| 2007年07月31日(火) |
デス・プルーフ、プラネット・テラー、マザー・テレサ、ファイアー・ドッグ、純愛、ナルコ、たとえ世界が終わっても |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『デス・プルーフinグラインドハウス』“Death Proof” 『プラネット・テラーinグラインドハウス』 “Planet Terror” クエンティン・タランティーノとロベルト・ロドリゲスが、 1960年代に数多く存在したBムーヴィ専門の2〜3本立て映 画館「グラインドハウス」の再現を目的に製作した作品。 アメリカでは“Grindhouse”のタイトルの許、本編2本とフ ェイクの予告編、それに短編アニメーションなどを揃えて公 開されたが、いかんせん全編の長さが192分の長尺となり、 観客からは敬遠されてしまったようだ。 そこで海外ではそれぞれの本編が独立の作品として公開され る。しかもオリジナルではそれぞれ87分と86分の作品であっ たものが、予告編・短編込みの113分と105分の拡大ヴァージ ョンとなっているものだ。 ではまずタランティーノ監督の『デス・プルーフ』から。 タイトルの意味は、腕時計のwaterproofと同様で、防死加工 とでも訳せばいいのかな。自動車アクション映画の撮影で、 車が横転したり激突しても運転しているスタントマンに危害 が及ばないようにする設備のことを言うものらしい。 映画の前半に登場するのはジャングル・ジュリアの呼び名で 人気の地方局のDJ。街中にビルボードも建って浮かれてい る彼女とその中間たちに恐怖が訪れる。それをもたらすのは スタントマン・マイクと自称する元スタントマン。 そして数年後、スタントマン・マイクは別の女性たちを狙っ ていた。ところが、そこに現れたのは女性スタントマンを含 む映画製作の女性スタッフたち。一筋縄では行かない女たち とマイクとの壮絶な闘いが始まる。 スタントマン・マイクを演じるのは、『ニューヨーク199 7』〜『ポセイドン』のカート・ラッセル、そして後半の中 心となるのは、タランティーノ監督の『キル・ビル』2部作 でユマ・サーマンのスタントを担当したゾーイ・ベル。 ゾーイは本人役で登場し、初めて本編でドラマの演技を披露 することになったものだが、監督が彼女のために書き下ろし たという感じのシナリオで、演技は自然だ。そして、CGI は安全用のワイアを消しただけという、たっぷりと描かれた 車上のスタントアクションは正に観ものだ。 共演は『シン・シティ』のロザリオ・ドーソン、TV『CI S:ニューヨーク』などのヴァネッサ・フェルリト、シェリ ル・ラッドの娘のジョーダン・ラッド、TV『チャームド』 のローズ・マッゴーワン、シドニー・ポアティエとジョアン ナ・シムカスの娘シドニー・ターミア・ポアティエ、映画版 『RENT』のトレイシー・トムズ、『ダイ・ハード4.0』 で主人公の娘役を演じたメアリー・エリザベス・ウィンステ ッドなど、マニアはニヤリとする顔ぶれが揃っている。
続いてロドリゲス監督の『プラネット・テラー』は、タイト ルからは宇宙物を想像したが…そうではなく、軍事基地から 化学兵器が漏れだして、それを吸った人たちが次々変貌して 行くという作品。しかも変貌した人間たちは、そうでない人 たちの生肉を求めて殺戮を開始し、さらに襲われた人が難を 逃れても傷口から変貌が始まってしまう。 テーマ的には、『バタリアン』の流れを汲むのかな、でもそ れをロドリゲス監督らしく激烈に描き切っている。従って、 銃撃戦では頭は爆裂するは、手足は吹っ飛ぶはの飛んでもな いシーンが続出。スプラッターマニアには満足度の高い作品 と言えそうだ。 しかもポスターにもなっているヒロインの姿は、映画の後半 のほとんどをCGIの合成で描き込んだもので、昔は『フォ レスト・ガンプ』の帰還兵の姿でも驚嘆したものだが、今や ここまで出来てしまうのかという感じもしたものだ。 そのヒロインを演じるのは『デス・プルーフ』にも出ている ローズ・マッゴーワン。そして『ポセイドン』『ボビー』な どのフレディ・ロドリゲスを中心に、『ターミネーター』の マイクル・ビーン、『ファイアー・ウォール』のジェフ・フ ェイヒー、『グーニーズ』〜『インビジブル』のジョッシュ ・ブローリン、『シン・シティ』のマーリー・シェルトン、 ミュージシャンのナヴィーン・アンドリュース、ステイシー ・ファーダソン、それにブルース・ウィリスといったちょっ と渋目の役者が揃えられている。 グラインドハウスは、僕が初めてアメリカに行った1975年頃 にはまだあって、ハリウッドの外れ映画館で、確か$1ほど の料金でヨーロッパ製のヴァンパイア物を含む3本立てを観 た記憶がある。今は残っていても危険で入れないだろうが、 そんな心配のまだ無い時代だった。 日本でも当時は、新宿から高円寺辺りまでの地球座チェーン と言ったかな?や、赤羽から浦和、大宮辺にもチェーンがあ って、1本のフィルムをバイクで順送りして上映していたも のだ。上映の最終日に行って頼むとポスターなども貰えて、 『2001年宇宙の旅』を入手したこともある。 当然、2番館3番館落ちの作品が上映されるからフィルムは ぼろぼろで、今回製作された2作品でも、フィルムの傷や駒 飛び、さらに焼失なども演出されているが、それでも好きな 映画は何度でも見に行けたものだ。 映画ファンがいたからそういうことが出来たのか、そういう 映画館があったからファンが育ったのか、それは判らないけ ど、マルチプレックスの台頭がそういう映画館を消滅させた ことは確かなようだ。 なおこれらの作品は、日本では2本独立で9月1日から順次 公開されるが、それに先行して8月24日から数日間、東京・ 六本木と大阪でオリジナル版の公開も行われる。実は、特に タランティーノ作品が、director's cutでちょっとやりすぎ ている感じもあり、その辺をオリジナル版で確認したい気も しているものだ。
『マザー・テレサ・メモリアル』 “Mother Teresa & Mother Teresa: The Legacy Film” 今年で没後10周年を迎えたマザー・テレサを取材したドキュ メンタリー。 生前に製作された“Mother Teresa”(邦題:母なることの 由来)のディジタル復刻版と、その葬儀の模様に生前のイン タヴューなどを加えた“Mother Teresa: The Legacy Film” (母なるひとの言葉)が公開される。 ノーベル平和賞にも輝いたマザー・テレサの業績は、知る人 には分かり切ったことであるかも知れないが、部外者である 自分にはいろいろと興味深く、面白く見られる作品だった。 特に、『母なることの由来』に描かれたマザー・テレサの来 歴や、彼女の行動力、また人種や宗教を越えて人々に影響を 与えて行く様子は、その間に中東紛争の中での活動の様子な ども織り込んだ丁寧な取材で、部外者にも判りやすいものに なっている。 それにしても、旧ユーゴスラビアで生まれた女性が18歳で修 道女になり、教会の指示でインドに赴き、36歳で神の召命を 受けて貧しい人々への奉仕を開始。さらに、彼女が開設した 「神の愛の宣教者会」はローマ法王の認可の許、インドだけ でなく世界中に広まっていったという経緯は、マザーの偉大 さと宗教そのものの存在感を見事に描いたものだ。 だからといって、自分がそれに感化されてしまうということ ではないが、若い内にこのような作品を見て、それで何かを 考えられれば、それも価値のある作品のようにも思えた。 公開は9月15日から東京写真美術館ホールで行われる。 なお、試写会は2本立てだったが、一般公開は独立の形で、 チケットは2枚綴り(1800円)とそれぞれ個別(1000円)も 販売される。従って作品は単独でも見られるが、初めて観る 人には『母なるひとの言葉』だけではちょっと判りにくいか も知れないと思えた。 それから葬儀の模様の中で、日本からは土井たか子だけが紹 介されるが、これは確か当時衆議院議長として出席している もので、原音声に肩書きが無いのは仕方がないが、これだけ ではちょっと奇異に感じられた。
『ファイアー・ドッグ』“Firehouse Dog” 周囲の過疎化と現場への到着の遅れなど活動の不振で、閉鎖 が目前とされた消防分署を舞台に、空から落ちてきた1匹の 犬が大活躍を繰り広げるファミリー・ピクチャー。 その分署は、前任隊長が消防犬と共に殉職し、隊長職はその 弟が継いだが、活動は遅れ気味で周囲の分署からも少し蔑ま れている。しかしその地域では兄が殉職した火災を始めとし て不審火が続いており、現隊長はその調査も続けている。 主人公はそんな現隊長の息子。父子家庭の上に、兄の死を消 化仕切れていない父親の生活態度も影響してか、息子の生活 も荒れ気味で、試験日となると学校をさぼったり、家でもヴ ィデオゲームばかりに熱中している。 一方、登場するのはハリウッドのスター犬。アクション映画 で主演を張って大活躍だったが、ある日、スカイダイビング シーンの撮影中の事故で失踪し、その町に迷い込む。そして 主人公と遭遇したスター犬は、ハリウッド時代の特技を駆使 して大活躍するが… 以前に警察犬として訓練された犬が一般家庭に入り込んで… という作品もあったが、家で犬を飼っている者としては、描 かれる犬の行動なども理解できるし、問題なく楽しめる作品 ということになる。 本作は人間の主人公が少年ということもあって、お子様向け の作品ではあるが、それなりに謎解きなどもスマートだし、 うまく作られた作品と言える。ただし、犬が演じるアクショ ンにはちょっとやりすぎの部分もあったが、それはご愛嬌と いうところだ。 一方、スター犬のシーンでは、映画のポスターなどのパロデ ィもあって、それなりに楽しめた。それから個人的には、以 前息子が消防少年団に入っていたこともあって、消防署の中 の様子などにも多少親しみがあり、その点もポイントになっ たものだ。 主演は、『ザスーラ』のジョッシュ・ハッチャーソン、父親 の現隊長役を『13デイズ』でケネディ大統領に扮したブルー ス・グリーンウッドが演じている。また登場する犬は、4匹 のアイリッシュ・テリアによって演じられているそうだ。
