井口健二のOn the Production
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2004年06月30日(水) スパイダーマン2、トゥー・ブラザーズ、フォッグ・オブ・ウォー、恋の門

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『スパイダーマン2』“Spider-man 2”         
待望のシリーズ第2弾。物語は前作の2年後、ピーター・パ
ーカーは大学生となり、メリー・ジェーン(MJ)は舞台の
新進女優として脚光を浴びている。そして2人の仲は…。 
スパイダーマンとしての活動が忙しいピーターには、MJと
の仲を発展させる暇はなく、逆にスパイダーマンの恋人と知
れることで、彼女に危害が及ぶのを恐れている。しかし、そ
んな想いの判らないMJは、ついに彼との関係をあきらめよ
うと決意する。                    
そしてピーターは、そんな状況に嫌気が注し、ついにスパイ
ダーマンをやめようと決意するのだが…。物語は、そんな2
人の恋の行方を追いながら、新たな敵ドク・オクの登場で、
一気に加速する新アクションを展開する。        
前作の上映時間は121分、本作は127分だから、ほんの少しだ
け長くなったことになるが、前作では何といっても発端の説
明に時間を費やした分、本作では一気にドラマが展開するの
だから、その見応えは倍増という感じだ。        
それも、以前に特別映像の報告で述べたようなアクションシ
ーンから連続してドラマシーンになったり、予告編に流れる
ようなドラマから一気にアクションに展開する仕掛けが見事
に決まっているから、いわゆるアクション映画のドラマ=ダ
レ場というような雰囲気がない。            
何しろ、常に何かが起りそうな雰囲気が持続していて、その
テンションの高さは相当のものだ。ギャグまでアクションの
一環になっているのだ。                
そして描かれるドラマは、スパイダーマン自身の葛藤。それ
は自分自身の存在の意味を問いかけるものだが、これはある
意味、現代人なら誰でもが感じている葛藤を、シチュエーシ
ョンで増幅しているのだから、ピーターの想いに共感する人
は多いはずだ。                    
トビー・マクガイア、キルスティン・ダンスト、それにジェ
ームズ・フランコという、言わば現代ハリウッドの若手実力
派と言って良い3人が、前作同様に揃ったドラマは本当に見
応えがあった。他に、ドク・オク役で、『フリーダ』のアル
フレッド・モリーナが共演している。          
なお、主演の3人は最初から3部作の出演契約を結んでいる
ということで、第3作は決定事項。そして、日本で行われた
記者会見では、マクガイアもダンストも、第3作は東京を舞
台にしたいと言っていたが…。はてさて、如何なることか。
                           
『トゥー・ブラザーズ』“Two Brothers”        
『愛人/ラマン』や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』
のジャン=ジャック・アノー監督の最新作。1988年の『小熊
物語』以来となる野性の動物の姿を追って描いた作品で、ア
ノーは監督の他に、原作、製作、脚本も手掛けている。  
1920年代のカンボジア。アンコールワット遺跡の中で2頭の
トラが誕生する。父母の愛に育まれる2頭だったが、そこに
仏像を盗掘に来たイギリス人冒険家が現れ、1頭は母親と共
に逃げるが、父親が殺され、残る1頭は捕獲されてサーカス
に売られてしまう。                  
一方、その場は逃げた切った母親ともう1頭だったが、その
地の開発を目論むフランス人行政官が催す接待狩猟会のため
の罠にかかり、母親は負傷して逃げるが、子は捕獲されて行
政官の息子のペットとされる。             
こうして、ばらばらの暮らしとなった2頭だったが、やがて
運命は、成長した2頭を互いの戦いの場へと導いて行く。 
元々アノーは、『小熊物語』の構想中からトラを主人公にし
た物語も考えており、その時はクマの方が親しみやすそうだ
考えて、1988年の作品が作られたそうだ。従って、何時かは
トラの物語も作りたいと想い続けていたということだ。  
その想いがようやく遂げられた訳だが、お話は『小熊物語』
と同様、実に童話めいたと言うか、一世代前のディズニーの
ような感覚だ。                    
とは言え、このような感覚の作品が作り難くなっている時代
に、果敢にこういう作品を作り上げるアノーの心意気は買う
べきだ。さらに本作は映画の出来も優れているのだから、こ
れは文句の付けようがない。しかもフランスでは大ヒットだ
そうだ。                       
自然に対する人間の横暴さや遺跡破壊の問題も巧みに描かれ
ているし、当然文科省の特選を付けたいところだが、あれを
得るにはかなりの大金が掛かるようなので、どうするか。そ
んなもの無くても、良い映画でいることに変わりないが…。
なお行政官の息子の役を、“Finding Neverland”(旧題J.B.
Barry's Neverland)や、“Five Children and It”(砂の
妖精)に出演し、6月に撮影の始まった“Charlie and the
Chocolate Factory”の主役に抜擢されたフレディ・ハイモ
アが演じている。                   
                           
『フォッグ・オブ・ウォー』“The Fog of War”     
ケネディ、ジョンソン時代に米国防長官を務めたロバート・
S・マクナマラの回想インタビューに基づくドキュメンタリ
ーで、今年のオスカーを受賞した作品。         
ケネディ時代のキューバ危機と、ジョンソン時代のヴェトナ
ム。この2つの戦争の裏側を語って、結果的に現在のブッシ
ュによるイラク戦争へ大きな警鐘を鳴らしている。    
生涯のほとんどを戦争に関ってきたとするマクナマラは、こ
のインタビューの中で11の教訓について語っているが、その
最初に挙げているのが、「敵の身になって考えよ」というこ
とだ。                        
その実例がキューバ危機で、当時のケネディ政権は、フルシ
チョフをよく知るソ連問題顧問の証言などから彼の立場を分
析し、核戦争の危機を脱することに成功する。しかしそれは
本当に紙一重の事態だったことが、後にカストロとの会談で
明らかになる。                    
一方、ヴェトナム戦争では、北ヴェトナム政府の考えを読み
違え、ずるずるを泥沼に填り込んでしまう。これは後のヴェ
トナム高官との会談で、彼らが自国を開放するためには全員
が死ぬことも厭わないと聞かされたマクナマラの驚きが全て
を物語る。                      
もちろんこの作品は、マクナマラの回想録であり、現在行わ
れている戦争については何も語ってはいない。しかしこの2
つの事例を当てはめたとき、現在行われている戦争の行く末
が何となく判ってくるような感じがする。        
なお、マクナマラはこの作品の中で、第2次大戦での日本本
土の各都市への絨毯爆撃が、実は彼の進言によるものだった
ことも明かしている。                 
そんな戦争の裏も表も知り尽くした男が、後半生は世界銀行
総裁として世界の貧困と戦った。もちろん毀誉褒貶の大きい
人物ではあるが、感情に左右されない戦略としての戦争を常
に考えていたことは確かなようだ。           
果たして現在行われている戦争、またそれに加担している属
国に戦略があるのか、そんな想いが沸き上がってきた。  
                           
