井口健二のOn the Production
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2024年04月14日(日) マグダレーナ・ヴィラガ/クイーン・オブ・ダイヤモンド、ハピネス、フェラーリ、わたしの物語

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『マグダレーナ・ヴィラガ』“Magdalena Viraga”
『クイーン・オブ・ダイヤモンド』“Queen of Diamonds”
前回紹介した『ブレインウォッシュ』のニナ・メンケス監督
がそれぞれ1986年と1991年に発表した初長編作品及び代表作
とされる作品の、米アカデミー・フィルム・アーカイヴ主導
によるレストア版(著作権2024年)。
1本目は、題名の「マグダレーナ=マグダラのマリア」から
想起される娼婦の物語。彼女は女友達とクラブにいるところ
を踏み込んできた警官に逮捕されるが…。彼女がいる拘置所
と数多の男と過ごすベッドルーム、それにプールサイドの映
像。それらが時系列を錯綜させて描かれる。
2本目は、タイトル代わりに描かれるトランプのカードが示
すカジノの女性ディーラーの物語。彼女の仕事ぶりと彼女が
昼間に寝たきりの老人を介護している姿とが描かれる。さら
に女友達と訪れる湖や劫火に焼かれる樹木の映像。こちらも
各々のシーンにはあまり脈絡のない作品だ。
それぞれは90分及び75分の作品で物語的にはかなり簡略化さ
れていると考えられるが、その割には結構な長回しや一つの
場面の執拗なまでの描写など、正直に言って商業作品という
より実験映画に近いものと考えた方がよさそうだ。論評には
タルコフスキーへの言及もあったが、そんな感じもする。
いずれにしても映画をエンターテインメントとして観たい観
客には少しハードルの高い作品と言えそうだ。まあそういう
作品だからこそアカデミーがレストアを主導したのだろう。
歴史的価値が認められる作品ということだ。

製作、脚本、監督、撮影はニナ・メンケス。主演はいずれも
監督の実妹のティンカ・メンケス。なお編集は2人の共同と
なっている。
前回紹介の作品では映画における女性の搾取について論じら
れていたが、この2作の主人公がそれぞれ娼婦と女性ディー
ラーというのは搾取される女性たちと言えるかもしれない。
その辺は意志が貫かれていると言えるだろう。
ただ1本目の作品にはヌードの女性も登場しており、その辺
の経緯は前回紹介作の中で論じて欲しかったかな。そういう
時代というだけでは説明できないものがそこにはあったはず
なのだから…。
なおこのヌードの女性が実在のものか否か、さらには主人公
を含む孤児の三姉妹という存在そのものにもいろいろ悩まし
いところを感じる作品でもあった。宗教に準えた作品は異教
徒にはなかなか難しいものだ。

公開は5月10日より、前回紹介の作品と共に「ニナ・メンケ
スの世界」という特集上映で東京地区はヒューマントラスト
シネマ渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社コピアポア・フィルムの招待で
試写を観て投稿するものです。

『ハピネス』
2002年に話題になった映画『下妻物語』の原作者としても知
られる作家・嶽本野ばらが2004年に発表した小説の映画化。
因に作家は「乙女のカリスマ」としてロリータファッション
界を牽引する存在だそうだ。
登場するのは高校生の男女。2人は美術部で知り合い共通の
話題もあって仲を深めて行くが、付き合いを始めてから1年
半後、彼女がある告白をしたことから怒涛の展開が始まるこ
とになる。
それは彼女が心臓に持病を持ち、状況から手術は不可能で、
その心臓の変調から彼女の余命があと1週間と医師に宣告さ
れたというのだ。そして彼女はその1週間で完璧なロリータ
となり、最高のカレーを食べたいと希望する。
こうして彼女の両親の了解のもと、2人は大阪にあるロリー
タファッションブランドの本店を訪ねたり、東京銀座の資生
堂パーラーで最高級カレーを食べることに邁進するが…。彼
の心には迷いも生じていた。

出演は2022年12月紹介『少女は卒業しない』などの窪塚愛流
と、2020年3月1日付題名紹介『#ハンド全力』などの蒔田
彩珠。他に橋本愛、山崎まさよし、吉田羊らが脇を固めてい
る。
監督は、2017年2月5日付題名紹介『花戦さ』で日本アカデ
ミー賞優秀監督賞受賞の篠原哲雄。元々2008年1月紹介『ク
リアネス』など青春映画に巧みな監督が、本作でもその手腕
を発揮している。
脚本は、2005年9月紹介『欲望』や2011年8月紹介『夜明け
の街で』などの川��いづみ。こちらも捻ったラヴストーリー
は得意の脚本家が、今回はかなりストレートな物語を巧みに
描き切っている。
以前にも書いたかもしれないが親族にかなり似通った感じの
境遇だった者がいて、正直に言って冷静には観ていられない
部分も生じる作品だった。自分の立場は男性の側だったが、
改めて女性の両親の心情を想うと辛さもこみ上げた。
とは言うものの本作は、それを見事にハッピネスに盛り上げ
て描き切ったもので、さすがにベテランの監督&脚本家の成
せる業と感心もしてしまった。これなら自分の記憶も爽やか
に蘇らせることができる。ありがたい。

公開は5月17日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社バンダイナムコフィルムワーク
スの招待で試写を観て投稿するものです。