『純愛』 第2次世界大戦後の中国大陸残留日本人女性を描いた作品。 中国人監督の演出で中国で撮影された作品だが、製作は、北 京中央電視台での主演作もあるという日本人女優の小林桂子 という人が、個人で資金を集め、自らの脚本、製作総指揮、 主演により作り上げた作品となっている。 1945年夏。敗戦によって日本に平和がもたらされたその頃、 中国大陸では開拓団として渡ってきた日本の若者たちが、日 本軍の撤退により欝積していた中国人の反感を浴びながら、 生死の境を彷徨っていた。 主人公たちの一団も山岳地帯で、敗戦を認めない残留日本軍 などの襲撃に遭い、やがて散り散りになって行く。そんな中 で新婚の愛と俊介はとある山里に迷い込み、そこでも村人た ちの反感を買うが、1人の盲目の老婆が彼らに助けの手を差 し伸べる。 そして夫婦であることを隠し老婆の家に住み込んだ2人は、 その老婆の息子の山龍と共に生活して行くが… 物語は、小林が現地で残留日本人女性から聞いた実話に基づ くということだ。実は、僕の両親も開拓団では無いが戦前の 中国に渡っていて、幸い早めに引き上げたので家族は無事だ ったものだが、他人事ではない話ということになる。 実際このような話は、もっと他にもあるのだろうし、もっと 悲惨な目に遭った人も多いとも思われるが、その中でこの話 は、日中の友好を描くためには最適の物語と言えそうだ。最 後の鯉幟のエピソードが実話かどうかは知らないが、創作と しても良い感じだった。 ただし、主人公の跡を娘が継いだという話は、この映画の展 開ではちょっと辻褄が合わない感じもしたが… なお、映画の公開は8月18日に銀座シネパトスでスタートす るが、そのチケット代の一部はNPO法人の小林桂子基金を 通じて世界の子供たちのために使われるとのことだ。この基 金ではすでにスリランカに3校の幼稚園と6本の井戸、さら に中国に小学校を建設したとのことで、その支援の輪の広が りが期待されている。
『ナルコ』“Narco” どこででも突然眠ってしまう病気ナルコレプシーを題材にし たフランス映画。 この手の病気の映画では、最近は短期記憶障害が良く登場す るが、ナルコレプシーも一時期話題になって、その頃には何 本かドラマも作られていた記憶がある。この種の題材も流行 り廃りがある訳で、そんな昔の題材が久しぶりに再登場した ものだ。 でもそういう再登場では何かしら新しい捻りが欲しくなる。 そこで本作では、眠っている間に主人公は突飛な夢を観てお り、画才の有った彼はその夢をコミックスに描いて出版社に 売り込もうとするが…ということになる。 脚本監督は、過去にはカンヌ国際映画祭で受賞した短編作品 やCM、クリップなどでも実績の有るトリスタン・オリエと ジル・ルルーシュのコンビが手掛けたもので、彼らの長編デ ビュー作となっている。 そのデビュー作に、主演は『美しき運命の傷痕』などのギョ ーム・カネ、共演には『ヴォドック』のザブー・ブライトマ ン、『ル・プレ』のブノワ・ポールヴールド。さらにカメオ でジャン=クロード・ヴァンダムまで登場するのだから、相 当の期待度と言えそうだ。 物語の展開では、彼の才能を盗んで一儲けを企む連中が出て きたり、監督のコンビが演じる双子の殺し屋など、ちょっと ベタな部分もあるが、これが最近のポップな感覚と捉えてい いものかどうかは微妙なところだ。 プレス資料に掲載された映画評には、「70年代の感覚」とい う言葉も見られるが、それが最近の若者にはポップという感 覚になるのかな…。正直、僕には『ファントマ』が思い出さ れたもので、もう少しスマートな感覚で描いても良かったと も思えたところだ。 巻頭には激しい戦闘シーンが登場して、これがCGIも使用 したかなり見応えのある代物だった。その他にも『スター・ ウォーズ』を思い出させる宇宙戦闘シーンなど、何度か登場 する夢のシーンはそれなりに力が入っているようだった。 実際、2004年製作でこの技術力は大したものだと思えるが、 ただこれが基本的に戦闘シーンや銃撃戦ばかりというのは、 多少食傷気味にもなったところで、ここに何か他のテーマも あったらとも思えた。 でも、まあ監督コンビの才能はこれだけ見ても充分に感じら れたもので、今ならもっと別のことができるとも思えるし、 その後の新作の情報などを聞いてみたいところだ。
『たとえ世界が終わっても』 最近も時々ニュースになるウェブサイトによる集団自殺を発 端にした作品。 自殺を題材にした作品は、数年前に『樹の海』など何本か在 って、作品の出来はともかくその風潮が気になったものだ。 本作も、その点では最初はあまり好ましい感じでは見られな かった。しかし、まあ映画というのはそれなりに社会的責任 も在るということだ。 主人公は独身女性。持病が在るらしく、それを理由に集団自 殺への参加を試みる。ところが田舎の駅に集まった連中は、 テレビの最終回を観たいだの、最後に食事をしたいだのと言 い出して、なかなか実行しようとはしない。 それでもどうにか自殺決行の場所にはたどり着き、睡眠薬で 眠ったまま死ねるはずだったのだが…目が覚めると、彼女は 勤務先のデスクに突っ伏していた。しかもそこに管理人の男 が現れ、確実に死ねる薬を渡す代りに、1人の男性を救って くれと取り引きを申し出る。 その男性は肺ガンで2度目の手術に可能性は残っているが、 その手術代が用意できない。そこで彼女が婚姻届を出し、生 命保険の受取人を彼にして死ねば、その手術代が出来るとい うのだ。最初はそんな話は取り合わなかった彼女だったが… この管理人を大森南朋、女性を伊加日合作映画『SILK』 のヒロインに大抜擢された新人の芦屋星、男性を舞台俳優の 安田顕が演じて、特に大森の掴み所のない演技は作品に填っ ている感じがした。 脚本と監督は、テレビの深夜枠ドラマなどを手掛ける野口照 夫。テレビ出身で、特に深夜枠の監督は、独り善がりな作品 が多くて今まではあまり良い印象を持っていなかったが、こ の作品にはそういうこともなく、映画として普通に観ること が出来た。 ただし、正直に言って見終って何か物足りない感じがした。 その原因を考えたのだが、管理人が死神であるのか否かは別 段曖昧で良いにしても、主人公の女性の設定が今いち明確で ないのが気になったところだ。 確かに映画の中では、自分が母親を死に至らしめたのと同じ 病気になり、母親と同じように若死すると考えているようす なのだが、その経緯がはっきりしない。具体的な病名を出す のは問題が在るのかも知れないが、もう少しその辺の説明が 欲しかったものだ。 また、最初の集団自殺のドタバタ劇が、結局伏線になってい るとは思うのだが、どうもこの部分の演出が駄作の日本映画 を見せられている感じで退いてしまう感じがした。ドタバタ も映画全体で意味がない訳ではないのだが、やはりここには 何か一工夫が欲しいと感じたところだ。 なお本作は、監督が長年温めてきた「時をめぐる三部作」の 一作なのだそうで、この水準で作られるのなら、他の2作も 早く見せてもらいたいと思ったものだ。
| 2007年07月20日(金) |
TAXi�ぁ△�やすみクマちゃん、酔いどれ詩人になる前に、北極のナヌー、エディット・ピアフ、ルーツ・タイム |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『TAXi�ぁ戞�Taxi 4” 1998年に第1作が公開され、2000年、2003年と作られたシリ ーズの第4弾。改造マニアのタクシードライバー=ダニエル が、今回は車もプジョー406から407に乗り換えて、再 び大活躍を展開する。 前作のプロローグにはシルヴェスター・スタローンが登場し たが、今回はフランスの怪物の異名を取るサッカーフランス 代表選手のジブリル・シセ。ちょうどイギリス・プレミアリ ーグから、フランスリーグ・アンのマルセイユに復帰したの に引っ掛けて、その復帰第1戦のピッチに彼を送り届けるの が最初の仕事だ。 そして、その後もサッカーねたがしばらく続くから、これは サッカー好きには堪らない。そんな訳で、今回は最初から乗 せられて見てしまった。 本筋の物語は、こちらはベルギーの怪物という異名を取る極 悪犯人が逮捕され、コンゴでの裁判を受けさせるための移送 中、マルセイユ警察に1日収容されるという話から始まる。 その移送体制は、檻の中にさらに拘束具で繋がれるという厳 重なものだったが… この男が逃亡し、それを追うダニエルと親友の警官エミリア ンは、マルセイユからモナコへと車を飛ばす。そしてアジト を突き止めた2人は…。一方、極悪犯人の逃亡を助けた一味 はモナコの銀行を襲うが、その一味にはエミリアンの妻ペト ラが潜入捜査を行っていた。 前作は、プジョーがゲレンデでスキーをするという設定がか なり無理な感じで、話全体もそれに取って付けたようで、正 直に言ってあまり感心はしなかった。それに比べると今回の お話はそれなりにしっかりと作られている。 ただその分、カーアクションの時間は短縮されてしまった感 じで、それが目当ての人にはちょっと物足りなく感じた人も いたようだ。でも、映画はアクションがありゃ良いってもの でもない訳で、その点で今回の作品はバランスもよく考えら れていたように思えた。 ダニエル役のサミー・ナセリ、エミリアン役のフレデリック ・ディーファンタル。ペトラ役のエマ・シューベルイ、署長 役のベルナール・ファルシー、将軍役のジャン・クリストフ ・ブーヴェらはほぼ全員が再登場。 ただし、前作で関係が険悪となっていたダニエルの妻リリー に関しては、今回はガレージ改造の準備でパリに買い物に行 っているということで、不在となっている。演じるマリオン ・コティヤールは、前回紹介の映画ではプロヴァンスに行っ ていたり、今回もいろいろ忙しそうだが、次回作では出演し てくれるのかな。