『恋の門』                      
俳優や作家としても活躍している劇団「大人計画」主宰・松
尾スズキの長編初監督作品。              
上映後に監督とのティーチイン付きの試写会が行われた。 
羽生生純原作のコミックスの映画化。石のオブジェで漫画芸
術家を自称する男=門と、コミケに自作漫画を出店するコス
プレ・オタク系の女=恋乃、そして、元は売れっ子漫画家だ
ったが筆を折って漫画バーを営む男。その3人が思い切り恋
愛ドラマを展開する。                 
主人公の門を演じるのは松田龍平。この俳優は、大島渚監督
が抜擢したデビュウ作からいろいろ見てきたが、今回初めて
様になる演技を見た気がする。今までは、監督も指摘してい
たが、活舌も良くないし、いつも不貞腐れたような感じで良
い印象はなかった。                  
しかし本作では見事に化けた感じだ。監督は彼の立ち姿が原
作の主人公に似ていたから選んだということだったが、それ
以上に、今までの作品からは見違えるような、声にも張りが
あって、まるで主人公が乗り移ったような演技だった。  
一方、相手役の恋乃は酒井若菜。彼女も『無問題2』や『木
更津キャッツアイ』などではただのアイドルという感じだっ
たが、普通のOLからいきなりコスプレをしたり、はたまた
漫画を書いたりという変身ぶりが見事に様になっていた。 
そして元売れっ子漫画家は松尾監督が演じるが、本人も一時
は漫画家志望だったと言うだけあって、その漫画家ぶりは大
げさに戯画化していながらも、いかにもありそうな雰囲気で
見事だった。                     
ティーチインの中で監督は時間が足りなかったと言っていた
が、以前別の舞台人の初監督作品の舞台挨拶で、その監督は
「舞台は公演が始まっても手直しが利くが、映画は撮ってO
Kしたらそれで決まりというのが難しかった」と言っていた
のと同じ意味だろう。                 
舞台人にとっては、それはかなり苦しいもののようだが、本
作は、松尾自身が書いた脚本が良いこともあるのだろうが、
見事に完成された作品になっていたと思われる。特に、アニ
メやミュージカルの挿入シーンも、バランスが良く見事だっ
た。                         
そして、このアニメを庵野秀明が手掛けていたり、ミュージ
カルシーンでは忌野清志郎が歌って踊ったり、コミケがフィ
ーチャーされていたり、大竹しのぶがメーテルのコスプレを
したりと、映画を盛り上げる仕込も無駄無く決まっていた。
原作は後半かなりヘヴィになるそうで、それをライトに映画
化したことを不満とする声も聞かれたが、僕は原作と映画は
違っていいと思うし、ライトに見えても、根底のヘヴィさが
感じられるこの映画化は上出来どころか、今年のベスト10に
選んでも良いと思った。                
公開は秋以降になるようだが、久し振りに人に勧められる日
本映画だった。                    



