井口健二のOn the Production
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2004年01月31日(土) マスター&C、殺人の追憶、LovelyR、ビッグ・フィッシュ、ハッピー・F、いつかきっと、ディボース・S、ペイチェック、グッド・ガール

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
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『マスター・アンド・コマンダー』
  “Master and Commander The Far Side of the World”
『いまを生きる』のピーター・ウィアー監督が、ラッセル・
クロウの主演で描く19世紀初頭を背景にした海洋冒険作品。
パトリック・オブライエン原作の海洋シリーズの一篇で本邦
未訳作品の映画化。
1805年4月ブラジル沖、英国海軍のフリゲート艦サプライズ
号は、フランスの私掠艦アケロン号の動きを追っていた。こ
の時代、ナポレオン治世のフランスは、アメリカで建造され
た最新鋭艦を大西洋に投入、イギリスに遅れをとった海洋支
配を目指していた。
そのサプライズ号は、ラッキー・ジャックの異名を持つジャ
ック・オーブリー艦長の下、数々の戦果を挙げていた。そし
てその艦には、博物学者でもある軍医マチュリンや、弱冠12
歳で士官候補生として乗り組むウィル・ブレイクニー少年ら
の姿もあった。
しかし装備、船足共に劣るサプライズ号は、アケロン号から
の度々の襲撃にも策略を巡らして窮地を脱するしか術が無か
った。それでも彼らは追跡を続け、ホーン岬を廻って太平洋
へ。そして、イギリス捕鯨船団が補給基地とするガラパゴス
島でアケロン号撃破の策を練る。
アメリカではフォックスが配給したが、日本はブエナ・ヴィ
スタ配給。昨年の『パイレーツ・オブ・カリビアン』に続く
海洋ものということで、ついでに主人公の名前がジャックで
同じというのも、良い感じだ。
いわゆるチャンバラシーンは後半に多少ある程度だが、それ
までにいろいろ巡らされる策略や、その時の艦内の様子など
が活き活きとして面白く、2時間19分の上映時間はむしろ短
く感じられたほどだった。
ウィアー監督は、今まではどちらかというと人間ドラマで評
価されていたと思うが、アクションも見事なもの。しかもそ
こに、上に立つものとしての非情さなどの人間ドラマが描か
れるのだから、正に鬼に金棒という感じだ。
また、軍医役のポール・ベタニーが、『ビューティフル・マ
インド』でも共演したクロウと息の合ったコンビネーション
を見せている。因に原作は、この2人、オーブリーとマチュ
リンが主人公のシリーズのようだ。
実写を織りまぜているというホーン岬の嵐のシーンも見事だ
ったし、また劇映画では初めてというガラパゴス島に上陸し
て撮影されたシーンも効果的だった。

『殺人の追憶』(韓国映画)
1986年から91年にソウル近郊の農村で発生した連続婦女暴行
殺人事件。今だに未解決のこの事件を描いた刑事ドラマ。
ソウル近郊の農村で暴行されて殺された女性の遺体が発見さ
れる。地元警察の刑事がその捜査に当るが、現場の保存や鑑
識の手配もままならない。そして第2の事件が発生、同一犯
による連続殺人と見なされたこの事件の捜査に、ソウル市警
の刑事が派遣されてくる。
派遣された刑事は、警察署に来て早々に過去の失踪事件の書
類の中から最初の犯行を割り出し、その被害者の遺体を見つ
け出す。書類からのプロファイリングで事件に迫る都会の刑
事。その働きに地元の刑事の焦燥が募る。
しかし自分の勘だけに頼って犯人を割り出そうとする地元の
刑事は、昔ながらの拘束拷問という手法で目星をつけた男の
供述を引き出すものの、誤認逮捕の失態を繰り返す。こうし
て2人の刑事は、確執を持ちながらも徐々に真相に近付いて
行くが…。
実際の事件、しかも未解決の事件を描くと言うのは、かなり
微妙な問題を含むと思うのだが、この作品では、ユーモアや
謎解き、推理を巡らす展開を織り込んで、見事にエンターテ
インメントに仕上げている。
もちろん当事者にとっての評価は別になるだろうが、第三者
としてみる目には良くできた物語だ。偶然の重なりはいくつ
かあるが、まあそんなものだろうという感じもする。実際こ
の物語はフィクションなのだし、その意味では面白かった。
なお、この映画の大ヒットを切っ掛けに、事件に対する再捜
査を要求する動きが出たということだ。それだけ韓国国民に
とっては印象深い事件なのだろう。

『Lovely Rita』“Lovely Rita”
オーストリア出身の女性監督ジェシカ・ハウスナーの長編デ
ビュー作で、カンヌ映画祭の「ある視点」部門でも上映され
た2001年作品。ドイツ−オーストリアの合作だが、原題は英
語で表記されていた。
父親はちょっと厳格で、自宅に射撃場を作る程のガンマニア
だが、まずまず普通の家庭の両親と共に暮らすリタ。通って
いる学校ではちょっと浮いた存在だが、頭が悪いふうではな
い。ただし学校はさぼりがちで、通学バスの運転手が気にな
ったりもしている。
また、家では父親に叱られて部屋に閉じ込められたりもする
が、その一方で父親の作業を手伝って照明を付けたり、父親
の誕生日にはプレゼントをして、一緒に歌を歌ったり…。
そんなありふれた少女の日常の中で、何かが徐々に壊れて行
く。そして…。
幸い自分の娘はすでにこの年代を通過しているが、振り返っ
てみると、ここに描かれる父親の姿には思い当たるところが
多々ある。
実際、この映画を作ったのは、撮影当時まだ28歳だった女性
なのだし、ここに描かれる内容のかなりの部分は彼女の心情
を表わしていると考えていいだろう。そう思ったときに、自
分が自分の考えていたような父親だったと言えるか、そんな
ことを考えさせられた。 
同様の世代を描いた作品では、2003年7月16日付で紹介した
『KEN PARK』が近いと思うが、昨年の作品が、衝撃
的な映像の割りには内容的に覚めた感じだったのに対して、
この作品は映像自体は淡々と描かれているのに何か突きつけ
られるものを感じた。 
なお、本作の撮影はDigital Videoで行われたようだが、色
調その他でVideoと感じる部分はあったものの、画質の点は
問題ないように思えた。日本のHDでないDV作品の画質は
劣悪なことが多いが、何が違うのだろう。

