おぎそんの日記
おぎそん



 beyond the pineapple

つらい現状から逃げだしていく彼女を、私は少し羨ましく感じた。
尊敬はできないまでも、それもひとつの積極的な方法かもしれない。
私はつらいことがあっても今の会社を辞めたりしないだろうし、誰か男の人に求婚されたらノーと言えないに違いない。

月子は甘い夢を見過ぎているから、現実がつらくなるのだと思っていたのだけれど、そうやって逃げて逃げて逃げまくれば、夢のような素晴らしい現実に巡りあえるのかもしれない。
月子が帰りたがっているに違いないなんて、私の推測に過ぎないのだ。
もしかしたら月子は、新しい恋人と南国の果実のような瑞々しい毎日を送っているのかもしれないのだ。

けれど、私にはできそうにもなかった。
あるかないか分からない夢の国を探すより、現実に留まっている方がまだ少しは楽のような気がした。
過度の夢を見たり大袈裟に落胆するのは疲れる。
私はそんなジタバタする自分を見るのはいやだった。
山本文緒「パイナップルの彼方」

2004年01月26日(月)
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