2004年06月15日(火) 第65回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 最初は、いつか出てくると思っていたこの話題から。
 作家のレイ・ブラッドベリが、マイクル・ムーア監督のパ
ルムドール受賞作にご立腹なのだそうだ。
 受賞作というのは言うまでもなく“Fahrenheit 9/11”の
ことなのだが、このタイトルについて、それがブラッドベリ
の原作で映画化もされた名作“Fahrenheit 451”(華氏45
1)からインスパイアされたことが明らかなのに、ムーアか
らは一言の挨拶もない、ということだ。
 実はブラッドベリは1957年に、同作品が“Playhouse 90”
というテレビ番組で、原作者の許可なくドラマ化された際に
は、番組を製作したCBSを裁判所に訴え、勝訴していると
いうことだが、今回の件に関しては、それが法律に触れるよ
うなことでないことは了解しているそうだ。しかし、同作品
が発表から50年を過ぎて、今だに全米の学校で教科書として
使われている事実からして、ムーアが同作品のタイトルから
映画のタイトルを思いついたことは間違いなく、それなら一
言ぐらいあってもいいのではないか、ということのようだ。
 さらにブラッドベリは、「彼(ムーア)は間抜け野郎だ、
とても良い人間とは思えないね」とまで言ったそうだ。
 実際、今回この情報を伝えたVariety紙の記事でも、「華
氏451度が紙の燃える温度であることは、今や誰でも知っ
ている」という書き出しで始まるほど、アメリカでこの作品
の知名度は高い訳で、ブラッドベリの発言は、単なる言いが
かりと言えるようなものではない。
 そして結局ムーアの事務所からは、「我々はレイ・ブラッ
ドベリに最高の尊敬の念を持っている。彼は、我国の偉大な
小説作家の一人である。ブラッドベリ氏の著作は、我々の映
画の全体に対して多大な影響を与えている。」という文書が
発表されることになったそうだが、これでブラッドベリの怒
りが納まるかどうか。1920年生まれの作家は、まだまだ健在
のようだ。
 因に今回の記事では、“Fahrenheit 451”の映画化のリメ
イクの情報については全く触れられていなかった。
        *         *
 以下は、製作情報を紹介しよう。
 3月15日付の第59回でも紹介した、本年度アカデミー主演
女優賞受賞者シャーリズ・セロンの新作“Aeon Flux”に、
1996年度の同賞受賞者フランシス・マクダーモンドの共演が
発表された。
 この作品は、前回も紹介したように、パラマウント傘下の
MTVで放送されているアニメーションシリーズを実写映画
化するものだが、この製作を担当しているのが『ターミネー
ター』などのゲイル・アン・ハード、そして監督が『ガール
ファイト』のカリン・クサマということで、まさに女だらけ
のアクション映画になりそうだ。
 お話は、数100年(前回の記事では400年だったが、今回は
1000年になっていた)後の未来が舞台。疫病により人類が死
滅しかけている時代の未来都市を背景に、時の政府に反抗す
るアクロバティックなヒロインが活躍する物語で、このヒロ
インをセロンが演じ、マクダーモンドはヒロインが参加する
反抗組織のリーダー役。ただし、ヒロインは自分の行動に疑
問を持っているということだ。
 脚本は、2001年にキルスティン・ダンスト主演で映画化さ
れた“Crazy/Beautiful”のフィル・ヘイと、ジャッキー・
チェン主演『タキシード』のマット・マンフレディ。特に、
ヘイが手掛けた作品では、細部へのこだわりや物語の展開が
かなり評価されているようなので期待したい。
 撮影は8月にベルリンで開始の予定。オスカー女優2人の
共演も楽しみだが、アニメーションの原作からは『マトリッ
クス』以上のVFXアクションが期待できそうで、これを新
人監督がどう捌くかも注目される。ここにハードの後ろ楯は
大いに頼りになりそうだ。
 アメリカ公開は2005年に予定されている。
        *         *
 『オーシャンズ11』で共演し、さらに続編の“Ocean's
12”でも共演しているマット・デイモンとジョージ・クルー
ニーの共演作が、もう1本発表されている。
 作品の題名は、“Syriana”。中東を舞台に、石油の利権
を巡って国際的な陰謀が繰り広げられる『トラフィック』の
ような物語ということで、CIAによる外国政府への介入の
実体が描かれる。元CIAエージェントのロバート・ベアが
著した“See No Evil: The True Story of a Foot Soldier
in the CIA's War on Terrorism”というノンフィクション
本からインスパイアされた脚本ということだ。
 そしてその脚本と監督も手掛けるのは、『トラフィック』
の脚本でオスカーを受賞したスティーヴン・ゲイガン。彼は
昨年公開された『ケイティ』の監督も務めていたが、2003年
11月2日付の紹介文を読んでいただければ判るように、脚本
も演出も巧みで、かなり期待できる感じだ。
 なおデイモンは、今回の作品でアメリカ系石油資本の担当
役員を演じ、クルーニーは原作者でもあるベアを演じること
になっている。
 因に、本作は昨年末にクルーニーのベア役での出演作とし
て発表されていたものだが、今回はそれにデイモンの主演が
追加されたもの。『オーシャン』では脇役に廻らざるを得な
いデイモンへ、クルーニーからのプレゼントというところだ
ろうか。なおデイモンには、上記の続編の他に、これも続編
の“The Bourne Supremacy”と、“The Brothers Grimm”の
公開が今年中に予定されている。
 また、本作はクルーニーとスティーヴン・ソダーバーグが
主宰のセクション8で製作、ワーナーが配給する計画だが、
ワーナーではこの他にも、テロ組織アルカイダによって殺害
されたジャーナリスト、ダニー・パールの未亡人マリアン・
パールが発表した回想録“A Mighty Heart: The Brave Life
and Death of My Husband Danny Pearl”の映画化を、ブラ
ッド・ピットらが主宰するプランB製作で進めており、さら
にヴィデオゲーム“Doom”の映画版の脚本を手掛けたデイヴ
・カラハン脚本でも、同様の中東石油とテロリズムを背景に
した作品が進められているということで、時ならぬ社内での
競作になりそうだ。
 ところで今回の作品の題名は、シリア人というような意味
らしいが、発音がちょっと微妙な感じがするのは、僕だけ?
        *         *
 計画が発表されてから久しい『鉄腕アトム』“Astroboy”
のハリウッド版に動きが出た。
 この計画は1997年に発表され、当時はトッド・オルコット
による脚本も用意されて、一旦は製作のゴーサインも出たも
のだが、その直後にスティーヴン・スピルバーグ監督による
『AI』の計画が発表され、子供の死後に替りのロボットを
作り出すというテーマが似ていることから、同時期に公開す
るのは不利と判断されて頓挫していた。
 その計画が再始動されたもので、今回発表されたのは脚本
家。この脚本に、ザ・ロック主演の映画化も予定されている
“Samurai Jack”や、一昨年劇場版が公開された『パワーパ
フ・ガールズ』などのTVアニメーションを手掛けるジェン
ディ・ターテイコフスキーの契約が報告されている。
 なおこの映画化では、一時は“Dinosaur”などを手掛ける
エリック・レイトンが招請されてオールCGIによる計画も
報告されたが、現在はアニメーションと、アニマトロニクス
と実写の混合による『スチュアート・リトル』のような映画
化が検討されているということだ。この方針について製作者
のドン・マーフィは、「自分は最初からこの方が良いと考え
ていたので、実写に戻ってきたことには大変満足している」
と発言している。
 また製作には、マペッツの創始者の流れを汲むジム・ヘン
スンピクチャーズの参加も発表されている。
 因に、今回のVariety紙の記事では、原作者の手塚治虫の
業績として、“Astroboy”の他に“Kinba the White Lion”
(ジャングル大帝)と“The Phoenix”(火の鳥)が挙げら
れていた。
        *         *
 アメリカでは大ベストセラーの兆しも見せてきたダン・ブ
ラウン原作“The Da Vinci Code”の、ソニー=コロムビア
での映画化については、2003年7月15日付第43回と10月15日
付第49回で報告しているが、それと同様の中世の作品に隠さ
れた謎を巡って、現代に起きる事件を扱ったスリラー作品の
計画が、ワーナーから発表された。
 今回の作品は、“The Rule of Four”という題名で、内容
は、15世紀に書かれたHypnerotomachia Poliphiliという文
書の解読を進める4人の研究者が、そこに秘められたローマ
帝国が隠した財宝の情報を見つけ出し、それに絡む殺人事件
に巻き込まれるというもの。イアン・コールドウェル、ダス
ティン・トマスンの共著による小説の映画化権が、ワーナー
と契約されている。
 なお、この計画はまだ脚本家も未定のものだが、実は、第
43回の“The Da Vinci Code”の報告で触れたルイス・ペル
デュー原作の“Daughter of God”については、同じくペル
デューが1983年に発表した“The Da Vinci Legacy”という
作品と合わせて、製作者のマーク・バーネットが計画を進め
ることを表明しており、すでに脚本家の選考に入っていると
いうことだ。因に、ペルデューの本業は脚本家なのだが、バ
ーネットは他で選考しているらしい。
 ということで、第49回で報告したコロムビア作品(ブライ
アン・グレイザー製作、ロン・ハワード監督、アキヴァ・ゴ
ールズマン脚本)の製作は、今年の秋以降という計画だった
が、今回のワーナーの計画も含めて、これから他社の動向次
第では、時期が早まることもありそうだ。
        *         *
 2000年に公開されて、全世界で9000万ドル以上を稼ぎ出し
たと言われる“Final Destination”(ファイナル・デステ
ィネーション)の第3作の計画がニューラインから発表され
ている。
 このシリーズでは、第1作はグレン・モーガン脚本、ジェ
ームズ・ウォン監督、デヴォン・サワ主演で作られたものだ
が、2003年公開の第2作“Final Destination 2”(デッド
・コースター)に彼らはタッチせず、この作品も全世界では
7000万ドル以上を稼いだとは言うものの、ファンの目にはテ
ーマが消化不良で、かなり物足りない感じの作品だった。
 そこで、今回発表された第3作にはモーガン=ウォンのコ
ンビが復活するもので、彼らの基本コンセプトを活かした作
品を期待したいところだ。因に基本コンセプトは、第1作で
は、サワ扮する主人公が、いろいろな予兆から死神の次の行
動を察知し、それを巧みに避けて行くというもの。その理詰
めな展開が面白かったものだが、第2作ではその展開が欠け
ていたものだ。
 なお監督と脚本家は、第2作の製作時には、ニューライン
の親会社のワーナーで、ジェット・リー主演の『ザ・ワン』
を手掛けていた。また、今回のの第3作については、3Dで
撮影されるという情報もあるようだが、いろいろなものが飛
び散るこのシリーズでは、かなり強烈なものになりそうだ。
        *         *
 1970年代に“Chariots of the Gods”(未来の記憶)など
の著作で一世を風靡したスイス出身の作家エリッヒ・フォン
・デニケンが、800万ユーロ(約956万米ドル)の製作費を自
ら集めて、Imaxによるドキュメンタリー作品“World of
Mysteries”を製作する計画を発表している。
 この計画は、“The Ring of Buddha”などの作品のあるジ
ョカン・ブライテンスタイン監督とのコラボレーションで進
められるもので、計画では今年の後半から、チリのアタカマ
砂漠、ペルーのナスカ高原、メキシコのマヤ寺院、トルコの
古代遺跡、イギリスのストーンヘンジなどで撮影が行われ、
2005年の公開を目指すということだ。
 因に、“Chariots of the Gods”は、1974年にハラルド・
ラインル監督で映画化されており、この作品は何かの機会に
日本で上映されたのを見た記憶があるのだが、今回調べた範
囲では日本での一般公開の記録はないようだ。しかし、アメ
リカのガイド本では、星3つというかなり高い評価を与えら
れているもので、僕も広角レンズを多用したパノラマ感覚の
映像が優れていたと記憶している。
 なお、フォン・デニケンは、大西洋の両側で作られた彼の
著作に基づくテレビ番組などで、今も悠々自適の生活のよう
だが、最近は彼の著作を、テーマを変えただけで流用したよ
うな作品もいろいろ出版されており、ここらで一つ本家の姿
を見せてもらいたいものだ。
        *         *
 『シュレック』第1作と、『パイレーツ・オブ・カリビア
ン』の脚本を手掛けたテッド・エリオットとテリー・ロッジ
オの脚本家コンビの片割れ、ロッジオがビル・マーシリと組
んで執筆した“Deja Vu”という脚本が、ジェリー・ブラッ
カイマーの製作でディズニーで映画化されることになった。
 物語は、現代を舞台にしたタイムトラヴェルもので、時間
を遡る能力を持ったFBIの捜査官が、殺人を犯す女性に恋
をしてしまうというのもの。犯人を知り得ても事実を変える
ことの許されない状況の中で、どのような結末が待ち構えて
いるのかということだが、ブラッカイマーは、「非常にエキ
サイティングで、サスペンスとロマンスにも満ちあふれた作
品」と紹介している。
 そしてロッジオは、このロマンティックスリラーの脚本に
ついて、ディズニーと数100万ドルの金額で映画化権を契約
したということだ。またエリオットは、本作の映画化では製
作を担当することになっている。
 なお、エリオットとロッジオは、ジョン・タートルトーボ
監督、ニコラス・ケイジ主演で進められているディズニー作
品“National Treasure”のリライトを手掛けている他、マ
ーシリの前作の“Jingle”という作品に協力しており、さら
に現在は、“Pirates of the Caribbean”の2本の続編を執
筆中ということだ。