『ビッグ・フィッシュ』“Big Fish”
ダニエル・ウォレス原作の映画化。ティム・バートン監督の
最新作。
主人公の父親は無類の語り部。主人公の結婚式でもその語り
口調で招待客を魅了し、その日の主役が誰かも忘れさせてし
まう。しかもその内容は、金の指輪に目のない巨大魚や、魔
女や、ユートピアのような町など、荒唐無稽なものばかり。
そんな父親の語りを子供の頃から何1000回も聞かされて育っ
てきた主人公は、世界でただ一人の父親の話に耳を傾けない
人間。そしてその日、ついに父親と仲違いをしてしまう。
それから3年、父親が突然倒れたとの知らせに、身重の妻と
生家に戻った主人公は、ふと荒唐無稽と思われた話に真実が
含まれていたことを知る。そして父親の謎に包まれた人生を
調べ、父親を理解しようと思い立った主人公は…。
独自の視点でファンタシーを作り続けてきたバートン監督に
は、スティーヴン・スピルバーグ以上に大人になり切れない
大人子供の感じが持たれていた。従って彼の作品には、若年
層には受けても大人の観客には受け入れられないという評価
が定着していたようだ。
それがこの作品では、間違いなく大人の映画を作り上げてい
る。しかも、スピルバーグは実話の映画化など現実的な内容
に頼らなくてはならなかったのに、バートンは堂々と自らの
ファンタシー世界でそれをやり遂げてみせたのだ。
もちろん、アルバート・フィニー、ユアン・マクレガー、ダ
ニー・デヴィートらのしっかりした演技がそれを支えたとも
言えるが、常にファンタシーと現実との間にいるような、そ
んなバートンの特有の雰囲気が、この物語に見事にマッチし
たとも言えそうだ。
なお、バートンの次回作は、“Charlie and the Chocolate
Factry”。ロアルド・ダール原作のファンタシーの2度目の
映画化は、ジョニー・デップ主演で今年5月の撮影開始がす
でに発表されているが、今回発揮した大人の映画作りがそれ
にどう活かされるか。脚本を、本作と同じジョン・オーガス
トが担当しているのも楽しみだ。
因に、出演者のデヴィートは、ダール原作『マチルダ』の監
督でも知られており、今回の出演にはその絡みもあったのか
も知れない。また、本作では、ジェシカ・ラング、ヘレナ・
ボナム=カーター、アリスン・ローマンら個性的な女優の配
役も見事だった。

『ハッピー・フライト』“View from the Top” 
グウィネス・パルトロウ主演のハリウッド版『スチュワーデ
ス物語』。
不幸な家庭に育った田舎娘が、一念発起して国際線ファース
トクラスのフライトアテンダントを目指す。と言っても、ス
タートは地方の弱小エアライン、そして徐々にトップに上り
詰めて行く過程が描かれる。
本当に、たまにはこういう罪のない映画を見るのも良い。ほ
とんど毒もないし。それでいて、成績は優秀だったが身体的
な問題で道を閉ざされてしまったマイク・マイヤーズ扮する
訓練教官の話などは、ちょっとほろりとさせられる訳で、そ
の辺の作りも壺を得ている。
監督は、ブラジル出身で『クワトロ・ディアス』などのブル
ーノ・バレット。表記の作品は政治絡みの作品だったはずだ
が、それでも重要なところでサッカーが絡んで、ちょっとニ
ヤリとする結末だったと記憶している。
この監督、現在はブラジルとハリウッドで交互に作品を発表
しているようだが、プロダクション・ノートによると、観客
が楽しいと思える作品を作りたいのだそうで、その意味で本
作は、監督の考えにマッチした作品と言えそうだ。
物語にも破綻がない、と言うか破綻が生じるような話ではな
いし、それでいて双発のプロペラ機が悠然と飛行するシーン
や、わざわざパンナムに関わる話題を出してくる辺りは、結
構解かっている感じもあって、見ている間は文句なく楽しめ
た。
本当に、たまにはこういう映画を見るのも良いものだ。

『いつか、きっと』“La Vie Promise” 
『8人の女たち』や『ピアニスト』のイザベル・ユベール主
演による母親と娘の物語。
母親は、ニースの街角に立つ娼婦。施設に預けている14歳の
一人娘が面会日に訪れても、母親は自分の境遇に染めさせた
くないのか、いつも邪険にしてそばに寄せようとしない。し
かし娘は、母親の愛情に飢えている。
そんな母親と娘が、ちょっとしたことから一緒に逃亡しなけ
ればならなくなる。思いついた行き先は、昔母親が束の間の
家庭を持った北部の村。しかし過去を捨て去ろうとしてきた
母親は、その場所の風景や住所も定かには記憶していない。
そして2人は旅の中で、時に反発し、時に寄り添いながら、
徐々に絆を再構築して行く。そんな2人を包み込むように、
フランスの田園地帯の風景が描かれる。
この描かれる風景の美しさが実に見事だった。そう言えば、
昨年紹介したエマニュエル・ベアール主演の『かげろう』で
も、美しいフランスの田園が描かれていたが、フランス映画
界に何かそう言う動きでもあるのだろうか。
なお、監督のオリヴィエ・ダアルは、この作品の次に『クリ
ムゾン・リバー2』を担当したようだが、『クリムゾン・リ
バー』も大自然が背景の作品だったから、この感覚が活かさ
れているのかも知れない。それなら期待したくなった。
母親と娘の関係の物語だから、父親の立場の僕には多少解か
りづらいところもあったが、この境遇ならこうなってしまう
かも知れないという感じは理解できた。そして彼女たちに寄
り添う男性の姿も良かった。

『ディボース・ショウ』“Intolerable Cruelty” 
ロサンゼルスを舞台に、ジョージ・クルーニーとキャサリン
・ゼタ=ジョーンズの共演、コーエン兄弟の脚本監督で描い
た離婚裁判コメディ。
クルーニーは離婚訴訟専門の弁護士、そしてゼタ=ジョーン
ズは結婚→離婚で財産作りを目指す女性。この2人が丁々発
止のやりとりを繰り広げる。
アメリカの裁判の恐ろしさは、いろいろな映画で描かれてき
たが、現場を押さえれば絶対有利なはずの不倫による離婚裁
判を、いろいろな手段で一気にひっくり返すのだから、当事
者でない観客にとってはかなり痛快だ。
と言っても、事例は3つほど登場するが、その手段はかなり
強引で、まあお話という感じ。それより、映画の主眼はクル
ーニーとゼタ=ジョーンズのだまし合いに置かれており、そ
ちらはかなり周到に作られていて面白かった。
特に、裁判シーンでの見るから演技してますという感じのゼ
タ=ジョーンズの演技は見ものだし、全く似合っていないピ
ンクのスーツ姿も見事だった。その脇を、ビリー・ボブ・ソ
ーントンやジョフリー・ラッシュらが、見るからという感じ
で固めているのも笑えた。
とは言っても、やはりコーエン兄弟の作品、毒はかなり強い
し人も死ぬ。でも、昔ほどどぎつい描写がなくなったのは、
兄弟が成長したのか、ハリウッドに飲み込まれたのか。これ
を残念と思う人もいるかも知れないが、僕は気楽に楽しめる
今の方が好きだ。

