井口健二のOn the Production
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2026年01月18日(日) 死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ、スペシャルズ

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』
        “Das Verschwinden des Josef Mengele”
1974年フランス生まれのオリヴィエ・ゲーズが2017年に発表
した小説『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』を自ら脚色、1969年
ロシア生まれで2022年に西側に亡命したキリル・セレブレン
ニコフの脚本・監督で映画化した作品。
開幕はブラジルの大学で法医学教室の教壇に置かれた白骨。
それはヨーゼフ・メンゲレのものだと説明されるが、生徒の
多くは反応を示さない。しかしそこから物語はモサドの追及
を逃れて逃亡を続けたメンゲレの姿を描いて行く。
それはアルゼンチンに始まりパラグアイ、ブラジルへと転居
を繰り返すが、その間には短期間のドイツへの帰還やブラジ
ルへ来訪した息子との再会、さらにはアウシュヴィッツでの
栄光の日々の思い出なども再現される。
そしてその中に、メンゲレ自身によるアウシュヴィッツでの
行為への言及や信奉して止まないナチス思想への思いなども
鏤められる。それは正しくヨーゼフ・メンゲレの真の姿とも
言えるものだ。

出演は2025年9月紹介『ボンヘッファー』などのアウグスト
・ディールと、Netflix 作品などに出演しているブレット・
シュナイダー。他にベルリン/エルンスト・ブッシュ演劇大
学で教壇にも立っているというデヴィッド・ルランド。
また2013年9月紹介『ハンナ・アーレント』などのフリーデ
リケ・ベヒト。ルランドが教壇に立つ演劇大学出身のミルコ
・クライビッヒ、ダナ・ヘルフルト。さらにブダペスト演劇
映画大学出身のカーロイ・ハイデック。
そして2010年9月紹介『白いリボン』や2019年2月3日付題
名紹介『僕たちは希望という名の列車に乗った』などのブル
クハルト・クラウスナーらが脇を固めている。
メンゲレはモサドの追及を逃れ続け、最終的に捕縛されない
まま1979年に海水浴中の脳卒中で溺死。その遺骨はブラジル
政府が保管しており、映画開幕のシーンに繋がるが、遺骨は
1992年にDNA鑑定により本人と確認されたものだ。
そのメンゲレの生涯だが、作中には彼の語録とも言える発言
が次々に登場し、そのほとんどはナチス礼賛の文言で羅列さ
れる。しかしそこにアウシュヴィッツでの彼の行為が挿入さ
れ、それが正に反面教師と言えるものになっている。
実際に映画に中でアウシュヴィッツのシーンは極めて印象的
に描かれており、その映像と彼の発言との乖離が正しくナチ
スの許でメンゲレが行った悪魔的な行為とそれを全く反省し
ない恐ろしさを描き切っている。
この描き方こそが現政権を批判して迫害を受け亡命した監督
の真骨頂だろう。その主張は特に民主主義とされる国家の右
傾化が進む現代に見事な問いを投げ掛けており、今や全世界
に向けての警鐘になっている感じもするものだ。
そんなアウシュヴィッツに関る作品だが、本作では被害者=
ユダヤ人の図式は存在しない。もちろんユダヤ人も登場はす
るが、被害者の中心は身体的な障碍者であり、いわゆるマイ
ノリティだ。
実際にナチス政権下では同性愛者やロマなども迫害の対象と
なっており、本作ではそれらの人々の姿もしっかりと捉えて
いる。この点は従来のハリウッド映画と一線を画するものと
も言えそうだ。
そしてその映像は本編全体がモノクロームの中で鮮烈な色彩
を持って描かれるもので、それはその時代がメンゲレにとっ
て栄光の時だったと解釈もされるが、敢えてその悪行を鮮烈
に印象付ける効果も伴っている。
なおこの映像は個人的に記録されたホームムーヴィとして登
場するが、それがカラーフィルムで撮影されていたという設
定。因にカラーフィルムは1936年にドイツ・アグファ社で開
発されており、時代考証も正しいものだ。
こんなメンゲレの跋扈する時代が再来しないように、今観て
しっかりと考えておきたい作品だ。

公開は2月27日より、東京地区はシネマート新宿、シネスイ
ッチ銀座他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試
写を観て投稿するものです。

『スペシャルズ』
2023年4月紹介『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』などの
内田英治原案/脚本/監督で、Snow Man佐久間大介を主演に
迎えてダンスバトルを中心に据えたアクションムーヴィ。
開幕は、首都高のトンネルで繰り広げられるカーチェイスと
ガン・アクション。これがCGI多用とは思われるものの見
事に決まっていて、アクション映画の掴みとしては上出来と
言えるものだ。
そこで標的を射殺するがそれは替え玉。その失敗を依頼者に
報告する殺し屋に耳寄りな情報が提供される。それは本物の
標的が1年に一度だけある場所に確実に現れるというもの。
そこは孫娘が出場するダンス大会の客席だった。
そのため殺し屋はダンス大会の舞台上から客席にいる標的を
狙う計画を立てるが、そのためには自らがダンス大会に出場
しなければならなくなる。そこでダンス経験があるとされる
一匹狼の殺し屋たちが集められるが…。
ひと癖もふた癖もある面々がダンス大会出場を目指して悪戦
苦闘を繰り広げる。

共演は椎名桔平、NTC中本悠太、劇団EXILE 青柳翔、それ
に小沢仁志(この面子で踊る!)。そして2012年生まれの羽楽
(うらら:13歳が素晴らしい)。さらに前田亜季、平川結月、
矢島健一、六平直政、石橋蓮司らが脇を固めている。
なお脚本には生活描写に定評があるという劇団マチルダアパ
ルトマン主宰の池亀三太が参加しており、またダンスシーン
の振り付けは2025年の関西万博開会式のパレードの振り付け
などを手掛けたakane が担当している。
「殺し屋がダンス!?」という惹句でどんなものかと心配した
が、物語は予想以上にしっかりしたもので、さすが内田英治
監督という感じの作品だった。それにしても椎名、青柳、小
沢が踊るというのは前代未聞の作品だろう。
そんな面々でのダンスバトルというのも見ものだが、それも
ジャンルがバラバラ。しかもそれぞれが理由のあるダンスと
いうのも上手い展開だった。その中で佐久間には敢えて普段
と違うジャンルへ挑戦というのも気が利いている。
それにしても椎名らには決してうまいとは言えないものの、
恰好は良くてこれなら若い人にもアピールするかも? とい
うダンスに振り付けられているのには感心した。物語に併せ
てこれも納得できるポイントだった。
脚本と振り付けの勝利。正にお見事という感じの作品だ。た
だこの作品なら、最後に六平、石橋らも踊るインド映画風の
グランドフィナーレが欲しかったかな…? そこはちょっと
残念?

公開は3月6日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社エイベックス・フィルムレーベ
ルズの招待で試写を観て投稿するものです。


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井口健二