        *         *
 『LOTR』のヴィゴ・モーテンセンが、デイヴィッド・
クローネンバーグ監督と組む計画が発表されている。
 この作品は、ニューラインで進められている“A History
of Violence”というもので、小さな街で静かに暮らしてい
た男が、ちょっとした事件で活躍したことから人々の注目を
集め、それが予期せぬ事態に進展して行くという物語。ジョ
ン・ワグナーという作家のグラフィックノヴェルを原作とす
る作品ということだ。
 『LOTR』以後のモーテンセンには、いろいろな会社か
ら主役のオファーが舞い込んでいるということだが、『LO
TR』の製作会社でもあるニューラインでは、敢えて彼の成
功の元となったインディペンデントやアートフィルムの線で
交渉を行ったようで、その考えにクローネンバーグも呼応し
て今回の計画が実現したということだ。ジョッシュ・オルス
ンの脚本で、撮影は今秋開始される予定。
 なお、モーテンセンは、スペインのアウグスティン・ディ
アズ・ヤンズ監督の下で進められる“Alatriste”という作
品の前に、本作に出演することになるようだ。
        *         *
 続報で、パラマウントが進めているトム・クランシー原作
“Rainbow Six”の映画化の監督に、『ペイチェック』など
のジョン・ウーの名前が挙がってきている。
 この作品は、ジャック・ライアンシリーズの傍系として発
表されているもので、『トータル・フィアーズ』にも登場し
たCIAエージェントのジョン・クラークを主人公にしたも
のだが、今年3月には新たな脚本家が契約して、その作業も
かなり進んでいるようだ。
 そして今回は、その監督にウーの名前が挙がっているもの
で、ウーもこの計画に興味を示したということだ。ところが
ウーの計画では、実は1月15日付の第55回で紹介したザ・ロ
ック主演の“Spy Hunter”の監督をすることが先月発表され
たばかりで、ユニヴァーサルで進められているこの計画は、
来年夏のテントポールが予定されて、この夏にも撮影が行わ
れることになっている。
 しかし、ウーとパラマウントとの間では優先契約が結ばれ
ており、もしパラマウント側が要請してウーが了承すれば、
他社の契約は後回しにされるということで、それではユニヴ
ァーサルの来年夏の目玉の行方が判らなくなってしまうとい
うことだ。ウーも契約を忘れて話しているとは思えないし、
何かの方策は考えているのだろうが、ちょっと気になる状況
のようだ。
        *         *
 後は短い話題で、
 まずは、ハナ=バーベラのテレビアニメーションシリーズ
“The Jetsons”の実写映画化について、計画を進めている
製作者のデニス・ディ・ノヴィから、新たな脚本が完成し、
希望する俳優たちにも近々提示できる状況になったことが報
告された。この脚本は、昨年末に好成績を納めた“Cheaper
by the Dozen”のサム・ハーパーが執筆していたもので、主
人公のジョージを演じる俳優に最初に提示されるということ
だ。なお監督には、『女神が家にやってきた』のアダム・シ
ャンクマンが現在も関っているようだ。
 前回も紹介した新“Sperman”の計画で、主演のスクリー
ンテストが行われたようだ。これには6人の俳優が参加し、
ジェイク・ギレンホールやヘンリー・ケイヴィルも居たとい
うことだが、ブレンダン・フレイザーの姿はなかったという
ことだ。また、特殊効果の担当で、新たにフォトンVFXと
ジャイアント・キラー・ロボットという会社の参加が発表さ
れている。これらの会社は、前回報告したESCに協力して
製作を進めるようだ。
        *         *
 最後にちょっと変な話題で、アメリカでは先週公開された
ヴィン・ディーゼル主演“The Chronicles of Riddick”に
ついて、監督のデイヴィッド・トゥーイが、上映版は彼の最
初の編集より50分も短く、丸々カットされたキャラクターも
あると発言したことが伝えられている。この発言の真意がど
こにあるかは判らないが、最終的なディレクターズカットか
らも公開版は15分短くされているということで、トゥーイは
DVDが出るときには全てを見せたいとしているが、作品の
公開直前にしては、ちょっと変則的な発言と言えそうだ。な
おカットされたのは、Escape from Butcher Bayというヴィ
デオゲームに登場するシーラというキャラクターで、主人公
が追い求める過去の経緯を握るものということだ。



2004年06月14日(月) ハリー・ポッターとアズカバンの囚人、雲−息子への手紙、父、帰る、危情少女、誰も知らない、16歳の合衆国、シュレック2

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』        
     “Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”
待望のシリーズ第3弾。ポッターら3人組のホグワーツ魔法
学校での3年目が始まる。               
今回は、魔法界での究極の刑務所アズカバンから脱走したシ
リアス・ブラックを巡って、それを追うため派遣された吸魂
鬼ディメンターを交えたポッターの冒険が展開する。   
上映時間は2時間22分。『王の帰還』が3時間を超えたのに
はかなわないが、観客の年齢層が低いことを考えれば、これ
がぎりぎりのところだろう。そして今回の映画化は、この上
映時間の中に、実に手際良く物語が納められている。   
以前、カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』がジ
ョージ・ロイ・ヒルによって映画化されたときに、試写を見
た原作の翻訳者の伊藤典夫さんが、「本の挿絵を見ているよ
うな映画化だ」と評したことがあったが、この映画化もそれ
に近い。                       
実際に映画を見ていると、原作のこのシーンが見たいと思っ
たシーンが次々に登場してくる。しかし、例えばダーズリー
家を飛び出したポッターがナイトバスに辿り着くまでがあっ
と言う間だったり、もっといろいろあったはずの部分がほと
んど欠落している。                  
それでも上映時間は2時間22分もあるのだから、これはもう
仕方がないとしか言いようがない。原作の読者としては、映
画を見終って、もう一回原作を読み直したくなる気分に誘わ
れる感じだった。                   
とは言うものの、映画は間違いなく楽しめる。原作を読んで
いない人にどうかは判らないが、見たいシーンが次々に万華
鏡のように飛び出してくるのだから、ファンには堪らない作
品だ。この映画は原作の読者への最高のプレゼントと言える
かもしれない。                    
なお、翻訳本が出たときに、新たな登場人物のLupinをルー
ピンと読ませていたのが疑問だったが、映画の中でもルーピ
ンと発音されていたようだ。フランス人ならルパンだと思う
が、イギリス人はそうは呼ばないらしい。フランス語版はど
うなっているのだろうか。               
原作はこの後どんどん話が重くなって行くが、今回の映画化
はその前哨戦として、恐怖感はそれなりに描いたものの、全
体の雰囲気は極力軽くしようとした意図も感じられる。これ
で第4巻の結末の重さをどこまで軽減できるか、今後の展開
につながりそうだ。                  
                           
