It offers a cup of wine at common days!
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 LA TOUR D'ARGENT へ

「冥途の土産にしたい」
毎日、抗癌剤の副作用の苦しみのため、
友達とも遊ぶこともままならず、
嘔吐の繰り返しで激細になってしまった人間の
家族泣かせのこの言葉に、
貯金が全くない私であっても、ついに
清水の舞台から飛び降り複雑骨折する決意をせざるをえなかった。

さて、この病人の言う"冥途の土産"とは、

LA TOUR D'ARGENT

フランス語で「銀の塔」を意味するこのレストランで、
食事がしたいというものだった。
食事を受付けられなくなりつつあるというのに、
「食事がしたい」と言うのである。
それだけの意欲を持つことができる場所へ行くことを
叶えてやらずにいられようか?

しかし、私は貧乏人の上、無教養な人間だった。
「銀の塔」?
「銀の鈴」なら知っているんだけど・・・
こんな知識のままで、予約の電話を入れた。
「男性はタイ・ジャケット着用でお願い致します」
うはっ 面倒〜
高慢ちきな金持ち連中が談笑する
マナーに五月蝿い堅苦しい店のイメージが出来上がった。

ということで(?)
当日予約だというのに席が取れたので、
(17時30分開店だというのに、無視して10時30分頃電話した奴)
病人を車に詰め込んで、レストランのあるホテルに到着。
「本館か別館かどっちなんだよぅぅ」
駐車場も別なので、煩わしいこと甚だしい。
ぶーぶー言いながら、ヤマ感で本館の方に入れる。
上手い具合にビンゴだったので、ラッキーだったw

エントランスは、
銀色の店のマークを大きく鏤めたロイヤルブルーの絨毯と壁が
店の奥まで繋がっていて、
いきなり貧乏人をビビらせる仕組み。
安物のスーツに身を包んだ家族が小さくなって震えていると
タキシード姿に隙のないお兄ちゃんがやってきて
「××様ですね お待ち申し上げておりました(^-^)」
とお辞儀する。
「お席のご用意はできておりますが、
食前酒などウエイティングルームでお召し上がりになられますか?」
こっちは腹空かしてんだよ!
今日は高いモン腹いっぱい食べられると思って
昼もとってないんだ
「畏まりました <(_ _)>」
そして、ロイヤルブルーの異世界を抜けていく。
おぉ〜 すげーキレーッ!!
田舎者である私たち一同は左右を見渡し
興奮を抑えきれずに声高に「凄いね!凄いね!」と言いながら
メインダイニングルームに到達した。

席に案内されると、
家族と同じ人数のタキシードのお兄ちゃんたちがやってきて
同時に席を引く。
黒の威圧にチビリそうになりながらも、ドシンと腰を降ろす。

その一群がススッと音もなく消えた後、
最初に来たのは、
胸に金色の葡萄のバッチをぶらぶらさせた
タキシードのお兄ちゃんだった。
「何か食前酒をお召し上がりになりますか?(上品な口調)」
「ん〜だぁなぁ(^▽^喜) 肉だから赤のグラスくれろ」
「 申し訳ございません。
赤はボトルでしかお取り扱いしてません・・・」
いかにも申し訳なさそうに言う。
なんだ、ないのか!
封開けて、酸化しきったのがウメーんだよ!
「仕方ないなぁ ハーフで!」
「どのようなものがよろしいでしょう?」
「わがんね゛ 辛いのにしてちょ 後は任しるワ」

そして、次にメニューが運ばれてきた。
メニューも銀色一色で、目がチカチカした。
さて、メニューが来た途端目を血ばらせて見たのは、値段。
ところが、そのメニューには値段がなかった!
「ぼったくりバーみたいだね・・・?」
ホントだよ!
つか、そのまんまだ。
「鴨の肝と肉焼いたの喰わなきゃ、ここに来た意味ねぇ!」
と、病人が、店で一番高いらしいコースメニューを指差して騒ぐ。
「コレね!( ̄^ ̄)」
私と連れは、値段が見えない恐怖に慄きながら、真中のにした。
「杏里3世とか言うので・・・」

こっ・・・こんな堅苦しい店は嫌いだいっ
広いテーブルの向こう側にいる家族と会話することもできず
黙って大人しく、餌が運ばれてくるのを待つしかなかった。
その間に、金葡萄バッチのお兄ちゃんが
人のワインを勝手に一番最初に飲んだ後、家族によこした。
高いんだから!
おまーが飲むなよ!
「うぉー 全然渋くない!
これじゃ赤じゃねぇっっ」
料理用の渋々ワインの味が、家族はこよなく好きだったのだ。

