空虚。
しずく。



 あの時と同じ夜。

ずっと沈めておきたかった。

その記憶は、突然あらわれて。

はりつめた空気の中を、飛び出した。


「名前も知らない土地で、
 他人の目を盗んで一緒に出かけた。
 途中のお店でお酒と水を買って。
 オレンジ色の光の中、座った。
 どこかの民家の塀に背を向けて、
 あなたと同じお酒を飲んで。
 静かに、語り合った。
 
 顔と顔をつき合わせて、
 「***」と言われたのに、
 私は、理性を捨てられなかった。

 後から感じた後悔と。
 もし、・・・そう、していたら?
 
 『あなたと私の関係は、変わっていましたか?』

 (その一ヵ月後に、あなたを抱いたのだけれど。)

 そんな、想い。

 
 でも、それは私の胸に秘めて。

 あなたは、「出来ない?」と、笑ったけれど。」


そんな記憶も、忘れていたのに。

思い出した途端に、色づいて、鮮明になって。


一筋だけ、涙が流れて。

窓を開けて、空を仰いで。

ゆるませた口元は、「笑顔」になった。


「もう・・・三年になるんだね。」

出逢ってから。

想いを、抱いてから。


紅い月は見えなかった。


薄紫の空。

あの時と、同じ。


何故、今。

普段は見えない理由も、

今日だけははっきりと脳裏に浮かぶ。


「最近ずっと、あなたの夢を見ているの。」

同じ、理由で。


ドアを開けて、裸足のまま。

アスファルトの道路を歩く。

まったく違う景色なのに、

流れる風と、あの時の香り。

「まだ、好きだよ。愛してる。」

綺麗な愛じゃ、ないけど。


初夏の夜の、幻でもいい。

少しだけ、想いに酔わせてね。

また、消えていっちゃうから。

とどめて、おけないから。

2002年07月17日(水)
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