『雲−息子への手紙』“Nuages lettres a mon fils”   
『ノー・マンズ・ランド』などの製作者でもあるフランス生
まれの女性監督マリオン・ヘンセルによるドキュメンタリー
作品。                        
世界中の雲を撮影しながら、自らの妊娠、出産、離婚などの
人生を、息子への手紙として綴って行く。そしてこの手紙の
朗読を、フランス語版はカトリーヌ・ドヌーヴ、英語版はシ
ャーロット・ランプリングなど6カ国のトップ女優が務めて
いる。                        
監督は僕と同い年で、息子は18歳。彼女の言いたいことは判
るような気のする部分もあるし、また男性では判りにくいと
ころもある。しかしこれが彼女の人生で、その人生の山谷が
淡々と綴られているのは、それだけの年月がそこに費やされ
たということだろう。                 
そして映像では、次々に変化して行く雲の姿が、ディジタル
処理による時間の流れの変化も付けて美しく描かれる。この
ディジタル処理と編集作業に、製作費の15%が費やされたと
いうことで、その映像への思い入れが判る。       
ただ、今回この作品を字幕で見ていると、字幕を読まなけれ
ばならないために、どうしても映像の全てを追い切れないと
ころがある。6カ国語のナレーションが用意されたのも、そ
の辺の理由があるのだろう。できれば日本語のナレーション
も付けてもらって、この映像を堪能してみたかった。   
                           
『父、帰る』“Vozvrashchenie”            
2003年のヴェネチア映画祭でグランプリ金獅子賞を受賞した
ロシア映画。                     
長く不在だった父親が12年ぶりに帰ってくる。しかも突然。
10代の2人の少年が遊びから家に帰ると、そこにはすでにベ
ッドで眠りこける父親の姿があるのだ。         
その父親は、2人の息子を小旅行へ連れ出す。それは息子た
ちとの絆を取り戻す目的だったのかも知れない。しかし、多
少は父親の記憶のあるらしい上の子は、徐々に父親に打ち解
けるが、下の子にはそれができない。          
一方、父親も子供への対し方が判っていない。この親子の関
係が、物語の緊張を嫌が上にも高め続ける。そして父親の取
る謎の行動。やがて親子は、大きな湖を渡って、無人島へと
辿り着くのだが…。                  
監督も、製作者も、カメラマンも、作曲家も、全員が映画は
ほとんど素人と言うロシアの民間テレビスタジオで製作され
た作品。その作品が、名だたる作家の集まった映画祭でグラ
ンプリを受賞した。                  
しかし、その理由は映画を見れば明らかだ。新人とは言え、
映画の歴史から学び尽くした知識の深さ、そしてそれが知識
だけで終わらない映画への愛情、さらに真摯な態度。それら
が画面の隅々から感じ取れる。             
東京国際映画祭でも、ここ数年何本かのロシア映画を見てき
たが、到底映画への愛情が感じられなかった作品も含め、い
ずれも僕は気に入らなかった。しかしこの作品には、何か懐
かしいロシア映画の味と、その一方で新鮮さも感じさせるも
のがあった。                     
映画は、父親と特に下の息子との関係を巧妙に描いて行く。
それが全く不自然でなく、それでいてドラマティックなのは
見事だった。この作品が、新しいロシア映画の歴史を作り始
める、そんな予感がした。               
アンドレイ・タルコフスキーにオマージュを捧げているよう
な床に水の撒かれた屋内のシーン。そんなところも好ましい
作品だった。                     
                           
『危情少女』“危情少女”               
2000年の『ふたりの人魚』で国際的に評価されたロウ・エイ
監督が、1995年に発表した監督デビュー作。       
自分の見る悪夢の原因を探ろうとした少女の行動を描いた中
国映画史上初(?)の本格恐怖映画。中国でも、幽霊ものの
映画は戦前からいろいろ作られていたと思うが、いわゆる現
代風のホラー映画では最初の作品ということのようだ。  
毎夜悪夢にうなされる少女。悪夢に現れるのは、雲行きの怪
しい空模様の下、無表情に彼女を見つめる街の人々、そして
古びたアパート。やがて少女は、実在したそのアパートを探
し当てるが、今度はそのアパートで死んだはずの母親が夢に
現れ始める。そして悪夢の続きは、彼女の周囲で過去に起っ
た悲劇を再現して行く。                
まあ、いろいろ言えることはあるのだけれど、映画の全体の
雰囲気は中々良い感じのものだった。          
物語の辻褄が前半と後半とで、ちょっと合わなくなっている
ような感じもするが、その辺の何かモヤモヤしているところ
が、ちょっと変な言い方だが一種の魅力にもなっていて、そ
のまま最後まで見せられてしまった感じもする。またそれを
見続けさせるだけのものは感じさせる作品だった。    
因に本作は、元はテレビ向けに作られたもののようだが、一
応プロの作品というレベルはクリアしている。実際、この後
の活躍を見れば、監督の才能は認められている訳で、その監
督のデビュー作が見られるということで評価すれば良いもの
ともいえる。                     
                           
『誰も知らない』                   
『ワンダフルライフ』などの是枝裕和の脚本、監督、編集に
より、本年度カンヌ映画祭で主演男優賞を受賞した作品。 
1988年東京で実際に起きた、未婚の母親による幼い4人の子
供の置き去り事件を題材に、14歳の少年を最年長とする4人
がどのように生活したかを描いた物語。ただし、映画は事件
を題材にはしているが、物語のほとんどはフィクションで作
られている。                     
とあるアパートに、夫は海外出張中と称する母親と息子が引
っ越してくる。実は、その一家には他に3人の子供がいるの
だが、彼らは全て父親が異なり、しかもいずれも出生届けが
出されておらず、社会からは存在しない子供たちだった。 
だから長男を除く3人は、外出はおろかベランダに出ること
も許されない。こんな弟妹を、長男は帰宅の遅い母親に代っ
て世話している。しかしある日、母親が姿を消してしまう。
そして残された4人は、時折送られてくる現金書留を頼りに
生活を続けるが…。                  
試写会で配られたプレスブックには、4頁に渡って物語が綴
られている。そんなふうに詳細に綴りたいほど、この映画に
は大事にしたい物語が一杯に納められている。確かに悲しい
物語なのだけれど、ここには精一杯生きた子供たちの素晴ら
しい姿が描かれている。                
事件は、当時未成年の子供が絡むものだし、取材などは不可
能だったと思われる。だからここに描かれた生活の様子は全
て是枝監督の想像によるもののはずだが、彼の子供たちを見
つめる目の優しさが、境遇に立ち向かう子供たちの姿を見事
に描き出している。                  
といっても、子供たちは雄々しいわけでもなく、遊びたい盛
りの子供たちは、世間からは隠れながらもそれをゲームのよ
うにして生活して行く。そんな生き生きとした描き方が、こ
の映画をさらに素晴らしいものにしている。       
ドキュメンタリー出身の是枝監督は、『ワンダフルライフ』
でも、その手法を活かした素晴らしい作品を作り上げたが、
本作もそれに劣らず見事に作られている。実際、子供たちの
撮影には台本を見せず、ほとんどが即興に近いものだったと
いうことだ。                     
僕は、『ワンダフルライフ』の素人のお婆さんが出演したド
キュメンタリーのシーンが最高に好きだが、この作品にも、
演出ではできない素晴らしいドラマが描かれている。   
                           