『おやすみ、クマちゃん』“Mis Uszatek” 1957年に出版された絵本を原作とするポーランド製の人形ア ニメーション。ぬいぐるみのクマが、仲間の森の動物たちと 共にいろいろな体験をする1話7分のシリーズで、1975年か ら1987年にかけて104本が製作され、今回はその内の10本が 纏めて公開される。 主人公のぬいぐるみのクマが、寝る前に1日の出来事を話す という設定で、寓意や躾やその他諸々の要素が盛り込まれた 物語が展開される。大人の目で観ると、言わずもがなのもの ばかりではあるけれど、本来子供向けであるのだからそれは 当然のことだ。 また、描かれる子供の純粋さには、所々ではっとさせられる ところもあるが、それは意図されたものではない。基本的に お子様向け以外の何物でもない作品だ。 上映は2部構成で行われ、第1部は「春から夏」と称して、 「赤いふうせんと小鳥の巣」「ゆかいなお絵かき」「お洗濯 で水びたし」「アヒルの親子とはじめての水泳」「忘れな草 をさがして」。 5分の休憩をはさんで、第2部は「秋から冬、そして春」と 称して、「キノコ狩りはたのしいな」「素敵な森のコンサー ト」「いじわるなカラスと冬の神様」「みんなで行こう、ス キー旅行」「雪だるまさんと春の訪れ」と続く。 どれも題名から想像される通りの物語だが、案外楽しんで観 ていられるのは、自分が童心に還ったというより、それなり に普遍的なテーマが捉えられていることにもありそうだ。 104本の中から選び抜かれたというところはあるだろうが、 作品の質はそれなりに高く、大人の目でも充分に楽しめた。 なお、日本語版の吹き替えをケロポンズという女性デュオが 担当しているが、全国各地で親子向けのステージショウを展 開しているという2人のパフォーマンスは、この題材にはピ ッタリはまっている感じのものだ。 また、8月4日〜9月14日の東京都写真美術館ホールの上映 では、1962年製の「こぐまのウシャテック」という9分の作 品が1日1回19時の回に併映される。試写はなかったが、シ リーズの原点となる絵本の映画化ということで、かなり貴重 な作品のようだ。
『酔いどれ詩人になる前に』“Factotum” 1994年に亡くなったアメリカの詩人・小説家チャールズ・ブ コウスキーの自伝的な小説の映画化。脚色と監督は、2004年 3月に『キッチン・ストーリー』を紹介しているノルウェー 出身のベント・ハーメル。2005年製作で監督初の英語作品と いうことになる。 主人公は自称作家だが、作品が売れている訳でもなく、それ でいて生活のために職に就いても長続きはしない。そして、 溢れ出す言葉を綴り続けなければならないと言っては、常に ノートに何か書き付けている。 そんな主人公は、バーで拾った女と一緒に暮らしているが、 正に酔いどれてセックスに明け暮れているという状態だ。そ して仕事は、氷の配達やタクシー運転手、ピクルス工場、バ イクの部品倉庫など転々とするが、どれも長続きはしない。 そんな時、突然競馬の予想が次々に当り出し小金を稼ぐが、 それが原因で女の心は離れて行ってしまったりもする。また 別の女と彼女のパトロンの家に居候になったり、両親の家に 帰れば、彼の人生を認めない父親に冷たく追い出されたりも する。 そんな売り出し前の作家の姿が描かれる。でも、まあ原作者 は最終的に作家になった訳だから、その点は安心して観てい られるという作品だ。それにこの主人公が、たまに無頼にな ってみせたりもするが基本的に優しくて、多分女性にとって は堪らない魅力の持ち主であっただろうことが見事に描かれ ている。 出演は、主人公にマット・ディロン。『クラッシュ』でオス カー助演男優賞にノミネートされた翌年の作品だが、本作の 方が断然名演技に見えてもインディペンデントの作品は、な かなか評価されないのが常というところだ。 共演はリリ・テイラーとマリサ・トメイ。他に今年2月に紹 介した『ダウト』にも出ていたフィッシャー・スティーヴン ス。さらに無記名のカメオ出演も多数あるようで、つまり、 それだけ俳優たちの興味を引く作品だったということになる ようだ。 原作者は日本でも人気があるようだが、その読者の期待は裏 切らない作品になっていると思われる。今時こんな作家がい るのかどうかも判らないが、観ている間は多少憧れも感じた ものだ。
『北極のナヌー』“Arctic Tale” ナショナル・ジオグラフィック製作による初の劇場公開用作 品で、今後30年間で消滅してしまうかも知れないと言われる 北極の自然を記録したドキュメンタリー。 北極の氷原で暮らす白クマの母子と、北極海に住むセイウチ の一族が、温暖化の進む中で生き抜いて行く姿が描かれる。 しかし今年はなんとか生き延びても、来年、また再来年と環 境はどんどん厳しくなって行く。 映画は、広大な雪の斜面に掘られた雪洞で冬に生まれた小熊 が、初めて外に出るところから始まる。一方、海中ではまだ 臍の緒を付けたままのセイウチの赤ん坊が、母親ともう1頭 の雌と共に泳ぎ始めている。 そして物語としては、この小熊とセイウチの赤ん坊の成長を 追って行くものだが、そこには、温暖化の影響で海の凍結が 遅くなったり、凍結しても柔であったり、またセイウチの一 族全員が載れるほどの大きさの氷山がなかったりという現実 が描かれる。 ただし、日本語版のナレーションをSMAPの稲垣吾郎が担 当していて、それ自体は問題はないのだが、何となくこの温 暖化の現実に対する発言が弱いように感じられた。確かに氷 の接岸が遅いとか、氷原が柔だとかということは言ってはい るのだが、それが特に強調されていないように思えたのだ。 クレジットによると、オリジナルのナレーションはクィーン ・ラティファが担当したようで、口調は稲垣とはかなり違っ たものになりそうだが、でもナレーションの原稿は翻訳のは ずだから、そこで温暖化の問題が明確にされていないのなら 問題に感じる。 もっとも、温暖化問題では京都議定書にも署名を渋るアメリ カの作品だから、それもあるかなと考えると心配になった。 それはともかく、映像では、愛らしい小熊の姿や、セイウチ が一族で子育てをするという話、さらにはワモンアザラシ、 ホッキョクギツネ、ハシブトウミガラスなどの生態がいろい ろと描かれていて、それは観ていて飽きることはない。 そこに温暖化の話は、確かに入れ難い話であったのかも知れ ないが、その辺の主張の曖昧さが何となく気になる作品では あった。
『エディット・ピアフ 愛の讃歌』“La vie en Rose” 邦題の「愛の讃歌」や、原題の「バラ色の人生」など、恐ら くは誰でも1度は聞いたことのあるシャンソンの名曲を歌っ た歌手エディット・ピアフの47年間の生涯を描いた作品。 ピアフは1915年にパリの貧民街で生まれた。母親は街頭で歌 って施しを受ける歌手だったが幼い娘を残して出奔。娘は兵 役中の父方の祖母が営む娼館に預けられる。そして大道芸人 だった父親が復員し、父親と共にどさ回りなどをする内に歌 で稼ぐようになる。 やがて20歳の時にパリのクラブ歌手となり、厳しいレッスン と天性の圧倒的な声量によって見る見る頭角を現す。そして ついには、パリ・オランピア劇場やニューヨーク・カーネギ ーホールでの公演も成功させるが… ピアフは1963年に亡くなったが、47歳という行年は当時にし ても短いものだろう。しかしその末期の姿はとても47歳には 見えない。映画は時間を交錯させて描いているため、始めの 方から末期の姿が出てくるが、最初は何か別の意味があるの かとさえ思ったほどだ。 その原因は、1日10本も打っていたというモルヒネのことが 映画の中でも説明されるが、薬物に対する意識が低かった時 代とはいえ、ここに至るまで周囲が何もしないでいたことも 信じられないくらいだ。しかしピアフは、その苦境の中でも 最後まで歌を忘れなかった。 そんなピアフの生涯を、さすが10歳以下のシーンは子役が演 じるが、20歳から老婆のようになってしまった47歳までを、 『プロヴァンスの贈りもの』などのマリオン・コティヤール が見事に演じている。 コティヤールは1975年生まれだから今年で32歳、演じた期間 のちょうど真中という感じだが、本来なら簡単だったと思わ れるこの年齢幅が、この作品ではちょっと異様な描き分けと なっている。 その晩年の姿も力の入った名演だが、やはり年齢の近い最も 華やかだったころのピアフの姿は生き生きとして、成功と恋 を謳歌する姿が最高の華やかさで描かれる。そしてそれが暗 転して行く過程もまた見事に描かれた作品だ。 なおコティヤールは、元々がピアフの大ファンだったという ことで、本作では、歌声はピアフ本人の音源が使われている ものだが、彼女は息継ぎのタイミングから舌の回し方、喉の 動きまでを見事に合せており、その意気込みも伝わってくる ものだ。 そしてその歌の内容が物語に見事に重ね合わされて、すばら しい構成となっている。
『ルーツ・タイム』“Roots Time” アルゼンチンで、少数民族の文化などを描く作品を作りなが らTV番組やアニメ、クリップなどを製作している1978年生 まれの監督が、ジャマイカでレゲエの母体となるラスタファ リアンの人たち描いたロードムーヴィ。 7月23日。この日は1930年にエチオピア皇帝に即位したハイ レ・セラシエ1世の生誕の日なのだそうだ。そこでその日を 期して、ラスタファリアンは全員アフリカの地を目指すべし というアジテーションがラジオから流れている。 主人公の2人組は、乗用車に大きなスピーカをつけて、レゲ エのレコードを売り歩く移動レコード販売業者。スピーカか らは宣伝や呼び込みの音声も流れるが、実は運転席の2人の 会話も筒抜けになっている。その会話は、怪しげな法螺話な ど種々雑多だ。 そんな2人が、売れないレコードに四苦八苦しているとき、 道端で1人の男が彼らを呼び止める。その男はさっきまでラ ジオでアジテーションをやっていたDJ。彼のガールフレン ドが急病で病院まで送って欲しいという。 ヒッチハイクは困るという2人だったが、本当に病気らしい 女性と男を載せて車は走り出す。そして2人は、ラスタファ リアンなら合成薬を使う病院より、薬草医のところに行くべ きだと主張し、人伝の情報を頼りにその薬草医の許を目指す が… 出演者は全員が演技は素人だそうで、特に主人公の1人はそ れまで映画を見たこともないという農夫だそうだ。また、他 もミュージシャンやDJが演じていて、主人公のもう1人を 演じているウールトン・ハリスンはレゲイ界では著名な人ら しい。 ということで、映画の中は、会話もほとんどリズムに乗って いて、その意味ではレゲイ=ラスタファリアンの文化を良く 伝えているもののようだ。 とは言っても所詮は素人の演技だし、監督もドラマの演出に は馴れていないようで、映画の全体はもたもたしていて素人 映画の域は出ていない。でもまあ雰囲気は、多分現地の感覚 そのままなのだろうし、そういうことで楽しめればそれで良 いのだろう。 観る側の気分にも因るかも知れないが、少なくとも都会生活 に追われる人間には、一種の癒しの効果も生じるのではない かという感じもした。まあそんな大らかな気持ちで観られれ ばいい映画だろう。 ただ、僕が観た試写会では画面全体が妙に赤っぽくて、実は 巻頭で乗用車のエンジンルームを嘗めて撮ったシーンが、内 臓のようにも観えて狙った効果かとも思ったのだが、上映が ヴィデオだったこともあり、この色調で正しいのかどうか、 ちょっと気になったものだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 最初は前回の続きから、 前回のサイトを更新した後で思いついたのだが、最後に紹 介した“Bond 22”の記事で、監督に起用が決まったマーク ・フォースターは、2001年の『チョコレート』(Monster's Ball)でハリー・べリーにオスカー主演女優賞をもたらした 監督であった。