そうこうしていると、
最初の前菜が運ばれてきた。
「テリーヌを甲殻類のエキスのゼリーに茸をあしらったもので包みました」
何? コーカクルイつて?
蟹とか海老とか素直に言えよぉ〜
だいたい、フランス料理なんて、見た目綺麗だけど
たいしてうまくないんだよなっ!
どれっ バカにしてやっか!
ぱくっ
「・・・」
う・・・
う・・・
美・味・過・ぎ・る・・・!!
マジすか?!
これがホンモノのフランス料理というものだったんですか!!
完敗だった。
美味過ぎた・・・

その次は、スープ。
最初にサワーを盛り、そこに栗のスープを注ぐ。
美しいマーブル模様が形成される。
「おおっ!」
ぐちゃ盛りのイタ飯専門の私は、そのセンスに大いに感動する。
次に出たのは、パイ包みの壷焼き魚。
このスープがまた、全然想像できない旨さだった。
ここで添えられたパイ皮をなんと手掴みした私に
さりげなく、レモンの細切りの入った温かいお湯が運ばれてきた。
勿論、ありがたく全部飲んだ。
脂っこいもの食べた後は、さっぱりしたお湯だよね〜
気が利いてるやw

そして、病人だけに、口直しのシャーベットが出た。
「・・・」
何か憮然とした表情である。
「どったの?」
「旨いんだが・・・」
「うん」
「・・・何とも言えずに旨いんだ・・・!」
ヘンな表現である。

その次に、お待ちかねの鴨くんがやってきた。
牡蠣のソース、オレンジソース、あとクリームと胡椒のソース。
全員バラバラにチョイスしたが、
一番無難にしたハズの私のオレンジくんは、
当たり前すぎて驚きもなく、ふつーの味に感じてしまった。
サンマ○クと変わりないやん!
この鴨をモグモグしていると、
私たちの食べた鴨くんは、
昭和天皇の胃袋に収まった52000数羽から数えて170000と何羽か目
だよ
という証明書を貰った。

その後、サラダが出た。
はっきり言って、この時点で、お腹は既にぽんぽこりん状態だった。
「サラダが後に出てくるんだね〜」
新たな発見に驚く労働者。
そのサラダに添えられた鴨の腿肉の茸詰めが、むっちゃ美味かった。

次にデザートかと思いきや、出たのはチーズ。
たくさんの種類のチーズがズラッと出てきて、
端から説明していく。
全部覚えられる気力もなかったので、
「あっさりしたのとコクのあるのくらはい」
と注文すると、スプーンに盛られたままのチーズが出てきた。
そのチーズつきスプーンをしゃぶり尽くして、ふと気付く。
パン皿に勝手に新たに増えた葡萄パンのスライスは何だろう・・・?
・・・ま、いっか・・・?w

次に私が依頼しておいたものがやってきた。
小さいお神輿といった感じのものが、静静と病人の前に持ってこられる。
「・・・?!」
「お誕生日おめでとうございます!」
周囲の拍手とともに、蝋燭を吹き消すことになった病人。
これが、なかなか消えない蝋燭で、
かなり肺活筋を使うハメになっていたのが哀れだった(笑)
ケーキは、
全て飴細工というスイカくらいの大きさの鴨や花に囲まれた
派手派手な台に乗っており、
注文した私本人がかなり驚いた。
・・・いったい、いくらするんだよ・・・(涙)

その後、コースの通常のデザートが来た。
ブランマンジェにマチェドニアをぶっかけて、その上に
カラメルを平ぺったく焼いたもので蓋をしたものだった。
バラバラに食べるとたいしたことはないが、
一緒に食べると、これがなんとも言えずに美味しかった。
ちなみに、デザートグラスはバカラ製だった。

最後に、
ジャズの流れる薄暗い部屋に移動して、ソファにふんぞり返り
丁寧に周囲の皮をとったレモンを浮かべた紅茶を飲んだ。
この時もチョコやぷちケーキが運ばれてきて、
卑しい私は、朽ちたお腹を騙し騙し、それにも手を伸ばした。

「おあいそ、よろぉ〜」
運ばれてきた皮のケースを、息を止めてパカッと開ける。
「(*^◇^)/°・:*【祝】*:・°\(^◇^*)」
いきなりそんな文字が飛び込んできたようだった。
そのまま窒息して倒れた私は、来年の大学の継続を断念。
こうして、私たちの最初で最後の上流社会見学は、終わった・・・

2003年02月11日(火)
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