井口健二のOn the Production
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2025年12月14日(日) たしかにあった幻、在日ミャンマー人−わたしたちの自由−、ブゴニア、木挽町のあだ討ち

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『たしかにあった幻』
カンヌなど国内外の映画祭で多数の受賞に輝き、関西万博で
はシニアアドバイザーなども務めた河�鹹照�が、自身による
オリジナル脚本では8年ぶりに監督した生と死を見詰めるド
ラマ作品。
主人公は神戸にある病院の小児科で移植コーディネーターの
サポートスタッフとして働くフランス人女性。西欧では通常
の医療として普及する臓器移植だが、日本では様々な障壁が
ありジレンマにも陥っている。
その彼女は1年前に屋久島・屋久杉の前で1人の日本人男性
と出会っており、その男性が突然訪ねて来て神戸の住まいで
同棲生活が始まる。その一方で病院ではドナーを待ち切れな
かった小児患者の死などにも立ち会うことになる。
そんな出来事が続く中で男性が姿を消してしまう。それから
1年後、彼女が依頼した調査で男性は7年前に家族から失踪
届けが出されており、そのままでは法律上の死亡が確定して
しまう状況にあることが判明する。
そして病院では1人の患者にドナーが現れ、手術の準備が開
始される。そこではドナーの家族や患者本人の意思確認など
の手続きがコーディネーターらによって粛々と進められ…。
生と死の物語が刻まれて行く。

出演は2023年6月紹介『アウシュヴィッツの生還者』などの
ヴィッキー・クリープスと、2025年9月紹介『そこにきみは
いて』などの寛一郎。他に尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏
と子役の中野翠咲、中村旺士郎。
さらに土屋陽翔、吉年羽響、山村憲之介、亀田佳明、光祈、
林泰文。また中川龍太郎、岡本玲、松尾翠、早織、小島聖、
平原テツ、利重剛、中嶋朋子らが脇を固めている。
作中では実に様々な生と死の形が描かれている。それは生き
ることを渇望しながらの死であったり、その死によって残さ
れた心臓が移植によって生命を引き継いでゆく話だったり。
そこでは日本での移植医療の在り方も問われる。
それに対する失踪者への死亡の宣言、そこには全く別のドラ
マも隠されている。実はタイトルなどからはちょっとファン
タスティックな展開も期待したが、そんな気分は吹っ飛ぶほ
どの重大なテーマが描かれていた。

正に河�鹹照�の真骨頂という感じの作品だった。
公開は2026年2月6日より、東京地区はテアトル新宿他にて
全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ
オの招待で試写を観て投稿するものです。

『在日ミャンマー人−わたしたちの自由−』
2022年10月紹介『愛国の告白−沈黙を破る・Part 2−』など
の土井敏邦監督が、2013年に発表した『異国に生きる−日本
の中のビルマ人』の14年後を描いたドキュメンタリー。
実は2013年の作品も観ていたが紹介は割愛したものだ。その
理由は定かでないが、この頃は年間 560本程度を観ており、
軍事政権には反対の立場を執るものの当時は軟化の傾向で、
自分の中で書くものが見つからなかったのだろう。
その一方で日本との関連性が弱い印象だったこともあったと
思う。それが本作では一気に状況が変わってしまった。これ
は全くもって日本の問題であり、しかもその状況は一切改善
される目途もないどころか、さらに悪化もしそうだ。
そんな状況が3部構成、総上映時間 171分に亙って描かれて
行く。その第1部は前作と同様に日本で運動している人々が
描かれ、第2部では前作以降の民主化と、その際の一時帰国
や民主化によるミャンマーの発展などが描かれる。
それが第3部では一転して2021年2月1日の国軍によるクー
デターが描かれ、それに対する日本の関与が明白に語られる
のだ。それは第2部にも描かれた日本からの援助などによる
国内の発展の裏で進められていた。
そしてそれは日本人として看過できないものになっている。
さらにはミャンマー国軍の将校を日本に留学させ、防衛大学
校で教育したなどの事実も提示され、正に日本の意向でクー
デターが起きたかのような印象も描かれる。
因に日本ではミャンマー人の多くは難民として認められてい
るようだ。その点はクルド人問題とも異なる。それは日本が
クーデター政権を認めていないためでもあるが、その実態は
見事に隠されている。その狡猾さも恐れ入った
いやはや、昨今の台湾有事論争の裏側もこんなことに通じて
いるのかな。そんなことも目の当たりにする感じだった。こ
れは日本人の全員が観てしっかりと考えるべき作品だろう。
右傾化の中で何が起きているかが判る。

まったくもって考えさせられる。恐ろしくもあり素晴らしい
作品だった。
公開は2026年1月30日からUPLINK吉祥寺で先行上映の後、東
京地区は2月14日より新宿K's cinema他にて全国順次ロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社きろくびとの招待で試写を観て
投稿するものです。