そのべリーは、翌2002年の『ダイ・アナザー ・デイ』にNSAのエージェント=ジンクスとして登場し、 一時は人気が落ち目のブロスナン=ボンドに替って、スピン オフシリーズの可能性も検討されたことがあったものだ。 しかし、べリー自身が『X−メン』では、「シリーズの継 続は歓迎するが、自分が主演のスピンオフはやりたくない」 と発言しているもので、同様のことは『007』にも当ては まるという感じもする。となると、フォースター監督の許、 新生ボンドシリーズの第2弾にジンクスの再登場は有り得る かどうか。現在進行中のポール・ハギスとフォースターによ る脚本の改訂作業が気になるところだ。 一方、主演のダニエル・クレイグからは、「“Bond 22” では、ギャグも前作以上に取り入れて、ユーモアのセンスも 強調される」との見通しも紹介されており、フォースター監 督の起用がシリーズに新風を吹き込むことも期待されている ようだ。その中にカメオでもいいからジンクスの登場は、や はり期待してしまうところだろう。 * * ボンドシリーズ関係の情報をもう一つ、 故イアン・フレミングが遺した草稿の中から“Devil May Care”という作品が、来年生誕100周年を迎える5月28日の 誕生日に合せて出版されることになり、その作品が、2002年 ケイト・ブランシェット主演で映画化された『シャーロット ・グレイ』などの原作者セバスチャン・フォークスによって 完成されたことが発表された。 内容に関する情報は一切公表されていないが、情報を得て いる映画製作者のバーバラ・ブロッコリからは、「1968年を 背景にしたもので、正に屋根裏から発見されたフレミングの 原稿そのもの」という話も伝えられており、この作品が将来 の映画化に向かうことは間違いなさそうだ。 因にこの作品は、フレミングの遺族が著名作家に依頼する ことを表明していたもので、その中にはジョン・ル=カレや フレデリック・フォーサイスらの名前も挙がっていたが、上 記の映画化作品でも第2次大戦下のフランスのレジスタンス 活動を見事に描いたフォークスに白羽の矢が立ったものだ。 そのフォークスは、「本作のボンドは、今までのどの作品 より弱点だらけのように見える。同時に、女性に優しく高度 にセクシーで、言ってみれば女たらしだ。でも彼はそれを悪 用はしない」と語っており、アクションがどんなものかは語 っていないが、女性関係はかなり華やかになりそうだ。 また、フォークスは本作品を6週間で書き上げたそうで、 「フレミングのように、ジャマイカの海岸の家で朝1000語。 それからシュノーケリングとカクテルとテラスでランチ。午 後はダイビングでその後に1000語。それからはマティーニと ゴージャスな女たち。ロンドンの自宅では全部を叶える訳に は行かなかったが、執筆のペースだけは同じように守った」 とのことだ。 すでに“Bond 23”は2010年公開の予想も流されており、 そこに向けての動きも注目だ。 * * 続いてはキネ旬紹介の情報から報告しよう。 まずは、シリーズ第3弾の“Rush Hour 3”が8月10日に 全米公開されるブレット・ラトナー監督に、早くも次回作の 候補が2本報告されている。 その1本目は、“Playboy”と題された雑誌Playboyの創刊 者ヒュー・ヘフナーを描くもので、製作者のブライアン・グ レイザーが数年前に映画化権を獲得して以来、『8Mile』の 脚本家スコット・シルヴァによるミュージカル仕立ての計画 や、オリヴァ・ストーン監督による複数の草案などいろいろ な計画が立上げられたものの、いずれも頓挫していた。 その計画にラトナーが挑むものだが、ラトナーは以前から Playboy誌の歴史やヘフナーの人生にも興味を持っており、 実はグレイザーが最初に計画を発表した当時にも、彼は所有 していたPlayboy仕様のピンボールマシンを製作者に贈って アピールもしていた。そのマシンは現在イマジン社の製作者 のオフィスの入り口に置かれているそうだ。 そして今回は、実は別作品をグレイザーと進めていたラト ナーに、ストーン監督の離脱が表明された直後連絡が入った もので、すでにラトナーはグレイザーに同行してプレイボー イマンションにヘフナー本人を表敬訪問するなど、準備は進 行しているようだ。性革命のシンボルとも言われるヘフナー の人生をラトナーがどのように描くか、興味の引かれるとこ ろだ。 一方、ラトナーがグレイザーと進めていた別作品というの は、題名未定のニューヨークの高級マンション・トランプタ ワーを舞台にした盗賊もので、この作品には、エディ・マー フィ、クリス・ロック、クリス・タッカー、デンゼル・ワシ ントン、ジェイミー・フォックス、それにシドニー・ポアテ ィエの共演が予定され、『オーシャンズ11』のような乗りの 作品が考えられているとのことだ。 ただし、“Playboy”のオファーが届いたときのラトナー の状況は、ロバート・ゲワーツが手掛ける脚本のリライトの 完成待ちだったそうで、一方、“Playboy”の脚本もこれか らジョン・ホフマンが執筆するというもの。いずれも直ちに 動き出せるものではないが、恐らくはこの2本で、脚本の先 に上がった方が次回作となるようだ。 いずれにしても興味の引かれる2作品で、どちらが先でも 良いからぜひとも2本とも実現して欲しいものだ。 * * お次は、ロバート・ゼメキス監督で進められるパフォーマ ンス・キャプチャーの新作に、ジム・キャリーの主演が発表 された。 作品の題名は“A Christmas Carol”。チャールズ・ディ ケンズ原作のクリスマスストーリーの名作を、『ポーラー・ エクスプレス』と同じ手法でアニメーション化、さらに3D で公開しようというものだ。そしてトム・ハンクスと同様に キャリーもマルチキャラクターを演じることになっており、 それには何と主人公のスクルージと、彼に取り憑く過去、現 在、未来の3人の幽霊も1人で演じるとされている。 キャリーのマルチキャラクターは、『ふたりの男とひとり の女』や『マン・オン・ザ・ムーン』などで経験済みだが、 主な登場人物を全部演じるというのは大胆な計画だ。また、 パフォーマンス・キャプチャーの場合はメイクは事実上なし になるから、役作りもメイクで入っていけないと結構大変に なりそうだ。 なお、共演にはボブ・ホスキンズの名前も噂されており、 ゼメキス監督のディズニー作品『ロジャー・ラビット』では アニメーションと共演したホスキンズが、今回は自らアニメ ーションとなって活躍することになるかもしれない。 製作は、ゼメキス主宰のイメージ・ムーヴァースで行い、 CGIの製作は『モンスター・ハウス』を手掛けたスタッフ が担当する。ただし今回は、かなり実写に近い映像が要求さ れそうだ。配給は、ゼメキスが先にソニーからの移籍を発表 したディズニーが担当、同社は『チキン・リトル』と同様の ディズニー・デジタル3D(=ドルビーリアルD)システム による公開を行う。 なお、ゼメキス監督では今秋公開される“Beowulf”も、 パフォーマンス・キャプチャーによるアニメーション3Dと なっているが、これにはリアルDと『ポーラー…』を手掛け たImax-3D両システムでの同時上映が実施されるようだ。 将来的にはいろいろ作品も噂されているパフォーマンス・ キャプチャーによるアニメーション3Dということで、順調 に軌道に乗ってくれることを期待したいものだ。 * * 『バベル』や『アモーレス・ペロス』などアレハンドロ・ ゴンザレス・イニャリトウ監督作品を手掛ける脚本家のギレ ルモ・アリアガが監督デビューすることになり、その作品の “The Burnung Plain”に、シャーリズ・セロンの出演と、 製作総指揮も担当することが発表された。 物語は、異なる場所と異なる時間を背景に、愛による癒し や、許し、救済などを求める人々の姿を描くというもので、 その中でセロンが演じるのは、荒れた子供時代を過ごした後 に両親との間で共通の場所を見つけ出そうとするキャラクタ ーとされている。撮影開始は11月の予定で、製作費は2000万 ドル以下、配給会社や公開時期などは未定とのことだ。 因にアリアガは、テレビやドキュメンタリーなどでの監督 の実績はあり、元々は10代の頃に舞台劇の監督を務めたのが キャリアの出発点だったそうだ。そのアリアガが、「脚本の 仕事を11年間やって来て、そろそろ自分のために一つぐらい 書きたくなった」という作品。 スタイルはイニャリトウ作品とも共通するものになりそう だが、製作を担当するウォルター・パークスは、「物語への アプローチはギレルモ独自のもので、彼は新しい物語の描き 方を創造しようとしている。この脚本はその新たなレヴェル を示すものだ」と作品への期待を寄せている。 なおパークスは、ティム・バートン監督、ジョニー・デッ プ主演の“Sweeney Todd”の製作が、ヴェニス映画祭での上 映に向けて追い込みに入っているところのようだ。 * * “Indiana Jones IV”の撮影開始は、日本のテレビなどで も報道されていたようだが、そのロケーション撮影はすでに 完了して、撮影隊はスタジオに移動したようだ。そこで、製 作者のフランク・マーシャルから公式の声明が発表された。 その声明によると、この第4作ではCGIエフェクトを用 いないことが表明されている。これはスピルバーグ監督が、 もはや古典とも言える前3作のイメージを壊したくないと考 えているためで、「スティーヴンは、撮影のプロセスに非常 に気を使っており、CGでそれを飾ることは考えていない。 B級映画の感覚を保っているものだ」とのことだ。 元々『インディ・ジョーンズ』は、特撮中心の『スター・ ウォーズ』に対向して、スタント中心に企画されたシリーズ だったのから、最近のCGIで飾ったスタントにしたくない ことは判るところだ。でも、それでハリソン・フォードは大 丈夫なのかな?という辺りは心配になる。もちろん安全性な どの面でのCGIの使用は拒否しないと思うが、見ていて有 り得ないと思うようなシーンは無いことになりそうだ。 一方、1989年の『最後の聖戦』以来、19年ぶりとなる新作 には各業界のタイアップも目白押しで、まずファストフード は日本にも再上陸の始まったバーガー・キングが契約。