『16歳の合衆国』“The United States of Leland”   
16歳の普通の少年が犯した殺人事件が引き起こす様々な出来
事を描いたドラマ。脚本監督は、自身が少年院での教師の経
験を持つマシュー・ライアン・ホーグ。俳優ケヴィン・スペ
イシーの製作で、そのデビュー作が実現した。      
映画は、その殺人のシーンから始まるが、主人公はその時の
ことはよく覚えていないという。そして物語は、その動機を
探ろうとする作家志望の少年院の教師を第2の主人公として
展開して行く。                    
佐世保の事件が起きた後にこの作品を見たが、取り返しのつ
かない犯罪を犯してしまった少年の、戸惑いと悔悟の気持ち
がよく描かれた作品のように感じた。最終的に判明する動機
などは佐世保の事件とは異なるが、いずれにしても殺人とい
う重大な事件を、その重大さに気付かずに犯してしまう現代
の悲劇は見事に描かれている。             
製作を買って出て出演もしているスペイシーは、1999年度オ
スカー主演賞を『アメリカン・ビューティー』で受賞以来、
『K−PAX』や『ペイ・フォワード』、そして本作の後に
主演した『ライフ・オブ・デビット・ゲイル』など、社会派
というのではないけれど、現代の一面を捉えた、ちょっとひ
ねった作品を好んで出演しているようだ。        
その中で本作は、受賞作に一番近いようにも感じるが、いず
れにしても現代社会の中で、見て見ぬ振りをしがちな部分を
判りやすく提示してくれたような思いがした。      
                           
『シュレック2』“Shrek 2”              
アメリカでは早くも3億ドル突破を記録した人気CGアニメ
ーションシリーズの第2弾。              
今回は、新たな仲間として長靴をはいたネコが登場し、前作
にも増したパロディ満載の物語が展開する。前作は一応原作
のあったものだが、今回は映画オリジナルの物語、その分映
画的な展開が思う存分繰り広げられている感じだ。    
物語は、前作でめでたく結ばれたシュレックとフィオナの住
む沼辺の家に、遠い遠い王国のフィオナの両親から祝いの晩
餐会を開くという手紙が来るところから始まる。しかしその
手紙には、なぜか結婚相手としてチャーミング王子の名前が
記されていた。                    
その手紙にしたがい王国に向かうフィオナの馬車、そこには
気乗りのしないシュレックとドンキーも同乗していたが…。
そしてようやく王国に着いたとき、そこで待ち受けていたの
は、王家を裏で操る妖精ゴッドマザーの陰謀だった。   
前作は基本的に森や草原が舞台だったが、今回は王宮の建つ
大都会。ハリウッドを模した街の景観は正しくパロディの宝
庫という感じだ。多分、日本人の我々には判らないネタも多
いのだろうが、判る部分だけでも充分に楽しめる。    
そのくらいに、いろいろなものが盛り込まれている訳で、ア
メリカでの記録的な興行成績は、それを探すためのリピータ
ーが多いせいではないかと思えるほどだ。        
なお、以前の記者会見で製作総指揮のカッツェンバーグは、
「ディズニーが寛容であることを祈りたい」としていたが、
その問題になりそうなシーンはほんの0.5秒ほど、瞬きし
てたら見逃しそうだが、確かにこれは…という感じだった。
まあ、そんなシーンも含めて、全く目の離せない上映時間は
1時間33分。なお試写会は、マイク・マイヤーズ、キャメロ
ン・ディアスによる英語版での上映だったが、予告編で流れ
た日本語も良い感じで、浜田雅功、藤原紀香の吹き替え版も
楽しみだ。                        