『ペイチェック 消された記憶』“Paycheck”
フィリップ・K・ディック原作の短編小説の映画化。
映画化の監督はジョン・ウー、そして主演はベン・アフレッ
クとユマ・サーマン。
主人公は、技術の解析に天才的な能力を発揮する男。彼はこ
の能力で、企業が発表した製品に隠された技術を見破り、そ
の模倣品を他の会社に作らせることを可能にしている。しか
しそれは法に触れることであり、彼は巨額の報酬を得る代り
に、その解析を行っている間の記憶をすべて消去することで
秘密を保持する契約を結んでいる。
そんな彼に大きな仕事が舞い込む。そしてその仕事をやり遂
げ、記憶を消去された後に与えられた報酬は…、彼自身が変
更したという19個のがらくたとしか思えない品々。しかもそ
の事実にがく然とする暇もなく、彼は命を狙われ、生き延び
るためにはその品々に隠された謎を解かなければならなくな
る。
物語の発端は、『トータル・リコール』に似ているし、その
後の展開も何となく共通項が多いのはご愛嬌だろう。しかし
ポール・ヴァーホーヴェン監督、アーノルド・シュワルツェ
ネッガーの主演で、かなり泥くさい感じだった前の作品に比
べて、ウーとアフレックのコンビはかなり垢抜けている。
謎解きも結構面白く見られたし、アクションも大掛かり、且
つ派手になっている。その点では良くできた作品といえる。
ただ、僕の個人的な嗜好としては、ディックはやはりアクシ
ョンより心理面で見せて欲しい感じを持つ。ウーもその心理
面に引かれてこれに参加したはずなのだが…。
なお、ウーお決まりの白い鳩はちゃんと飛びます。 

『グッド・ガール』“The Good Girl” 
『ブルース・オールマイティ』のジェニファー・アニストン
主演、『ムーンライト・マイル』ジェイク・ギレンホール、
『シカゴ』ジョン・C・ライリーの共演で、30歳の女性の姿
を描いたドラマ。
この3人の共演で、UIP配給作品。しかも女性映画という
売り込みでは、ライトな作品を予想して気軽に見に行ってし
まったのだが、実はこれが大変な作品だった。
田舎町のディスカウントストアに勤める女性が、同じ職場の
若い男にちょっかいを出す。しかしそれが飛んでもない結果
を招いてしまう。ちょっとした切っ掛けで、誰もが陥ってし
まいそうな悲劇。そんなドラマが見事に描かれていた。
大体、映画が始まってすぐのところから、これはハリウッド
のテイストと違うなという感じがした。それくらいに見事に
ハリウッド映画ではない作品。インディペンデント映画って
何?と聞かれたら、これがそうだ言い切れるような作品だっ
た。
しかもこの顔ぶれでそれを行っているのだから、ミゲール・
アテタというこの監督の感覚はすごい。アニストンもギレン
ホールもライリーも他のハリウッド映画で演じているのと同
じような役柄で…、でもそれが少しずつ違ってくるのだ。
普段見慣れたハリウッド映画の裏に潜む現実の恐ろしさを描
く、そんな感覚が見事に表現されている感じがした。