また お菓子はチョコレートのM&Msの契約が発表されている。 さらにホールマーク社のグリーティングカードや、玩具には Hasbroのアクションフィギアと、レゴも登場するようだ。 一方、出版物では、ランダムハウス、Scholastic、DK出 版などがノヴェライズや関連図書の刊行を手掛ける。さらに ルーカスアーツからヴィデオゲームの発売もある。 来年5月22日の全米公開に向けて、アメリカはかなり過熱 することになりそうだ。 * * 先週全米公開の始まったミュージカル版“Hairspray”に 主演のザック・エフロンに対して、今度は1984年のパラマウ ント作品“Footloose”のリメイクへの主演の計画が進めら れている。 オリジナルは、『愛と喝采の日々』などのハーバート・ロ ス監督が、主演のケヴィン・ベーコンを一躍ブレイクさせた ことでも有名なダンス映画だが、この作品もその後にブロー ウェイで本格ミュージカルとして上演され、今回はそのミュ ージカル版が映画化されるものだ。 物語は、都会から引っ越してきた反抗的な少年が、ダンス の禁じられた町で騒動を引き起こすというもの。エフロンは オリジナルでベーコンが演じた反抗的な少年レンを演じるこ とになっている。 またこの監督と振り付けには、エフロン主演によるディズ ニーチャンネルのテレビ映画“High School Musical”と、 その続編も手掛け、さらに第3作も計画中のケニー・オルテ ガが起用されるもので、エフロンとしては大船に乗った気持 ちでいられそうだ。オリジナルの公開では、軽快な主題歌も 大ヒットしたものだが、今度はどうだろうか。 ストリートダンスの映画は、最近ブームになっている感じ もあるところだが、その元祖的な作品ということでも面白そ うだ。2005年5月に紹介した『ダンシング・ハバナ』では、 オリジナル版のパトリック・スウェイジの登場があったが、 ベーコンは出てくれるかな? * * 後はSF/ファンタシー系の情報を中心に紹介しよう。 まずはパロディで、“The $40,000 Man”と題された計画 がニューラインから発表されている。 物語は、伝説的な宇宙飛行士で、真にアメリカの英雄と呼 ばれた主人公が、ある日交通事故で瀕死の重傷を負い、政府 の手で身体を再構築される。ところがその費用は4万ドル。 とてもじゃないけどバイオニックとは言えない状況で、そこ からコメディが始まるというものだ。脚本はジョン・フラン シス・デイリーとジョナサン・ゴールドスタインという2人 が手掛けている。 元祖の“The Six Million Dollar Man”の映画化について は2003年の第50回などでも紹介したが、最近はあまり情報を 聞かなくなっている。スピンオフの“Bionic Woman”に関し ては、テレビシリーズでのリメイクが進みそうで、それに絡 めて本家の映画化も実現してもらいたいところだが、今回の パロディ作品の計画がそれにどう影響してくれることか。こ れで本家が実現したら、本当に愉快なことだが。 * * ドリームワークスがイギリスの児童書シリーズ“Children of the Lamp”の映画化権を獲得し、ニーナ・ヤコブスンの 製作、リー・ホールの脚色で進めることを発表した。 このシリーズは、フィリップ・B・カーという作家の原作 で、すでに出版されている最初の3巻は合計で100万部以上 を売り上げたとされている。物語は、ランプの精霊ジニーの 一族が繰り広げる冒険を描いており、人間と共にその望みを 叶えるためにいろいろな冒険が行われる。その第4巻となる “The Day of the Djinn Warrior”は、今年9月に刊行予定 だそうだ。 そして今回の映画化の脚色を手掛けるホールは、2000年の 『リトル・ダンサー』(Billy Elliot)でオスカー候補にな り、またテレビ版の“The Wind in the Willows”なども手 掛けているということでその実力は保証付き。一方、ヤコブ スンは、元ディズニーで『ナルニア国物語』や『パイレーツ ・オブ・カリビアン』『プリティ・プリンセス』などの映画 シリーズの製作統括を務めていた人物ということで、こちら も実力は充分と言える。 そのヤコブスンは、昨年末にディズニーを退社、ドリーム ワークスに移籍しての最初の仕事となるもので、ディズニー のヒット作を手掛けてきた手腕がここで試されることになり そうだ。 * * ユニヴァーサルで進められている“Dracula Year Zero” の計画に、『アイ,ロボット』などのアレックス・プロイア ス監督の参加が発表された。 この作品は、マット・サザマとバーク・シャープレスの脚 本家コンビが1年前から進めてきたもので、ドラキュラ伝説 のオリジナルとされるルーマニア王ヴラドの姿が描かれる。 そして、その脚本を手にしたプロイアスは、「伝説の新たな 展開に熱狂した」とのことだ。また、この物語でヴラドは、 「自らが統治する王国とその民を守るために悪魔に魂を売り 渡す」とされているとのことで、プロイアスは「そのキャラ クターには恐怖より同情を感じた」とも語っている。 ドラキュラの元祖ヴラドがトルコの侵略を打ち破って国を 守ったルーマニアの英雄であることは、最近ではかなり知ら れるようになってきたが、それがハリウッドで映画化される というのは画期的なことだ。ましてやユニヴァーサルで製作 されるということは、ドラキュラ=ヴラドの繋がりが定説化 されることにもなる。 ドラキュラ伝説の関係では、第101回で紹介したソニーが が進めている“The Historian”の計画が、やはりヴラドの 伝説に基づいており、また第99回で紹介したヴィデオゲーム が原作の“Castlevania”の映画化の計画もまだ進行してい るところで、その中での今回の計画は一石を投じることにも なりそうだ。 なお、サザマとシャープレスの脚本家コンビは、同じくユ ニヴァーサルで進められている“Cobalt 60”というコミッ クスの映画化にも関わっている。 この作品は、1968年にヴォーン・ボーデという作家が発表 した単発のコミックスに基づくもので、ヴォーンは1975年に 亡くなったが、その後を息子のマークが引き継ぎ1980年代に グラフィックノヴェルとして再刊されたようだ。物語は、コ バルト60と名告る仮面のヒーローが、両親を殺害したストロ ンチューム90への復讐を遂げるまでを描くということで、キ ャラクターの名前は何かなあという感じもするが、映画化は 『300』のザック・スナイダー監督で進められている。 * * ケヴィン・スペイシーが『スーパーマン・リターンズ』の 続編について語っている。 それによると、ブライアン・シンガー監督との間でレック ス・ルーサー役を再演することについて話し合いがもたれた のだそうで、監督の計画では、撮影は監督が“Valkyrie”と “The Mayor of Castro Street”を完了した後の来年に開始 する。そして公開は2009年を目指すとのことだ。 MGM=UAで進められている“Valkyrie”については、 ドイツでの撮影も認められることになったようで、後は全て の計画が順調に進むことを祈るばかりだ。でも、スペイシー が再登場するということは、ロイス・レーンの配役も変更な しになりそうだ。 なお、スペイシーの作品では、コメディの“Fred Claus” が11月9日にワーナーから公開され、MITの教授を演じる “21”がコロムビアから来年3月の公開予定となっている。 * * 2004年版『フライト・オブ・フェニックス』や、2006年版 『オーメン』のリメイクなどを手掛けたジョン・モーア監督 が、アイルランド人の作家ジョン・コノリーが昨年発表した ダーク・ファンタシー“The Book of Lost Thing”の映画化 権を獲得したことを公表した。 物語は、12歳のイギリスの少年が、実母の死と父親の再婚 という境遇の中で、異世界への扉を開き、野獣と怪獣の棲む 世界に入り込む。そしてその世界で、少年は元の世界への帰 り道を探さなければならなくなる…というもの。少年にとっ てはかなり試練の多い旅になりそうだが、本の題名には特別 な意味があるのだろうか。 監督はそれなりに実績はある人だが、製作者ではない監督 が映画化権を獲得するというのは珍しい話で、それだけ気に 入ってるなら、ちょっと楽しみな計画になりそうだ。
| 2007年07月10日(火) |
ミリキタニの猫、プロヴァンスの贈りもの、ブラッド、白い馬の季節、ミルコのひかり、阿波DANCE |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ミリキタニの猫』“The Cats of Mirikitani” ジミー・ツトム・ミリキタニ(漢字は三力谷と書くそうだ) は、カリフォルニア州サクラメント生まれの日系2世。3歳 の時に帰国して広島で成長するが、戦争の足音が高くなった 18歳の時に帰米。 ところが、日米開戦で12万人の日系人と共に強制収容所に送 られ、市民権の放棄まで強要される。以来、市民権のない彼 は社会の保護も得られないまま東海岸に流れ、一時は富豪の 家のコックなどもしていたようだが、ついには路上生活者に まで身を落としてしまう。 しかし、子供の頃から画才のあったという彼(日本滞在中に 日本画の勉強もしていたようだ)は、路上で絵を描き続け、 現在その絵は高値で取り引きされているという。一見、手慰 みのようにも見える絵だが、実はしっかりした技術を持って いるものだ。 彼自身は帰米によって原爆を免れたが、親族・友人はほとん どそれで亡くなったようだ。ある意味、彼は第2次大戦の最 大の被害者かも知れない。彼の口癖はno warと、合衆国を指 して使うstupid country。彼は合衆国が自分たちにした仕打 ちを忘れてはいない。 彼は原爆の絵を描く。これは写真で見た原爆ドームから想像 して描いたものだろう。また収容所の絵も描く。これには絵 を描く彼自身も描かれている。「兄チャン、日本の猫の絵を 描いてよ」と話しかけてきた幼い男の子は、終戦を待たずに 病死したそうだ。 そんな彼の姿を追いつつ、この作品では2001年9月11日を契 機に合衆国が集団ヒステリー状態になって行く姿も捉えてい る。それは日系人を襲った悲劇が、アラブ人に繰り返されて いるようにも見える。ここでは、no warとstupid countryが 連発される。 しかし、彼の人生はここから急転する。グラウンドゼロから 舞い上がった埃で路上生活が危険になり、監督のリンダ・ハ ッテンドーフが彼を自宅に引き取ったのだ。そして彼の人生 を調べ直した監督は、意外な真実を突き止める。 正にドラマティックな人生という感じだが、本人が実に淡々 として、しかも芸術家らしい頑迷さも兼ね備えているのが見 ていて面白い。その一方で、帰宅の遅くなった女性監督に対 して、実の娘を叱るように唇を震わせて怒るシーンなど人間 味も描かれる。 1人の人間とそれを取り巻く社会、それがバランスよく描か れている。
