| 2003年03月04日(火) |
◆乱捕り問題の推移/年表・2. |
【乱捕り問題を時系列に整理する】
■手元に『日本歴史の点検/海音寺潮五郎』という著書がある。歴史小説作家の海音寺潮五郎氏と司馬遼太郎氏という、共に故人である二大巨頭の対談によって我が国の歴史が語られている。
その中で、日本人の“言葉”に関する章/「言語感覚の特異性」が面白いので抜書きしてみる。
<鮮度に敏感>――日本人て奴は、言葉に対して変に敏感ですね、変に新しい言葉がすきなんですね。(中略)近頃の学生のいう。「自己批判」は「反省」でしょう。「自己否定」は「滅私」でしょう。ぼくら年代のものにしてみれば変える必要はないと思うのだが、むやみに新しい言葉にかえますね。
言葉に手垢を感じるのも早いですね。手垢を感じて、その言葉に嫌悪感を覚えてくる。少なくとも魅力を感じなくなって、違った言葉に代えますね。(中略)こんな風で、日本語は同義語が無限にふえていくんですね。/海音寺>
<言葉が現実を支配>――なんか言葉に対する日本人の観念はおかしいですよ。(中略)日本ではどういうわけですかね、「ことだまのさきはう国」というが、さきはい過ぎますね。ことばに敏感すぎるという点もありますね。そのため言葉が現実を支配するという珍妙なことも起きる。(←「挫折」の例、「断絶」の例)/海音寺
<自らによる熟成を>――ことばの問題はというのは、新しい言葉ができても実質上はかわらない。/司馬
本文の中で、両巨頭が日本人はつくづく不可思議な民族であると、首を捻るが如く語り合うのが面白い。日本歴史の点検なのではなく、歴史を通して日本人を点検しているように読み取れる…。それにしても、海音寺潮五郎氏をして「なんだろう日本人て」とくると、これは容易な問題なではない、と思わざるを得ない。
■さて、いきなりこんな話から入ったのは、会報二月号に関する感想を述べようと思っていた矢先、すでに三月号が配布されてしまった。そうしたら、今月号の中にあった「乱捕り」と「運用法」という言葉使いが、上の話と妙に符合していたので、思わず取り上げてしまった…。
日本語は同義語が増えるという指摘は納得できる。以前会報で「乱捕り=行」と発表され、「書きたい放題」で反論したことがあった…。しかし言葉と同様な例が、こと少林寺拳法の“乱捕りの定義”についても言えるのではなかろうか…。
乱捕りについて、私が思う問題点に添って時系列的に整理し、後、改めて問題点を述べてみたい。
■乱捕りに関する主な出来事の推移/年表。
◇1955年/昭和30年 同年度版教範では「乱げいこに就て」と5行の記載であった。
◇1962年/昭和37年 第1回関東学生大会開催。乱捕り種目有り。
◆1963年/昭和38年 カッパブックス発刊。開祖はその中で「少林寺には勝敗を争う試合が無い」と著述。
◆1965年/昭和40年 同年度版教範では「防具着用の乱どりについて」となり、4ページを割かれるまでの問題となる。
◇同 年/昭和40年 第1回全日本学生大会開催。個人乱捕り決勝戦で救急車出動。開祖、その場で審判員を厳しく叱責。
◇1971年/昭和46年頃より 開祖、学生大会の出席拒否。
◇1972年/昭和47年 開祖による学生拳士の在り方、及び大会、乱捕りの在り方の批判が頂点に達する。学生連盟の解散を示唆。
◆1973年/昭和48年 第9回全国学生大会を学生連盟が自主的に中止して改革断行。各地区大会の競技乱捕りを廃止。乱捕りは交歓乱捕りとして行う。ただし、九州学生連盟は旧来の乱捕り大会を実施。
◆同 年/昭和48年 同年度版教範に「組演武について」が加筆される。
◇同 年/昭和48年 東海学生新人大会の交歓乱捕りで死亡事故。
―― 以後、本部、学生連盟は乱捕りの摸索期に入る。――
◇1980年/昭和55年 開祖ご逝去。
◇1981年/昭和56年 関西学生大会で死亡事故。同年の全国学生大会中止。競技乱捕り禁止の仮措置。
―― ↑これ以前より、競技乱捕りの復活の兆しあり。 ――
◆同 年/昭和56年 第1次乱捕り検討委員会発足。
◆1982年/昭和57年 答申・競技乱捕りが組織決定として中止。限定乱捕り法の提示。 ◆1985年/昭和60年 第2次乱捕り検討委員会発足。
―― ↑これ以前より、乱捕り、競技乱捕り復活の兆しあり。――
◆1986年/昭和61年 科目表に乱捕り指導が明記され、運用法として昇格考試で実施。 ◆1986年/昭和61年 答申・第1次答申の決定覆る。
◇1988年/昭和63年 S大学の夏季合宿中、乱捕りの死亡事故。
―― ↑この事故の数ヶ月前に行われた本部指導者講習会の感想文に、(私は)乱捕りによる死亡事故発生の危険性が有ると警告。 ――
◆1989年/昭和64年 第3次乱捕り検討委員会発足。(私は)検討委員に任命される。
◆1990年/平成 2年 答申(『少林寺拳法五十年史/第一部正史、P590』に記録)。
―― これ以降から現在に至る直前の乱捕りに関する組織的な動向について、充分に把握できないので、述べることを控える。――
◇2002年/平成14年 乱捕り臨時検討委員会発足。
◆同 年/平成14年 本部公認防具(面,胴、金的カバー)の完成。
◇2003年/平成15年 乱捕りに関する特集が会報で始まる。
……もし、記憶違いや重大事項の記載漏れがありましたらご容赦下さい。尚、「◆」印は私が思う重要点です。
(乱捕り年表の追加・2−1に続く)
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