
の栽培を行っている。
その畑仕事は重労働だが、彼女には夫と2人の子供を養って
いるという気概がある。そして、「自分が死んだら『あの人
は骨身を惜しまず、よく夫や子供の面倒を見たね』と言われ
たい」のだという。
そんな彼女の許に三峡ダム建設の話が持ち上がる。そして、
その水位が上がる海抜135m以下に住む彼女の一家を含む住
民に移住命令が下される。
もちろん移住の保証金は出るが、彼女の一家が移住地として
割り当てられるのは、畑から遠く離れた場所。しかもそこは
他の農民たちの占有地区で、新たに近くの農地が割り当てら
れることもない。このためほとんどの住民は、農地を捨てて
都会に移住するようだ。
しかし彼女は、農民の暮らしが一番で、いまさら都会に住み
たくはないのだという。そんな彼女に役人たちは、甘言を弄
したり、「戸籍を取り上げて子供を学校に行けないようにし
てやる」などの脅しをかけたりもしてくる。
昔は、下放政策で都会の人間を地方に追いやった政府が、今
度は地方の人間を都会に追いやっている。そんな皮肉にも笑
ったが、独りっ子政策で3人目以降を堕胎しているという現
実にも戦慄した。映画では流産の話と堕胎の話が分けられて
いるが、人工流産のための薬剤を使用している可能性は高そ
うだ。
そんな中国政府の行っている国民を人間と思っていないよう
な政策の横暴さ、共産主義ならもっとお互いが協力するはず
なのに、そんなことはお題目だけになっている現実が見事に
描き出される。特に、役人たちが上からの命令を振りかざす
だけのまるで茶番劇の住民集会の様子などが如実にそれを物
語っていた。
ただし、この作品には未だ結末がない、最後にはテロップで
多少の現状が紹介されるが、それだけではないはずだ。この
先何年もかかるのかも知れないが、本作の主人公の女性を最
後まで追った作品を観たいものだ。

『NIGHT☆KING』
『女帝』『夜王』などで知られる倉科遼原作漫画『破天荒』
の映画化。東京新宿歌舞伎町のホストクラブ「愛本店」など
の経営者愛田武氏をモデルとした風俗映画。
ベッド会社ではトップセールスマンになるも女性問題で首。
そんな無類の女好きと自称する男がホストとして成功するま
でを描く。
主人公は地方出身者で、東京でベッドのセールスマンをして
いるが、なかなか成績は上がらない。しかしある日のこと、
声を掛けた女性にベッドでのテクニックを実演してみせたこ
とから次々契約が取れ始める。
ところがその問題が表面化して…。その後は友人のアパート
に転がり込み、そこで薄幸の女性と巡り会う。さらに叔父の
口利きでホストクラブに勤めることになった主人公は、彼女
の伝でダンスのレッスンなどにも励むのだが…
まあ、基本的にサクセスストーリーだし、現実はもっとドロ
ドロしたものだろうとは思うが、そんな成り上がりの主人公
を、最近ちょっと注目している『鎧サムライゾンビ』などの
いしだ壱成がコミカルに気持ち良く演じてみせる。
そこには男同士の友情や、やくざの任侠みたいなものもあっ
て、まあ直接の関りは持ちたくない世界だが、お話としては
それなりに辻褄も合っていたし、背景となる昭和43年には僕
自身にもいろいろな思い出もあるので、それなりに楽しんで
観ることは出来た。
昭和43年の時代考証では、赤やピンクの公衆電話など、それ
なりに細かいところにも気を使われていたようだ。それ以上
のファッションなどについては、僕には不明だが…
共演は、吉井怜、佐野大樹、千原せいじ、津田寛治。他に、
はなわ、愛染恭子、風間トオルらが顔を出している。監督は
藤原健一。因に吉井は、以前の主演作を批判的に紹介したこ
とがあるが、今回はなかなか良い演技を見せていた。
なお、製作のGPミュージアム・ソフトは、任侠物のDVD
直販などを中心にした製作会社のようが、どの作品もそれな
りの出演者は揃えているようだ。また劇場公開向けの作品も
以前から手掛けており、その中では本作と同じ藤原監督の前
作も面白そうで、これからも期待したいところだ。



2008年11月16日(日) 寝取られ男のラブ♂バカンス、旭山動物園物語、赤い糸、アライブ、ヘブンズ・ドア、女バス、空へ、チェ28歳の革命/39歳別れの手紙

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『寝取られ男のラブ♂バカンス』
             “Forgetting Sarah Marshall”
前回紹介した『無ケーカクの的中男』のジャド・アプトゥが
製作を担当したラヴ・コメ作品。
主人公は人気テレビシリーズの劇伴音楽を担当しているミュ
ージシャン。そのシリーズの主演女優サラ・マーシャルとは
5年間の同棲中で、実はシリーズの仕事には嫌気が差して、
本当は別の計画に進みたいのだが、彼女との生活のため我慢
を重ねている状態だ。
ところが、青天の霹靂で彼女から別れ話を持ち出されてしま
う。しかも彼女には他の男ができたのだという。そのショッ
クは絶大で、主人公は仕事も手に付かず、街に女あさりに出
かけても、頭に浮かぶのはサラのことばかり。
そこで、弟の勧めもあってハワイに傷心を癒すための旅行に
出るのだが、あろうことか同じホテルにサラと彼女の新しい
恋人も泊まっていた。しかしホテルのフロント係の機転で最
高のスイートルームに宿泊することになった主人公は…
親切というか、ちょっとお節介なホテルの従業員たちに囲ま
れて、主人公の傷心は癒すことができるのか、しかもすぐ傍
に元恋人がいるという状態で?
まずは普通ではないシチュエーションだが、その分、観客に
は気楽に楽しめるコメディというところだ。でもそこに描か
れる男女の関係は結構リアルで、飛んでもない状況から自分
自身で脱出しなくてはならなくなった人間の姿が丁寧に描か
れている。
『無ケーカク…』もそうだったが、この辺の人間描写の丁寧
さがアプトゥ・コメディの真骨頂と言えるのだろうか。因に
本作の脚本は、主演のジェイスン・シーゲルが手掛けたもの
で、シーゲルは挿入歌も書くなど八面六臂、その脚本をアプ
トゥが認めたものだ。
シーゲル以外の出演者は、人気テレビシリーズ『ヴェロニカ
・マーズ』のクリスティン・ベルと、ロシア出身の新星ミラ
・クニス、それに、映画『ペネロピ』に出演のラッセル・ブ
ランド。特に、クニスの可憐さとブランドのロック・ミュー
ジシャンぶりが好感だ。
なお、この原題も以前に制作ニュースで取り上げているが、
それは映画の最後に登場するジム・ヘンスン・マペッツによ
るミュージカルが本物になるかも知れないというもの。その
後の進展の情報はないが、本作ではその一部が観られるのも
貴重だ。

『旭山動物園物語』
北海道旭川にある市営の動物園が年間入場者数300万人を記
録するなど、上野を越えて日本一に輝いた。1996年には年間
26万人の最低を記録、幾度も廃園寸前にまで追い込まれた旭
山動物園の奇跡の逆転劇を描いた作品。
と言っても、逆転劇自体は、それまで動物園に無関心だった
市長が落選し、理解のある市長が当選したことにも拠るよう
だが、その新市長の許、世界初と言われる行動展示を実現す
るまでの経緯などが、かなりシビアな部分も含めて描かれて
いる。
そこには、現代における動物園の存在意義や、外来種の侵入
による日本固有種の危機の問題、さらには北海道特有ではあ
るがエキノコックスの問題など、人間と動物に関わる様々な
問題提起が織り込まれて、これだけの意識の高さを持ってい
るのも見事なものだ。
物語の原案は現旭山動物園々長の小菅正夫氏。監督はマキノ
雅彦。マキノは『次郎長三国志』に続けての作品となるが、
2006年にドラマで同園長の役を演じ、その前に園長と会って
以来の念願の作品とのことで、それ以来の丹念な取材で物語
を作り上げている。
そして脚本は、テレビシリーズ『相棒』などを手掛けた輿水
泰弘。映画脚本は初めてとのことだが、上に書いたようにい
ろいろな要素を手際良く織り込んで、しかも感動的に盛り上
げる構成は見事なものだ。
出演は、園長役に西田敏行、新人の獣医役で中村靖日、前田
愛。その他、長門裕之、六平直政、塩見三省、岸部一徳、柄
本明、堀内敬子らが動物園職員を演じる。特に長門、岸部ら
は象やマウンテンゴリラとの共演シーンもあり観ものだ。
さらに笹野高史、萬田久子、平泉成、麿赤兒、とよた真帆、
天海祐希らの脇役の顔ぶれも多彩で、この監督でこの題材だ
と、出たがる人も多かったのかな…という感じもした。
それに加えて動物たちの登場も多彩で、実際には旭山だけで
なく、全国の動物園の協力を得たという動物図鑑のような映
像も素晴らしかった。そして、映画の最後を飾る動物たちの
大合唱は、それだけでも聞き物になっているものだ。

『赤い糸』
2006年携帯サイトで連載開始されたケータイ小説の映画化。
そのアクセス数は累計3600万を越え、書籍版も180万部を突
破しているそうだ。そして本作は、12月6日スタートのフジ
テレビ系ドラマとの連動で12月20日に劇場公開される。
現時点ではテレビドラマがどう展開されているのか判らない
が、作品は本作だけで成立する物語になっており、もしかす
るとドラマの総集編という感じなのかも知れない。それにし
てはテレビが12月6日スタートでは、事前にはまだ2回しか
放送されていないはずで、その詳細は不明だ。
取り敢えず映画の物語は、1992年2月29日生まれの女子中学
生が主人公。彼女は同じ誕生日の同級生と出会い運命を感じ
るのだが、2人の間には過去の経緯もあるようだ。そして2
人の間にはいろいろな出来事が起き、その仲は引き裂かれて
行く。それでも運命を信じたい彼女だったが…
ドラッグからDV、友の死や自殺騒ぎまで、それに学園祭や
修学旅行も描かれて、放送2回分にしては目まぐるしく物語
が進む。上映時間の限られた映画ではこれもありかも知れな
いが、放送回数だって伸ばそうと思えば伸ばせるテレビシリ
ーズでこの展開は凄いものだ。
もしかしたら、放送分ではもっと先の方まで映画に盛り込ま
れているのかも知れないが、それにしてはかなり重要な展開
まで明らかにされているのは不思議なところだ。それが観客
を映画館に引っ張るための作戦としたら、それは見事なもの
ではあるが。
以前に別のケータイ小説のドラマ化を観ていた家人が、あま
りの展開の速さに驚いていたが、ケータイ小説はどれもこん
なものなのだろうか。これでは人間の情感のようなものは描
き切れないように思えるが、本作ではそれを無理矢理やって
いるところもまた凄い。
実際、この映画にはかなり微妙な心理的葛藤なども描かれて
いて、その辺がさらに先のドラマに繋がる仕組みなのも巧み
な計算なのだろうか。映画は一応の結末を迎えるが、テレビ
ドラマはまだ続くようだ。
主演は、南沢奈央、溝端淳平。他に、木村了、岡本玲、石橋
杏奈、桜庭ななみ、柳下大らの若手が大挙共演。さらに山本
未来、渡辺典子らが出演している。
監督は、『鹿男あをによし』や映画版『電車男』などの村上
正典、映画版の脚本は渡辺千穂が担当した。

