道院長の書きたい放題

2009年10月16日(金) 第十回 活人拳講義録/実技 閂をさらに探求する

■閂の分類を試みる

皆、宿題(=閂の掛け方を順手逆手、交差非交差、甲側掌側、内旋外旋で分類してみるとイイね。これは宿題としよう)はやって来たかな? 

「先生に二指捕りを教えて頂いているので、理解に役立ちました」

「相撲では一指と二指を握るのは反則で、三指以上は特に規定が無いそうです」

――それなら、木の葉返しができるかもしれないね。 ―一同笑い― 相撲は大変興味深い。前にモンゴル人力士、朝昇竜だったかが、押受巻投げを掛けたのには驚いた。その時の掛け手は、相手の右腕に対して我の右手を拇指球に掛け、左手を手首に掛けて捻り投げた。まあ、掛けたか掴んだか分からないが、投げた本人も転んでいた。我の側から見ると、両掛け手が交差している。押受巻投げは二説あって、もう一方は交差しない捕り方がある。

関節技というのは大変な威力がある。これも以前、武蔵丸が誰かと対戦して、相手の上手で下手に天秤が掛かる形になったら、あの巨漢力士が自分から土俵の外に飛び出てしまった。なので、一指二指捕りが反則ということは、裏を返せば、武術として大変有効な技であるということになる。ただし、活人拳では相手を壊さない=不害の立場なので、主に逆技を理解させる為に用いる。また、分類理解に大変役立つ。

■さて解答は?

「ハイ! まず合掌からその手を自分の側に回します=内旋させますと、上膊捕りや、さらに回すと切り返し小手などになり、反対に回す=外旋させると、合掌逆小手、立合掌固め、合掌突き落としになります」

――彼の手腕の状態では正解なのだけれども…補足すると、進展形と屈曲形に分けるべきで、それが分類するということだ。その過程で発見が生まれる場合もあるだろう。

「でも先生、手首を活かした内旋伸展形ってありますか?」

――引落と…送閂小手…しか無いかな。送閂小手(091021訂正:と引落)は、生かしでも殺しでもない尺屈形とも言えるけど…。応用技はあるね。無銘技だね。例えば、巻抜に握って来たのを、この段階で内旋活かしだね。抜き様に崩しながら、もう一方の手を首に掛けて投げるとかがある。 ―実技を見せる― 達人は片手だけで投げるかもしれない。すると鈎手が重要となるが、今は置こう。まあ鈎手崩しは振り捨て表投げがあるけどね…。

「合掌=手首活かし形は、内旋屈曲、内旋伸展、外旋屈曲、外旋伸展の四系統でよろしいですか?」

――そんな単純なモノではないなー。

「……」

――それと、内旋伸展形でも、天秤形はどうだろうね。上膊捕りを掛けて、相手が手を生かしたまま腕を伸ばす場合の天秤は…無いから引き落としか…。いや、逆引き天秤があったね。まあ最終形は手首が死ぬとは思うけど…。教範でどう分類されているか、問題意識を持つと俄然、興味深くなるでしょう!?(『教範/第二章 龍華拳 第一系』参照)。

■分類の先駆者

先駆者がおられて、身体運動的用語を用いられての分類を試みられたのは、『柔法の考察』を発表された松田欣一郎先生が最初と記憶する。この論文は本部資料として配布され、また月刊誌に掲載されたことがある。道場にある。まあ合掌形ということからの説明ではないがね。ちなみに手首を活かすのは身体運動的には掌屈。殺すのは背屈と云う(訂正091019:掌屈と背屈が逆でした)。

少林寺拳法の技法分類に問題があると思えるのは、例えば、龍王拳があるのに、龍華拳第一系に、逆小手=小手抜と巻小手=内切抜が混在したり、「逆小手とは本質的に異なる」とお書きになっているのに小手投が入っていたりする。手首活かし形と殺し形の混在もだね。小手抜と内切抜は、腕の内外旋からすれば正反対の抜きだ。順手握りで小手抜形、逆手握りで内切抜りとは言える。手首が極まった形も、両技とも閂形であるね…。

ここいらと同じ疑問を、松田先生も感じられたのかもしれない。たしか剛法の分類上、整合性のないモノを「不規則動詞」と表現されていた。個人的には相当根深い問題と思っている。開祖ご存命中に再分類を成すべきだった。分類に踏み入ると、底無し沼に足を踏み入れたようになる。出題が間違ったかな? 

―一同笑い― 

■教範にある閂技法とさらなる閂技法の探求

閂の名の付く技法はどれくらいある? 教範を見てよいから答えてごらん!

「閂固め、閂送、片手閂投げ、両手閂投、閂内天秤、閂外天秤、押閂投内、押閂投外、閂片手投げ、送閂小手です」

――なにか気付くことが無いかな?

