空虚。
しずく。



 波。

「うるさい」
小さく、小さく呟いた。

独りで、いる時ならいくらだって付き合ってやる。
私の中から生まれた、これに。
でも、絶え間なく見え続けるそれは、
場所も、状況も、選んでくれなかった。

目をあければ、あの人がいる。
目を閉じても、あの人がいる。
口から血が溢れ出す。手がそれを抑える。
味などしない。誰も、何も傷つけていない。
なのに、喉の奥から、身体から、血が吹き出す。
手が動く。握りしめる。振り払っても、また、動く。
首を掴む、爪を立てる。食い込んで、線が走る。
痛みが、私を覚醒させてくれる。この中にあっても。
まだ狂っていない。大丈夫だと、言い続ける事が出来る。

捨ててしまえば…何度もそれを考える。
笑顔も、幸せも、この先も、あの人も。すべて。

笑いたい。一緒に笑いたい。
生きたい。この先がどんなに辛くても、一緒に生きたい。

そう思う事すら、朧に、何も、浮かべられずに。
でも、必死で。

背中が見える。苦悶の表情が見える。
驚いた顔をして、そしてあなたが消える。

ナイフを持っている。
首を、締めている。
階段から、突き落としている。

「嫌だ」

頭を抱えて、喚き散らしながら、
なんとか、これを逃そうと、無様に、のた打ち回って。
それでも、消えない。これが、消えない。

つらいも、くるしいも、思っていないのに。
涙も、でないのに。

「嫌だ」

何度も、呟く声までが、遠い。

2005年11月27日(日)
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