2004年01月15日(木) 第55回

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 今回はこの話題から始めることにしよう。
 前回の最後に報告した“Harry Potter and the Goblet of
Fire”の記事で、ローワン・アトキンスンがポッターの敵
役ヴォルテモートを演じるという情報について、1月7日付
のイギリスの大衆紙SunのWeb版に同様の記事が掲載された。
 この情報、元はと言えば、昨年12月19日付Daily Variety
紙のFilm Production Chartという情報ページで、“Goblet
of Fire”の出演者欄にアトキンスンの名前があるのを見つ
け、昨年の5月頃にヴォルテモート役にオファーされていた
という情報と併せて紹介したものだが、スクープでは勇名を
馳せるSun紙より先にこの情報を流せたということは気分が
良い。これからもこの調子でやっていきたいと、気持ちを新
たにしているところだ。
        *         *
 というところで今回は、1月2日付で発表された昨年度の
アメリカ映画興行成績の結果から報告しよう。
 昨年度全米興行成績の第1位に輝いたのは3億3971万ドル
を稼ぎ出した“Finding Nemo”。次いで第2位は3億541万
ドルの“The Pirates of Caribbean”で、ディズニーはアニ
メーションと実写で見事に1−2フィニッシュを達成した。
 そして第3位には、2億9041万ドルの“LotR: The Return
of the King”となったが、実は、この作品は昨年12月17日
に全米公開されたばかりで、たった15日間だけでこの数字を
叩き出したもの。この先どこまで伸びるかは解からないが、
取り敢えずは第3位ということになっている。
 第4位は“The Matrix Reloaded”の2億8152万ドル。第
5位は“Bruce Almighty”の2億4261万ドル。第6位“X2:
X-Men United”の2億1495万ドルで、ここまでが2億ドル突
破となった。
 さらに第7位に1億7087万ドルの“Elf”。第8位には昨
年末公開の“Chicago”の1億5921万ドル、なお前年からの
合計では1億7068万ドル。第9位には“Terminator 3”の1
億5035万ドル。第10位は“Bad Boys 2”の1億3840万ドルと
なっている。
 以下、SF/ファンタシー系の作品では、第11位に“The
Matrix Revolutions”(1億3829万ドル)、第14位に“The
Hulk”(1億3214万ドル)、第18位に“Spy Kids 3D”(1
億1168万ドル)、第19位に“Freaky Friday”(1億1018万
ドル)。さらに、第20位には“Scary Movie 3”(1億956万
ドル)、第21位“The Italian Job”(1億613万ドル)、第
25位“Deardevil”(1億254万ドル)、第26位“Charlie's
Angels: Full Throttle”(1億79万ドル)などが続いて、
1億ドル突破は全部で26作品だった。
 なお、第21位の“The Italian Job”は、夏前の最初の公
開では1億ドル以下だったが、夏作品の封切りの為に好調時
に打ち切られたと判断したパラマウントが、秋に再公開を実
施して1億ドルを達成したものだ。
 この他、気になる作品では、“The Last Samurai”(9002
万ドル:28位)と“Master and Commander”(8300万ドル:
32位)は12月公開なので、まだ数字が伸びる可能性があり、
特に“The Last Samurai”の1億ドル突破は固いところだろ
う。また“LotR: The Two Towers”は、7308万ドルで38位だ
が、これは昨年度分だけの数字で、前年からの合計では3億
4175万ドルとなっている。
 そしてこれらの結果を踏まえて、歴代の興行成績では、第
1位の“Titanic”(6億79万ドル)、2位の“Star Wars”
(4億6100万ドル)、3位の“E.T.”(4億3497万ドル)、
4位“Star Wars Ep.I”(4億3109万ドル)、5位“Spider
-Man”(4億371万ドル)、6位の“Jurassic Park”(3億
5706万ドル)までは変わらなかったが、7位に“LotR: The
Two Towers”が食い込み、8位に“Finding Nemo”、16位に
“The Pirates of Caribbean”、18位に“LotR: The Return
of the King”が入ることとなった。
 ただしこの内の“LotR: The Return of the King”につい
ては、まだまだ数字は伸びる可能性があり、3億1478万ドル
で現在11位にランクされている“LotR: The Fellowship of
the Ring”から尻上がりに数字が高くなっている事実と考え
あわせると、史上6作目の4億ドル突破の可能性も見えて来
ている。後は賞レースの行方次第という感じだが、出来れば
アカデミー賞の作品賞を期待したいところだ。
        *         *
 さて以下は、製作ニュースを紹介することにしよう。
 まずは昨年度、実写では第1位となる興行成績を記録した
“The Pirates of Caribbean”に主演のジョニー・デップの
最新情報で、第41回でも紹介したジョン・マルコヴィッチ共
演“The Libertine”の撮影が、2月23日にロンドン郊外で
開始されることが発表された。
 この作品は以前にも紹介したように、17世紀のイギリスの
詩人で、国王チャールズ2世の側近でもあったジョン・ウィ
ルモット・ロチェスターの生涯を描くもの。元はマルコヴィ
ッチがロチェスター役を演じた舞台劇の映画化だが、1996年
のシカゴ・ステッペンウルフ劇場での初演の時から、マルコ
ヴィッチは映画化に値する作品と考え、その際にはデップに
主演してもらいたいと考えていたそうだ。
 それがようやく実現する訳だが、前回も紹介した総製作費
の1600万ドルは、現在ハリウッド作品がデップに出演交渉す
る際の最低金額にも満たないということで、これが実現する
のは、デップ自身がハリウッドの大型予算の作品と、インデ
ィーズの小規模な作品に交互に出演したいという希望を持っ
ているからだということだ。
 また、今回の映画化実現までに8年も掛かってしまったこ
とについては、資金調達の問題もあったが、他方で上演時に
かなり話題にされた猥褻性の問題があり、それを芸術性を損
わずにソフト化するために時間が必要だったということだ。
そして映画のレイティングがNC-17になったらどうするかと
いう問いに対し製作担当者は、「質問の意味は理解するが、
そのような恐れはない」という回答だったそうだ。
 まあ、現状で気になるのは“The Pirates of Caribbean”
で増えているはずの子供のファンがどう反応するかだが、公
開までには1年以上が掛かると予想される作品では、それま
でに別の作品も何本か公開される予定になっており、それほ
ど気にすることもないというところだろう。
 因にデップの作品では、すでにアメリカでは“Once Upon
a Time in Mexico”(レジェンド・オブ・メキシコ)が昨年
9月に公開(5585万ドル、52位:日本は陽春予定)されてい
るが、他にも第14回で紹介した“J.M.Barrie's Neverland”
と、スティーヴン・キング原作の“Secret Window”が待機
中で、後者は2004年8月全米公開、日本は2005年の予定にな
っている。
 また、今回発表された“The Libertine”に続いては、す
でに紹介している“Charlie and the Chocolate Factory”
と、“The Pirates of Caribbean 2”への出演も本人が希望
しているそうだ。
        *         *
 ところで、デップ関連の情報ではもう1本、第52回で紹介
した“Diamond Dead”の主演にもオファーされていたことが
公表された。
 これは、昨年12月に同作品の公式ホームページに掲載され
た情報で、監督のジョージ・A・ロメロが直接デップに出演
依頼の手紙を出したということだ。それによると、ロメロは
主役の一人バンドリーダーDr.D役にデップの出演を希望し、
他に主人公の女性シンガー役には『ホワイトオランダー』な
どのアリスン・ローマン、また死神役にはデヴィッド・ボウ
イかサー・イアン・マッケランを希望しているようだ。なお
この死神役には、当初はクリストファー・リーを希望してい
たという情報もある。
 ただしこの手紙では撮影を3月にロンドンで行うとあり、
残念ながら上記の“The Libertine”の撮影と重なってしま
うことになる。従って、撮影のスケジュールが変わらない限
りはちょっと望み薄の感じだが、デップのバンドリーダーで
ゾンビ役というのも面白そうだし、ロメロもここまで手紙を
公表しておいて今更引き下がるというのも情けないし、何と
かスケジュールの再調整を期待したいものだ。
        *         *
 お次も続報で、第53回で紹介した“The Pacifier”でコメ
ディに挑戦するヴィン・ディーゼルに、強力な助っ人が登場
した。前回は未定だった監督に、『女神が家にやってきた』
のアダム・シャンクマンの起用が発表されたものだ。
 この作品は、前回も紹介したように、要人警護担当の潜入
捜査官の主人公がいろいろな経緯から子供の警護を命じられ
るというもの。シュワルツェネッガー主演のアクションコメ
ディ作品にも比較されていたが、ディーゼルにとっては事実
上初のコメディ作品となるもので、しかも子供相手というの