『プロヴァンスの贈りもの』“A Good Year” 『南仏プロヴァンスの12カ月』が全世界で500万部以上を売 上げたという作家ピーター・メイルの小説を、リドリー・ス コット監督がラッセル・クロウとフレディ・ハイモアの主演 で映画化したドラマ。 実は、メイルとスコットは同じロンドン広告業界で若いとき を過ごした30年来の友人だそうだ。そしてこの物語は、スコ ットが題材を見つけ出し、メイルがそれを小説にしたという もので、2人の長年の友情に育まれた作品と言えそうだ。 リドリー・スコットの名前では、『エイリアン』『ブレード ・ランナー』から『グラディエーター』『ブラック・ホーク ・ダウン』まで、どちらかと言うと男性向きのアクション映 画が思い浮かぶ。本作はアクションではないが、もしかする と男性向きの映画かも知れない。 人生の前半で成功を納めた男性が、後半を過ごす世界を見つ け出す、そんな男の夢物語のような話だ。宣伝はロマンティ ック・ラヴストーリーと銘打たれるだろうが、僕にはロマン ティックというよりファンタスティックという感じがした。 主人公は、幼い頃に両親を亡くし、イギリス人だがプロヴァ ンスにブドウ園を持つ叔父の家で成長する。そこでは人生や いろいろなことを教えられ、彼にとっては最も幸せな時を過 ごしたはずだったが… 現在の彼は辣腕のトレーダー、生き馬の目を抜くロンドン市 場で、今日も数分間で7700万ドルを稼いで見せる。しかし彼 の強引なやり口には不正取引の捜査の手も伸びる。そんなと き叔父の訃報が届き、彼はその遺産の処分のために日帰りで プロヴァンスを訪れる。 ところがその手続きに手間取り、会社の事情聴取を欠席した 彼には1週間の強制休暇の処分が下される。それは先輩の休 暇中に今の地位を奪取した彼にとっては、人生最大のピンチ だったが、思い掛けずプロヴァンスで1週間を過ごす彼の身 に変化が訪れる。 これに、男嫌いの美女や叔父の娘と称するアメリカ娘、産地 の判らない謎の高級ワインなどが絡み、物語が進んで行く。 正直に言ってしまえば、御都合主義を絵に描いたようなお話 だし、決して上手くできた物語ではない。でも、上に書いた ように正に男の夢物語で、微笑ましく観終えることができる ものだった。 その展開をとやかく言うより、のんびりとその雰囲気に浸っ ていたい、そんな感じのする作品だ。その意味での構成は、 実に巧みに作られているし、その辺の映画的な処理の上手さ は抜群の作品と言える。 共演は、アルバート・フィニー、トム・ホランダー。 一方、現地フランス人の配役として、『TAXi』のマリオ ン・コティヤール、『マダムと奇人と殺人と』のディディエ ・ブルドン、それにイザベル・カンディエらが素晴らしい雰 囲気を作り出している。
『ブラッド』“Rise: Blood Hunter” 『チューリーズ・エンジェル』のルーシー・リュー主演によ るヴァンパイア映画。 主人公はタブロイド紙の女性記者、若者のカルト志向をまと めた記事でカヴァーストーリーを射止めるが、私的に取った 3日間の休暇中に記事は意外な展開を見せる。 取材した若い女性が惨殺され、さらに一緒に取材した男性の 同僚が行方不明となり、彼の残した資料を追った彼女は、謎 の集団に拉致される。そして彼女も惨殺死体となって発見さ れ、死体置場に収容されるが… ヴァンパイアとなって甦ったヒロインが、血を吸いたい衝動 と闘いながら、自分をそんな境遇に陥れた犯人を求めて壮絶 な闘いを繰り広げる。家族と共に生きていたい、でも復讐を 遂げれば死が彼女に定められた運命。 ヴァンパイアものは最近よく見掛ける題材だが、コメディで あったり、ゲーム感覚であったり、本質的なヴァンパイアの 哀しみを描く映画は久しぶりのような感じがする。そんな哀 しきヒロインを、リューが頑張って演じている作品だ。 ただし個人的には、牙で首筋に噛み付くタイプの吸血鬼が好 みなもので、どうもこのナイフで頸動脈を切って噴出する血 を啜るというスタイルは、別段大量の血糊を嫌う訳ではない が、何となく違和感を感じてしまう。最近はこちらの方が多 いことは事実だが。 アメリカの配給は、5月に『ゴースト・ハウス』を紹介した サム・ライミ主宰のゴーストハウスピクチャーズ。ジャンル 映画のブランドとしてこれからも期待される。 脚本監督は、『スネーク・フライト』などの脚本家のセバス チャン・グティエレス。監督も初めてではないようでそつな くこなしている。でも脚本は多少荒さが目立つもので、特に 遺体安置所からこんなに次々死体が消えては、別の問題が生 じてしまうと思うのだが… 共演は、『ファンタスティック・フォー』のマイクル・チク リス、『ナイト・ミュージアム』のカーラ・グギーノ、『マ スター・アンド・コマンダー』のジェームズ・ダーシー。 また昨年亡くなった日本人俳優のマコが出演していて、劇場 映画は本作が遺作のようだが、その役名がポーというのは、 『ポーの一族』なのかな…? 公開は8月11日からで、前回紹介のスウェーデン映画『フロ ストバイト』と併せて、勝手にヴァンパイア2部作として公 開されるようだ。
『白い馬の季節』“季風中的馬” 内蒙古自治区を舞台に、現代に生きるモンゴル人の遊牧民の 姿を描いた作品。 映画の中で、「昔は馬をどれだけ走らせても緑の草原が続い ていた」という台詞がある。しかしその緑の草原が砂漠化に 晒され、今は見る陰もない。 そんな状況下で漢民族の政府は、荒廃した草原を仕切って遊 牧を禁止し、砂漠化を食い止めようという政策に出る。だが 羊が食べたくらいで草原が砂漠化するものではない。それは モンゴル人遊牧民の首を絞めるだけの政策だった。 遊牧を禁止された人々は、羊などを手放した資金で街で暮ら すしかない。しかし今まで草原で生きてきた、特に男たちに とってそんなことは全く考えられない。それはロマンを追い 続ける男の姿でもあるが、本音は生活の変化に対する恐怖で もあるのだろう。 そんな境遇の中で、夫婦と息子と1頭の年老いた白馬を巡っ て物語が展開して行く。広大な荒野に建つゲル。そこに突然 登場する宣伝隊。荒野に張り巡らされた鉄条網。大型車輌が 行き来する街道。街のディスコ。様々な現実が描かれる。 一面では、漢民族が支配する中央政府の横暴を告発している 作品のようにも見える。それでも中国映画として公開されて いるのだから、この現実は政府も認めざるを得ないというと ころなのだろうか。 それにしても砂漠化の恐ろしさが、現実的に描かれた作品と も言える。実は『モンゴリアン・ピンポン』のような広大な 草原を楽しみに見に行ったのだが、見せられたのは『ココシ リ』のような荒涼とした風景だった。 ただし、物語は砂漠化を云々するだけものではなく、そんな 境遇の中でしっかりと未来を見据えて行こうというモンゴル 人へのメッセージも込められているものだそうだ。 監督は、父親役も演じるニンツァイ。遊牧民の出身で『天上 草原』などにも出演する俳優の初監督作品。また、妻役を演 じて映画のプロデューサーも務めるナーレンホアとは、実生 活でもパートナーという関係で作られた作品のようだ。
『ミルコのひかり』“Rosso come il cielo” 1975年に法律が改正がされるまで、イタリアでは視覚障害者 は盲学校に入ることが義務づけられていたそうだ。そんな時 代を背景にした作品で、現在イタリア映画界で屈指のサウン ドデザイナーとされるミルコ・メンカッチの実体験に基づく 物語。 主人公のミルコは、父親の猟銃で遊んでいて暴発、視力が減 退してしまう。そして法律に従ってキリスト教会が運営する 全寮制の盲学校に入れられるが、そこは伝統と規律だけが重 んじられ、盲人は電話交換士など決められた職業しか選べな いとする場所だった。 そんな中で偶然テープレコーダーを見つけたミルコは、周囲 の音を録音して授業の課題だった季節の変化という「作文」 として提出する。しかし、世間に出るための点字を教えるこ とが目的の授業では、その「作文」は認められない。 ところが担任の教師は、盲人で頑なな校長の方針に反発して おり、こっそりミルコにテープレコーダーを渡してしまう。 そしてミルコの録音による物語作りが始まるが…1970年代前 半の改革の時代を背景に、視力を失いながらも自由奔放な子 供たちの素晴らしい冒険が展開される。 主人公を演じるルカ・カプリオティは健常者の子役のようだ が、周囲の子供たちは実際に盲目の子供たちが多く演じてい るようだ。特に主人公の親友となる少年が素晴らしかった。 また、映像的な演出では、ミルコの視力の状況を窓の歪んだ ガラスを通した視界で表現したシーンがあり、これは健常者 にも非常に判りやすい表現で感心した。本人のアドヴァイス もあってのことかも知れないが、健常者の観客との橋渡しを する意味でもこういったシーンは重要に感じられた。 なお、映画は多分にメルヘンティックに描かれており、特に 盲学校の内部の様子は現実的ではないとされている。何故な ら現実はもっと悲惨であり、この作品はそれを告発するもの ではないからということで、その実情は想像にあまりある。 しかし映画のミルコたちは素晴らしい体験と夢を実現する。 そんな素敵に愛らしい作品だった。 因に、本作のサウンドデザインは、ミルコ・メンカッチが担 当しているものだ。