『アライブ−生還者−』“Naufrages des Andes”
1972年10月、厳冬のアンデス山脈に旅客機が墜落、それから
72日後に14名が奇跡の生還を果たした。その事故の顛末を当
時の生還者たちの証言を交えて描いたドキュメンタリー。
この事故のことは、かなり明確に覚えている。と言うより、
その後の多分リーダーズ・ダイジェスト誌か何かに掲載され
た陰惨なドキュメントの衝撃が強く、その印象が自分の頭の
中に刻みつけられたものだ。
だから、その後に公開されたドキュメンタリー映画『アンデ
スの聖餐』は、音で聞いた題名が「凄惨」としか思えなくて
観られなかったし、フランク・マーシャルが映画化した『生
きてこそ』も、確か試写状は貰ったが観に行けなかった記憶
がある。
そんな内容の作品なので、今回も観ることをためらったのだ
が、先に観た友人に勧められて試写会に足を運んだものだ。
そして見終っての感想は、観て良かったの一言に尽きる。
作品は、フェイク映像を含めた事故の再現に始まる。その映
像は巧みで相互に写し出される現在のインタヴューとの繋が
りもうまく構成されている。しかしここまでの部分は、僕自
身も当時の報道などで知っていた内容の再確認でもある。
そして墜落事故、その顛末も記憶の再確認だったが、その後
の核心に迫る辺りからの生還者たちの発言が胸を突き刺し始
める。そして正に核心部分に関しては、生還者たちの発言と
巧みな再現映像で、その時の彼らの心情が真に理解できるも
のになっていた。
もちろん、その中を生き抜いた彼らの信念は賞賛されるもの
だし、そこでの彼らの苦しみも理解しているつもりだった。
しかし、字面ではない映像で語られることで、何かその思い
を共有できたような、そんな気持ちにもさせてくれる作品。
さらに30年以上を経て再び遭難現場を訪れた彼らの姿や、何
よりその事故の再現映像は、本当にそこで過ごし、その山々
を越えていった極限の状況の再現で、それを成し遂げた彼ら
の意志の強さを見事に写し出している。
当時、一時は非難の矢面にも立たされた彼らだが、その記録
映像の中で沸き上がる拍手の音が何にも代えて人間の素晴ら
しさを感じさせてくれる作品でもあった。

『ヘブンズ・ドア』
ボブ・ディランの楽曲‘Knocking on Heaven's Door’から
発想を得て1992年にドイツで製作された映画作品を、2006年
のアニメーション『鉄コン筋クリート』を手掛けたマイクル
・アリアス監督が、初の実写監督として日本を舞台に描き直
した作品。
ドイツ版のオリジナルは観ていないが、ストーリーの紹介を
読むとかなり共通する部分は多いようだ。
ただし、オリジナルが男2人のバディムーヴィであるのに対
して、リメイクでは年の離れた男女を主人公とし、さらにか
なりアヴァンギャルドだというオリジナルより、しっとりし
た情感のある作品に仕上げている。
とは言うもののアニメーションの監督らしく、アヴァンギャ
ルドな雰囲気も絶妙な配合で取り入れているのはさすがとい
う感じがする作品だった。
物語は、健康診断で見つかった脳腫瘍がすでに手遅れで、余
命長くて3日と医者に言われてしまった28歳の男性と、同じ
病院に7歳から入院し、海を見たこともないまま余命1カ月
とされる14歳の少女が、最後に海を見ようと病院を脱走する
ことから始まる。
しかもその脱走に使った車は…そのため、とんでもない事件
を引き起こして警察に追われる羽目に陥ったり、他にも彼ら
の命を狙う連中も現れて…それでも2人は海を目指して突き
進んで行く。
物語はかなりアヴァンギャルドだが、これを雨や海や、街や
田園や、高層ビルや洞窟などのいろいろな背景を組み合わせ
て、見事な映像の中で展開させている。
そしてこの物語を演じているのが、『真夜中の弥次さん喜太
さん』の長瀬智也と『日本沈没』に出演の福田麻由子。長瀬
は、試写会の舞台挨拶で前作を紹介されて苦笑いしていたの
が面白かったが、本作では、出だしはステレオタイプの演技
から徐々に感情のこもった演技に向かっていく展開が良い感
じだった。
共演は、長塚圭史、薬師丸ひろ子、田中泯、三浦友和。その
ほか多彩なゲスト出演も楽しめる。なお試写会は、海に向か
うという映画のテーマに合わせて、豊洲にあるユナイテッド
シネマで行われたが、日本最大級といわれるスクリーン10の
迫力も良い感じだった。

『女バス』“The Heart of the Game”
題名は「じょばす」と読ませて「女子バスケットボール」を
表わす。
その女子バスケットボールのアメリカチームは、北京オリン
ピックで4連覇を達成したのだそうで、そのサクセスストー
リーでも見せられるのかと思っていたら、予想に反して現代
アメリカの縮図のようなものを観ることになった。
バスケットボールが、アメリカの国技とも言われ強いことは
知っていたが、本作はその基礎部分とも言える高校女子バス
ケットボールの現状を描いたドキュメンタリー作品だ。
映画の舞台はシアトル。そこにあるルーズベルト高校の女子
バスケットボール部に、公募で選ばれた監督がやってくると
ころから物語は始まる。
その監督は、昼間はワシントン大学で税学を教えているとい
うビル・レスラー。彼は根っからのバスケットボール好きが
高じて応募したが、スポーツ指導のプロではない。しかしそ
のアマチュア故の掟破りの指導法が、やがて彼女たちに栄冠
を掴ませることになる。
彼の取った試合の戦法は、特定のオフェンスを置かず、全員
守備、全員攻撃を仕掛けるというもの。日本のサッカーにも
通じるその戦法が、花形スター選手を擁しないチームに戦う
術を与えて行く。
その戦法は、ある年は狼の群れと名付けられ、ある年はライ
オンの群れとなり、また狼の群れの復讐、そしてピラニアの
大群へと変化して行く。しかしそれには選手間の信頼も欠か
せない。それを形成するための手法などは、日本のチームに
も学ばせたいところだ。
それでも、その群れのリーダーとなるべき選手間の確執や、
予期せぬ様々な出来事が予想外の展開を産んで行く。そして
それは社会をも巻き込む事態へと発展してしまう。全く誰か
が仕掛けたのではないかと思われるくらいの出来事の連続。
しかしそれでも彼女達は、信頼する監督の許、一致団結して
栄光に向かって突き進んで行くのだ。
元々ルーズベルト高校は、男子スポーツでは名門校のようだ
が、女子はその陰に隠れていたようだ。だからアマチュアの
監督も入り込む余地があったのかも知れないし、そんな学校
だからこそ集まった選手もいることになる。
そんな想定外の出来事が見事にカメラに納められている。で
も結局、それで全てがうまく行った訳でないという結末も…
いろいろ考えさせられる作品だった。

『空へ−救いの翼−』
航空自衛隊小松基地に所属する航空救難団を舞台にしたレス
キュードラマ。
主人公は、女性初の救難ヘリパイロットとなった新人隊員。
彼女は幼い頃に離島で急病になった母親を、嵐を突いて救援
にきた自衛隊の救難ヘリを目の当りにし、その職務に憧れる
ことになる。そして入隊した彼女は小松基地に配属される。
しかし、救難ヘリの操縦には細心の注意と集中力が必要で、
憧れの職に就いたばかりの彼女はなかなか集中が保てない。
その一方で、燃料切れなどの事態では、発見した生存者を見
捨てなくてはならなくなる非情さも体験する。
そんな中で、女性の上官や同僚たち、また一緒に救難派遣に
向かう仲間たちと共に彼女は成長して行く。
自衛隊の女性パイロットは2008年9月16日現在17名いるが、
そのほとんどは輸送機乗務。救難団にも捜索機と輸送ヘリの
パイロットはいるが、救難ヘリの女性パイロットはまだ誕生
していないのだそうだ。ただし規制がある訳ではなく、近い
将来誕生の可能性はあるとされている。
従って、本作の物語は現状ではフィクションということにな
るが、その映画化に当っては、それ以外のフィクションをで
きる限り排除する方針で進められている。
このため映画に登場する山岳や海上、その他の救難シーンは
全て訓練で実施された作業の模様が実写で撮影されており、
実際の活動が隊員たちの吹き替えにより撮影されている。そ
の迫力は、到底VFXなどでは再現できないものだ。
その中には、両側の余裕50cmという狭い突堤に着陸するシー
ンなどもあるが、何と言っても白眉は航行中の護衛艦に着艦
するシーン。空母への艦載機の着艦などは映画で何度も観て
いるが、ヘリを速度を合わせながら着艦する困難さは初めて
知ったものだ。
その他にも、浜辺を疾走するバイクの背後にヘリが登場する
など、訓練の範疇で撮影されたシーンが随所に織り込まれ、
さらに救難団以外の戦闘機の訓練シーンなども物語の展開に
合わせて挿入されている。これは航空機フェチにはかなりの
観ものだ。
主演は、自身の父親が救難隊員で訓練中の事故で殉職したと
いう高山侑子、正に運命の配役という感じだ。他に渡辺大、
井坂俊哉、金子賢、木村佳乃、三浦友和、浅田美代子らが共
演。監督は『戦国自衛隊1549』の手塚昌明が担当した。

『チェ28歳の革命』“Che Part1: The Argentine”
『チェ39歳別れの手紙』“Che Part2: Guerrilla”
オスカー俳優ベニチオ・デル=トロの製作・主演で、彼にオ
スカーをもたらしたスティーヴン・ソダーバーグ監督による
革命家チェ・ゲバラの伝記映画。
今年のカンヌ映画祭でのワールドプレミアでは2本連続上映
され、今回の完成披露試写も同様のスタイルで行われたもの
だが、2作品はそれぞれシネマスコープとヴィスタサイズで
あるなど上映のフォーマットも異なり、基本的には独立した
作品となっている。
しかも監督は、第1作では複数の時間軸を交互に観せる展開
を採っているのに対し、第2作では時系列を保持するなど、
演出のスタイルも変化させている。
その第1作は、1956〜59年のキューバ革命の様子と、1964年
の国連での演説を中心とした活動が相互に描かれ、ゲバラの
人となりが描き出されて行く。そしてこの物語は、後に妻と
なるアレイダ・マルチとの出会いや、サンタ・クララでの勝
利など希望に満ちたものだ。
それに対して第2作は、1966〜67年のボリビアでの活動が描
かれる。ここでのゲリラ戦の結末は歴史が教えるようにゲバ
ラの敗北に終わるものであり、正直に言ってかなり重苦しい
ものとなる。
因に、当初企画を立てたデル=トロは、一般にあまり知られ
ていないボリビアでの戦いのみを描く計画だったそうだが、
それだけではゲバラの苦しみは描き切れないと判断、そのた
め第1作の構想が加えられたとのことだ。
それは確かに、ゲバラの苦しみを際立たせることにはなった
が、2作品を連続して観ると、それが際立ちすぎるようにも
感じられる。それは、今の世界情勢を考えると一層辛くも感
じられるところだ。
やはりこの2作品は、それぞれを独立して観る方が正しいよ
うに思える。そして勝利に酔いたいだけなら第1作だけでや
めた方が良い。でも物事を真剣に考えたいのなら、第2作ま
で観るべきだ。今の世界情勢はゲバラが改革しようとした当
時と全く変わっていないのだから。
共演は、『300』などのロドリゴ・サントス、テレビ『ヒ
ーローズ』などのサンティアゴ・カブレラ、『ボーン』シリ
ーズなどのフランカ・ポンテ、『コレラの時代の愛』などの
カタリーナ・サンディノ・モレノ、『インランド・エンパイ
ア』などのジュリア・オーモンド。それに、ルー・ダイアモ
ンド・フィリップス。
なお脚本は、『ジュラシック・パーク3』『エラゴン』など
のピーター・バックマンが担当した。



