日記ときどき週記...青木文

 

 

明日

『階段』 - 2002年08月31日(土)

 階段の上で、妹が言う。
「もー、いいーかい?」
「まぁだよ」
 叫んで、踊り場をまわる。
 妹は遥か上にいて、あたしはその何メートルも下から声を張り上げる。
 声はマンションの三階分を駆け登り、妹にも届いているはずだ。
 上を見上げると、太陽の光が眩しい。
 あたしは何回に隠れようかとうきうきしながら段を降りる。
 11階建てのマンション。使う人の余りいない外階段で、あたしと妹はいつもかくれんぼをした。
 使っていいのは階段だけ。エレベーターは大人の陣地だ。
「もーいーよっ」
 叫んで、妹の足音に耳をすます。あの子が降りて、他の階を探している間に最上階に登ればあたしの価値だ。
 ぱたん、ぱたん。コンクリートをける、ゴムの足音。それが止まるのを、息を止めて待つ。手のひらに、汗が滲んだ。

 夏休みの記憶は、水泳よりもキャンプよりも、いつも妹と遊ぶかくれんぼだった。
 今でも鮮やかに蘇る、階段越しの空のあおと、妹の足音。
 けれど、私は一人っ子なのだった。




○『嵐が丘』那須雪絵/白泉社
 グリーンウッドの人の、古い作品。でも単行本化されたのは最近。いい話でした。この人の10代の少年と、その側にいる少女の描き方が好き。『君が見ていた夢』も同じキーワードでかなり好きな話です。ダークエイジもいい。
 ホモ話描いていないで、こーゆーのまたやってほしいなぁ。

 読んでるかどうかわからない人へ
 辛い時、綺麗なものを見ると少し楽になる気がするんですが、貴方はどうですか。
 そんなわけで、つい昨日発見した綺麗なサイト。
 (link)
 夢幻画廊と言うコンテンツの「女王の旅」はとても綺麗です。音と絵のウェブ絵本。


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 けっこう、嘘も多いです。と言うかその場の思いつき、嘘ばっかです。


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