2004年06月01日(火) 第64回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回はニュースが多量なので、早速始めることにしよう。
 まずは、昨年度の全米興行で2億4261万ドルを稼ぎ出し、
第5位の成績を記録したジム・キャリー主演の神様コメディ
『ブルース・オールマイティ』の続編が計画されている。
 前作で、キャリー扮する主人公は、神の休暇中の代役で振
り回されたが、今度は神の啓示によって第2のノアの箱船を
作らされることになるようで、映画化される脚本の題名は、
“The Passion of the Ark”。この脚本、ボビー・フロスハ
イムとジョシュ・ストルバーグという新人脚本家チームが執
筆したものだが、実は発表された時点では、前作とは無関係
のものだった。
 ところが、前作を監督したトム・シャドヤックが、この脚
本が続編として使えることを思いつき、直ちに前作を製作し
たユニヴァーサル/スパイグラスにその意向を伝え、4月に
行われたオークションに臨むことになった。しかし彼らは権
利の獲得に失敗、権利はソニーに持って行かれてしまった。
なおソニーは、この権利を最低150万ドルから最高250万ドル
の契約金で獲得したものだが、これは映画化実績のない脚本
家では史上最高額だったということだ。
 とはいえ諦め切れないシャドヤックは、自らソニーに赴き
共同製作を直接申し入れたということで、この申し入れをソ
ニーは一も二もなく了承。これにより続編は、ソニー/ユニ
ヴァーサル/スパイグラスの3社の共同製作で実現されるこ
とになった。また、前作にも参加した脚本家のスティーヴ・
オーデカークが、続編にマッチするように脚本をリライトす
ることも決まっているようだ。
 因に、最初は異なる脚本から続編が作り出されたケースで
は、ジョナサン・ヘスレイ原作の“Simon Says”という脚本
から、1995年に『ダイ・ハード3』が作られた例があるが、
そのために他社まで巻き込むというのは珍しいことだろう。
 ということで、この続編は前作と同じ監督の下で進められ
ることになったが、問題は、キャリーが中々続編には出たが
らない性分だということで、今までにも、『マスク』『Mr.
ダマー』の続編は断られている。しかし今回は、『エース・
ベンチュラ』の続編も実現した盟友シャドヤック監督作品と
いうことでどうなるか。なお、オーデカークのリライトは、
主演の変更も考慮した2面作戦で進められるようだ。
        *         *
 お次は、新規巻き直しの計画で、すでに撮影が開始された
“Batman Bigins”に続いて、待望の21世紀版“Superman”
の製作準備が本格化してきた。
 そこで今回新たに公表された情報は、VFXを『マトリッ
クス』を手掛けたESCが担当。またアニマトロニックとス
ペシャルメイクのベテラン=スタン・ウィンストンの参加も
発表されている。さらに製作総指揮には、『スタースキー&
ハッチ』などのギルバート・アドラーの起用が報告されてい
るが、実はこの3者、先にキアヌ・リーヴス主演のDCコミ
ックスの映画化“Constatine”でも一緒に仕事をしたところ
で、その流れで新作への参加もスムースに決まったようだ。
 そしてワーナーは、J.J.アダムスの脚本、McGの監
督による新作の撮影を、年内にも開始したいということなの
だが、実は肝心の主演者がまだ発表されていない。この主役
については、一時はブレンダン・フレイザーがかなり有力だ
ったものだが、彼自身本作への出演は希望しているものの、
それは主人公ではないとのことで、結局、主演はまだ決まっ
ていないということのようだ。
 ところで本作は、“Batman Bigins”と同じく物語の起源
に戻ることが予定されているが、そこで登場するスーパーマ
ン=カル・エルの父親ジョー・エル役を、ジョニー・デップ
が希望しているという情報がある。デップの本作への出演に
関しては、当初は敵役のレックス・ルーサーがオファーされ
ているという情報もあったものだが、本人の希望は父親の方
だということだ。
 因に、前シリーズでジョー・エル役はマーロン・ブランド
が演じたものだが、デップは1995年の『ドンファン』で共演
したブランドを大変尊敬しているのだそうで、今回のデップ
の希望にはそういう意味合いもあるようだ。当時のブランド
に比べると、現在のデップではちょっと若いようにも感じる
が、よく考えると、ジョー・エルはカル・エルが赤ん坊の頃
に送り出すのだから、この方が正しいような気もする。それ
より、周囲と対立して災害の危険性を訴える姿が楽しみだ。
        *         *
 続いてはリメイクの情報を2つ。
 まずは、1980年にケン・ラッセル監督によって映画化され
たSF作品“Altered States”(アルタード・ステーツ)の
リメイクが計画され、その脚色に、パラマウントで進められ
ている『ターン』のハリウッドリメイクなども手掛けている
ファーンレイ・フィリップスの起用が発表されている。
 オリジナルは、1976年の『ネットワーク』などで3度のオ
スカー脚本賞に輝く脚本家パディ・チェイエフスキーの原作
小説を映画化したもので、当時流行の最先端だった瞑想タン
クを応用して、人類の進化の過程を探ろうとした若き科学者
の禁断の実験を、ディック・スミスのスペシャルメイクや、
最先端のVFXを多用して描いている。
 そして映画は、公開後にはカルト的な評価を得て、特にテ
ーマとなった瞑想タンクを描いた作品では、最高傑作とも言
われているものだが…。実は、映画の製作時には、原作者自
ら行った脚色と監督のヴィジョンが対立、最終的にチェイエ
フスキーが脚本のクレジットを下ろしてしまったという曰く
付きの作品。またその後は、テレビなどへの登場も少なく、
アメリカでは幻の作品になっているということだ。
 その作品のリメイクだが、今回製作を担当するワーナーの
グレッグ・シャピロは、「オリジナルの映画化は、そのアイ
デアが多くの人に愛されたものだが、映画は原作を正しく伝
えたものではない。今回の脚色を依頼したファーンレイは、
サイコロジカルホラーの感覚にも優れ、ゴシックホラーの味
を付け加えることもできて、オリジナルの映画化で失われた
これらの要素を復活させることができる」としており、今回
は原作に則した映画化が行われることになりそうだ。
 因にオリジナルは、本作が映画初主演だったウィリアム・
ハートを一躍有名にし、また彼の幼い娘役で、ドリュー・バ
リモアが映画初出演した作品としても記録されている。
        *         *
 もう1本は、先日“Dawn of the Dead”(ゾンビ)のリメ
イクが公開されたばかりのジョージ・A・ロメロの作品で、
“Night of the Living Dead”と“Dawn of the Dead”の間
の1972年に製作された“The Crazies”のリメイク計画が発
表されている。
 オリジナルのお話は、ペンシルヴァニアの小さな町に突然
軍隊が派遣され、町が封鎖されるところから始まる。しかし
この軍事行動について住民には何の事情説明もなく、やがて
不安に駆られた住民の一部は、軍隊に反抗して町を脱出しよ
うとするのだが…。映画はこの展開を、住民側と軍から派遣
された調整官のような男を主人公にして描いたものだったと
記憶している。
 なお、このオリジナルは、日本では劇場公開はされなかっ
たが、『ゾンビ』の公開後にテレビで紹介されもので、その
現実的というか、かなりドライな描き方が、ロメロの本質を
良く表わしていたという印象を持ったものだ。
 そして今回、この作品のリメイクを計画しているのは、パ
ラマウントとの優先契約を結んでいるペン・ステーションと
いうプロダクションで、計画ではアップデイトした作品にす
るとだけ紹介されていたが、オリジナルも充分現代に通用す
る話だったと記憶しているので、出来るだけオリジナルを活
かした脚本にしてもらいたいものだ。
 因に、ペン・ステーションは、昨年秋にパラマウントとの
優先契約を結んだものだが、今回の発表されたリメイクの他
にも、今年1月1日付の第54回と2月15日付の第57回でも紹
介したマイクル・マーシャル・スミス原作のSF“Spares”
の映画化や、ヴィクトリア・レイクマン脚本のロアルド・ダ
ール風ファンタシー“The Girl Who Could Fly”の映画化も
進めており、別段ジャンル専門という訳ではないようだが、
ちょっと期待したいプロダクションだ。
        *         *
 またまたトリロジーの映画化計画で、イアン・オギルヴィ
原作の3巻シリーズの第1巻“Measle and the Wrathmonk”
を、“The Polar Express”で採用されたCGアニメーショ
ン製作の新手法performance captureの第2弾として製作す
る計画が、ワーナー/イメージムヴァースから発表された。
 この原作は、本国イギリスでは今年の6月、アメリカでも
8月に出版が予定されているもので、お話は、両親が行方不
明になった少年が、ちょっと変な叔父さんと一緒に暮らすこ
とになるが、この叔父さんというのが実は魔法使いで、少年
はそれに気付く前に縮小され、おもちゃの汽車が走るジオラ
マの世界に送り込まれてしまうというもの。かなりファンタ
スティックな展開が予想できる内容で、CGアニメーション
にもピッタリな題材と言えそうだ。
 そしてこの物語を、performance captureで描くというこ
とだが、この手法は、旧来のmotion captureを発展させたも
