TOM's Diary
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朝日がまぶしい 少し肌寒いかと感じながらも軽い服装で家を飛び出す いつもは朝日を背に受けながら会社に向かうが今日は日曜日 朝日に向かって車を進める いつもと逆方向に向かうというだけでも気分がよい
このあたりは渋滞の名所だ しかし渋滞は平日の朝とは逆方向 平日なら夕方に渋滞する側が混んでいる しかし、平日の夕方ならどの道を行っても混んでいるが今日は日曜日 最近出来たばかりの海沿いの道なら空いている 国道に戻るのは渋滞の先頭だ 地元の人間だけの特権 たかが渋滞を避けただけだが、とっても得をした気分
町の中心部を抜けると道は南に下り始める このあたりに来ると信号の数もかなり少なくなる 窓を開けて早朝の綺麗な空気を車内に取り込む のどかな風景とさわやかな風が日ごろのストレスを吹き飛ばす このままどこまでもドライブを続けたくなる
海沿いの道に出た 今日は日曜日 漁船もお休みだ 大小様々な漁船が港にたたずむ クルマを停めて一服入れる 船の手入れをしていた老人がこちらを向いて手招きをする 「悪いがちょっと手伝ってくれ」 エンジンの部品だろうか? 軽トラに積み込むのを手伝う 「せがれに手伝わしていたんだが、電話しに行ったきり戻ってきやしねぇ」 言葉は乱暴だが、とても優しい表情だ 「せがれのだが、あんたにやるよ」 軽トラの運転席から缶コーヒーを取り出して私に差し出す 躊躇すると荒れくれた手で私の手を掴み握らせてくれる こんな日に船で海にでるのは気持ち良いだろうな 「あぁ、今日みたいな日は最高だ」 人なつこいこの老人と話をしていると心が落ち着くような気がする まるで昔からの知り合いのようだ
老人のせがれが戻ってきた どこかの会社の管理職とでも行った感じの中年だ 老人によると漁にはまったく出ず役所の助役かなにかをやっているそうだ 私の顔をみて怪訝な表情を浮かべる その様子を見て老人は怒鳴った 「馬鹿やろう、どこまで電話しにいってたんだ」 事情を聞いた助役は深々と私に頭を下げる 居心地がわるくなってきた 「おやじ、手が必要なら他人に迷惑かけないで家まで呼びに来ればいいじゃないか」 他人という感覚ではなかったし、迷惑とも思っていない 「すまねぇな、こんなせがれで」 老人は助役の言うことは無視して私に言った 助役は助役で「すまないねぇこんなオヤジで」と言う表情を私に向けた 父は子を想い、子は父を想う 良い人たちに出会えた 助役に対して「居心地が悪い」と感じたことを恥じる
進路を東に変える ここからは山道だ 木漏れ日がまぶしい 快調に飛ばしていると前方に軽自動車が現れた 軽自動車に合わせてペースを落とす ハイペースで走るのも楽しいが、 ローペースで丁寧にコーナーをクリアしていくのも楽しい
後方からスポーツカー追いついてきた ちょっと古い型の小型のスポーツカー 金の無い若者が免許を取って最初に乗るタイプのスポーツカーだ 後ろにぴったりと貼りつく 短い直線で強引な追い越しかけようとする カーブの先から対向車が現れて追い越しを断念する 車間距離を取らないからだ 対向車線に出てからでないと加速できないから間に合わないのだ そんなことを何度か繰り返し、ようやく長い直線で追い越していく それでも軽自動車の前には出られない 背後にぴたりと貼りつかれた軽自動車はしばらく我慢をしていたようだが 道幅が広くなったところでハザードを出して道を譲る 窓から手を出して、私にも前に行けと合図がでる スポーツカーは弾けたように加速をしていった やんちゃだなぁ
一旦離れていったスポーツカーだが、しばらくすると追いついてしまった ペースを落としたのかとも思ったがどうやら加速は良いがコーナーが遅いようだ 後ろから見ているとへたくそなのが良く判る コーナーに入る速度が速すぎて途中で急ブレーキを踏んでバランスを崩したり センターラインを超えて走っているものだから対向車に驚いて失速したり とにかくヘタと言うよりセンスが無いと言った方がよい
ついにやってしまった 落ち葉に足をすくわれ、挙句に対向車に驚いてブレーキを踏んだとたんに 左後ろをガードレールにヒット 大した事はないようだ バンパーが少し削れただけだ そう思って見ていると、なんと言うことか そのまま道の真中に停止しやがる 左に寄せろよ、左に・・・ こちらも一旦停止し対向車をやり過ごそうとする 対向車がスポーツカーとすれ違おうとした瞬間 スポーツカーの運転席ドアが開きかける 見ているこっちの方がヒヤっとする まったく、どこまでも迷惑な野郎だ
降りてきたのはやはり学生と思しき若者だった 私の方を見て慌てて車に戻る ん? スポーツカーは左にゆっくりと寄って停まった どうやら後ろにクルマがいることさえ気がついていなかったようだ 気がついて左に避けるだけでも、まだ救いようがある 抜かし際に声をかける「大丈夫か」 「すみません、大丈夫です」 運転席で照れくさそうにペコリと頭を下げる 根は良い奴のようだ 早く運転上手くなれよ 「ありがとうございます」 クルマだけでは判らないものだ
峠の頂上に着くと目の前に海が広がる 坂を下り始めると海はまた見えなくなるが その前に脇道にそれる 狭い道をゆっくり登って行くと広くはないが見晴台のような場所がある ここから見る海は最高だ 今日の目的地はここだ 波頭が太陽の光にキラキラと輝き 遠くには大型の汽船がゆっくりと航行する姿が見える 手前の山は紅葉が映え、真っ青な海と秋晴れの空とのコントラストをなしている 撮影にはもってこいの状況だ やはり今日来てよかった さっそくカメラを取りだし、撮影をしたあと じっくりと景色を目に焼き付ける 写真を撮るのが目的だったがあまりの素晴らしさに写真を撮るのを忘れるほどだ 私の腕を越えた風景だ 気分は最高だ
どのくらい景色を眺めていただろう 別のクルマがやってきた カメラを抱えた人たちがぞろぞろと降りてきた それをきっかけにしてクルマに戻る 峠を下ると行きつけの食堂がある 漁港のそばにあり新鮮な刺身などがやけに美味い 昼飯の想像をしながら坂を下る
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