は、主人公ならずともかなりきつい仕事になりそうだった。
 そこにシャンクマン監督が決ったもので、『女神が家にや
ってきた』では、興行成績1億3253万ドルで昨年度の第13位
の大ヒットを記録したコメディ得意の監督の起用は、ディー
ゼルにとってもかなりの朗報と言えそうだ。
 なお、大ヒット作を手掛けて注目度の高いシャンクマンほ
どの監督が、今回突然に起用が決ったのには裏があって、実
はシャンクマンは、スパイグラス製作、ソニー配給で、第50
回に紹介した“Four Christmass”の計画を、4月撮影開始
予定で進めていた。
 ところが、その後に第53回に紹介したジョー・ロス監督の
“Skipping Christmass”の計画がリヴォルーションから発
表され、ソニーはその配給を手掛けることになった。しかし
同じ2004年のクリスマスシーズンを目指す作品が2本では共
倒れになると判断したソニーは、スパイグラスとシャンクマ
ンに1年間の製作延期を要請。これに対しスパイグラスは、
一旦は他社での配給を検討したものの、結局はソニーの要請
を受け入れることにしたものだ。
 そこでスパイグラスが、改めてディズニー配給で進めてい
たディーゼル作品の監督をシャンクマンに要請した訳だが、
シャンクマンはこれを問題なく受け入れたということだ。ま
あシャンクマンにしても、今が旬のディーゼルを演出するこ
とには興味を引かれたというところかもしれないが、いずれ
にしても八方丸く納まることにはなったようだ。
        *         *
 続いても監督決定の情報で、ジェームズ・エルロイ原作の
犯罪小説“The Black Dahlia”の映画化の計画に、ブライア
ン・デ=パルマ監督の名前が発表された。
 この作品は、1947年に発生して迷宮入りとなっている女優
エリザベス・ショート殺人事件という現実の事件を題材にし
たもので、事件を追った二人のロサンゼルス市警刑事を主人
公にして描かれている。彼らは事件を追う内に死んだ女性に
魅せられて行き、ついには事件の真相に辿り着くのだが…と
いう展開のものだ。
 そしてこの映画化の計画は、同じくエルロイ原作の『LA
コンフィデンシャル』がアカデミー賞脚色賞などを受賞した
1998年に最初に発表され、このときは『セブン』『ゲーム』
で勢いに乗るデイヴィッド・フィンチャーが、『ファイト・
クラブ』の次に監督する予定になっていた。しかしその計画
は実現せず、そのまま今に至っていたものだ。
 その計画が、今回はデ=パルマが1987年に監督した『アン
タッチャブル』などを手掛けた製作者アート・リンスンの下
で進められているもので、その関係からデ=パルマにオファ
ーされ、監督を引き受けることになったようだ。
 また、共同製作者には、当初からこの計画を進めているル
ディ・コーエンとモシェ・ディアマントも参加しており、彼
らが用意したジョシュ・フライドマンの準備稿がデ=パルマ
の心を捉えたということだ。
 なお主演には、同じく準備稿が気に入ったというマーク・
ウォルバーグとジョッシュ・ハートネットも発表されている
が、実現するとハートネットは、『ハリウッド的殺人事件』
でも演じたロサンゼルスの刑事役を再び演じることになる。
 因に、今回の製作にはハリウッドの映画会社は参加してい
ないようで、製作費は海外配給権の契約によって調達される
他、ドイツの映画基金アポロ・メディアが利用されるという
ことだ。
        *         *
 もう1本、監督の情報で、第21回で紹介したパラマウント
が進めている1966年製作のジョン・フランケンハイマー監督
作品“Seconds”(セコンド)のリメイク計画に、ジョナサ
ン・モストウの監督が改めて発表された。
 この計画では、元々はモストウの監督で準備が進められ、
一度は2000年公開の『U−571』の次の作品としての発表
も行われていた。ところがその頃から、モストウには『ター
ミネーター3』への参加が要請され、結局そちらを優先する
ことになったモストウに代って、第21回の時点では、『ザ・
コア』のジョン・アミエルの監督が発表されていた。 
 しかしそのアミエルは監督を断念し、『T3』を終えたモ
ストウが再び監督の椅子に戻ることになったものだ。
 なおモストウは、今回の監督再就任に当って1964年に発表
されたデイヴィッド・エリーの原作を読み返したということ
で、モストウはフランケンハイマー版よりさらに原作に忠実
な映画化を目指したいとしている。
 なお物語は、人生をやり直したいと思った老人が若い容姿
と、今までとは異なる人格や身分を手に入れるが、個人的な
問題のために新しい生活に耐えられなくなり…というもの。
1966年版では若返った男をロック・ハドスンが演じており、
作品はアカデミー賞の白黒撮影賞にノミネートされた。
        *         * 
 続いてはリメイク…と言っていいかどうかという話題で、
1968年にジーン・ワイルダー、ゼロ・モステル主演、メル・
ブルックスの監督で映画化された“The Producers”(日本
未公開)のミュージカル版の映画化が計画されている。
 実はこの計画、元々はブルックス監督がアカデミー賞のオ
リジナル脚本賞を受賞した映画作品によるものだが、これが
2001年に舞台ミュージカル化され、この年のトニー賞では、
何と12部門で候補になって、その全てで受賞するという高い
評価を受けたものだ。また、昨年末に始まった再演は、初演
の時と同じネイザン・レーンとマシュー・ブロデリックの共
演で行われているが、4月4日までの公演がすでに全て予約
で満席となり、今まで記録的と言われた“The Lion King”
の舞台版をも上回る興行を続けていると報告されている。
 そしてこのミュージカル版の映画化が計画されているもの
だが、計画しているのは元の映画作品のリメイク権を所有し
ているユニヴァーサルで、このほど同社は、主演のレーンと
ブロデリックに対して映画出演の契約を結んだことを発表し
ている。さらにブロードウェイの舞台の製作者でもあるブル
ックスと共同脚本家のトーマス・ミーハン、舞台監督のスー
ザン・ストロマンについても参加が話し合われているという
ことで、ブロードウェイの舞台そのままの映画化が行われる
ことになりそうだ。
 なお計画では、2005年の早い時期からの撮影、同年の後半
に公開というスケジュールが立てられているようだ。
        *         *
 後半は短いニュースをまとめておこう。
 まずは、前回サラ・ミッシェル・ゲラーの主演を報告した
『呪怨』のハリウッドリメイク“The Grudge”で、相手役に
“Roswell”のジェイスン・ベアの出演が発表された。なお
ベアは、ゲラー主演の“Buffy the Vampire Slayer”にも最
初の頃に登場していたということだが、テレビシリーズの他
には、1998年の『カラー・オブ・ハート』や、2001年の『シ
ッピング・ニュース』などにも出演していたようだ。また、
今回のリメイクで彼が演じるのは、主人公の男友達で東京の
大学に通う学生の役ということで、本当に設定や舞台もオリ
ジナルそのままのリメイクが行われるようだ。
 次も続報で、第21回で報告したドウェイン“ザ・ロック”
ジョンスンの主演が予定されているヴィデオゲームの映画化
“Spy Hunter”の脚本に、昨年『フレディvsジェイソン』
を担当したマーク・スウィフトとダミアン・シャノンのチー
ムが発表された。この計画では、『ワイルド・スピード2』
を手掛けたマイクル・ブランデットとデレク・ハースのチー
ムがゲームからインスパイアされたオリジナルのコンセプト
を提供したが、彼らでは脚本を完成できなかったようで、新
たにスウィフトとシャノンのチームが招請されたものだ。な
お計画では、撮影は6月に開始の予定になっており、2005年
夏のテントポールを目指すということだが、これから6月ま
ででは脚本の作業もかなり忙しそうだ。
 もう一つ、ヴィデオゲーム絡みの話題で、トニー&リドリ
ー・スコットが経営する映像製作会社スコット・アソシエイ
ツが、ゲームメーカーのアタリ社が3月に発売する新ゲーム
ソフト“Driv3r”のプロモーション用に、3分の短編映画を
製作したことが発表された。このゲームソフトは“Driver”
“Driver 2”に続くシリーズ3作目になるものだが、ゲーム
に収録される音声には、マイクル・マドセン、ヴィング・レ
イム、ミシェル・ロドリゲス、ミッキー・ロークらが声優と
して参加しており、物語性はかなり高いもののようだ。そし
て製作された短編映画は、“Run the Gauntlet”と題された
もので、内容は世界を股に掛けた窃盗団を追いつめる潜入捜
査官の活躍を描いたもの。因にこの作品は、自動車会社のB
MWが展開する映像サイトBMWfilm.comで公開されている。
        *         *
 最後にちょっと期待の湧く情報で、ピーター・ジャクスン
監督の“The Lord of the Rings”3部作でガンダルフを演
じたサー・イアン・マッケランが、新年に放送されたイギリ
スのテレビ番組で、3部作の前日譚となる“The Hobbit”の
映画化の可能性について語っている。
 それによると、“The Hobbit”の映画化権は、現在はニュ
ーラインとMGMが折半で所有しており、またジャクスンが
ユニヴァーサルで“King Kong”の計画を決めたことから、
両社が映画化に向けた問題解決を話し合うのに充分な時間が
与えられたということだ。そしてマッケラン自身は、灰色の
ガンダルフを再び演じることには大いに興味を持っていると
いうことで、ジャクスンが希望すればいつでも話し合いの席
に着きたいそうだ。
 なお、ジャクスンも“LotR: The Return of the King”の
ワールドプレミアの席で“The Hobbit”の映画化に対する期
待を表明しているということで、これはかなり早期の実現が
期待できそうな雰囲気だ。