ので、特に俳優の演技をそのままCGアニメーションに転換
することで、3DのCGアニメーションの製作を従来より短
時間で行うことができるというもの。また、前回報告したよ
うに、“The Polar Express”は3D-Imaxで上映することも発
表されているが、実はその発表の際に、監督のロバート・ゼ
メキスは、このような作品を毎年公開したいとも発言してお
り、今回の計画はそれにも合致したもののようだ。
 なお、原作者のオギルヴィは、イギリスで製作されたリメ
イク版の“The Saint”シリーズで主人公を演じた俳優で、
実はゼメキスが1992年に監督した『永遠に美しく…』にも出
演していた。そして俳優活動の傍ら執筆活動を始め、すでに
本シリーズ第2巻の“Measle and the Dragodon”は完成し
ており、イギリスでは今秋、アメリカでも来春出版の予定に
なっている。さらに第3巻の“Measle and the Mallockee”
の執筆も進んでいるということだ。
 ゼメキスとしては因縁浅からぬ作品ということになりそう
だが、新技術を駆使した面白い作品を期待したいものだ。
        *         *
 もう一つ、トリロジー映画化の情報は続報で、2002年3月
1日付の第10回で紹介したフィリップ・プルマン原作“His
Dark Materials”の映画化について、第1作の“The Golden
Compass”の監督に、『アバウト・ア・ボーイ』のクリス・
ウェイツが有力になってきた。
 因に前回は、『LOTR』の第1作が公開されて大成功を
納めた直後のニューライン・シネマが、この映画化権を獲得
したという報告だったが、その後同社では、『恋におちたシ
ェイクスピア』のトム・ストッパードと契約して脚色を進め
る一方、数多くの監督にこの計画を紹介してその選考を進め
ていたものだ。
 その中でウェイツは、このトリロジーを映画化するに当っ
ての彼自身の考え方をまとめたかなり長文の論文を提出し、
それがプルマン、ストッパードと、ニューライン側にも気に
入られて、今回の起用が有力になったということだ。とは言
うものの、今までコメディの実績しかない監督をこのファン
タシー大作に起用するのはかなりの賭けだが、それをさせた
論文は相当のものだったのだろう。
 またニューラインには、それまではあまり実績のなかった
ピーター・ジャクスンに、『LOTR』を任せて大成功した
という思いもある訳で、今回もウェイツの熱心さに賭けてみ
ようという気分になったのかもしれない。なおウェイツは、
今までの作品は全て兄弟のポールとの共同監督だったが、す
でにポールは単独の作品を手掛けているということで、今回
はクリス単独の監督作品になるようだ。
 ということで、ウェイツの監督が決まりそうなのだが、実
は決定と言えないのにはいくつか問題が残っていて、その一
番目は、ウェイツはすでに完成しているストッパードの脚本
を使わずに、自ら脚色をし直すと言っているということだ。
しかし、まだその脚本は執筆されていない訳で、脚本の作り
直しとなるとかなりの時間が掛かることになる。
 またこのシリーズでは、第3巻の“The Amber Spyglass”
が、子供向けの作品では初めてイギリスの文学賞のホワイト
ブリード賞を受賞して話題になったものだが、実はこの第3
巻は内容的に映画化がかなり困難なものということで、ニュ
ーラインでは3作を再構成して2部作で映画化することも検
討していると言われている。しかしそうなると、ウェイツが
またどう動くかも不明ということで、監督の契約が交わされ
るまでには、まだ少し時間が掛かりそうだ。
        *         *
 トリロジーの次は、その10倍のすでに30巻に達することが
発表されている長大シリーズで、ピアズ・アンソニー原作の
“Xanth”の映画化が本格的に動き始めた。
 このシリーズの映画化に関しては、以前からワーナーが権
利を所有していたものだが、今回は、1977年に発表されたそ
の第1作“A Sell for Chameleon”の映画化に、『トロイ』
が公開されたばかりのウルフガング・ペーターゼン監督と、
同作の脚本を手掛けたデイヴィット・ベニオフの参加が発表
された。
 この原作は、日本でもすでに10数巻が翻訳されているが、
ザンスと呼ばれる魔法世界を舞台に、その世界に住む少年の
成長を描いたもの。僕自身は原作の読者でないので詳しくは
判らないが、参加の決まったベニオフは、一時は彼自身で映
画化権を獲得しようとしたこともあるほど原作が気に入って
いるということで、彼は、「『LOTR』が完結し、続いて
“The Lion, the Witch and the Wardrobe”が準備されてい
る現在では、残された最後の大作」と評している。
 同じ言葉は、最近別の作品でも聞いたような気がするが、
いずれにしても30巻も続いているということは、それだけの
読者が確保されているということだ。因に、このシリーズ、
本国アメリカでは今年第28巻が刊行され、来年第29巻、さら
に第30巻が現在執筆中ということになっている。
 そして、『トロイ』でチームを組んだベニオフとペーター
ゼンの参加となった訳だが、実は、ベニオフ自身はすでに執
筆のスケジュールが一杯で、今回の脚色は直接執筆すること
はできないようだ。しかし、ペーターゼンと共に有望な脚本
家を選抜して、その管理監督をするとしている。
 一方、ペーターゼンの方も、本作を監督すれば、1984年の
『ネバーエンディング・ストーリー』以来のユース・ファン
タシー作品となるものだが、彼には2002年6月15日付第17回
などで紹介したオースン・スコット・カード原作の冒険SF
シリーズ“Ender's Game”の監督が決定しており、こちらも
別の監督が立てられることになりそうだ。
 因に、“Ender's Game”の映画化については、先に『X−
MEN2』を手掛けたマイクル・ドアティ、ダン・ハリスの
脚本家コンビの起用が発表されるなど、映画化の準備が急に
なっているようで、一気に2つのシリーズの映画化が進み始
めている。
        *         *
 後半は短いニュースをまとめておこう。
 まずは、前回に続いてハリスン・フォードの新作情報で、
ジェームズ・キャメロン主宰のプロダクション=ライトスト
ームが製作するSF作品への出演が発表されている。
 この作品は、『The Eye』のハリウッドリメイクな
ども担当しているライン・ダグラス・ピアスンのオリジナル
脚本によるもので、題名は“Godspeed”。現在建設中の国際
宇宙ステーションの完成後を舞台にした物語で、ステーショ
ンの居住者全員の生命が脅かされるような危機を描いた作品
ということだ。そしてこの映画化では、キャメロンが『タイ
タニックの秘密』の撮影のために開発した3Dカメラが全面
的に採用され、全編3Dによる長編作品が計画されている。
製作は今秋に開始され、フォードの出演シーンの撮影は来年
早々の予定になっている。
 ただしフォードは、“Indy 4”の製作が開始されたときに
は、ただちにそれに参加することを約束をしているというこ
とで、そのスケジュールがどうなるかは不明だそうだ。
 また今回の計画は、第56回で紹介したキャメロンの監督計
画とは別のもののようで、監督はこれから選考されるとして
いる。そしてこの場合に、キャメロンの監督作品の配給につ
いてはフォックスが優先権を持っているが、今回は別の監督
ということで、配給会社もこれから選考されるようだ。
        *         *
 『ヒューマン・ネイチャー』などのミシェル・ゴンドリー
監督で、“Master of Space and Time”というSFスリラー
の計画が進められている。
 この作品は、“Software”などの電脳系の作品で知られる
SF作家ルディー・ラッカーが1984年に発表した原作を映画
化するもので、内容は、2人の科学者が思念を実体化する装
置を発明したことから始まる騒動を描いたもの。そしてこの
主演に、『スクール・オブ・ロック』のジャック・ブラック
を起用する計画も発表されている。
 ただしこの計画、現在は、原作の映画化権をフランスのプ
ロダクションが所有しており、そこから参加を要請されたゴ
ンドリーがそれをドリームワークスに持ち込んで、同社がフ
ランス側と交渉中とのことだ。従って、その交渉がまとまれ
ばドリームワークスでの映画化が行われることになるものだ
が、ブラックには“King Kong”などの予定も詰まっている
ので、実現は少し先になりそうだ。
 なお、この映画化権を所有しているフランスのプロダクシ
ョンの名前が、Midi Minuitとなっていたが、『好きと言え
るまでの恋愛猶予』の映画紹介でも触れた昔のSF映画専門
誌の流れを汲むものなのだろうか。
        *         *
 最後に、アメリカでは記録的な大ヒットで幕を明けた『シ
ュレック2』に関連して、第62回で紹介した“Shrek 3”と
“Shrek 4”の計画がアメリカでも報道された。そしてその
報道によると、シュレックが故郷に帰るのは“4”でのお話
とされており、前の紹介はちょっと違っていたようだ。また
そうなると、前に建てた予想も違ってきそうだ。
 一方、すでに準備が開始されているという“3”について
は、ヴォイスキャストとして主演3人の他に、今回長ぐつを
はいたネコを演じたアントニオ・バンデラスの契約も結ばれ
ているということで、ドンキーとネコの凸凹コンビの活躍が
さらに続くことになるようだ。


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井口健二