井口健二のOn the Production
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2024年04月07日(日) PS-1黄金の河、ブレインウォッシュ:セックス・カメラ・パワー

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『PS-1黄金の河』“பொன்னியின் செல்வன் 1”
インド・タミル語の作家カルキ・クリシュナムルティによる
原作で、1950年―1954年に週刊誌連載で発表され、1955年に
全5巻(総ページ数約2,210P)で出版されたという歴史小説の
映画化。因に原作はタミル語で書かれたもっとも偉大な小説
の1つとされているそうだ。
タミル語原題はアルファベット表記“Ponniyin Selvan”、
英語に訳すと“The Son of Ponni”の意だそうで、Ponni と
は南インドを流れる大河の名称というものだ。そしてその地
で紀元10世紀に栄えた実在のチョーラ王朝を背景に、愛憎や
陰謀に彩られた物語が展開される。
映画の始まりでチョーラ王朝皇帝の2人の息子は、それぞれ
南方と北方の隣国の征服を進めていた。ところが彼らのいな
い宮廷ではある陰謀が進んでいた。その動きを察知した長男
は信頼できる配下の属国の王子を調査に向かわせる。
その陰謀とは長男の即位を阻止して皇帝の弟を王位に即ける
というもの。そんな陰謀は財務大臣やその他の大臣たちによ
って画策されていた。そしてその陰謀を把握した王子は長男
の指示でその事実を長男の弟妹に知らせに行くが…。
映画の展開ではこの王子の活動が主に描かれ、そこに仏教の
修行僧やその義妹等が絡んで、波乱万丈の物語が展開されて
行く。そこにはかなり大掛かりな戦闘シーンなどもあって、
中々の迫力の作品だった。

出演は、2013年12月紹介『神さまがくれた娘』などでタミル
語映画の最高の人気スターと言われるヴィクラムと、2012年
3月紹介『ロボット』などのアイシュワリヤー・ラーイ。さ
らに2021年日本公開『囚人ディリ』などのカールティらが脇
を固めている。
脚本と監督は1956年生まれで1980年代から映画の監督を開始
し、タミル語映画に革命をもたらしたとも言われるマニ・ラ
トナム。そして音楽をインド映画音楽の最高峰作曲家A・R
・ラフマーンが担当している。
今回はonline試写で鑑賞したもので、手元にプレス資料など
が一切なかった。そこで英語版のウィキペディアなどの情報
からこの紹介文を書いたが、その人物関係が複雑で物語を把
握するだけでかなり手間取った。
恐らく現地では大ベストセラーで内容などは知れ渡っている
ものなのだろうが、知らない身にはかなり厳しかった。とは
言えアクションなどはそれぞれ見応えがあったし、物語も陰
謀などの画策は明確なので面白さは損なわれない。
ただ物語をもっとちゃんと把握してしっかりと楽しみたかっ
たという思いは生じたものだ。

公開は5月17日より、東京地区は新宿ピカデリー他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社SPACEBOXの招待で試写を観て投
稿するものです。

『ブレインウォッシュ:セックス・カメラ・パワー』
           “Brainwashed: Sex-Camera-Power”
1955年生まれでUCLA在学中の1981年に最初の短編作品を手掛
けたという女性監督のニナ・メンケスが、映像作品における
「男性のまなざし=Male Gaze」 について検証したドキュメ
ンタリー。
本編ではUCLAで行われたと思しき講演の模様を中心に、学生
らとのディスカッションや様々な映画人らへのインタヴュー
なども挟みながら、古今東西の映画に登場する女性の姿態を
扇情的に写した映像を紹介して行く。
そこには1927年製作のドイツ映画『メトロポリス』に登場す
るロボットマリアのダンスシーンや、2017年版の『ブレード
ランナー2049』など、SF映画も散見される。他にも韓
国映画なども選ばれていたものだ。
それらは「男性のまなざし」の類例として取り上げられてい
るものだが、その一方でソフィア・コッポラ監督の『ロスト
・イン・トランスレーション』など、女性監督の作品でも同
様の「男性のまなざし」があることも紹介される。
ということで古今東西の映画が女性を性的対象物として搾取
してきたことが論じられて行くものだが…。実際その主張は
正しいものだし、それによって女性差別などの多くの事象が
生じてきたという意見も傾聴すべきものだ。
とは言うものの論証自体がかなり弱いことは否めない。特に
せっかくソフィア・コッポラの作品を取り上げながら本人に
その意味を語らせなかったのはなぜなのか? それを撮った
理由を本人の口から聞きたかった。
その一方で突然ロザンナ・アークェットが登場してハーヴェ
イ・ワインスタインへ告発を始めたのには唖然としてしまっ
た。これでは結局 me too 運動への尻馬に乗ったようにしか
見えてこず、底が浅くも見えてしまったものだ。
さらに「男性のまなざし」が女性の姿態ばかりを観ていたか
と言えば、SF映画では『ブレードランナー』のオリジナル
が公開された1982年の2年後には『ターミネーター』が公開
され、そこにはシュワルツェネッガーの裸体が登場する。
それ以前にも『ターザン』映画では半裸の男性が描き続けら
れていた。特にターザンはエドガー・ライス・バロウズの原
作では英国紳士としても登場するのに、映画がそれを描くの
には1983年の『グレイストーク』まで掛かった。
また『メトロポリス』の脚本は女性のテア・フォン・ハルボ
ウによるものだし、さらに1936年のベルリンオリンピックを
写した2部作の記録映画でレニ・リーフェンシュタール監督
は男性の姿態を美しく捉えてもいる。
そんな事象が多数ありながら恣意的に一部の作品を取り上げ
ていることは明らかで、論証というにはあまりに中途半端。
主張していること自体は正しいだけに却って物足りない感じ
にもなってしまった。

公開は5月10日より、東京地区はヒューマントラストシネマ
渋谷他にて全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社コピアポア・フィルムの招待で
試写を観て投稿するものです。


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井口健二