井口健二のOn the Production
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2024年06月02日(日) 怨泊 ONPAKU、うんこと死体の復権、新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!、助産師たちの夜が明ける、クレオの夏休み

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『怨泊 ONPAKU』“怨泊 Onpaku”
2017年発表の『狂覗』がキネ旬ベスト10に選出され、2019年
発表の『超擬態人間』はブリュッセル国際ファンタスティッ
ク映画祭のアジア部門グランプリに輝いたという藤井秀剛監
督が、2011年4月紹介『ドリーム・ホーム』などの香港 852
Filmsと組んで発表したホラー作品。
主人公は香港の不動産会社でCEOにまで上り詰めた女性。
そんな女性が休暇も兼ねた物件の視察で東京にやってくる。
ところが空港で彼女を出迎えたのは元カレの男性。その彼は
同姓同名だと思ったと言い訳するが…。
そんな彼が最初に案内した物件は下町の古家。その古家は再
開発には手ごろだったが、現状は民泊として違法に営業され
ており、元カレは宿泊者は追い出せると主張したが彼女の眼
鏡には叶わなかったようだ。
ところが元カレが手配したはずのホテルが手違いで予約され
ておらず、他のホテルも満室でやむなく彼女は最初に案内さ
れた民泊に泊まることになる。しかし不気味な事態が発生、
彼女の主張で床下を調べると白骨が転がっていた。
こうして警察も動き出すが、そこには過去からの因縁が渦巻
く事態となって行く。

出演は 852 Filmsの共同創設者で『ドリーム・ホーム』にも
主演していたジョシー・ホー。共演は『ドリーム・ホーム』
や2002年のパン兄弟監督作品『the Eye』 などのローレンス
・チョウ。
そして日本側から高橋和也、黒川智花、酒向芳、水上剣星、
菅原大吉、白川和子らが脇を固めている。
監督自身は「解りやすい映画は嫌いだ」と発言しているよう
だが、その割には本作は解りやすい。その辺はこちらが長く
映画を観ているせいかもしれないが、それでも過去の因縁話
などはもう少し丁寧に描いて欲しかった感じはする。
その辺をしっかり描いて、逆に現代のシーンを端折った方が
判り難くて、監督の意図に合った展開になったのではないか
な。特に警察の話などはただ事件を説明しているだけのよう
な気がして、これは事件そのもので説明して欲しかった。
それに宗教との関係が、もっとドロドロした欲望がらみの話
になって欲しかったかな。この事件が繰り返されているのな
らその背景にも迫って欲しかったものだ。それこそが現代の
闇のような作品なのだから。

公開は7月19日より、東京地区は新宿武蔵野館他にて全国ロ
ードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社フリーマン・オフィスの招待で
試写を観て投稿するものです。

『うんこと死体の復権』
1993年から10年の歳月を掛けて実行された「グレートジャー
ニー」などの冒険家・関野吉晴が、自ら監督となって描いた
人類文明の未来を問うドキュメンタリー。
映画は3章に分けて構成され、その第1章<うんこの行方>
では糞土師を自称する伊沢正名氏を通じて人の排泄物がどの
ようにして自然に還って行くかが論じられる。そこにはいわ
ゆる微生物だけでない様々な生物が介在しているものだ。
続く第2章<生きものの視点に立つ>では、その排泄物を食
べる昆虫などを保全生態学者・高槻成紀氏の活動を通じて紹
介。そして第3章<死体をめぐる攻防と協力>では、絵本作
家・舘野鴻氏が動物の死体を食う生物たちについて語る。
それはいたって科学的な見地から語られているものではある
が、題名の通り題材が題材だけにかなり刺激的な映像も多く
登場してくるものだ。そしてそれらを通じて過去から現代に
至る人類の営みが暴かれて行く。