2008年11月15日(土) 第171回

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※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 ティム・バートン監督による“Alice in Wonderland”の
撮影は始まっているようだが、その影響もあってか児童向け
の古典文学の映画化が次々発表されている。今回はその情報
から紹介しよう。
 その1本目は、これもディズニーの古典アニメーションで
も知られる“Pinocchio”(ピノキオ)の再映画化を、ギレ
ルモ・デル=トロの製作総指揮により、ジム・ヘンスンCo.
(JHC)で進めていることが発表された。
 原作の小説はイタリアの作家カルロ・コロディが1883年に
発表したもので、1940年にディズニーが長編アニメーション
の第2作として映像化。また実写では、1996年にマーティン
・ランドーの出演で映画化されている他、2002年のロベルト
・ベニーニ監督・主演作も記憶に新しいところだ。
 その原作を今回は、よりダークなトーンのストップ・モー
ションで映画化するという計画で、デル=トロは、2002年に
原作が再出版された際のイラストレーターのグリス・グリム
リーと共に脚本を執筆。またグリムリーは、2006年の“The
Wraith of Cobble Hill”という作品で、サンダンス映画祭
の短編賞を受賞したアダム・パリシュ・キング監督と共に、
映画化の共同監督も手掛けることになっている。
 因にデル=トロは、前回も紹介したようにモンスターの出
てくる映画しか作らないと宣言しているものだが、元々コロ
ディの原作もかなりダークなイメージを感じさせるもので、
今回はその辺を前面に出した作品になりそうだ。そして共同
で監督、脚本を務めるグリムリーのイラストは、ネットの紹
介で見ても相当にダークな感じで、これも良い感じだった。
 ただしデル=トロは、前回報告したようにピーター・ジャ
クスンと進める“The Hobbit”に、2012年までは掛かり切り
になる予定で、その他にもユニヴァーサルと結んだ3年契約
でも、“Frankenstein”“Dr.Jekyll and Mr.Hyde”、さら
に“Slaughterhouse-Five”などスケジュールは満杯状態。
しかし本作に関しては、自身のウェブサイトでも3年以内の
完成を公表しているとのことで、早期に進められるようだ。
すでに共同監督も発表されている状況では、グリムリー側が
主導権を持って進めることになるのかもしれない。
 なおJHCはディズニーと関係が強いようで、本作もディ
ズニーの配給になる可能性が高い。つまりディズニーでは、
バートン監督の『アリス』に続けて本作『ピノキオ』を公開
することになりそうだ。
        *         *
 お次は、1972年“Deliverance”(脱出)などのジョン・
ブアマン監督が、1939年のMGM作品“The Wizard of Oz”
(オズの魔法使い)でも知られるL・フランク・ボウム原作
の“The Wonderful Wizard of Oz”をCGアニメーションで
映画化する計画を発表した。
 この原作の映画化では、何と言っても上記のヴィクター・
フレミング監督による作品が有名だが、それ以前にも、ボウ
ム自身が製作したサイレント映画や短編アニメーションなど
もあったようだ。しかし1939年以降は、原作にインスパイア
されたブロードウェイ・ミュージカルの映画化“The Wiz”
(ウィズ)と、ディズニーが続編として映画化した“Return
to Oz”(オズ)がある程度で、同じ原作からの映画化は行
われていない。そのくらいにMGM版の映画化は評価の高い
ものだ。
 その原作の再映画化にブアマン監督が挑むことになる訳だ
が、上記の『脱出』が代表作として挙げられる監督に児童向
けの作品はちょっと不思議な感じもする。ところが、実はブ
アマン監督が『脱出』の次に撮った“Zardoz”(未来惑星ザ
ルドス)では、映画の中でボウムの原作に言及した部分があ
ったりもして、監督とこの原作の関係には浅からぬものが感
じられる。従って今回の映画化には、ブアマン自身も相当の
思いがありそうで、その完成に期待が膨らむところだ。
 なお、今回の映画製作はフランスで行われるが、ブアマン
と、2005年のCGアニメーション『ロボッツ』も手掛けたロ
ン・ミタ及びジム・マクレインによる脚本は英語で書かれて
おり、映画化は英語で行われる。また物語やキャラクターは
原作に沿うのでMGM版と似たものになるが、ミュージカル
にはしないとのこと。さらに製作費には2500万ドルが計上さ
れており、公開は2010年夏を目指しているそうだ。
 因に、ボウム原作の『オズ』シリーズは全14巻が発表され
ているが、MGM版及び今回の映画化は、ドロシーとトトが
活躍するその第1巻が対象とされているものだ。
        *         *
 もう1本は、ジョナサン・スウィフト原作の“Gulliver's
Travels”(ガリヴァー旅行記)を、ジャック・ブラックの
主演で、現代に再イメージして映画化する計画が発表されて
いる。
 1726年に発表された原作の映画化では、『ポパイ』などの
フライシャー兄弟が1939年に製作したアニメーション作品が
有名だが、実写でも、1960年レイ・ハリーハウゼン特撮によ
る“The 3 Worlds of Gulliver”なども作られている。この
他に、1902年にはジョルジュ・メリエスが映画化しており、
1977年のリチャード・ハリス主演作や、2005年にはIMax-3D
による作品もあるようだ。
 その原作から今回は、日本は年末公開予定の“Forgetting
Sarah Marshall”(寝取られ男のラブ♂バカンス)の監督及
び共同脚本を務めたニック・ストーラーと、『シュレック』
のジョー・スティルマンが脚色、『シャーク・テイル』のロ
ブ・レターマンの監督で実写映画化しようというものだ。
 この顔ぶれからは、コメディでの映画化が目指されている
と思われる。ただブラックの主演なら、小人の国リリパット
より、主人公がペットにされてしまう巨人の国ブロブディン
ナグの方が面白くなりそうだが、発表されているストーリー
はやはりリリパット国の物語のようだ。
 因にスウィフトの原作は、児童向けと言うより風刺文学と
しての位置付けが高いが、映画化はお子様向けであることが
多いし、今回もその類のものになりそうだ。でもこの顔ぶれ
ならそれなりに毒のある作品には成ってくれるのかな。撮影
開始は来年3月に予定されている。
        *         *
 おとぎ話の情報はここまでにして、次は久々のSF名作の
映画化計画を紹介しよう。
 作品はアイザック・アジモフ原作の“End of Eternity”
(邦題:永遠の終わり)。実はこの計画に関しては、2003年
11月15日付の第51回でも1度紹介しているが、その時のパラ
マウントとクルーズ/ワグナーの企画は実現に至らなかった
もので、今回は新たにニュー・リジェンシーが権利の獲得を
発表した。
 物語は、以前にも紹介したように、タイムトラヴェルが一
般化し、歴史の改変を防ぐ時間管理機関の創設された時代を
背景に、管理機関の担当者が歴史上の人物を愛してしまった
ことから問題が発生する…というもの。アジモフの作品では
珍しい時間テーマの長編で、以前の紹介の時点では、パラマ
ウントが計画中だったマイクル・クライトン原作の『タイム
ライン』に続く時間ものとして期待されていたものだ。
 その作品の映画化権が、今回は1992年の『透明人間』や、
今年春に公開された『ジャンパー』などを製作した会社と契
約されたもので、同社はまず監督の選考に入るとしている。
なお脚本家は監督の意向にしたがって決定するとのことだ。
 因にアジモフの原作では、“The Foundation Trilogy”の
映画化についても、今年8月1日付第164回で紹介したばか
りだが、1955年に発表された本作は、広くはその『ファウン
デーション』シリーズにも組み込まれる作品とのことで、こ
れから相互の関係も面白くなりそうだ。
        *         *
 次の話題は、今年もこの時期になりましたということで、
アカデミー賞長編アニメーション部門の予備候補の発表を紹
介しておこう。
 この予備候補発表では、その本数が最終候補の数に影響す
ることでも注目されるものだが、今年の本数は14本。これは
15本以下ということで、最終候補の数は3となるようだ。
 そして発表された14本は、“Bolt”“Delgo”“Dr.Seuss'
Horton Hears a Who”“Dragon Hunters”“Fly Me to the
Moon”“Igor”“Kung Fu Panda”“Madagascar: Escape 2
Africa”“$9.99”“The Sky Crawlers”“Sword of the
Stranger”“The Tale of Despereaux”“Wall-E”“Waltz
With Bashir”となっている。
 日本の作品もあるし、すでに日本公開された作品もあり、
このサイトの製作ニュースで紹介した作品もちらほらあると
いう状況で、この中から3本が選ばれる訳だが、Variety紙
の記事では“Wall-E”“Dr.Seuss”“Madagascar”が有力と
考えられていたようだ。ただし、この3本はそれぞれ製作会
社の異なる作品が選ばれているもので、ドリームワークスな
ら“Panda”はどうなのとか、ディズニーの他の作品など、
まだまだ曲折はありそうだ。
 なお最終候補は、他の各部門の候補と共に来年1月22日に
発表される。
 それにしても今年は、他に7月に全米公開された“Space
Chimps”や、8月公開の“Star Wars: The Clone Wars”も
劇場作品のはずだが、これらは無視されてしまったようだ。
何かの思惑でも働いたのだろうか。
        *         *
 ここからは続報をいくつか紹介しよう。
 まずは、マーヴェル・スタジオから、2011年5月6日公開
予定の“The First Avenger: Captain America”の監督に、
元はILMの特撮マンで、『ミクロ・キッズ』や『オーシャ
ン・オブ・ファイヤー』などのジョー・ジョンストン監督の
起用が発表された。
 この計画については、2006年5月15日付第111回でも紹介
したものだが、その後の今年5月15日付第159回の情報では
『インクレディブル・ハルク』のザック・ペンが脚色を担当
することにもなっていた。ただ、『ハルク』の成績はちょっ
と期待通りではなかった面もある訳で、予定公開日までには
まだ多少の余裕がある本作の製作が、これからどのように進
展するかにも注目が集まる。
 一方、マーヴェル作品では、2011年には“The Avengers”
の公開も予定されていて、Captain Americaはその両方に出
演することになっており、その現実の姿であるスティーヴ・
ロジャースの配役にも注目が集まって来る。スター俳優の起
用が多いマーヴェル作品ということで、『ダーク・ナイト』
の2フェイス=アーロン・エッカートの名前も挙がっている
ようだが、さてどうなりますか。
 因にジョンストン監督は、その前にユニヴァーサル製作の
“The Wolf Man”の映画化が発表されているが、アンソニー
・ホプキンス、ベニチオ・デル=トロ、ウーゴ・ウィーヴィ
ング共演によるこの作品は、すでに撮影を完了して、2009年
4月3日の全米公開を目指してポストプロダクションに入っ
ているようだ。
        *         *
 お次は、これも2006年5月15日付第111回で紹介していた
ワーナーが進めている“Clash of the Titans”のリメイク
について、主人公ペルセウス役に“Terminator Salvation”
にも出演のサム・ワーシントンの起用が発表されている。
 この計画では、以前に紹介したトラヴィス・ビーチャムの
オリジナル脚本から、『レイダース/失われた聖櫃』などの
ローレンス・カスダンが新たな脚本を執筆、『トランスポー
ター』シリーズのルイ・レテリエが監督するものだが、レイ
・ハリーハウゼンがダイナメーションで映像化したギリシャ
神話の怪物たちを、今回は『300』と同様のCGI技術を
駆使して映像化を目指している。
 そしてその主演に発表されたワーシントンは、ジェームズ
・キャメロンが“Avatar”に起用して、“Terminator…”の
McG監督に推薦したことでも話題になった俳優だが、実は、
『カジノロワイヤル』の007にも最終候補の1人だったと
のことで、その才能がいよいよ開花することになりそうだ。
 この作品の撮影は、来冬の終りか早春に開始される予定に
なっている。
 というリメイクの情報だが、ここでさらにもう1本、この
計画と同様のギリシャ神話を題材にした作品の計画が発表さ
れた。
 その作品は“War of the Gods”と題されているもので、
『落下の王国』などのターセム・シン監督の計画として今年
6月頃に発表されたもののようだ。そしてこの計画にも、ア
テネ王で怪物ミノタウロスを倒したことでも知られる英雄テ
セウス役を、ヘンリー・ケイヴィルという俳優が演じると発
表されている。
 因にケイヴィルは、ジョナサン・リス・メイヤースがヘン
リー3世王を演じた2007年のテレビシリーズ“The Tudors”
への出演で知られているようだが、2005年の“Hellraiser:
Hellworld”などにも出演していた。そして『スーパーマン
・リターンズ』のスーパーマン役で最終候補の1人だったと
も伝えられている。
 という良く似た経緯の主役起用が発表された作品だが、さ
らにこの作品の撮影も、冬の終りか早春に開始される予定に
なっているとのことで、これはまさに競作ということになり
そうだ。
 なお、ギリシャ神話に発想を得た計画では、この他にも、
2003年10月1日付第48回で紹介した“Titans”や、同年12月
1日付第52回で紹介した“King of the Gods”、2005年8月
1日付第92回で紹介したヴィデオゲームからの映画化“God
of War”、2007年6月15日付第137回で紹介したDCコミッ
クスの映画化“Teen Titans”などもあったが、いずれも頓
挫している模様で、現状では今回紹介の2作品の計画が併走
で進むことになりそうだ。
        *         *
 後半は、新規の話題を出来るだけ紹介する。
 その最初は、『最高の人生の見つけ方』などのロブ・ライ
ナー監督の新作で、ゾーイ・グリーンという作家が執筆した
オリジナル脚本“Book of Shadows”の映画化を進めている
ことが発表された。
 物語は、初恋を成就するために危険な旅に挑む若者を描い
たもので、そこには「影たちの本」を名付けられた神秘の本
を探す旅も含まれている。そしてその旅は世界の調和を取り
戻すために旅でもある…というものだ。因に、『スタンド・
バイ・ミー』や『ミザリー』の映画化でも知られるライナー
監督だが、1987年の『プリンセス・ブライド・ストーリー』
は、脚本家ウィリアム・ゴールドマンが執筆したファンタシ
ー小説を映画化したもので、この種の題材にも力を発揮でき
る監督と言える。
 製作は、ライナーとゴールドマンが主宰するキャッスル・
ロックで行われ、配給はワーナーが担当する。
        *         *
 ドリームワークスで『燃え尽きるまで』を監督したサム・
メンデスが、本拠であるコロムビアに戻り、超常現象を扱っ
たグラフィックノヴェル“Preacher”の映画化を目指すこと
になった。
 原作は作家のガース・エニスと、画家のスティーヴ・ディ
ロンが1995−2000年の間に全75冊で執筆したもので、テキサ
スの町の伝導師を主人公に、強い信念によって町を守ってき
た主人公が、外部からの圧力によって滅びかけた町を救うた
め、悪魔を探して国中を旅して歩く…というものだそうだ。
そしてこの原作からメンデス監督が映画化を行うものだが、
メンデスは2002年の『ロード・トゥ・パーディション』以来
のグラフィックノヴェルへの挑戦となるものだ。
 製作は『アイ・アム・レジェンド』などのニール・モリッ
ツが担当。因にモリッツとコロムビアでは、同じエニス原作
の“The Boys”という題名のコミックブックの映画化も進め
ているようだ。
 なお、コロムビアの親会社SPEの日本法人では、最近試
写会名簿の見直しを行ったようで、僕宛の試写状が送られて
来なくなった。従って製作ニュースの紹介はしますが、当面
作品の紹介はできなくなるのでご了承ください。
        *         *
 新興のエッセンシャル・ピクチャーズという会社が、ダイ
アナ・ガバルドン原作の“Outlander”と題されたファンタ
シー・シリーズの映画化権を獲得し、シリーズ化を視野に入
れた映画化を進めることを発表した。
 原作は日本でも第5話までの翻訳がされているようだが、
本国ではすでに第6話が出版され、7話目も執筆中とのこと
だ。内容は、18世紀にタイムスリップをした27歳の主婦を主
人公にしており、時間ものというより時代もののロマンティ
ック・アドヴェンチャーという感じの作品に見える。そして
この原作の第1話から、『ブレイブ・ハート』のランダル・
ウォレスが脚色を行っているとのことで、これは正に時代も
のの雰囲気になりそうだ。
 因にエッセンシャルでは、製作費1000−4000万ドル程度の
作品を毎年2−3本製作する計画を持っているとのことで、
本作はその中では大作の方で映画化されそうだ。ウォレスの
脚色はすでに完成して、監督に回覧中となっており、撮影開
始は来年春に予定されている。
        *         *
 エレクトロニック・アーツ(EA)社が開発中の新作ヴィ
デオゲーム“Dante's Inferno”の映画化権を、MGM、ニ
ューリジェンシー、パラマウントなどとの争奪戦の末にユニ
ヴァーサルが獲得し、来年に予定されているゲームの発売に
出来るだけ近い時期の映画化を目指すことになった。
 発売前のゲームなので、その内容等は明らかにされていな
いが、上記の題名は確認され、地獄の奥深くを旅する物語で
あることは確かなようだ。そしてこの映画化に当っては、E
A側のゲームのクリエーターが直接映画化の開発にも関わる
とのことで、極めてゲームに密着した映画化が行われること
になりそうだ。なお争奪戦の末の契約金は、7桁($)に上る
とされている。
 因にユニヴァーサルとEAでは、すでに“Army of Two”
という今年3月に発売されたゲームの映画化を進めており、
この作品は、『ボーン・アルティメイタム』のスコット・Z
・バーンズが脚本を担当して、2011年公開を目指している。
 ヴィデオゲームの映画化もいろいろあるが、今回発表され
た“Dante's Inferno”の場合は、映像そのものにも特徴が
出てきそうな感じで、それをどのように映画に取り込むかに
も工夫が要りそうだ。映画に新風を吹き込む作品を期待した
い。
        *         *
 最後に、10月1日付の第168回で紹介したロバート・ゼメ
キスのイメージ・ムーヴァースが映画化する“Airman”で、
原作者オーエン・コルファーによる“Artemis Fowl”シリー
ズの第6巻“The Time Paradox”の付録に付けられた第1章
をようやく読み終えた。
 お話は、中世の雰囲気の漂うお城を舞台に、同年代のお姫
様に頭が上がらない少年が主人公というもの。一方、城の王
様は発明好きで、いろいろ怪しげな実験をしているのだが…
付録ではその第1章の内から城の尖塔が大炎上したり、その
中から奇跡的な脱出をしたりのアクションの連続で、これは
なかなかの読物になりそうだ。
 また、主人公たちのキャラクターも映画向きの感じだし、
これは楽しみな作品。早期の実現を期待したいものだ。