『フェラーリ』“Ferrari”
F1レースのチームとして名高いイタリアの自動車メーカー、
その創始者であるエンツォ・フェラーリが1957年に陥った彼
の人生で最大の危機を描いた実話ドラマ。
第2次大戦以前からレースドライヴァーとして活躍していた
エンツォは終戦後の1947年に妻のラウラと共にフェラーリ社
を興し、市販車の製造販売と共にレースに参戦するチームの
運営を開始する。
そしてチームはF1やル・マンなどに参戦して優れた戦績を残
していたが、背景となる1957年には会社経営の実情は資金難
で逼迫していた。このためフォードや元々の所属だったアル
ファロメオなどからの買収の申し入れも届き始める。
ところが会社の株式の半分は妻の所有になっており、その妻
とは前年の1956年に最愛の息子を難病で亡くして以来、冷え
切った関係になっていた。その一方でエンツォは妻に隠して
愛し合う女性との間に息子も儲けていたが…。
そこでエンツォはイタリア伝統の公道レースミッレミリアへ
の参戦を発表、王座を奪還して会社を立て直すと宣言する。
そしてそこにスペイン人のドライヴァー、アルフォンソ・デ
・ポルターゴ侯爵が参加してくる。

出演は2017年7月9日付題名紹介『パターソン』などのアダ
ム・ドライヴァ。なお俳優は製作総指揮も務めている。他に
ペネロペ・クルス、2023年12月紹介『ダム・マネー』などの
シャイリーン・ウッドリー。
またブラジル出身で、TVミニシリーズ“SENNA” では主人公
のアイルトン・セナを演じたというガブリエル・レオーネ。
さらに2013年5月紹介『モスダイアリー』などのサラ・ガド
ン、2012年6月紹介『ユナイテッド』などのジャック・オコ
ンネル、2008年1月紹介『魔法にかけられて』などのパトリ
ック・デムプシーらが脇を固めている。
脚本は2003年6月16日付でリメイク版を紹介した『ミニミニ
大作戦』でその1969年製作のオリジナル版を手掛けたトロイ
・ケネディ・マーティン。監督は2015年4月紹介『ブラック
ハット』などのマイクル・マンが担当した。
原作は1991年に発表されたもので、その直後からマンとマー
ティン、それにシドニー・ポラックの共働で企画は進められ
た。しかしミッレミリアの再現などに多額の製作費が予想さ
れ、大手の映画会社ではGOサインは出ず、やがてポラックと
マーティンは2008年と2009年に他界してしまう。
それでもめげなかったマンは、2006年7月紹介『マイアミ・
バイス』などで培ったフェラーリ社との人脈を駆使して今回
の映画化に漕ぎ着け、半ばインディペンデント映画の体制で
本作を完成させたそうだ。
因に劇中登場するレーシングカーには1台1億ドル以上の価
値があるとされ、そのまま撮影に使用することはできなかっ
たが、フェラーリ社が所有する実車から直接3Dスキャンし
た外装を現代の車台に載せたものが撮影されている。
この他に1957年当時のベンツやポルシェなどは、コレクター
が所有している実車が多数登場しているそうだ。カーマニア
には垂涎の作品とも言えそうだ。

公開は7月5日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社キノフィルムズの招待で試写を
観て投稿するものです。

『わたしの物語』“Is There Anybody Out There?”
四肢に障碍のあるイギリスの女性が、自ら映画を学んで監督
した一人称ドキュメンタリー。
1992年生まれの女性の障碍は、生まれつき股関節がなく両脚
の大腿骨が著しく短いというもの。このため身長は子供並み
なのだが、腰から上はどちらかというと愛らしい容姿の成人
女性になっている。
そんな女性が中指を立てながら激しく踊るシーンから映画は
始まる。それは異形ではあるけれど、どこか受け入れられる
感じがする…。それが監督の描きたいものを全て語っている
ような、そんな導入だった。
そこから彼女=監督は、自分と同じ姿の大人を探す旅を始め
る。それはまずFacebookでの問いかけから始めるが、該当者
はなかなか現れない。それでもアメリカ人のメイクアップ・
アーチストを見つけるが、COVID-19禍で旅行は難しかった。
その一方でシングルマザーで彼女を育てた母親や、彼女が原
因かもしれない離婚をした父親との会話や、さらにアメリカ
で治療を行う医師との面談、そしてサリドマイド児の活動家
との会話など。様々な人物との交流が描かれる。
そんな中で彼女は1人の男性と知り合い、我が子を抱くまで
にもなり、遂に家族3人でのアメリカ訪問も実現する。そん
な姿が描かれて行く。

監督、出演はエラ・グレンディニング。すでにドラマを含む
短編作品を発表している彼女の初長編監督作品とのことだ。
なお彼女は他の監督のドラマ作品に俳優として出演してもい
るそうだ。
実は近所の総合病院に同様の症例と思われる女性看護師が以
前在職されていて、採血などをして貰っていた記憶がある。
従って本作で同症者が見つからないという説明にはおや?と
思ったが、細かいところでいろいろ拘りもあるのだろう。
そんなことも含めていろいろ考えさせられる作品だった。た
だそれを屈託なく提示しているところが本作の良さで、それ
を僕らも屈託なく受け入れる、それがこの作品に対する回答
だろう。
それにしてもアメリカ人医師の治療法などはかなり衝撃的だ
ったが、それに対する彼女の考え方も素晴らしくて、これな
ら今後もいろいろと彼女の活躍が見られそうだ。見事な作品
だった。

公開は6月22日より、東京地区は新宿K's cinema他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社パンドラの招待で試写を観て投
稿するものです。


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井口健二