プロデューサーは2016年3月紹介『ひそひそ星』の記事中で
触れたドキュメンタリー『園子温という生きもの』を手掛け
た大島新と前田亜紀。撮影は松井孝行と監督補も務める船木
光、それに前田亜季。編集は斉藤淳一が担当している。
上映前にプロデューサーの大島から「最初の30分は耐えられ
ない人も居るようだが、我慢して欲しい」というような説明
があった。それは確かに人間の排泄物が登場するのだから、
この手の映像は嫌悪感を抱く人も居るようだ。
実際に本作の公開で当初予定した配給会社からはそれが問題
とされて配給を拒否されたそうだ。とは言っても映像を観る
ことを生業としている者が何を甘ったれているのか、という
感じもしてくる。
大体、そんなことを言っていたら大腸がんの検査など受けら
れなくなってしまう訳で、僕なんかは2日分の検体を採取す
るために自分で毎年2回それと対峙しているものだ。それに
比べたら映像はどうということも無い。
そんな映像で始まる作品だが、内容的には人間の営みに関し
て様々な示唆に富んだ見事な作品と言える。これを観れば排
泄物と死体に対する見方は確実に変わってくるはずだ。まあ
観ること自体が拒否されては元も子もないが…。

取り敢えずこれを観る機会を与えてくれただけでも感謝した
いと思う作品だった。
公開は8月3日より、東京地区はポレポレ東中野他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給の合同会社きろくびとの招待で試写
を観て投稿するものです。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』
本作原案の宮川彰太郎が高校生の時に創案し、日本大学藝術
学部・映画科在学中の課題として書き上げた企画書に同科の
非常勤講師を務めていた直井卓俊が目を留め、直井の企画・
製作で映画化した青春ドラマ。
主人公は憧れの新進作家が在籍するという文科系の高校に入
学した女子生徒。そこで文学コンクール連覇中のエリート文
芸部への入部試験に挑んだものの、あるトラブルから試験の
途中棄権を余儀なくされ、入部は叶わなかった。
ところが文芸部の部長から衝撃の事実が告げられる。それは
彼女の憧れる作家が実は文芸部には在籍しておらず、その存
在も謎。そこでその鍵を握っている新聞部に潜入して謎を解
き明かしたら入部を認めるというのだ。
斯くして新聞部に入部した主人公だったが、そこは学校から
非公認で、学内に潜む闇をスクープすることに信念を燃やし
ている場所だった。こうして新米記者となった主人公は、文
芸部を取り巻く闇に直面して行くことになるが…。

出演は、櫻坂46のメムバーでセンターも務める藤吉夏鈴、
2022年12月紹介『Single8』などの�眄个△�り、雑誌「non-
no」の専属モデルで2018年7月15日付題名紹介『青夏 きみ
に恋した30日』などに出演の久間田琳加。
他に中井友望、綱啓永、外原寧々、ゆうたろう。さらに筧美
和子、石倉三郎、高嶋政宏らが脇を固めている。
映画用の脚本は2018年7月紹介『ウルフなシッシー』などの
大野大輔。監督は2012年11月紹介『ももいろそらを』などの
小林啓一。音楽と主題歌を福岡出身の4人組バンド・クレナ
ズムが担当している。
典型的な学園ものという感じの展開だが、物語は意外としっ
かりしていて、巨悪に対抗する姿などはそれなりに説得力も
あった。しかもそれを解りやすく描いているところも好感し
たものだ。
まあ正直に言ってそれ以上でも以下でもないけれど、それな
りの社会正義みたいなものも描かれているし、作戦を巡らし
て巨悪に対抗し、勝利する達成感みたいなものも描けている
のは良かった。
それは青臭いものでもあって、その辺が青春という感じなの
も良いと感じたものだ。加えてちんたらした恋愛劇みたいな
ものがないのも良かったところだ。

公開は8月9日より、東京地区はテアトル新宿、グランドシ
ネマサンシャイン池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、UP
LINK吉祥寺、立川シネマシティ他にて全国ロードショウとな
る。
なおこの紹介文は、配給会社東映ビデオ、スポテッドプロダ
クションズの招待で試写を観て投稿するものです。