2004年01月14日(水) Oasis、ゴシカ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介しています。     ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『Oasis』(韓国映画)              
一昨年のヴェネチア映画祭で、監督賞(イ・チャンドン)、
新人俳優賞(ムン・ソリ)、国際批評家連盟賞を受賞した作
品。前科3犯の男と、脳性麻痺で身体の自由の利かない女性
との純愛を描いた衝撃的なラヴ・ストーリー。      
男は2年半の刑に服しても、全く反省の色さえ見えない屑の
ような人間。そんな男が、寒空の下を出所してくる。しかし
家族にも疎まれる彼には、弟の案内でようやく辿り着いた兄
の家にも身の置場などない。              
その男が、訪ねた家で一人の障害者の女性に気を留める。彼
女もまた家族に疎まれた存在で、家族の引っ越した後のアパ
ートの部屋に一人で住んでいる。そして男は、最初は興味本
意から、その女性に接近して行くのだったが…。     
何と言っても、受賞したムン・ソリの演技が凄い。脳性麻痺
の人の生活は、過去にドキュメンタリー映像などで見たこと
があるが、それを完璧に表現している。         
それにしても、口元は多分入れ歯を使ったのだろうが、目の
演技は一体どうやっているのか、驚異的な演技力だ。特に、
彼女が何かを訴えようとするときの演技には鬼気迫るものが
あった。                       
確かにムン・ソリ自身は、飛び切りの美人という人ではない
ようだが、ごく普通の容姿の女性が病気のためにこのように
変貌してしまう。そんな哀しさも見事に表現したものとも言
える。                        
現時点でこの映画を見ると、どうしても昨年の『ジョゼと虎
と魚たち』と比較せざるを得ない。昨年の作品を見たときに
は、僕はそれを高く評価した。その考えは今も変わらない。
福祉問題などを考えるとき、あの作品は大きな問題提起をし
てくれる。                      
しかし今回この作品を見ていると、自分の甘さに気付かされ
る。現実がもっと厳しいものであることは前の作品を見たと
きにも感じてはいたが、一面ではそれを映像に描くことは不
可能とも考えていた。それを見事に描いてくれたのがこの作
品だ。                        
この作品の中で福祉問題などは、多少矛盾点が指摘される程
度で、ほとんど話題にもされていない。それよりももっと厳
しい現実が突きつけられる。しかしここに描かれるのは、純
粋に男女の愛の物語だ。しかもそれが、普遍的なものに描か
れてるところが素晴らしい。              
そして映画では、随所に描かれるファンタスティックなシー
ンの構成も見事だ。このような幻想シーンは、下手にやると
違和感が生じるものだが、ここでは見事にまとめ上げられて
いる。それをまとめ上げた監督の技量は、確かに監督賞に値
するものだ。                     
                           