「…分かりません」

――送閂小手の存在でしょう!? 教範には「又、別法として、手首を殺して捕る方法もある」と記述されているので、正規技法は活かして捕るのが明らかだ。すると他は全て殺して捕る、所謂閂で捕る技なので分からなくなる。閂という概念は捕る形を言うのか、捕られる形を言うのか、はたまた字義通り、手首関節に指が閂様に掛かる事を指すのか、しかしどうやら、活かし形も殺し形もあるという事だね。

見当は付いている。

送閂小手がそうなら、丁字捕もそうだし、上膊捕もそうだし、その反対が片胸落になり、従来の分類では入らなかった技法も、ある角度を堺に閂形になると類推できる。切返小手と十字小手は、この点で閂とは言わないようだ。なので最初の答えは、出題が「閂の掛け方」ということで、外旋屈曲形、外旋伸展は該当する技が無く、間違いということになる。単に合掌形=手首活かし形なら、四系統で正解だ。まあ表現が分かり辛かった点は割り引こう。

正解は、活かし形の閂を教範通り分類すると、彼よりの順手、非交差、甲側、内旋巻抜の握りに対して、送り閂小手となる。出題には屈曲伸展が抜けていたので申し訳ない。で、概念を広げると前述通りとなる。加えて、送合掌は彼よりの順手と逆手、非交差、掌側、内旋と外旋、屈曲となるでしょう。実技で確認してごらん! ―実技を行なう― 以上の要領で分類する。無銘技がずいぶんと出てくるでしょう!

「内受突の法形分類で、受け手要素が順逆、表裏、開対。攻撃が順突、逆突、差替順突きの三攻撃に対し、左右で24種あるようですね」

――非常に良い着想だ! 次は殺し形を練習しよう。



【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読まれる場合は数日後にお願いします。表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。よろしくご推察の程をお願いします。尚、月日、年月が経て訂正を行なった場合、0908○○と断って訂正するのでご了承下さい。

良いものを残したい、伝えたい、と念じております。




■ある日のブログより

(無題) 投稿者:今田三六 投稿日:2008年 6月18日(水)15時56分36秒

最近、(相手の指を折らないよう工夫した)二指捕りを研究しています。一指捕り=送り指返し、指捕り連行。四指捕り=木の葉返し、木の葉送り、送り四指捕り、と少林寺拳法には指を攻める技があります。

以前、本掲示板に書いたスペッツナズの格闘技には、小指捕りがありました。指を捕る技は効果が高く、簡単なので、人造りには適していないかもしれません。でもまあ、興味があるのです。女子に護身術として教える価値が高いと思われます。

四指を捕ると返し技がありますが、二指だとその心配がありません。相手の指を折ることもありません。表裏、順手逆手、輪持ち交差持ち(←造語!)として、16形×左右で32形。変化形は…数え切れません…。




メモです 投稿者:今田三六 投稿日:2009年 2月 7日(土)15時59分16秒

◇個々の剛法法形を分類すると、順逆開対表裏がある。例えば内受突では、逆突、順突、差し替え順突に対して左右24法の形になる。

抜き技は上のような攻撃に対する一つ一つの技に名称を付けたモノと言える。例えば、寄り抜き(引き)と巻き抜き(外捻り)と二段抜き(上方捻り)と突き抜き(下方押さえ)であり、小手抜き(引き)であれば、内突き抜き(下方押さえ)である。

しかし、小手抜きと同じ握りである逆天秤の片手バージョン(上方捻り)には技の名前が無い=小手抜き系には名称が少ない。内受突も名前が無くて済ましている。下受けには、下受け蹴りと下受け順蹴りがある…。

統一性が感じられない。教範は置き、別の角度からの分類法が必要であろう。


◇◇受けには腕刀・手刀の内旋と外旋が、龍王拳同様これまたある。捕技にもある。例えば、寄り抜き系はすべて外旋系であり、内旋系の小手抜きとは運動が異なる。それなのに、突き抜きの内外として一緒くた?にすると、混乱するのではあるまいか。寄り抜き系は内受けの運動と連動し、内受け系修練との相性が良いのである。

もう一つ、切り抜き内外である。外切り抜きを内旋(送小手の運動)させるのは問題無いとして、切り抜き内はどうであろう。私はやや内旋させた鈎手から外旋させて切り抜く。こうしないと、外旋させる巻き小手に連動しない。

これは諸手にも飛び火し、上手が交差系であるか非交差系であるかによって、初動運動が正反対になる。少林寺拳法の精妙さを増す為にも、思い切った分類が必要であろう。


 < 過去  INDEX  未来 >


あつみ [MAIL]