『助産師たちの夜が明ける』“Sages-femmes”
2012年6月10日付「フランス映画祭2012」で紹介『愛につい
て、ある土曜日の面会室』などのレア・フェネール脚本/監
督で、2023年の第73回ベルリン国際映画祭にて審査員特別賞
を受賞した作品。
物語の中心は5年間の研修を終えて公立病院の産科病棟に勤
務することになったコーカシアンとアフリカンスの2人の若
い女性。その初出勤日から映画は始まる。そこではまず配属
先が決まるが、差別はないが見た目の判断はあるのかな?
そんな中で2人の奮闘が始まるが、そこでの医療は単に医学
的な見地だけでなく、肌の色や言語、宗教、人生観など様々
な状況に応じた対処が要求されるものだ。そして機材や人的
なトラブルも発生する。
さらに勤務体制への不満など、現代の助産師たちを取り巻く
状況が克明に綴られて行く。

出演は、1994年生まれフランス国立芸術演劇学校出身のエロ
イーズ・ジャンジョーと、1996年生まれ本作で注目されて以
後にカンヌ国際映画祭・監督週間オープニング作品にも出演
したカディジャ・クヤテ。
他に1978年ベルギー生まれのミリエム・アケディウらが脇を
固めている。
また本作には多くの現役の看護師や助産師も出演しており、
監督自身の体験からワークショップなどを開いて助産師の立
場を綿密に調査して作品に臨んだとのこと。複数の看護師は
編集にまで立ち会ったそうだ。
なお脚本は『愛について』にも協力したカトリーヌ・パイエ
との共同執筆のものだ。
僕自身が長女の出産に立ち会った経験があるので、分娩室の
シーンなどには記憶も甦ったが、日本とフランスでは状況も
かなり異なることも実感した。フランスでは分娩費用は全て
国費だそうで、そんな影響もあるのだろう。
とにかく貧富や人種や生活環境など様々な状況の異なる妊産
婦が集まっているのだから、その混乱ぶりは極限状態だ。そ
んな状況の中で奮闘する助産師の仕事ぶりが見事に描かれた
作品だ。そして出産の感動も共有される。
さらに日本でも言われる看護師、助産師の過酷な労働体制へ
のメッセージも見事に描かれている作品でもある。

公開は8月16日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。

『クレオの夏休み』“Àma Gloria”
2023年カンヌ国際映画祭・批評家週間オープニング作品に選
ばれたマリー・アマシュケリ監督の長編デビュー作。
主人公は幼い頃に母親を亡くした5歳の少女。父親は再婚は
せず、少女は経済移民としてフランスにやってきたナニーに
よって育てられた。ところがそのナニーが家庭の事情で帰国
してしまう。
そんな少女の許にナニーからアフリカの家に招待するという
手紙が届き、少女は1人でナニーが暮らす国を訪ねることに
なるが…。そこには生活習慣の違いなど様々なギャップが存
在していた。

出演は、キャスティングディレクターが公園で遊んでいると
ころを見掛けてスカウトしたという撮影時5歳半だったルイ
ーズ・モーロア=パンザニと、アフリカ西岸の島嶼国家カー
ボベルデ出身で、ナニーのリサーチ中に見出されたイルサ・
モレノ・ゼーゴ。
他にミュージシャンでもあるアルノー・ルボチーニ。さらに
は現地でスカウトされたアブナラ・ゴメス・バレーラ、フレ
ディ・ゴメス・タバレス、ドミンゴス・ボルゼス・アルメイ
ダらが脇を固めている。
試写の後、会場では主に女性の声で「女の子が可愛い」とい
う声が聞こえていたようだ。確かに異文化の中で奮闘する幼
気な少女の姿は感動を呼ぶものになっていた。とは言うもの
のそこに至る過程は良いのかな。
僕自身が娘を育てた父親として、このような状況に娘を送り
込むことができるかどうかには疑問が湧く。それはナニーを
信頼してということだろうが、異国のあまりにも違う環境の
中に5歳の娘を送り込むことは危機感がなさすぎる。
実際に彼女はいろいろな危機にも陥れられているものだし、
僕には到底容認できないと思ってしまった。まあ元々がファ
ンタシーという括りなら理解はできるが…。そうではないの
だし、ちょっと現実離れしすぎているかな。
そんなことを考えてしまう作品だった。監督は脚本も書いて
いるが、女性目線だとこれでOKなのかな。

公開は7月12日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
有楽町、Bunkamura ルシネマ澁谷宮下他にて全国順次ロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社トランスフォーマーの招待で試
写を観て投稿するものです。


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井口健二