『ブゴニア』“Bugonia”
2025年9月紹介『エディントンへようこそ』などのアリ・ア
スターと韓国CJE&Mが手を組んで、2018年12月16日付題
名紹介『女王陛下のお気に入り』などのヨルゴス・ランティ
モス監督と共に、2003年の韓国映画『地球を守れ!』を英語
版リメイクした作品。
登場するのは地元の企業で下働きをしながら従弟と共に養蜂
業を営む男。そんな従兄弟同士の2人が蜜蜂の異常行動から
ある陰謀論に憑りつかれる。それは宇宙人の指金で、人類は
滅亡に導かれているというものだ。
そんな2人はある経緯から彼が勤める会社の女社長が宇宙人
と決めつけ、彼女を誘拐して宇宙人の船に乗り込み、その首
謀者に直談判することを思いつく。そして女社長を拉致し、
通信手段とされる髪を丸刈りにして監禁するが…。
百戦錬磨の女社長と陰謀論に憑りつかれた男2人のし烈な戦
いが開幕する。

出演は『女王陛下…』にも出演して本作の製作も務めるエマ
・ストーンと、2024年7月紹介『シビル・ウォーアメリカ最
後の日』などのジェシー・プレモス。他にエイダン・デルビ
ス、スタブロス・ハルキアス、アリシア・シルバーストーン
らが脇を固めている。
因に撮影監督は『女王陛下…』などのロビー・ライアンで、
撮影には35�丱侫�ルムのヴィスタヴィジョンカメラが使用さ
れているそうだ。披露試写はTOHOシネマズ日本橋で行われた
が、これは大スクリーンで見たい作品だ。
反ワクチンからトランプ政権、兵庫県知事選挙まで世界中が
陰謀論に踊らされている中で、それらを見事に笑い飛ばした
快作と言える作品だろう。しかもそれをオスカー2度受賞の
エマ・ストーンが巧みに体現して見せる。
すでに発表されたゴールデングローブ賞で、いずれもミュー
ジカル/コメディ部門の最優秀作品賞、最優秀主演女優賞、
最優秀主演男優賞にノミネートされているのも理解できると
ころだ。
ただ脚本に関しては少し詰めが甘いかな。特に結末に関して
はあまり衝撃には感じなかったし、ここにもう一段のどんで
ん返しが欲しかった感じもする。映像ではデスクに置かれた
地球儀らしきものにも興味を惹かれた。
まあ最近の映画ファンならこれでも満足するのかもしれない
が、ちょっとストレート過ぎる感じで、もう一捻り、二捻り
が欲しかったものだ。

公開は2026年2月13日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷
他にて全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社ギャガの招待で試写を観て投稿
するものです。

『木挽町のあだ討ち』
1977年生まれの時代小説作家・永井紗耶子が2023年に出版し
て山本周五郎賞、直木三十五賞をW受賞(史上3人目)し、同
年のミステリ・ランキングでも軒並みベスト10入りを果たし
た江戸・芝居小屋が舞台の小説の映画化。
事の発端は1年半前、江戸木挽町の芝居小屋・森田座の前で
仇討が行われる。それは「仮名手本忠臣蔵」の千穐楽が跳ね
た直後で、雪積もる中で見事成し遂げられた仇討には数百人
のやじ馬が目撃者となった。
それから1年半後、1人の田舎侍が森田座の前に現れる。そ
の侍は森田座の呼び込みをやっていた木戸芸者に話し掛け、
故あって仇討の詳細が知りたいと切り出す。その風情に木戸
芸者は森田座に招じ入れるが…。
木戸芸者や立師、元女形の衣装方、小道具方の夫婦など森田
座の裏方たちの話の中から、徐々に仇討の詳細が明らかにな
って行くが、そこには田舎侍が抱える問題も隠されていた。
果たしてあだ討ちの真相とは?

出演は柄本佑、渡辺謙、長尾謙杜、北村一輝。さらに瀬戸康
史、滝藤賢一、山口馬木也、愛希れいか、イモトアヤコ、野
村周平、高橋和也、正名僕蔵。そして石橋蓮司、沢口靖子ら
が脇を固めている。
脚本と監督は2005年8月紹介『大停電の夜に』などの源孝志
による作品だ。
物語としては謎解きミステリーなのだけれど、謎解き自体は
ほぼ予想通りに進んでしまうものの、そこにいろいろな人情
劇や江戸時代の藩政治の問題などが絡み合って、実に飽きさ
せない展開になっている。
さらに当時の芝居小屋の舞台裏のようなものも描かれていて
そこも面白く楽しめた。因に木挽町は現在の歌舞伎座の立つ
辺りの旧名。と言うことは最後に先の川までというのは現在
は首都高になっている築地川なのかな。
物語の背景になっている美濃半紙は子供時代に習字を習って
いた頃にお世話になっていたものだし。そんな身近な感覚に
も惹かれるものがあり、本当に楽しめる作品だった。登場人
物の殆んどが身分を捨てた者たちと言うのも良い。
仇討の殺陣も見事に決まっており、それを芸達者たちが巧み
に仕上げている作品だ。

公開は2026年2月27日日より全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東映の招待で試写を観て投稿す
るものです。


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井口健二