2008年11月09日(日) シリアの花嫁、蘇る玉虫厨子、アンダーカヴァー、鎧−サムライゾンビ−、その男ヴァン・ダム、ミーアキャット、無ケーカクの命中男、斬

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『シリアの花嫁』“The Syrian Bride”
イスラエル/シリア境界線のゴラン高原を舞台に、その境界
線を越えて嫁いで行く女性の置かれた状況を描いた国際情勢
の縮図とも言えるドラマ。
1967年の第3次中東戦争でイスラエルに占領されたシリア領
のゴラン高原は、以来40年を越える年月を占領状態に置かれ
たままとなっている。
元々そこに住んでいたのは、イスラムでは少数派といわれる
ドゥルーズ派の人々。彼らにはイスラエルの国籍取得の機会
は与えられたが、当然それにしたがう人はまれで、大半は無
国籍の状態となっている。
そのため、仮にその占領地からシリア国内に嫁ぐと、その花
嫁には自動的にシリア国籍が付与されてしまい。以後、シリ
アとの国交のないイスラエルの占領地には行き来ができなく
なる。
そんな状況下で、シリアに嫁いでいこうとする花嫁の物語。
そのゴラン高原で行われる結婚式に花婿の姿はなく、境界線
の向こうで待つ花婿の許に行った途端、彼女は2度と家族と
は会うことができなくなってしまうのだ。
とこれだけでも充分に国際情勢の縮図と行った感じの物語だ
が、さらに花嫁の父親がイスラムの活動家で境界線地帯への
立ち入りが禁止されていたり、国際赤十字が仲介する越境の
手続きが政治介入によってトラブったり…
さらには、彼女の兄が異教徒のロシア人女性と結婚したため
に父親といざこざがあったりという、ありとあらゆる障害が
彼女に降りかかる。
国内に国境線を持たない国に住んでいると、国境線という存
在自体が容易には理解できないものになるが、特に紛争地域
では、この映画のように僕らの考えをはるかに越える事態が
発生しているようだ。
そんな事態を深刻に、しかしユーモアとペーソスも込めて描
き出している。
自分も同じ年頃の娘を持っていると、花嫁の父親の心情も判
るところだが、それよりこの作品では、全く馬鹿げたとしか
言いようのない、それぞれの国の面子や駆け引きに振り回さ
れる悲喜劇が描き出され、国家と言うものの愚かしさも観え
てくる作品だ。
出演は、花嫁の姉役に『パラダイス・ナウ』などのヒアム・
アッバス、父親役に『ミュンヘン』などのマクラム・J・フ
ーリ、そして花嫁役には、マクラムの実娘で『ワールド・オ
ブ・ライズ』にも出演のクララ・フーリが扮している。
脚本、監督はイスラエル人のエラン・リクリス。物語は、監
督自身が先に手掛けたドキュメンタリーの中の実話から発想
を得ているそうだ。

『蘇る玉虫厨子』
奈良県法隆寺の金堂に安置されている国宝「玉虫厨子」。飛
鳥時代(約1400年前)の作と伝えられるその厨子は、往時は
約4800匹の玉虫の羽根で装飾されていたと考えられるが、現
在残っているのはその一部のみ。また、扉や壁面に描かれた
装飾蒔絵も、その多くが識別できない状態となっている。
その国宝「玉虫厨子」を、現在の職人の技で復元しようとい
うプロジェクト。それは岐阜県高山市で造園業を営んでいた
中田金太氏が私財を投じて行ったもので、その心に触れた俳
優の三国錬太郎が、自ら現場も訪れて心のこもったナレーシ
ョンを添えている。
なお、三国は2003年公開の『風の絨毯』という実話に基づく
映画の中で、中田金太の役を演じて以来の知遇を得ていたの
だそうで、平成14年(2002年)に開始されたプロジェクトに
は、かなり初期の段階から関ることができたようだ。
そしてそのプロジェクトには、設計施行担当中田秋夫の許、
宮大工八野明、蒔絵師立野敏昭、錺金具師森本安之助、彫師
山田耕健らが集められ、最初は法隆寺の金堂でガラス越しに
厨子を観察することから始められる。
しかし、「玉虫厨子」は国宝であるために、彼らは直接手を
触れることはできず、その寸法を直に計ることもできない。
ただ目分量でその大きさを見取ったり、もちろん文化庁など
の調査の資料はあるのだろうが、ほとんどの部分は職人たち
の勘によって再現が行われて行く。
その中では、完全に消えてしまっている蒔絵の部分を他の部
分から類推したり、また文献の残っていない玉虫を貼り付け
る技術などは今回新たに開発されて行くことになる。こうし
て約6年の歳月を経て、昨年末に完成、今年3月法隆寺に奉
納されるまでが描かれる。
その一方でこのプロジェクトは、この復元作業で得られた技
術を許に新たな「玉虫厨子」を創るという計画も並行して進
められ、そこでは蒔絵の中にも玉虫が飾られた、「平成・玉
虫厨子」も完成される。
ただし、中田金太氏は昨年6月に逝去。2つの厨子の完成を
観ることはできなかったが、その意志は見事に後世に残され
ることになったというものだ。

