TOM's Diary
DiaryINDEX前日のDiary翌日のDiary


2004年06月07日(月) S氏の初ドライブ

S氏は、初心者マークを購入した。
いよいよ、正々堂々と公道を走行できるのだ。
この一ヶ月、クルマのことはかなり熟知した。
ディーラーのメカニックでさえS氏には敵わないだろう。
実は自宅の庭での練習中に大破してしまったS氏のクルマだが
すべて自分で修理してしまったのだ。

壊れたエンジンは修理工場に行って、一番性能のよい中古の
エンジンを貰ってきて載せてしまった。最初は入りきらなかった
ので、エンジンルームを切って少し伸ばして入るようにした。
ボディーはすべて自分の好みで取り替えてしまった。

別に問題の無かった室内にも手を加えた。
メータ好きのS氏的には、速度計と回転系と燃料計だけでは
物足りなかった。水温計はもちろん、油温・油圧、電圧・電流
吸気温・圧、排気温・圧などなどなど、考えられるメータは
すべてつけた。それらはすべて助手席に乗せたパソコンに
測定データを送信し、少しでも異常が見られると必要な情報だけ
を、フロントガラス付近に取り付けたヘッドアップディスプレイに
表示するようにもした。
なんどもあちこちにぶつけて懲りたので、車体の周りには
監視カメラを取り付け安全に配慮し、天井に取り付けたレーダー
によって、常時周囲を走行するクルマや自転車や歩行者を監視し
危険が迫ると自動的に速度を押さえたり、ハンドルを切ったりする。
さらに、監視カメラやレーダーの情報をもとに車庫入れも自動で
行ってくれる。
環境に配慮するため、排気ガスはトランクに設けた排気ガス浄化
装置で有毒な成分をすべて回収し、さらに二酸化炭素は同じく
トランク内に設けた温室内の植物が可能な限り回収してくれる。
お陰でトラックのような形になってしまったが、S氏は気にしなかった。

さっそく初心者マークを貼るとS氏は運転席に乗り込んだ。
シートベルトが自動的に着用される。
「エンジンスタート」
S氏は言うと自動的にエンジンが起動する。
と、突然エラーランプが点灯する。

うっかりしていた。環境浄化システムが温まっていなかったのだ。
S氏はクルマから降りて環境浄化装置の暖機運転を行うため、
コンセントを挿しに行こうとする。
「シートベルト解除」
さらにエラーが発生する。
エラーを解除しないとクルマから降りられないように安全機構が
ついているのだ。
「エンジン停止」
「エラー解除」
S氏は「プログラム変更しなくてはいけないな」と言いながら
クルマから降りようとするとさらにエラーが発生する。
プログラムが勝手に書き換えられると困るので、プログラムが
書き換えられそうになるとエラーを発生するのだ。
「いや、うそうそ、変更しない」
エラーが解除される。

コンセントを挿して暖気を行う。
暖気が終わってしまえば、クルマのバッテリーで十分動くのだが
暖気が終わるまでは100Vが必要なのだ。

1時間ほどして十分に環境浄化装置が暖気運転を終えると
ようやく、S氏はエンジンをスタートすることが出来た。
さっそくクルマを動かそうとDレンジにギアを入れる。
するととたんにエラー発生だ。
[油温が上がっていません][水温が上がっていません]
[排気温度があがっていません]

「めんどくさいクルマだ」
[ピーッ!安全のためです]
S氏はおとなしくギアをNレンジに入れなおした。

油温・水温・排気温度、すべてが上がったのを確認すると
S氏は再びギアをDレンジに入れた。
サイドブレーキを解除し動き始めると・・・
[ぴーっっ!]
[デフオイルの油温が低すぎます]
[ミッションオイルの油温が低すぎます]
[サスペンションが冷えています]
[ブレーキが十分温まっていません]

「ったく!」S氏は声に出さないように注意していたつもりだったが
クルマはS氏の表情を見逃さなかった。
[ピーッ!安全のためです]

S氏は今日の運転を諦めようと思った。
すかさずS氏の表情をクルマが読み取った。
[ピーッ!判りました、とりあえずエラー解除します。]

S氏はゆっくりと自宅の庭からクルマを出すととたんに
警察に呼び止められた。

1時間後、S氏のクルマは10m先の自宅までレッカー車で
運ばれていった。
さすがに改造しすぎだったようだ。


TOM's Gallery |MAILHomePageBBS

My追加

<↓日記内検索↓>