『阿波DANCE』 最初に一言で言うと、予想外に良い感じの作品だった。 観るまでは今どき阿波踊りなんてというか、阿波踊りそのも のが妙に全国各地で行われていて、それに当て込んだのも見 え見えという感じもしていたのだが、映画自体は青春ものと しても、またダンスムーヴィとしてもそれなりに上手く作ら れていた。 主人公は東京の女子高生。Hip-Hopのダンス大会で優勝し、 仲間はニューヨークのクラブに招待されるが、何故か彼女だ けは離婚した母親の都合で実家の阿波徳島に引っ越してきて しまう。そして地元の高校に通い始めるが、そこでダンスと 言えば阿波踊り。 そうとは知らずダンス部を訪れた彼女は、阿波踊りに情熱を 燃やす男子生徒たちを見て、「ここは自分のいる場所ではな い」と思い知らされる。そんな気持ちをぶつけるように、彼 女は1人でHip-Hopダンスを踊っていたが… これが最終的に阿波踊りの大会に参加するまでの心境の変化 というか、彼女の成長が描かれる訳だが、Hip-Hopダンスが 阿波踊りになるまでの過程は並大抵ではない。「相容れない ものを一緒に描くのが物語で、そのハードルは高いほど面白 い」と言っていた監督もいたが、これも正にそんな展開だ。 しかもその間には、ダンスバトルがあったり、大会に出場す るための事前の審査会があったりと、展開も山あり谷あり、 それを煩すぎもせず白けることもなくという感じで、脚本も 演出も丁寧に行われている感じだった。 その脚本と監督は、昨年12月に『エンマ』という作品を紹介 した大野敏哉と長江俊和。大野はさらに『シムソンズ』も手 掛けているものだ。『エンマ』も苦言は呈しているが評価は したつもりなので、そういう人たちが良い仕事をしてくれる と嬉しくなる。 それに作品の見所は、何と言ってもクライマックスの阿波踊 りとHip-Hopダンスの融合。かなりトリッキーな感じだが、 これをKABAチャンの振付けが見事に実現している。最近 のブラウン管(死語だ)を賑わすこの手のタレントは、正直 あまり好きではないが、さすが本業は伊達ではないようで、 このダンスシーンは見事なものだった。 主演は榮倉奈々と勝地涼。共演は北条隆博、橋本淳、尾上寛 之。他に、岡田義徳、星野亜希、松福亭松之助、高樹沙耶、 高橋克実。 もちろん作り物のお話だが、物語の展開にはそれほど破綻は 見られなかったし、特に主人公たち5人のダンスシーンは、 花丸を付けてやりたくなるぐらいの頑張が感じられて良かっ た。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『スクール・オブ・ロック』で大ブレイクしたジャック・ ブラックが、再び教師役を演じる計画が発表されている。 作品はワーナー製作で、題名は“Man-Witch”。お話は、 ブラック演じる先生が、ある日突然、自分に備わる魔法能力 を発見。魔女集会に参加して魔女学校への入学を説得される のだが、そこでは彼以外のクラスメートは全員少女だった… というもの。ジョッシュ・ストールバーグとボブ・フローズ ハイムのオリジナルアイデアから、ブロードウェイでも活躍 するジェイ・ライスが現在脚色中で、2004年“Starsky and Hutch”などを手掛けたトッド・フィリップスが監督。製作 は、“I Am Legend”なども手掛けるニール・モリッツが担 当している。 パロディの要素がどのくらいあるか判らないが、『ハリー ・ポッター』シリーズも製作しているワーナーで魔法学校も のとは、ちょっと大胆な計画だ。 なお、ブラックの近作では、キャメロン・ディアス共演の “The Holiday”が昨年公開されているが、今年後半には、 ノア・バウムバック監督の“Margot at the Wedding”と、 ミシェル・ゴンドリー監督の“Be Kind Rewind”が相次いで 公開され、声の主演を務めるドリームワークスアニメーショ ン作品“Kung Fu Panda”が製作中。また、次回作にはコロ ムビア製作のハロルド・ライミス監督作品“Year One”への 出演が発表されたところで、今回紹介の作品はその後になる ようだ。 因に、コロムビアで進められている“Year One”は、ステ ィーヴ・カレルがブレイクしたことでも知られる人気テレビ シリーズ“The Office”に主演している俳優監督のジャド・ アパトゥが製作を担当しているもので、『ゴーストバスター ズ』シリーズなどの俳優監督のライミスが、“The Office” の脚本家たちと共同で自らのアイデアに基づく脚本を執筆し ている。またライミスは“The Office”のエピソード監督も 務めているそうだ。 従ってブラックとしては、“The Office”のチームに単身 飛び込んで行くことになるもので、そういう条件でのブラッ クの活躍も注目されるところだ。 * * パラマウント傘下のドリームワークスと、ユニヴァーサル の共同製作で、“Cowboys & Aliens”というグラフィックノ ヴェルの実写映画化の計画が発表された。 この原作は、『メン・イン・ブラック』などのマリブ・コ ミックスから発表されていたもので、最初の映画化の計画は 2002年以前にドリームワークスで立上げられた。しかしその 計画は実現せず、その後、2004年頃にはプラティナム・スタ ジオとエスケープ・アーチスツの共同製作によりソニー傘下 で進められていたこともあったものだ。実はその頃に、この ホームページでも紹介したつもりだったが、何故か落として しまっていたらしい。 物語は、19世紀初頭のアリゾナを舞台に、対峙していたカ ウボーイとアパッチ族の間にエイリアンの宇宙船が不時着。 エイリアンの司令官は地球を占領しようとするが、カウボー イとアパッチたちが一致協力してそれに立ち向かうというも の。元々はコミックスで発表されていたが、昨年同じコンセ プトでグラフィックノヴェルが刊行され、今回の計画はそれ に基づいて再度映画化権が設定されたようだ。 その権利をドリームワークス+ユニヴァーサル両社が獲得 したものだが、両社の共同製作では、『グラディエーター』 『ビューティフル・マインド』などの成功例があり、実現が 期待される。なお脚色には、『トゥモロー・ワールド』でオ スカー候補になったマーク・ファーガスとホーク・オスビー の契約も発表された。 内容的には、比較的お手軽に製作できそうな気もするが、 各社が逡巡してきた事情がよく判らない。基本的に西部劇で あることが危惧されているのかも知れないが、その突破口と なるためにも、早く監督と出演者の発表を聞きたいものだ。 * * お次は、直接の映画製作の話ではないが、映画の中の喫煙 シーンについて、アメリカで規制の動きが強まっている。 これは映画における喫煙シーンが青少年の喫煙を助長して いるとの意見に基づくもので、それに呼応してアメリカ映画 のレーティングを行うMPAAに対し、新たなレーティング の制定が求められている。それによると、喫煙シーンのある 映画に対しては一律に子供の鑑賞を制限するRレートとする 案の他、別個に喫煙シーンの有無の表示を行うことも提案さ れているようだ。また、喫煙シーンのあるDVDに対しては 販売のパッケージに反喫煙の表示を義務化することや、喫煙 シーンの削除も求めるとしている。 問題シーンの削除では、『ET』の再上映の際に、スピル バーグ監督が、劇中のライフルを構えるシーンの銃器をトラ ンシーバーに挿げ替えて話題になったことがあるが、タバコ はどんなものに化けるのだろうか…それからパッケージには 「警告:喫煙は健康被害を発生する」と表示されることにな るのかな。 以前からハリウッド映画の中の喫煙率は、一般社会の喫煙 率より高いとの統計も発表され、その裏にはタバコ会社の活 発な営業活動なども噂されていたものだが、特にここ数年は Variety紙などにも意見広告をよく見るようになってきた。 今回の動きはそれらにも後押しされたもので、アメリカでの 反喫煙の包囲網はかなり厳しく狭まってきたようだ。 * * ワーナー製作による『300』の映画化を成功させたグラ フィックノヴェル原作者フランク・ミラーに対して、今度は ハードボイルドミステリーの脚色の契約が発表された。 その作品は、クライヴ・オーエンがユニヴァーサルで主演 を予定しているレイモンド・チャンドラー原作“Trouble Is My Business”の映画化で、ミラー脚本監督による『シン・ シティ』に出演したオーエンが、「自分が知る中で、最もこ の原作の世界感に精通した人物」として脚本への参加を熱望 したということだ。 物語は1940年代のロサンゼルスを舞台に、酔っ払いの私立 探偵フィリップ・マーロウの活躍を描くもので、殴り合いや 悪女とのロマンスなど、ミラーの描く男臭さが期待される。 また作品にはシリーズ化も期待されているようだ。 映画化はオーエンが製作総指揮を務めているもので、実質 製作は、ユニヴァーサル傘下でオーエン主演の『トゥモロー ・ワールド』を手掛けたストライク・エンターテインメント が担当。計画は今年1月に立上げられ、今回は脚本家の選定 が発表されたものだ。 なおオーエンは、今後にはケイト・ブランシェット共演の “The Golden Age”と、ニューライン製作のアクション映画 “Shoot-'Em-Up”の公開が予定されており、またコロムビア でトム・タイクアー監督による“The International”とい う作品が準備中とされている。 一方、ミラーは、前回報告したように“Sin City”の続編 が滞っているものだが、第135回で紹介した“Ronin”は原作 提供だけとしているものの、他にウィル・アイスナー原作の グラフィックノヴェル“The Spirit”に関しては、ミラーの 脚色監督も発表されており、かなり多忙になってきている。 この状況で、今回の計画はいつ実現するのだろう。 因に、製作担当のストライクでは、“The Creature From the Black Lagoon”(大アマゾンの半魚人)のリメイクが準 備中となっているものだ。 * * 2004年2月の第56回で一度紹介しているリチャード・マシ スン原作の短編小説“Button Button”の映画化“The Box” が実現に向い始め、主人公の若妻役にキャメロン・ディアス が発表された。 この物語は、1985年に放送された『新ミステリーゾーン』 のエピソードとしても映像化されたようだが、若い夫婦の家 に不思議な箱が届けられ、その箱のボタンを押すと、世界の どこかで同じボタンを押したもう1人との間で、一方が死亡 し、他方にその財産が転がり込む。つまり二者択一の究極の ゲームが行われるというお話だ。 そしてこの原作を、前回の報告では、2001年にドリュー・ バリモアの製作総指揮でも話題を呼んだジェイク・ギレンホ ール主演の超常現象映画『ドニー・ダーコ』を発表したリチ ャード・ケリーが脚色、当時の計画では“Cavin Fever”の エリー・ロス監督で映画化するとされていた。 しかしその計画は頓挫したようで、その後はケリーが自ら の監督で計画を進めてきた。