『アンダーカヴァー』“We Own the Night”
1988年のニューヨークを舞台に、進出の始まったロシアンマ
フィアと警察の攻防を描くアクション作品。
『ウォーク・ザ・ライン』でオスカーの主演賞候補になった
ホアキン・フェニックスと、『ディパーテッド』で同じく助
演賞候補のマーク・ウォールバーグが、以前に共演した『裏
切り者』のジェームズ・グレイ監督と再度組んだ作品で、2
人の俳優は製作も買って出ている。
フェニックスが演じるのは、育て親でもあるロシア人の許で
ブルックリンのクラブを任されているちょっとやくざな男。
『ゴースト・ライダー』などのエヴァ・メンデス扮する恋人
もいて、その界隈でも実力を着けてきている。
しかし彼には、恋人以外には明かしていない秘密がある。そ
れはロバート・デュヴォール演じる彼の父親が伝説とまで言
われるニューヨーク市警察の警視監であり、ウォルバーグが
演じる兄がエリート警官であることだ。
そしてその兄が、進出の始まったロシアンマフィアの活動を
取り締まる部署のトップに就任し、その祝賀パーティに恋人
と共に出席した弟は、父親と警察の幹部たちから捜索への協
力を要請される。そこは、自分たちは潔白だとしてその要請
を断る弟だったが…
ドラッグ関連の捜査でのアンダーカヴァー(潜入捜査)は最
も危険な捜査と言われているようだが、この作品では、そこ
に至る経緯やその後の保護プログラムの様子などが手際よく
描かれている。そしてその展開は、僕の目にはそれほど破綻
なく描かれているように観えたものだ。
まあこの種の映画はその展開が眼目だし、その点がクリアさ
れていれば物語的にはそれでよしとしたい。それに加えて本
作では、豪雨の中のカーチェイスなどのアクションも巧みに
描かれていた。
興味のある人には充分に楽しめると思うし、興味がなければ
始まらないが、まあそういう作品というところだ。因に本作
は、昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも選
出されている。
それからホアキンは、最近俳優業の廃業を宣言したようで、
日本では先に公開された『帰らない日々』(5月16日付で紹
介)と、同じくジェームズ・グレイ監督の“Two Lovers”と
いう作品で最後になるようだ。

『鎧−サムライゾンビ−』
『VERSUS』の北村龍平が原案・脚本・製作を担当し、
『魁!!男塾』の坂口拓が監督したスプラッターアクション。
舞台挨拶付きの試写会だったが、血糊を1t使用したとか、
それでも足りなくて追加したとか、スプラッターには付き物
の話題が提供されていた。実際、映画の中では、首が飛ぶ度
に3m近い血飛沫が噴き出す演出で、1tが使われた可能性
はありそうだ。
お話の舞台は現代。夫婦と子供2人の4人家族がドライブし
ていると、2人組のピストルを持った男女に襲われる。そこ
に3人目も現れて、父親の運転する車は、その3人目を轢い
た上に立入禁止のバリケードに突入、さらに山路へと進んで
行くが…
一方、強盗事件の捜索に駆り出された2人の警官が突破され
たバリケードを発見し、パトカーでその奥へと進んで行く。
そこは、以前に突然狂った村人が8人を惨殺し、それ以来廃
村になったという禁断の場所だった。
ここで惨殺されたのは8人、それに対する登場人物は、家族
4人+強盗団3人+警官2人の計9人。つまり、多い1人は
最後に助かるのか、それとも…という興味になる。その辺の
理路整然とした構成が、何とも気持ちの良い作品だった。
北村龍平の作品は、以前から一通りの評価はしているつもり
だが、アイデアの奇抜さや映像の面白さは買えるものの、物
語の構成は今一つ弱い感じがしていた。一方、坂口拓は、元
『VERSUS』に出ていた俳優だが、『魁!!男塾』は構成
も良く好きな作品だ。
その2人のタッグは、ある意味見事な相乗効果が得られたと
いう感じがした。挨拶で北村は「サムライゾンビ」という言
葉だけから考えた物語と称していたが、脚本では1回しか出
てこない「死んじゃうじゃん」という言葉を繰り返しのギャ
グに発展させるなど、坂口の演出が見事に決まっている感じ
もした。
そして何と言っても物語の結末の見事さ、この結末がクリエ
ーター2人のどちらの手になるものかは知らないが、最近の
この手の作品では出色のものにも感じられた。
出演は、女装の桜塚やっくんこと植田浩望が素顔で登場する
初主演映画だそうで、他は、AV出身の夏目ナナ、いしだ壱
成、荻野目慶子、やべきょうすけら。植田と夏目の演技はま
だ固い感じだが、この作品には問題ないだろう。
それに加えて、この作品ではいしだがなかなか良い感じで、
特にいくら倒されてもゆらりと立ち上がる姿には妖気さえ感
じられた。舞台挨拶の発言ではスタントも気に入ったようだ
し、このキャラクターでスピンオフしても面白そうだ。

『その男ヴァン・ダム』“JCVD”
アクション俳優のジャン=クロード・ヴァン・ダムが、ヴァ
ン・ダム本人を演じるという自虐的コメディ・アクション映
画。
物語の中のヴァン・ダムは、別れた妻と愛娘の親権争いの裁
判中。一時は一世風靡したスターも最近はギャラも下がり、
起死回生の期待された新作はスティーヴン・セガールに役を
奪われるという状況で、弁護士費用にも事欠いている。
そんなヴァン・ダムが傷心の思いで母国ベルギーに帰国し、
エージェントから振り込まれたはずの現金を引き出そうと郵
便局を訪れるが…そこでは強盗事件が進行中。しかもヴァン
・ダムはその犯人に誤認されてしまう。
こうして、ベルギーが生んだ大スターの凶悪犯罪に世間は大
騒ぎとなるが…
映画のプロローグでは、かなりの長回しのアクションシーン
が登場する。それは何かの戦場でヴァン・ダム扮する男が、
空手やガンアクションで次々相手を倒して行くというものだ
が、後半段々よれよれになって行く姿が見事に「演じ」られ
ていた。
つまりこのシーンでは、本物のヴァン・ダムはまだまだやれ
そうなのだが、そのヴァン・ダムがよれよれになった男を演
じているのが実に楽しそうで、見ていて嬉しくなってくる作
品だった。
ヨーロッパ出身のヴァン・ダムという俳優が、ハリウッドで
は必ずしも優遇されていないのはいろいろな状況から容易に
見て取れるところだが、この作品はそんな批判的な部分も含
めて、ヨーロッパ人にとってのヴァン・ダムへの思いが込め
られている。そして、その思いにヴァン・ダム本人が見事に
答えてくれた作品というところだ。
脚本・監督は、本作が長編2作目というマブルク・エル・メ
クリ。最初に時間軸を入れ替える描き方は、本作の場合はあ
まり効果的ではなかったように感じたし、監督としてはまだ
未熟な感じだが、一所懸命に描こうとしている態度は好感が
持てた。
それから、この映画はフランス・ゴーモン社の作品だが、巻
頭のロゴマークがパロディになっていた。最近のハリウッド
映画では良く見かけるものだが、フランス映画では…?と、
これも楽しくなった。

『ミーアキャット』“The Meerkats”
『アース』などのBBC製作によるネイチャー・ドキュメン
タリー。ただし今回は、ザ・ワインスタイン・コープ(TW
C)が共同製作として加わっており、撮影にはフィルムを使
用、ワイド画面(2.35:1)で製作されている。
『アース』もそうだが、BBCのドキュメンタリーは、予め
脚本を作ってそれに合わせて撮影を行うのだそうだ。ただし
自然相手の撮影では当然ハプニングもある訳で、それらを巧
みに取り込んで編集が行われて作品が完成される。
従って、作品のストーリーは理路整然として判りやすいし、
観ていて気持ち良く楽しめる作品となっている。本作の場合
も、映画の最後にミーアキャットの習性などの研究成果に基
づいて構成された物語であることが、テロップで明記されて
いた。
その物語の舞台は、カラハリ砂漠。乾季の始まった草原の一
角にミーアキャットの群れの住む巣穴があり、そこで今年生
まれたミーアキャットの成長と、両親が狩りに出ている間に
その子守と教育を任された年長のミーアキャットの奮闘が描
かれる。
その巣穴の傍には大きな鳥の巣のある灌木が立っていて、そ
こには幼いミーアキャットを狙う毒蛇も住んでいる。そして
その毒蛇が巣穴に侵入したり、隣接地に住む群れとの餌場を
奪い合う争いや猛禽類の空からの襲撃などが、見事な映像演
出で綴られる。
ミーアキャットそのものは日本の動物園でも観られるし、そ
の太陽に向かって直立する可愛らしい姿も観ることができる
が、そのミーアキャットが年長の兄弟から教育を授かるなど
の習性は知らなかったし、集団で毒蛇を撃退する姿なども興
味深く観られた。
そのあまりに見事な演出は、見方によっては多少やりすぎと
思える部分もあるかも知れないが、僕はそれはそれとして楽
しめたものだ。
それに加えてこの作品では、何しろミーアキャットの愛らし
い姿が満載で、直立したままバランスを崩して倒れてしまっ
たり、肘枕や膝枕で寝ている姿など、それを見ているたけで
も楽しめる作品だった。
因にミーアキャットはマングースの仲間だそうで、映画の中
では毒蛇を集団で威嚇して撃退する様子が出てきたが、これ
がいつしか集団で狩りをするようになったら…と思ったら、
それは観ていてちょっと恐ろしくなった。


『無ケーカクの命中男』“Knocked Up”
昨年6月の全米公開では7週連続のトップ10入りを果たした
大ヒットコメディ作品。この原題は、自分のホームページの
方でも何度か登場したもので、実は以前から注目していた作
品がようやく日本公開されることになった。
それにしても、その通りだから仕方がないとは言えこの何と
も言えない邦題と、アメリカンコメディということでは、か
なりいい加減なものを予想してしまうところだが、内容的に
はかなり真面目なところを突いている作品だ。
物語の主人公は、テレビのエンタメ情報番組でレポーターに
抜擢されることになった女性と、カナダ出身でネットオタク
のフリーターの男。この2人が浮いた気分の中で出会い、行
き摩りのセックスとなるが、これが一発命中で妊娠させてし
まう。
しかし彼女は仕事優先、出産はするが、お互い知り合っても
いない彼との結婚には踏み切れない。そんな2人の関係と、
実は倦怠期にある彼女の姉夫婦の様子などが、かなりリアル
に描かれている。
もちろんそこに至るまでの経緯などはかなりの下ネタ満載の
ものだだが、いざそこに至ってからの2人の駆け引きや心理
的な葛藤などは、面白く描かれれば描かれるほどに真剣に心
に響いてくるものになっていた。
まあ、世間一般でもありそうで…なさそうで、そんな案外現
実的なドラマが展開される。そこに描かれる2人の態度も真
面目で、特に出産シーンは、僕自身、お産の学校に通ってラ
マーズ法の出産にも立ち会った者としては、その感動が鮮烈
に蘇ってきたものだ。
主演は、1995年『暴走特急』やテレビ“Grey's Anatomy”な
どのキャスリーン・ハイグルと、“The Green Hornet”の映
画版が進行中のセス・ローガン。他にポール・ラビット、レ
スリー・マン、ジェイ・バルチェル、ジョナ・ヒル、マーテ
ィン・スターらが共演。
製作、脚本、監督は、2005年“The 40 Year Old Virgin”で
全米大ヒットを飛ばしたジャド・アプトウ。因に、主人公の
姉役を演じたマンは監督夫人で、その2人の娘役は監督の実
の娘たちだそうだ。

