愚弟が恋をしている。
相手の娘さんは私も東京のFも知っている子だったりする。正直なところ「そりゃぁ、好きになるのも無理ないよね」と思う。Fなど「いまどき、あんなイイ子は珍しいで!」と初対面の時に絶賛したいた。彼女は顔も綺麗だが、何よりも性格の可愛らしい女性である。
愚弟とは、毎日会話をする訳ではないのだが、しかし愚弟が口を開く時、いつも彼女の名が出てくるので「好きなんちゃうん?」と突っ込むも「いや。俺は純粋に仲間と言うか友達として好きなだけや」と、ずっと否定していたのだが、とある事情で彼女とはそうそう会えなくなってしまうことになり、愚弟は決心したのであった。
俺、告白するわ……と。
もしも彼女からOKがもらえたら東京のFは「なんか祝い送ったるわ〜」と言うし、私は愚弟に「じゃあ、姉はなんでも言うこと聞いたるわ」と見栄を切った。なんちゅ〜か。私とFという狭い世界の中で、愚弟の恋が熱い。「あたたかい目で見守っている」と言うよりも「熱視線を送っている」という感じ。
正直なところ愚弟の勝算はかなり低い。だが愚弟は「ん。でも、ちゃんと言わなきゃいけないと思うし」などとと、唐突に男前なことを言っている。ちなみに愚弟の想い人は、頭の良い子なので、愚弟を振るにしても綺麗に振ってくれるだろう……と言うのが、Fと私と、愚弟の友人が持つ共通の見解である。
「なんか、俺、姉やFさんの玩具にされてるみたいや」と愚弟はブツクサ言っているが、血のつながった姉も、血の繋がらない姉も、愚弟が恋をしたことをを密かに喜んでいるのだ。あれこれ書くのは野暮なの割愛するが、色々とあっただけに、ちょっと心配していたのだなぁ。女性を好きになって、気持ちを伝えて……と、ごくありきたりな出来事を、しっかりとこなしたらば、愚弟もひとまわり大きくなることだろう。
男、玉と砕けよ! てな感じである。←砕けるのを願っている訳では断じて無い。
X−dayはまだ先だけど、なんだか気になってしょうがない。きっと私が全く知らない子なら、こうも熱くはならなかっのだろうけど。万が一、愚弟が彼女と上手くいったら私も嬉しい。彼氏のお姉さんというポジションで姉貴風を吹かせるつもりだ。愚弟の恋の成就を祈りつつ今日の日記はこれにてオシマイ。
私が働いているビルのエレベーターは、どうしたものか夜が深まるとBGMが流れる仕組みになっている。
最初の頃は「昼間は人の声で聞こえないのかも」と思っていたのだが、どうやら一定の時間が過ぎるとBGMが流れるらしい。ちなみに、もっと時間が遅くなると中央エレベーターは停止して、ビルの端っこにある貨物用のエレベーターでの昇降を余儀なくされる。利用者へのサービスなのか、なんのかは不明だが貨物用のエレベーターにもBGMは流れていて、殺風景な四角い空間で、ありきたりなBGMを聞くと酷く惨めな気持ちになったりする。
今日のBGMは『渚のアデリーヌ』だった。
こんな寒い日に『渚のアデリーヌ』はあんまりだ……と思った。押し着せのBGMに季節感を求めるのは無理だとわかっているが『渚のアデリーヌ』は初夏に聞くべき曲だと思うのだ。「もう少しセンスのある曲にして欲しいもんだ!」と憤慨しつつ、ふと「ところでアデリーヌって誰なんだろう」という疑問を感じた。そして、帰り道々アデリーヌについて、あれこれ妄想してみた。
私の中のアデリーヌはこんな感じ。とりあえずフランス人。年齢は17歳。瞳の色はグリーンで、髪は明るい栗色。長さは肩甲骨のあたりまであって、ふんわりとした巻き毛。当然ながら「美少女」である。性格は明るく……と言うか、小生意気で、こまっしゃくれた感じ。生意気といっても所詮は17歳なので愛らしいことこの上無し。両親の愛情をいっぱい受けて育ったアデリーヌには弟が1人。夏はおばあちゃんの別荘に遊びに来ることにしている(後略)
我ながら、なんて馬鹿馬鹿しい遊びなんだろうと思ったが、あまりにも楽しくて帰り道は、ずっとアデリーヌについて考えていた。「誰かこの妄想を止めてくれぇ」という勢い。楽しい考え事をしているからと言って寒さが和らぐ訳ではないが、ちょっと足取りが軽かった……ような気がしなくもない。
アデリーヌのことは置いといて……と。待望の週末である。この週末は『ローレライ』を観に行く予定。大好きな舞台役者さんがチョイ役で出るとのこと。すっごく楽しみ。それを抜きにしても、そこそこ前評判が良いようなので、楽しんでこようと思う……ってことで今日の日記はこれにてオシマイ。
3月1日火曜日午後8時。
いつもなら、ガッツリ仕事をしている時間ですが昨日に引き続き家にいます。いや……何も長時間働くのが尊いと思う事至上主義者ではありませんが「いまの私の置かれている職場状況」においては劇的な感じです。
何ゆえ、こんなに早い時間に家にいるかと言うと、乙女な母が癌かも知れない……てな話があり、その関係で早上がりをしたのでありました。話が発覚してから、乙女な母は乙女なだけに傷つきやすい心の持ち主らしく、すっかり病人になり切って、箸にも棒にもかからない状態だったのですが、結論から言うと乙女な母が自分勝手に針小棒大な解釈をしていたらしく、癌でもなんでもありませんでした。「気になるようでしたら年に1回は検診にきてください」てな説明を受けたのでした。事実を知った瞬間の脱力ったら、ありゃしません。
乙女な母が癌かも……てな話を知った時は、愚弟と散々相談して「もし、そうなら姉は仕事を変わります」てなことまで決めていました。ガッツリ働きながら、病人を抱えるとなると本気で共倒れになってしまうだろうと思われるので「家の蓄えをすべて切り崩したら、なんとかなるだろう」との目算を立て、私は楽な仕事をしながら母の看病にあたる…ってことで、とにかく「こういう時こそ頑張らないとね」なんて健気な決意をしたのでした。
あらためて書きますが、事実を知った瞬間の脱力ったら、ありゃしません。
ここのところの大変さ(仕事や自分の身体や気持ちのやり場)を思い返すだに、我が母は、ああ見えて酷い人間なのかも知れないと思いました。「愛」とか「優しさ」というものは「強さ」を伴ってこそ、はじめて成立するものではないのだろうか……なんてことを考えずにはいられませんでした。
私の時間と気苦労と体力を返してくれ!
そう叫ばずにはいられないのですが、結局のところ「終わり良ければ全て良し」なのだと思います。明日から、また普通に頑張ろう……ってことで、今日の日記はこれにてオシマイ。
<私信>
Sちゃんへ。そんなこんなで心配御無用。ガッツリ『遥か3』を買い込みます。