その映画化にディアスが出演す るもので、これにより製作費は3000万ドルに跳ね上がるとの ことだ。しかし最近の傾向として、スター登場のホラー作品 は着実に興行成績が上がっているのだそうで、この作品にも その期待が持たれている。 なお、物語的には『ザ・リング』と同じ傾向と評されてい るようだが、ディアスの参加で『ローズマリーの赤ちゃん』 や『アザーズ』のような方向も目指せるとされており、論理 的な展開よりは超常的な色彩の濃い物語になりそうだ。 製作は、『バベル』を手掛けたメディア・ライツ・キャピ タル。配給は撮影が開始されてから決定される。因に同社が 先に製作したサッシャ・バロン・コーエン主演“Bruno”の 配給権は、『ボラット』人気の高まりにより、4250万ドルで ユニヴァーサルと契約されたそうだ。 “The Box”の撮影は今秋開始される。 * * 久しぶりに“Conan the Barbarian”の話題が登場した。 ロバート・E・ハワード原作によるアダルトファンタシー の映画化権に関しては、最近7年間はワーナーが権利を保有 していた。しかしその間、1982年版を脚色監督したジョン・ ミリウスや、アンディ&ラリー・ウォシャウスキー兄弟、ロ ベルト・ロドリゲスらによる幾多の挑戦があったもののいず れも実現に至らず。昨年7月の第114回で紹介したボアズ・ ヤーキンの計画も頓挫したようで、ついにワーナーは全面的 な権利放棄を発表することになった。 これに対してハリウッド各社は一斉に動き出し、当初の条 件が、6桁($)の契約金で期間は18カ月(1回だけ延長が 認められる)というものだったことから、特にミレニアムや ハリウッド・ギャングといった会社が熱心だったようだ。 しかし、その条件は徐々に吊り上がり、最終的には契約金 100万ドルで期間は1年間、更新には毎年100万ドルを積むと いう段になって、各社は特に1年間の制限を気にして脱落。 結局その権利は、ワーナーの兄弟会社でもあるニューライン が獲得することになったようだ。 権利者としては、映画化権を設定したもののいつまでも映 画化されないでは、最終的な権利の活用にはならない訳で、 その意味では今回の契約は画期的なものと言える。しかし、 それにしても映画の完成まで1年間というのは無理な話で、 ニューラインとしては、最低200万ドルは支払う覚悟での契 約となりそうだ。 『300』の成功で、マッチョな男たちの映画は注目を浴 びているところでもあるし、いずれにしても映画化が実現す れば、先に支払った契約金も問題なくなるものではあるが、 かなり厳しい条件であることに変りはない。ただ、観客とし ても早く観られることは期待するもので、応札者がいるので あればこの契約も悪いとは言えない。後はニューラインが、 早く映画化を実現してくれることを期待するだけだ。 なお、第136回で報告したワーナー製作“The Masters of the Universe”の計画は、“Conan”の権利放棄を前提とし て打ち出されたものだったという説もあるようだ。ワーナー とニューラインの関係では、互いに食い合うようなタイミン グでの公開はないと思われるが、どちらも往年の映画化のリ メイクとなる訳で、とにかく早く完成を観たいものだ。 * * 『レミーのおいしいレストラン』が公開間近のピクサーの 今後の計画で、第131回で心配した2009年用に“Up”という 作品の計画が発表された。これで、2008年に公開が予定され ている“Wall*E”、2010年公開予定の“Toy Story 3”の間 を繋ぐ作品が決定したものだ。 お話は、70歳男性の主人公が、自然保護レンジャーとチー ムを組んで怪物や悪人と戦うというものだそうで、監督には 『モンスターズ・インク』を手掛けたピート・ドクターの起 用も発表された。Variety紙の記事では、「ピクサーの主人 公がちょっと年を取る」などと書かれていたが、『モンスタ ーズ…』の主人公は、年齢不肖で何100歳でもおかしくはな かった訳だし、少し年を取った登場人物のアニメーションが あっても良い感じのものだ。 『レミー…』の上映には、短編の他に“Wall*E”の予告編 も併映されていて、毎年1本のペースは確実に守られること になるようだが、ドリームワークスと同様、スケジュールを 守ることにはいろいろ苦労がありそうだ。 なお、ピクサー以外のディズニー・アニメーションでは、 来年は“American Dog”、2009年には“Frog Princess”と いう作品が予定されている。この内の“Frog…”は、ディズ ニーでは2004年以来となる手書きアニメーションで製作され ているようだ。 * * ピクサーに続いてはアードマンの情報で、第133回で報告 したようにドリームワークスとの契約を解消したアードマン は、新たにソニーとの3年間の優先契約を結んだものだが、 その製作リストが報告された。 実はアードマンでは、昨年の段階で、元BBCでコメディ 番組部門の製作総指揮を担当していたサラ・スミスという人 物を製作担当者として招き入れており、彼女の人脈を通じて イギリス放送界を中心に様々な人材がアードマンに結集しつ つあるようだ。 そしてその第1陣として“Life on Mars”などを手掛ける 脚本家のマシュー・グラハムとアシュレイ・パーロウが契約 し、スティーヴ・ボックス監督と共に“The Cat Burglars” という作品が準備されている。 この作品は、ボックスとニック・パークが先に公表してい た『ウォレスとグルミット』の新作長編となるもので、この 新作では、ミルクを盗もうとする猫グループとウォレスたち の闘いが描かれることになる。そしてこの作品に関しては、 『オーシャンズ11』のようなクールなスタイルで、「ご家庭 向きのタランティーノ」を目指すという発表もされている。 また、アードマンの共同創設者ピーター・ロードからは、 2000年の『チキン・ラン』以来の監督に復帰する計画も発表 された。こちらはギデオン・デフォー原作の“Pirates”と いうシリーズを映画化するもので、この脚色には、原作者の デフォーと共に、“Hyperdrive”というコメディシリーズや アニメシリーズの“Slacker Cats”を手掛けるアンディ・ラ イリーとケヴィン・セシルの脚本家コンビの参加も発表され ている。 さらに、『ボラット』の脚本家の1人のピーター・バイン ハムによる“Operation Rudolph”という計画も進められて いる。この作品は、北極の基地からクリスマスの1夜にして 世界中にプレゼントを届けるためのサンタクロース率いる超 ハイテク部隊の作戦行動を描くというもので、大アクション 作品になるということだ。 その他、ニック・パーク監督の『ウォレス…』以外の作品 の計画も発表されており、ドリームワークスとの契約解消を バネに、アードマンは新たな領域に踏み出そうとしているよ うだ。後は、ソニーがこれをどこまで支援できるか…という ことになりそうだが。 * * 『ソウ』シリーズを手掛けるツイステッド・ピクチャーズ が、往年のRKO映画の中から4本のジャンル映画のリメイ ク権を獲得したことを発表した。 RKO映画のリメイクでは、すでに『猿人ジョーヤング』 など大作の製作が実現しているが、今回発表されたのはもっ とコアな、正にジャンル映画と呼びたくなる作品だ。 発表されたのは、製作年度順に1943年の“I Walked With a Zombie”(ヴードゥー系ゾンビ物では最高作)、1945年の “The Body Snatcher”(ロバート・ワイズ監督、ベラ・ル ゴシ、ボリス・カーロフ共演)、1946年の“Bedlam”(カー ロフ主演)で、後1本は選考中ということだ。因に発表され た3本は、いずれもガイドブックでは星3つ以上を獲得する 秀作となっている。 『ソウ』シリーズのヒットは、毎回ほぼ保障されている感 じのツイステッドだが、それ以外の作品はなかなか思うよう に行かないのが実情のようで、今回の発表はその中での新し い試みとしては評価したい。ただしこの計画では、最初に企 画ありきということになる訳で、後は、このリメイクを実現 する人材をどのように確保するがポイントになる。続報を待 ちたいところだ。 * * 最後は続報をまとめておこう。 まずは、2005年12月の第101回で紹介したレッド・ワゴン (ソニー)製作によるエリザベス・コストヴァ原作の吸血鬼 物“The Historian”の脚色に、ブラッド・ケイレブ・ケイ ンという脚本家が発表された。このケインという人物、実は 以前は1997年の『スターシップ・トゥルーパーズ』などにも 出ていた子役ということで、現在は脚本家に転じて“These City Walls”という作品や、リチャード・プライヤーの伝記 映画“Live”の脚本なども手掛けているそうだ。 当初の計画では『ネバーランド』のデイヴィッド・マギー が担当していたものだが、製作者の言によると、「説得力の ある脚本家が必要になった」とのことで、伝記映画を手掛け るような脚本家なら任せられるということなのかな。前の脚 本家も伝記映画でオスカー候補になっていたものだが。 次は、『ナルニア国物語』の第3章“The Voyage of the Dawn Treader”の監督に、1999年『007/ワールド・イズ ・ノット・イナフ』を手掛けたマイクル・アプテッドの起用 が発表された。また、第2章の“Prince Caspian”まで監督 するアンドリュー・アダムスンは、第3章では製作に転じる ことになっている。なお第2章は2008年に公開予定で、第3 章は2008年1月に撮影開始、2009年5月1日の公開となって おり、スケジュール的に2作連続の監督は不可能になったも のと思われる。 一方、2008年11月7日公開が決定されている“Bond 22” の監督には、『ネバーランド』『主人公は僕だった』などの マーク・フォースターの起用が発表された。アクション映画 にこの監督名はちょっと意外な感じもするが、監督本人は、 「常に別の種類の物語を描きたいと思っている。ボンドはず っとファンだったし、このチャレンジには興奮している」と 意欲満々なようだ。ネール・パーヴィス、ロバート・ウェイ ドの脚本から、フォースターとポール・ハギスによるリライ トは直ちに始められる予定で、ダニエル・クレイグが2度目 のボンドを演じる撮影は、12月パインウッドで開始される。
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