『斬〜KILL〜』
夏に公開された『スカイ・クロラ』などの押井守総監修によ
るチャンバラ=剣戟をテーマにしたオムニバス作品。押井監
督を始め、深作健太、辻本貴則、田原実による4作品が集め
られている。
チャンバラは、今や『マトリクス』や『ブレイド』シリーズ
などで海外の作品でも定番のアクションとなっている。その
チャンバラを4人の俊英監督の手で描き出そうという試みの
ようなのだが…僕には何かピントの合っていない作品群に観
えた。
まず第1に、チャンバラ=剣戟がテーマと言いながら、それ
がまともに描かれているのは辻本監督の1作のみ。田原監督
作品は訳の判らない銃撃戦だし、押井監督の作品は居合い切
りで、それに深作作品はただの子供のチャンバラごっこ…
チャンバラでは、華麗な殺陣が観たいものだし、あるいは様
式美に則った所作なども美しいものだ。しかし田原、押井の
作品では、ほとんど刃を合わせることもしないのだから、こ
れではチャンバラを描いたと言えるのかどうか。
かと言って、チャンバラ以外の何を描いているかと言うとそ
れもないのだから…嫌な作品ではないだけに、これは全く困
った作品になってしまった。押井監督が総監修のオムニバス
では、『真・女立喰師列伝』はそれなりに評価したつもりだ
ったが、今回は何かが少し狂ってしまったようだ。
なお出演者では、辻本作品に特別出演した水野美紀が同監督
の『バーボンのミキ』『ハード・リベンジ、MILLY』と同様
頑張っている他、押井作品では、菊池凛子、藤田陽子が登場
している。
ただしこの押井作品では、本当なら彼女達が演じる天使が飛
び立ってからの空中戦を描いて欲しかったもので、そうすれ
ばガンダムを向こうに回す押井版の空中チャンバラが描けた
と思うのだが、そこまでをやる気はなかったということなの
だろうか。

それにしても、辻本+水野のコンビは3本連続当たりの感じ
で、ここらで1本しっかりした本格長編を撮ってもらいたい
ものだ。



2008年11月02日(日) 禅、その木戸を通って、彼女の名はサビーヌ、破片のきらめき、ターミネーター:サラ・コナー(続き)、特命係長・只野仁

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『禅』
『火火』『丘を超えて』などの高橋伴明監督の最新作。駒澤
大学総長大谷哲夫氏の原作・製作総指揮の許、日本曹洞宗の
開祖・道元の生涯を描いた歴史絵巻。
道元は内大臣の嫡流に生まれたものの、8歳にして母親を亡
くし、現世に浄土を創るという禅の道を目指す。そして24歳
で宋に渡り、道を極めて28歳で帰国。京の建仁寺にて禅宗の
布教を始めるが、比叡山の反発に遭い山科に移る。
さらに六波羅蜜寺に説法したことから比叡山の圧力が増大、
山科は焼き討ちに遭うなどして越前に逃れ、永平寺を開山。
その後は鎌倉に赴いて北条時頼に教えを授けるなど、54歳で
入滅するまでの生涯が描かれる。
永平寺は、観光で2度ほど行ったことがあるが、山奥の静謐
な雰囲気や、そこに聞こえてくる声明のすばらしさなどは、
禅寺に来たという思いをいやがうえにも感じさせてくれると
ころだ。
そんな永平寺を開いた道元に関しては、僕は前に井上ひさし
作『道元の冒険』の戯曲本を読んだくらいで、その内容もほ
とんど覚えていないものだった。ただ、元々道元という人が
世俗を離れて禅の道一筋とされているから、それも仕方のな
い話のようだ。
しかしこの作品では、宋での行脚(高僧とされる人に会って
幻滅したり、老典座の言葉で開眼したりする)のエピソード
や、叡山僧兵による焼き討ちのアクション、さらに北条時頼
を襲う幻覚などの見せ場を設けて、2時間あまりの物語を楽
しませてくれる。
そもそもの高橋監督がこの作品に関ったきっかけは判らない
が、原作・製作総指揮を手掛けた人物を考えると、それなり
の背景はあるのかも知れない。しかしプレス資料でも、現代
の世相を憂いてこの映画が製作されたという経緯は理解でき
るものだ。
因に、試写会前の監督による舞台挨拶で、「いつもは映画に
毒を盛ろうと考えているが、今回は薬になる映画を作ってし
まったようだ」と、少し照れ気味に話していたのが印象的だ
った。
出演は、中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也。他に、哀川翔、
高橋恵子らが共演している。

『その木戸を通って』
山本周五郎原作、市川崑監督により、1993年に製作された日
本初(ということは多分世界初)の長編ハイビジョンドラマ
作品。
オリジナルは1125−60方式のアナログハイビジョンVTRに
よって録画されたもので、今回はそれがビスタサイズのフィ
ルムに変換されて上映される。
因に、この作品は1993年に1度だけBS−hiで放送された
ことがあるが、それが再放送されたことはなく、一方、同年
のヴェネチア映画祭と翌年のロッテルダム映画祭にフィルム
変換されたものが上映されているが、以後は映画祭などでの
上映の記録もなかったようだ。
その作品が今回は、今年2月に亡くなった市川監督への追悼
の意味も込めて東京国際映画祭で特別上映が行われ、さらに
11月8日からの一般公開も実施されることになった。
従って、市川監督には唯一の未公開作品の公開となるものだ
が、監督は生前からこの作品の劇場公開を強く希望していた
そうで、それが追悼という形での実現となったことは、諸般
の事情があったとは言え、少し残念なことではあるものだ。
物語は、江戸時代の地方の大名に仕える武士の話。その娘の
婚礼の日、主人公は17年前に彼の前に現れ、1人娘を残した
まま姿を消した妻のことを考える。
その頃の主人公は江戸勤めを終え、仕える大名の重役の娘と
の婚約も進んでいたが、ある日、彼の住まいに記憶を失った
女が現れる。そして最初は、婚約の邪魔になると追い出しを
図る主人公だったが、やがて情が移ってゆく。
しかし、それは女の記憶が戻るまでのことだったのかも知れ
ない。ただし主人公の前では女の記憶は戻ることはなく、娘
を出産するのだが…。女は、「笹の道の先に木戸が在って、
その木戸を通って」と語り出す。
物語自体は現実にもありうることではあるが、その雰囲気は
何かファンタスティックなものにも通じてくる。もちろんそ
こには、ジェームズ・ヒルトン原作の『心の旅路』などもあ
るのだが、記憶喪失という尋常でない出来事がこの作品にも
そんなイメージを湧かせる。
しかもそれを、その前には『竹取物語』や『つる』、『火の
鳥』、『トッポ・ジージョのボタン戦争』なんて作品も手掛
けた市川監督が映像化しているのだから、その辺はよく判っ
て作られている感じのするものだ。
出演は、中井貴一、浅野ゆう子。他に、フランキー界、岸田
今日子らが共演している。
なお今回の劇場上映はフィルム変換されたもので行われ、そ
の後はDVD化の予定はあるようだが、この作品こそ、ぜひ
ともBlu-rayでの発売を期待したい。それと、できたらハイ
ビジョンでの上映も観たいものだ。

『彼女の名はサビーヌ』“Elle s'appelle Sabine”
1985年に17歳でフランスのアカデミー賞とも言われるセザー
ル賞を受賞、さらに1995年にはヴェネチア映画祭で女優賞を
受賞するなど国際的に活躍するフランス人女優サンドリーヌ
・ボネールが、1歳下の妹サビーヌの姿を追ったドキュメン
タリー。
そのサビーヌは、現在は自閉症と診断され、サンドリーヌが
理事も務める小規模な療養所で治療を受けている。しかし以
前は、その病名も判らないままに5年間に渡って精神病院に
入院させられ、過剰な投薬や監禁などの治療が行われていた
とのことだ。
この作品では、その入院以前にサンドリーヌによって撮影さ
れた家族旅行などのサビーヌの記録映像と現在の彼女の姿が
写し出されるが、その劇的とも言える変貌ぶりが、サンドリ
ーヌにこの作品を作らせた理由を明確に物語っている。
自閉症という病名からは、『レインマン』や、2006年12月に
紹介した『モーツァルトとクジラ』などの作品が思い浮かぶ
が、サビーヌの場合も以前はピアノに天分を発揮するなどし
ていたようだ。しかし、不適切な治療によってその人格が失
われてしまった。本作ではそれを直接告発してはいないが、
端々にその点に関する怒りが表わされている。
著名な女優が難病の家族を描くということでは、映画を観る
まではかなり売名的な部分も危惧した。しかしこの映像を目
の当りにすると、彼女がこれを描かなければならなかった心
情も理解できる。
実際、同じ病の患者にとっては以前の記録映像が残されてい
ることも希であろうし、それが実現できたのもサンドリーヌ
が女優であったことが大きい。そして彼女は、以前から妹の
ことを映画にしたいと考えていたそうだ。だがそれは、余り
にも過酷な現実を描くことになってしまった。
精神病の多くが、金目当ての精神病医によって適当に作り上
げられたものであることは、1999年に映画化された“Girl,
Interrupted”(十七歳のカルテ)などでも告発されたとこ
ろだが、勝手に作り上げた病気をさらに不適切な治療で悪化
させる。
もちろん自閉症が勝手に作り上げた病名でないことは確かだ
が、その病気の実体も判っていないのに、適当な「治療」を
繰り返して病状を悪化させる。そんな恐ろしい精神医療の現
状が明白にされている感じの作品でもあった。

『破片のきらめき』
東京八王子の精神病院平川病院で40年以上に渡って行われて
いる絵画教室の活動を追ったドキュメンタリー。
前日『彼女の名はサビーヌ』を観て、その翌日にこの作品を
観る巡り合わせとなったが、何とも複雑な気持ちにさせられ
た。一方で誤った治療が行われ、他方ではここに描かれるよ
うに素晴らしい成果が得られている。
文化の違いがそうさせると言うより、そこに携わる人のあり
方の要素が強いようには思えるが、その当たり外れでこうも
違う結末が生じるのも恐ろしい話だ。
ただし、本作ではその病の暗の部分があまり描かれないのは
仕方のない面もあるもので、その辺りで、事象としての感動
と、映画としての感動に違いが在ることは否めない。もちろ
んそのどちらが優れているかは別の問題ではあるが。
芸術家が狂気と紙一重であることは常々言われているが、そ
のどちらが先に周囲に認知されるかでその後の運命が決まっ
てしまう。そしてこの映画に登場する患者たちは、その狂気
の側が少し早く周囲に出てしまったとも言える人たちだ。
もちろん、かなり異常な行動を取る人もいるし、その結果で
生じる出来事もあるが、そんな中で患者たちが互いに助け合
い、支えあっていこうとする姿も素晴らしい。実際、ここに
描かれているのは、現代人が忘れてしまった本当の人間の姿
のようにも感じられた。
そこには鉄格子があり、出入り口には鍵も掛かっているが、
そこが夢のユートピアのようにも感じられたものだ。ただし
それは、社会に対する責任を問われないからこそ成立するも
のであって、僕らには立ち入ることが許されない場所だ。
それにしても、患者たちの描く絵画や詩の朗読、即興のギタ
ー演奏などの素晴らしさは、僕らの及びもつかないものだ。
しかもそれを易々と作り出してしまう。そんな才能が、逆に
患者自身を苦しめているのかと思うと、それも居たたまれな
い気持ちになる。
観ていていろいろな思いが交錯する作品。そこには適当な結
末や、回答も見出せはしないが、何か人間の根元的なものも
感じさせてくれる作品だった。