『ゴシカ』“Gothika”                 
『TATARI』などのホラー映画ブランド=ダークキャッ
スルの最新作。00年公開『クリムゾン・リバー』のマチュー
・カソヴィッツ監督が、ハル・ベリー、ペネロペ・クルスの
共演で描いたゴシックホラー。             
ベリーが演じるのは、女子刑務所の中の精神病院棟に勤める
女医。彼女は、悪魔に強姦されていると主張するクルス扮す
る女囚などの治療に当っている。しかしある豪雨の晩、帰宅
途中の女医は路上に佇む少女を避けて事故を起こし、少女に
近づいたところで意識を失う。             
そして意識を取り戻したとき、女医は夫殺しの容疑で逮捕、
収監されていた。彼女は記憶を辿り少女と出会ったことを思
い出す。しかしその少女は、もはやこの世には存在せす、彼
女の発言を信用するものはいない。           
ダークキャッスルの作品であるから、もちろん超常現象が絡
むお話ではあるのだけれど、その存在を、ベリーの役を含め
て、クルスを除くほとんど全員が否定して始まるところが面
白い。しかもそれを徐々に信じなくてはならなくなる過程が
丁寧に描かれる。                   
確かにコケ脅かしのようなシーンや偶然が重なる展開もある
が、それ以上にこの作品ではドラマがしっかりと存在してい
ることに感心した。さすが敏腕製作者ジョール・シルヴァが
見抜いたカソヴィッツの手腕というところだ。      
中世の館のような刑務所の景観が良い感じだったし、その中
に設置された現代技術を駆使した施設にも現実感があった。
またそれが迷路のように描かれる演出も見事だ。それに、見
終って何となくほっとするような結末も良かった。    



2004年01月01日(木) 第54回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 明けましておめでとうございます。
 どうにか3回目の正月を迎えました。本年もよろしくお願
いします。
 ということで、早速、本年最初の話題は、ちょっと意外な
展開になったオスカー賞レースの情報から。
 前々回紹介した長編アニメーション作品賞部門の予備候補
に続いて、今回は視覚効果賞部門の予備候補が発表され、
“Hulk”
“The Lord of the Rings: The Return of the King”   
“Master and Commander: The Far Side of the World”  
“Peter Pan” 
“Pirates of the Caribbean:  
            The Curse of the Black Pearl”
“Terminator 3: Rise of the Machines” 
“X2”の7作品が挙げられた。
 この内、ニュージーランドのVFX会社Wetaが担当した 
“The Lord of the Rings”と、 Cinesite担当の“X2”を除
く5作は、いずれもILMの担当作品ということで、依然と
して同社の強さを見せつけた感じだ。ただし“Peter Pan”
には、ディジタル・ドメインとソニー・イメージワークスも
参加しているそうだ。
 というところで、このリストを見て気付かれた人も多いと
思うが、今回発表された予備候補の中に、『マトリックス』
の2作品が選ばれなかった。もちろんこの他にも“Bad Boys
2 Bad”や“Chharlie's Angels/ Full Throttle”など選ば
れなかった作品はいろいろあるが、やはり1999年度の受賞作
の続編についてはちょっと気になるところだ。
 これについてアカデミー委員会からの公式の説明はされて
いないが、実は今回、配給元のワーナーは、同じ年度中に2
作品が連続して公開された同作が、互いに票の喰い合いにな
るのを避けるため、敢えて『リローデッド』の推薦を止め、
『レボリューション』1本に絞る作戦に出ていた。ところが
一部の選考委員からは、『レボリューション』の視覚効果が
前作を上回っていないという意見が出て、そのために予備候
補からも外れてしまったということのようだ。
 しかし、FXシーンの数量では間違いなく、他の予備候補
のいくつかを上回っている作品が、候補に挙げられなかった
ことについては、疑問の声も上がってきている。
 ということで、『マトリックス』の続編が最終候補に挙が
る可能性は全く無くなってしまった訳だが、確かにワーナー
の作戦失敗の感は否めないものの、僕の感覚では、この2作
が1本で作られていれば、恐らくは物語も視覚効果も、もっ
とバランスの良い作品に仕上がっていたと思われる。特に、
『リローデッド』のハイウェイのシーンは映画史にも残る名
場面と思っていただけに、今回予備候補にもならなかったこ
とは、残念と言うほかはない。
 なお、最終候補は3本選ばれるが、その内“The Lord of
the Rings”と“Pirates of the Caribbean”は固いところ
だろう。で3本目は、“Master and Commander”と“Peter
Pan”はまだ見ていないが、“Hulk”か“Terminator 3”、
“Hulk”なら順当という気がする。そしてWetaとILMの対
決となる訳だが、ここでもし“The Lord of the Rings”が
受賞すれば、シリーズ3作が3年連続で受賞となるもので、
シリーズでは最初の『スター・ウォーズ』3部作、会社では
ILMが達成しているとは言うものの、これらを同時という
のは正に快挙と言えるものだ。
 全部門の候補の発表は1月27日、受賞式は2月29日の日程
になっている。
        *         *
 お次は、信条的にはあまり好まないが、一応報告しておき
たい話題で、先日行われたイラクのサダム・フセイン拘束作
戦に使われた名称のOperation Red Dawnが、実は1984年製作
のジョン・ミリウス監督作品『若き勇者たち』から採られた
という噂が広まっている。
 この作品は、原題が“The Red Dawn”というもので、作戦
名からOperationが取れたもの。これだけなら偶然の一致と
いうこともありそうだが、実は作戦の中で場所を示すのに使
われたWolverine One, Twoという名称が、映画の中で使われ
た主人公たちのチームの名前と同じだというのだ。
 ここまで来ると、確かに関連はありそうだが、元々『若き
勇者たち』という作品は、当時の政治状況を背景に、突然ソ
連に占領されたアメリカ合衆国の高校生グループが、山に立
て籠り占領軍にゲリラ戦を挑むというもので、正直に言って
かなり右寄りの作品。ミリウス自身がそういう政治思想の持
ち主ということで、さもありなんという作品ではあるが、軍
事関係者にはかなりファンも多いということで、今回の作戦
名に採用された可能性は高そうだ。
 因に映画は、パトリック・スウェイジ、C・トーマス・ハ
ウェル、それに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出る
直前のリー・トムプスンが主人公の高校生を演じ、アメリカ
のガイドブックでの評価は星1つ半となっている。
 ついでにミリウス監督の情報で、既報の“Conan”の新作
の計画は、アーノルド・シュワルツェネッガーのカリフォル
ニア州知事就任で実現不可能になってしまったが、ミリウス
自身は、彼の知事就任は大歓迎だとしているようだ。そして
ミリウスの次回作には、プロレスラーのトリプル・Hを主演
に抜擢したオートバイを使った西部劇の計画が進められてお
り、ミリウスは起用するレスラーに対して、次世代のシュワ
ルツェネッガーを期待しているということだ。
        *         *
 以下は、通常の製作ニュースを紹介しよう。
 まずは続報。第48回で紹介した“The Amityvill Horror”
の再度の映画化の計画が面白くなってきた。
 この計画で、前の紹介時にエメット/ファーラが進めてい
た計画は、その後、ミラマックス傘下のジャンルブランド=
ディメンションが買い上げ、さらにディメンションは、元々
の屋敷の住人だったジョージ・ランツから、映画化権と製作
への協力を取り付けて、製作準備を本格化させていた。
 これに対して、1979年版の映画の権利を保有するMGMも
リメイクの計画を立上げ、一時は競作の可能性も出てきてい
た。しかし現状での競作は共倒れになる可能性が大きいと判
断した両社は、このほど2つの計画を合体して、1本の映画
として進めることを発表したものだ。
 なお計画では、先に“The Texas Chainsaw Massacre”の
リメイクを成功させたマイクル・ベイ主宰のプラチナム・デ
ューンも参加し、基本的にはMGM作品のリメイクとするも
のの、その内容には、今回エメット/ファーラが用意したシ
ナリオの要素も取り入れるということだ。また、製作には、
両社が用意した予算が投入されるということで、かなりの製
作費が注ぎ込まれることになりそうだ。
 因に契約では、アメリカ国内の配給権をMGMが獲得し、
海外の配給はディメンションが行うということだが、前作は
日本でもかなりヒットしており、日本の配給権はどうなって
いるのだろう。
 また、今回の契約では、もう1本“True Believers”とい
う作品も共同で製作されることになった。
 この作品は、元はMGMが進めていたもので、実は『リン
グ』の中田秀夫監督のハリウッドデビューとなる作品。ホワ
イトハウスを目指す上院議員と、救世主となる子供を産むた
めに死刑囚と結ばれようとする女性との交流を描いたダグ・
リチャードスンの長編小説を、原作者自ら脚色したシナリオ
で映画化するものだが、当然、中田監督向きの捻りのあるも
のなのだろう。
 なお契約で、この作品のアメリカ国内の配給権はディメン
ション側が持つことになっており、同時に製作上の主導権も
同社が持つということだ。まあ、ジャンル映画を手掛ける会
社が主導権を握ることは良いことだが、親会社のミラマック
スの映画に関する姿勢の厳しさは定評のあるところで、中田
監督の頑張りにも期待したいところだ。
        *         *
 日本人監督のハリウッド映画進出の続きで、清水崇監督が
自ら手掛ける『呪怨』のハリウッドリメイクのヒロインに、
“Buffy the Vampire Slayer”と『スクービー・ドゥー』の
サラ・ミッシェル・ゲラーの主演が発表された。
 この映画化は、映画監督のサム・ライミと、製作プロダク
ションのセネター・インターナショナルが立上げたジャンル
ブランド=ゴースト・ハウス・ピクチャーズが製作するもの
で、撮影は1月27日から東京の東宝撮影所で行われるという
ことだ。またアメリカ配給は、ライミが優先契約を結んでい
るコロムビア=ソニーが担当することになっている。
 なおハリウッド版の映画化は、スティーヴン・サスコとい
う脚本家が、日本版オリジナルとその続編を含むシリーズの
全体から脚色したシナリオに基づいて行われ、題名は“The
Grudge”。「恨み」という意味のこの題名は、『呪怨』が海
外の映画祭で上映された際に付けられた副題だったようだ。
 またゲラー以外の配役は未発表だが、その他の配役もハリ
ウッド俳優で固められるはず。一方、ライミは製作者として
名を連ねてはいるが、年末には“Spider-man 2”の追加撮影
の噂もあり、ポストプロダクションも進行中のようで、ライ
ミ自身が現場製作者として仕事をすることはなさそうだ。
 因にゲラーは、“Scooby-Doo 2: Monsters Unleashed”の
撮影は既に完了しており、その後にMGMで撮影されている
パロディ作品“Romantic Comedy”の撮影が終了次第、来日
することになっている。注目度の高い女優の出演だけに、映
画の完成にも期待したいところだ。
        *         *
 続いてはリメイクの情報で、ディズニーがフレッド・マク
マレー主演で1959年に製作した“The Shaggy Dog”(ボクは
むく犬)を、ティム・アレンの主演で再映画化する計画が発
表された。
 オリジナルは、1997年にリメイクされた『フラバー』のオ
リジナルで1961年製作の“The Absent-Minded Professor”
(うっかり博士の大発明・フラバァ)などと並ぶディズニー
コメディの元祖とも言える作品。太古の呪文で大形犬に変身
させられた少年とその家族を巡るドタバタを描いたもので、
家族が変身した息子に寄せる愛情などが見事に描かれ、さす
がディズニーと思わせる作品になっている。
 またこの作品は、ディズニーコメディの正に第1作という
ことで、後の作品ほど洗練されてはいないものの根強いファ
ンが多く、1976年と87年に続編(後者はTVムーヴィ)と、
1994年にはTVMでリメイクもされているということだ。
 そして今回の計画は、ディズニーの製作で続編も作られた
“The Santa Clause”(サンタクローズ)などに主演のアレ
ンの計画として進められているもので、計画ではアレンが犬
に変身する呪文に取り憑かれることになっている。因に、大
人が呪文に掛けられるという設定は、第1作よりも1976年に
ディーン・ジョーンズ主演で製作された続編の“The Shaggy
D.A.”に近いものになりそうだ。
 さらに今回、この監督に『バーシティ・ブルース』などで
知られるブライアン・ロビンスの起用が発表されている。な
お、脚本は犬小屋一杯ほどもあるということで、7月の撮影
開始を目指して最後の調整が行われているようだ。
 またディズニーとアレンでは、本作に続けて“The Santa
Clause”第3作の計画も発表されている。 
        *         *
 この他のリメイク計画では、『チャイナタウン』の脚本で
オスカーを受賞したロバート・タウンが、アルフレッド・ヒ
ッチコックのイギリス時代の作品“The 39 Steps”(三十九
夜)に挑戦することが発表されている。
 この作品は、スコットランド出身の著述家で、イギリス政
府の情報部長から後にはカナダ総督にもなったジョン・バッ
カンが1915年に発表した原作を映画化したもので、第1次大
戦直後のイギリスを舞台に、ギリシャ首相暗殺計画のかぎを
握るスパイを殺したと疑われた主人公が、警察とスパイ団の
両方から追い回されるというお話。ヒッチコックの映画化で
は、かなりコメディタッチの演出が行われていた。
 そしてこの作品のリメイクは、既に1959年と78年の2回、
いずれもイギリスで行われており、今回は4回目の映画化と
なるものだ。なお製作は、カールトン・メディア・グループ
のカールトン・アメリカで行うが、実はこの会社は、ヒッチ
コックの1935年作品から、59年、78年作品の権利も所有して
おり、つまりは本家本元のリメイクということになる。
 またタウンは、今回の計画では脚本と監督も担当すること
になっているが、この作品については、「現在の逃走ものの
作品の全ては、ヒッチコックのこの作品から始まったものと
言って過言ではない。自分の作品もそのように言われるよう
なものにしたい」と抱負を語っているそうだ。
 なお、カールトンではこの他に、アイラ・レヴィンの原作
で、1979年に映画化された“The Boys From Brazil”(日本
未公開)と、人類初の有人火星探査を題材にして、1977年に
映画化された“Capricon One”(カプリコン・1)のリメイ
クも計画しているということだ。
        *         *
 後は新しい計画で、
 最初にパラマウントから、“The Girl Who Could Fly”と
題されたロアルド・ダール作品スタイルのシナリオを、6桁
($)の契約金で獲得したことが発表された。
 このシナリオは、元はロジャー・コーマンの下で“Cry of
the White Wolf”や“Captain Justice”などの脚本を担当
していたヴィクトリア・レイクマンという脚本家が執筆した
もので、お話は、11歳の農場暮らしの少女が、自分が空を飛
べることを発見するところから始まる。
 ところが彼女は、Ministry of Anomoalous Developmental
Needs and Extra-normal Social Services(通称Madness)
と呼ばれる組織に拉致され、さらに南極の永久凍土の下に設
けられた教育機関Institute of Normality, Stability and
Non-Exceptionality(通称Insame)で特殊な能力を失うよう
に矯正される。しかし彼女は、いろいろな能力を持った仲間
と協力して、大人たちを負かしてしまう、というもの。
 確かにダールが書きそうなお話だが、この映画化にはかな
りの視覚効果の投入などで大型の予算規模が予想され、長く
低予算映画の製作に携わってきたレイクマンは、「自分の脚
本がそのような映画化を目指してパラマウントと契約された
ことに、大変なスリルを感じている」ということだ。
 またこの計画と同時に、パラマウントからはもう1本、マ
ーシャル・スミスという作家が1997年に発表した“Spares”
というSF作品の映画化の計画も発表されている。
 このお話は、子供の成長期の医学的な問題を解決するため
に、子供の誕生と同時にそのクローンを作ることが行われて
いる未来社会で、スペアーと呼ばれるクローンに人間として
の教育を与えようと試みた看護師の物語。もちろんその時代
においては大変なタブーに挑戦することになる訳で、当然そ
こでのトラブルが題材となるものだ。
 そしてこの映画化の製作を、年末にアメリカで公開された
パラマウントとドリームワークス共同製作によるフィリップ
・K・ディック原作の映画化“Paycheck”で脚本を担当した
ディーン・ジョーガリスが手掛けることが発表されている。
 ただし今回の計画で、ジョーガリスが脚本を担当するとは
されていないが、製作担当であればそれなりの手腕は発揮す
ることだろう。なお上記のダールスタイルの作品も、ジョー
ガリスが製作を担当している。
        *         *
 続いては、製作主演作の『シービスケット』と、製作作品
の『25時』が近日公開されるトビー・マクガイアの計画で、
アンディ・ベアマンのメモワールによる“Electroboy”とい
う作品に製作主演することが発表されている。
 この作品は、28歳の躁欝病の贋作者で詐欺師の男が、自ら
の性体験や薬物体験や、その治療のための電気ショック療法
などを赤裸々に綴ったもので、かなりの問題作のようだ。し
かしこの作品は、その背景となる1990年代という時代を最も
よく表わしているということで、この原作には、商業作品で
あると同時にそれ以上に意味のある作品になる要素がある、
と考えられているようだ。
 そしてこの脚色に、『ニューオーリンズ・トライアル』を
手掛けたマシュー・チャップマンが起用され、マクガイアの
“Spider-Man 2”のプロモーションなどが終る今年夏からの
撮影を目指して準備が進められているということだ。
        *         *
 もう1本は、ニコール・キッドマンとショーン・ペンの共
演、シドニー・ポラックの監督で、“The Interpreter”と
いう作品が進められている。
 この作品は、キッドマン扮する南アフリカ出身の国連通訳
の女性が、政府転覆を図る暗殺計画を聞いてしまったことか
ら、ペン扮する懐疑的なFBIのエージェントと共に、その
解明に乗り出すというもの。『コンドル』などの作品もある
ポラックが得意とする、陰謀と時間に追い捲られる政治スリ
ラーということだ。
 チャールズ・ランドルフという人の脚本で、ワーキング・
タイトルとユニヴァーサルが共同製作する。
        *         *
 最後にちょっと驚きのニュースで、4月に撮影開始が予定
されているシリーズ第4作“Harry Potter and the Goblet
of Fire”の出演者に、ダニエル・ラドクリフ、ルパート・
グリント、エマ・ワトスンの名前があることは以前に紹介し
たが、最新の製作リストによるとさらに2人の名前が追加さ
れ、そこにはまずマギー・スミスと、ローワン・アトキンス
ンの出演が発表されている。
 アトキンスンは言うまでもなくMr.Beanその人だが、2002
年の『スクービー・ドゥー』のゲスト出演に続いて、今度は
現状でのワーナーの稼ぎ頭のシリーズにも登場することにな
ったものだ。なお、役柄は発表されていないが、情報による
と昨年の5月頃からヴォルテモート役への出演交渉が行われ
ていたと言うことで、恐らくはその役ということだろう。 
 それにしても、イギリス人の「名前を言ってはいけないあ
の人」のイメージはああいう感じだったのだろうか。


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井口健二