『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ(第3話〜
第9話)』
以前に紹介したテレビシリーズの続きのサンプルディスクが
送付されたので、改めてシーズン1の全貌を紹介する。
物語の概要は以前に紹介した通りだが、第3話からはコナー
母子の戦いの物語が本格的に開始される。そして未来からの
人間の戦士としてデレクが登場、美少女型ターミネーター=
キャメロンとの確執も描かれる。
送付されたDVDは3枚組で、それぞれ第1〜2話、第3〜
5話、第6〜9話となっていたのだが、実はこれが絶妙で、
ディスク毎に新たな展開が登場するものとなっていた。しか
し一般発売はそれとは違う組み合わせとなるようで、それは
少し残念なところだ。
その展開は、ディスク1は以前に紹介したように正に導入部
で、ディスク2で現代の戦いの始まりとなる。そこでは各話
毎に、マンハッタン計画であったり、パンドラの箱であった
り、ゴーレムというようなお話が巧みに下敷きとされて物語
に深みを与えている。
そしてディスク3からは未来の戦いの様子も登場し始め、映
像ではCGIによるVFX、物語的にはタイムパラドックス
も含めた壮大なドラマも展開される。ただし、この物語は、
“T4”の公開が来年であることを考えると、いろいろ複雑で
もあるものだ。
さらにそこには、コナー母子間の複雑な感情であったり、人
間の戦士とターミネーターの確執であったり(真の敵はどち
らなのかという疑問も垣間見える)という展開で、さすがに
長期に亙るドラマシリーズを得意とするアメリカテレビ作品
を感じさせる。
因に、『T1』の時の未来からきた戦士カイルの説明では、
スカイネットの最初の発動は1997年だったようだ。それが、
『T1』『T2』では一旦阻止されるが、『T3』で2004年
に発動してしまうことになる。
しかし今回の説明では、さらにその発動が2011年となってい
るようで、「審判の日」は少しずつ先延ばしされていること
になる。今回のシリーズでは、またそれが少し先延ばしされ
るのか、それともその発動は阻止できないのか。シーズン2
の紹介も待たれるものだ。
と言っても、来年公開の映画版では、スカイネットが発動し
た後のジョン・コナーたちの戦いが描かれるようだが…


『特命係長・只野仁』
柳沢みきおの原作から2003年にテレビの深夜枠で放送開始さ
れ、以後レギュラーシリーズ3作、スペシャル4本がいずれ
も視聴率10%以上、今年2月放送のスペシャルでは20.2%を
記録したという人気ドラマの映画版。
表の顔は大手広告代理店の窓際係長、しかしその真の姿は、
会長の特命を受けて社内外のいろいろなトラブルを解決する
特命係長。空手、合気道、ボクシングなどで鍛えた多彩な技
を武器に凶悪な敵どもを蹴散らし、さらに絶妙のテクニック
で女たちも魅了する。
そんな見るからにコミックスのヒーローが、今回遭遇するの
は、人気グラビアアイドルを巡るトラブル。そこには育て上
げたタレントを引き抜かれた弱小プロダクションや、成り上
がりのスポンサー、それを利用する社内の権力抗争や、さら
に追っかけが高じたストーカーなども絡み合う。そして人気
アイドルが抱える悩みなども…
まあ、お話自体は見るからにマンガチックだし、簡単に言っ
てしまえばそれだけのものだが、観ていて意外と芯が通って
いるというか、悪くない話が展開している。それは原作のあ
る強みと言うことなのかも知れないが、他局の深夜枠やBS
系番組からの映画版とは一味違う感じがした。
その違いは、一言で言えば細かいところに手間ひまが掛けら
れている感じがするもので、例えば敵の先鋒に韓国の格闘家
チェ・ホンマンを呼ぶなど、見せ所がちゃんと押さえられて
いる。他にも西川史子らのゲストも案外様になっていた。
主演は高橋克典。この人は、『サラリーマン金太郎』でブレ
イクした後、本作に続いては、今年『課長島耕作』も演じて
いるのだから、見事にイメージを作り上げている感じだ。共
演は、永井大、櫻井淳子、三浦理恵子、田山涼成。また、本
シリーズが女優デビューというモデルの蛯原友里もやり慣れ
た役という感じで頑張っている。
さらに上記以外のゲストは秋山莉奈と赤井秀和。この2人も
キャラクターに合わせた起用という感じで悪くなかった。
ただ、その他の脇役には、真面目に役作りをしているのかと
言いたくなるベテランの役者も見受けられ、せっかく若い連
中が一所懸命頑張っているのに…その辺がちょっと目障りに
感じたりはしたものだ。



2008年11月01日(土) 第170回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、SF/ファンタシー系の作品を中心に、※
※僕が気になった映画の情報を掲載しています。    ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は、またまた往年のSF名作のリメイクの話題から。
 1956年に公開されたMGM作品“Forbiddon Planet”(禁
断の惑星)が、ワーナーで再映画化されることになり、その
脚本に、1990年代の人気SFテレビシリーズ“Babylon 5”
を手掛けたJ・マイクル・ストラジンスキーの契約が発表さ
れた。
 オリジナルの脚本は、シェイクスピアの『テンペスト』を
下敷きにしたと言われるもので、1949年の実写版“Alice in
Wonderland”の特殊効果などを手掛けたアーヴィング・ブロ
ックと、後に赤狩りのブラックリストにも載ることになるア
レン・アドラーがストーリーを執筆、1996年にロン・ハワー
ド監督、メル・ギブスン主演でリメイクされた『身代金』の
1956年版オリジナルなどを手掛けたシリル・ヒュームが撮影
台本を執筆したものだ。
 物語は、人類が大宇宙に進出した時代を背景に、植民が行
われたものの連絡が跡絶えた惑星に調査隊が向かい、そこで
移民団の生き残りの博士と、その惑星で生まれたその娘とい
う2人の生存者を発見する。しかもその惑星には、高度な文
明を持っていたと思われる先住民族の遺跡が残されており、
その先住民族は突然滅亡したという。そして博士は、調査隊
にも危険が迫っていると忠告するのだが…
 オリジナルの主演は、ウォルター・ピジョン、アン・フラ
ンシス、レスリー・ニールセン。そして日系アメリカ人の工
業デザイナー=ロバート・木下の手掛けたロボット・ロビー
が、その当時のSFアイコンとして人気を博したものだ。そ
してこのオリジナルは、後に『スター・トレック』の下敷き
になったとも言われている。
 そのリメイクに関しては、実はかなり以前から計画はされ
ていたもので、以前には、監督のジェームズ・キャメロン、
脚本家で1971年『アンドロメダ...』などのネルスン・ギデ
ィング、同じく1968年『まごころを君に』などのスターリン
グ・シリファントらも関係していたことがあったようだ。
 そして今回は、最初はドリームワークスで『リディック』
シリーズなどのデイヴィッド・トゥーイーの脚本監督による
計画がされたものの頓挫。その後はニューラインに権利が移
り、さらにワーナーでの仕切り直しとなったものだ。
 なお、新たな脚本を契約したストラジンスキーは、ワーナ
ーでクリント・イーストウッド監督の新作“Changeling”も
手掛けており、その辺での信用も買われたようだ。因に脚本
家は、“Ninja Assassin”という作品がすでに完成している
他、“Silver Surfer”、2006年7月1日付第114回で紹介し
た“World War Z”、さらにロン・ハワード監督が計画して
いる“Lensman”の映画化などにも名前が挙がっており、こ
れらの作品の実現は彼の双肩に掛かっているようだ。
        *         *
 お次は、これもリメイクになるのかなという計画で、上映
時間4時間30分に及ぶチェ・ゲバラの伝記映画が話題を呼ん
でいるスティーヴン・ソダーバーグ監督から、ローマ時代の
エジプトの女王クレオパトラを題材とする“Cleo”と題した
ロックンロール・ミュージカルを、実写3Dで計画している
ことが発表された。
 この作品は、Guide by Voiceというインディーズ系ロック
バンドの元ベースプレーヤーで作家のジェームズ・グレアが
執筆した脚本を映画化するもので、音楽もそのバンドの楽曲
が宛てられるとのことだ。そして主演のクレオパトラ役には
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、その恋人のマーク・アント
ニー役にはヒュー・ジャックマンが期待されているそうだ。
また製作費には3000万ドルが予定され、その調達と配給権が
決まり次第、計画を進めるとなっている。
 因に、ソダーバーグ監督は、現在は1作ごとに新しい試み
に挑戦するという計画を進めており、今回の“Cleo”は、監
督にとっては初の本格ミュージカル映画への挑戦とのこと。
『クレオパトラ』というと1963年のエリザベス・テイラー、
リチャード・バートン共演作が映画史に残るものだが、今回
は多分CGIも多用した作品になりそうで、その辺も面白く
なりそうだ。
 ただしソダーバーグ監督は、その前にマット・デイモン、
マイクル・ダグラス共演による“The Informant”という作
品がワーナーで準備中となっており、さらにHDで撮影され
る“The Girlfriend Experience”という作品も計画が進行
中で、“Cleo”は、準備が順調に進んでもその後ということ
になるようだ。
        *         *
 もう1本古代史もので、2004年にウルフガング・ペーター
ゼン監督の許、“The Illiad”に基づく『トロイ』に主演し
たブラッド・ピットが、今度はジョージ・ミラー監督と組ん
で同じくホメロスの叙事詩“The Odyssey”の映画化に取り
組む計画が発表された。と思いきや、何とこの計画で彼らは
大宇宙を舞台にした未来版を計画しているとの情報だ。
 『オデュッセイア』の未来宇宙版ということでは、前回も
ジョー・ホールドマン原作の“The Forever War”の情報を
お伝えしたばかりだが、SF映画ファンには『2001年宇
宙の旅』の原題が“2001: A Space Odyssey”であることも
忘れてはならないものだ。
 という叙事詩の映画化だが、原作の内容は『イリアス』の
続編ともされるもので、トロイア戦争の後、故郷のイタカ島
に向かった英雄オデュッセイウスが島を目前にして神の怒り
に触れて遠隔の地に飛ばされる。そこから故郷を目指す冒険
の旅と、オデュッセイウスの息子が父親を探す旅とが描かれ
ている。そしてこの叙事詩は、1963年にレイ・ハリーハウゼ
ンの手で映画化された“Jason and the Argonauts”(アル
ゴ探検隊の大冒険)の原作であるアポロニウスの叙事詩の基
になったものとも伝えられている。
 その原作を今回は未来の宇宙を背景に描くとしているもの
だが、そこにブラッド・ピットの主演というのもかなり思い
切った作品になりそうだ。因にピットの次期公開作は、デイ
ヴィッド・フィンチャー監督によるファンタシー作品“The
Curious Case of Benjamin Buttan”となっているが、この
種のファンタシー系の作品に興味が高いのだろうか。
        *         *
 ここからは続報をいくつか報告する。
 まずは、今夏の大ヒット作『アイアンマン』の続編“Iron
Man 2”に関して、前作でテレンス・ハワードが演じたジム
・ローディ役が、『ホテル・ルワンダ』などのドン・チード
ルに交代すると発表された。
 この2人は、共にオスカーノミネーションの経験もあるベ
テラン俳優同士だが、チードルがかなり熱烈な原作のファン
だとのことで、そのアピールが利いた結果のようだ。“Iron
Man 2”以降は「ウォーマシン」としての活躍も増えるロー
ディ役には、それなりの思い入れも必要と判断されたのかも
知れない。ただしこの発表は、ハワードにも寝耳に水だった
そうで、直後には本人も何がなんだか判らないと発言してい
たものだが、まあ映画界でも少し先輩のチードルに譲ること
は仕方ない面もありそうだ。
 一方、主人公トニー・スターク役を演じるロバート・ダウ
ニーJr.には、製作会社のマーヴェル・スタジオとの間で、
スーパーヒーローサイズと言われる巨額の出演契約が結ばれ
たことも発表された。そしてこの契約では、“Iron Man 2”
“3”の他に“The Avengers”への出演も含むとのことで、
前作のエンドロール後で予告され、『インクレディブル・ハ
ルク』の最後でも告知されたスーパーヒーローチームの映画
化もこれで確実になったようだ。
 なお、“The Avengers”では、アイアンマンとハルクは、
Captain America、Thorらと共に闘うことになるが、そこに
エドワード・ノートンの出演があるかどうかは不明。ただし
ウォーマシンとしてドン・チードルの出演は契約されている
そうで、その他の配役も気になるところだ。
 また、今回の報道によると、“Iron Man 2”の全米公開は
2010年5月7日とされ、続いて“The Avengers”の全米公開
は2011年7月15日の予定。またこの“The Avengers”の製作
では、『アイアンマン』を手掛けたジョン・ファヴロー監督
が総指揮も務める契約とのことだ。もちろんファヴロー監督
は、“Iron Man 2”“3”の監督も契約しているものだが、
前作の大成功で、正にマーヴェル・スタジオの看板監督とい
うことにもなりそうだ。
        *         *
 9月1日付の第166回で報告したDCコミックスの映画化
“Sleeper”に、ブラッド・インゲルスビーという脚本家の
起用が発表されている。
 この映画化は、サム・ライミ製作、トム・クルーズ主演で
報告されているものだが、前回は不明瞭だった製作会社は、
やはりDCコミックスなら当然のワーナーで行われることが
はっきりした。
 物語は、エイリアンによって痛みの感覚を制御する能力を
植えつけられた主人公が、潜入捜査官となって活躍するとい
うもので、そこに潜入した組織の女との恋物語なども描かれ
るとのことだ。
 因に、脚本家に起用されたインゲルスビーは、今年3月に
最初の脚本の契約に成功したばかりの新人とのことだが、そ
の作品の“Low Dweller”は当初50万ドル、実現時には100万
ドルの契約金で、『ハンコック』などのリレイティヴィティ
・メディアが契約、リドリー・スコット監督、レオナルド・
ディカプリオの出演で計画が進められている。その内容は、
刑務所から釈放された男が、社会復帰を目指すというダーク
スリラーで、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』や『ノー
・カントリー』にも通じる物語とのことだ。
 そんな脚本家が、エイリアンの関る作品を脚色するという
のも面白そうだ。
        *         *
 9月15日付の第167回で報告した今月撮影開始のヴィデオ
ゲームの映画化“Clock Tower”に、『バイオハザード』の
アリスことミラ・ジョヴォビッチが出演しているという噂が
流れている。
 この映画化にはすでにブリタニー・スノウの主演が発表さ
れているが、さらに『オーシャン・オブ・ファイヤー』に出
演のルイーズ・ランバート、“Divine Intervention”とい
うホラー作品に出演しているアリッサ・ジェイン・ハイルと
共に、ジョヴォビッチが出るとのことだ。
 物語は、日本では『クロック・タワー/ゴーストヘッド』
の題名で知られているシリーズ第2作の“Clock Tower II:
The Struggle Within”に基づくとされているもので、精神
病院に閉じ込められたヒロインの脱出行が描かれる。因に、
ゲームではヒロインは最初は武器も何もない状態でスタート
するそうで、基本的に隠れたりパズルを解いたりという展開
のもののようだ。その雰囲気が映画でどこまで描かれるか、
脚本は最終的にエリック・ポッペンという人が仕上げたよう
だが、彼とマーティン・ワイズ監督の手腕が期待される。
 TWCの製作配給で、全米公開は来年に予定されている。
        *         *
 10月1日付第168回で紹介した“Spider-Man 4”の計画に
ついて、その脚本に、2006年発表の戯曲“Rabbit Hole”で
ピュリッツァー賞演劇部門を受賞したデイヴィッド・リンゼ
イ=アベアーが交渉中と発表された。
 因に、『スパイダーマン』シリーズでは“2”の時にも、
ピュリッツァー受賞者のマイクル・シェイボンに脚本を依頼
しており、その方針が今回も踏襲されたものだ。ただし今回
は、事前にジェームズ・ヴァンダービルトへの脚本の依頼も
発表されていたもので、その辺がどのように調整されている
かは不明。昨年8月1日付第140回の報告でも、サム・ライ
ミ監督の発言で脚本家が重要になるとされていたが、期待度
の高いヒットシリーズへの取り組みは、普通に考える以上に
大変なことのなのだろう。
 なおリンゼイ=アベアーは、2005年公開のアニメーション
『ロボッツ』と、2008年製作の“Inkheart”の脚本も手掛け
ており、映画脚本の実績もある人だが、以前のインタヴュー
では自作について、「アウトサイダーとなっている人物が、
自分自身の所在を明確にしようとする物語」と称しており、
この辺がスパイダーマン=ピーター・パーカーのキャラクタ
ーにマッチするとも考えられたようだ。
 サム・ライミの監督復帰と、トビー・マクガイアの主演も
発表され、キルスティン・ダンストは、本人は希望している
ものの脚本家に具体的な注文はされていないそうで、第4作
の製作準備は、2011年5月の公開に向けて順調に進み出して
いる。
        *         *
 10月1日付第168回でも報告した“Tintin”の製作につい
て、ユニヴァーサルがキャンセルした契約を、改めてソニー
・ピクチャーズとパラマウントが共同で引き受けることで話
し合いが進められている。
 この計画については、2007年6月1日付第136回で最初に
報告しているが、ベルギーの漫画家ヘルゲが1923年から発表
してきたコミカルアドヴェンチャーを、スティーヴン・スピ
ルバーグとピーター・ジャクスンの監督により連続映像化し
ようするもので、原作のキャラクターを活かすために全編を
パフォーマンス・キャプチャーによる3Dアニメーションで
製作することになっている。
 そしてこの計画に関しては、当初はドリームワークスでの
製作が行われ、同社がパラマウントに買収されたことから、
本作品の配給もパラマウントと考えられていた。ところが、
ドリームワークスをパラマウントから再独立させる動きが表
面化、この時点でいち早くユニヴァーサルが本作品の製作を
バックアップすると公表されたのだが、ユニヴァーサルは結
局製作を支援しないことを決めてしまった。さらにその後に
ユニヴァーサルはドリームワークスと配給契約を結ぶことも
発表されたが、何故か“Tintin”に関してはその中に含まれ
ないことも明らかにされていたものだ。
 ということで、一時は配給が宙に浮いて製作も危ぶまれた
作品だったが、その総額1億3500万ドルと言われる製作を、
ソニーとパラマウントが交渉しているものだ。因にこの交渉
で、パラマウントは北米大陸及び英語圏、ソニーはその他の
海外配給権を得ることになっている。
 ただし、この契約ではパラマウントとドリームワークスの
関係が微妙になるが、最終的に“Tintin”の製作にドリーム
ワークスは関らない形にしてその辺はクリアにするようだ。
スピルバーグ所有の製作会社では、ドリームワークスとは別
にアムブリンもあるから、今回はそちらが動くのかも知れな
い。一方、ジャクスン監督の新作“The Lovely Bones”に関
しては、事前の契約に従ってドリームワークス製作、パラマ
ウント配給で公開されるようだ。
 そして“Tintin”の第1作は、スピルバーグ監督の次回作
として2010年の公開を目指し、この秋からの撮影が予定され
ている。また、第2作の撮影はそれに続けてジャクスン監督
の手で行われる。ただし、現時点で第3作を製作するかどう
かは、第1作の結果を観てからにするそうだ。まあ、スピル
バーグ、ジャクスンと言えども、それくらい慎重にはなって
いるということだ。
        *         *
 ところでそのジャクスン監督が製作を務める『LOTR』
の前日譚“The Hobbit”は、ギレルモ・デル=トロの監督で
準備が進められているが、その撮影をIMax−3Dで行うとい
う噂が広まっている。
 この情報は、実は『ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー』
のプロモーションで行われたデル=トロ監督の来日記者会見
の翌日に伝えられたもので、記者会見では訊くことができな
かったが、常識的に考えてIMaxは無理としても、3Dの可能
性はあるようだ。
 ただし、公開中の『センター・オブ・ジ・アース』の上映
でも、後方の客席でスクリーンの画枠が観える状態では3D
の効果が大幅に損なわれることは確認できたもので、できる
ことなら視野がスクリーンで一杯になるIMaxでの実現は大い
に期待したいものだ。なお“The Hobbit”第1作の公開は、
2011年12月に予定されている。
 それからデル=トロ監督の記者会見では、監督の普段の生
活の様子が語られたが、自分だけのために家族も入れない家
を別に持っているのだそうで、そこには本やDVDや秘密の
通路もあって、モンスターも住んでいるのだそうだ。そんな
中で日々映画の構想を練っているが、基本的に仕事大好き人
間なので全く苦痛を感じたことはないとのこと。これからも
モンスター一筋で仕事を続けると意志表明をしていた。
        *         *
 続けて最後に記者会見の報告だが、実は映画の情報とは直
接は関係ない。しかしちょっと気になったことがあるので書
いておくことにしたい。
 来年1月16日に日本公開されるドキュメンタリー作品『ザ
・ムーン』のプロモーションとして、登場人物の1人でもあ
るアポロ11号の着陸船パイロット=バズ・オルドリン博士が
来日し、台場の科学未来館で記者会見が行われた。博士は登
場人物であって映画の関係者ではないから、映画についての
発言はなかったが、途中で地球温暖化に関する質問が出て、
博士が予想以上に強い調子で否定論を展開したのに驚いた。
 その発言の要旨は、「地球は有史以前から何度も温暖化と
寒冷化を繰り返しており、温暖化が人間のせいばかりとは言
い切れない」というもので、この理論自体は知られているも
のだから問題はなかったが、ここで博士は「大学や研究機関
は、研究資金集めのために物事を大袈裟に言うことがある。
『何も起きないけど、お金を下さい』とは言い難いから」と
まで言い放ったのだ。
 僕自身は博士の理論も理解するし、結論として「パニック
になるようなものではない」とする意見にも賛成だが、しか
し資金集め云々と言うのは言い過ぎのような気がした。ただ
これにはちょっと伏線があるようで、実は博士は前置きとし
て「前のインタヴューでも訊かれたが…」と発言していた。
つまり博士は、直前に別室で行われた個別のインタヴユーで
も同様のことを訊かれて、同じ質問の繰り返しに多少苛立ち
もあったようにも感じられたし、発言を繰り返す内に、博士
自身が考える以上に言葉が強くなってしまったことは考えら
れるところだ。
 でもこの種の発言は、得てして一部が独り歩きしがちなも
のだし、その現場の雰囲気を覚えておくためにもここに書き
留めておくことにするものだ。話題は映画の話ではないけれ
ど、その辺をお汲み取りいただきたい。
 なおこの記者会見では、終了後のフォトセッションが、科
学未来館ご自慢のジオ・コスモスの前で行われた。このジオ
・コスモスは巨大な球体状のディスプレイで、普段はその瞬
間の地球の表面が表示されているものだ。しかしこの日は、
NASA提供による月の表面の映像が表示され、それは月の
裏側も表示されているというものだった。そしてオルドリン
博士は、その周囲を巡る回廊から登場するという演出で、つ
まり月の裏側を回って我々の前に現れることになっていた。
 ところがその回廊に博士が到着しても表示は地球のまま、
結局、博士は地球の周りを回っての登場となってしまった。
まあ、この種の演出は手違いの生じることが多いものだが、
せっかく40年ぶりに月の裏側を観た感想を聞くという千載一
遇のチャンスを逃すことになってしまい、非常に残念な気持
ちがしたものだ。
        *         *
 前回の記事に続報関係の追加を記載してあります。興味の
ある方は再度ご覧下さい。


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井口健二