井口健二のOn the Production
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2024年01月21日(日) FLY!/フライ、湖の女たち、彼女はなぜ猿を逃がしたか?

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『FLY!/フライ』“Migration”
2017年1月22日付題名紹介『SING/シング』などを手掛ける
ユニバーサル・スタジオ/イルミネーションが、同作以来と
なるオリジナルキャラクターで描いたアドヴェンチャーアニ
メーション。
登場するのは合衆国北東部ニューイングランドの小さな池に
暮らすマガモの一家。その地は冬場もしのげるらしく、父鳥
はのんびりした暮しで定住を決め込んでいる。そのため寝物
語は池を飛び出した鳥を襲う怪物の話ばかりだ。
ところがある日、そんな池に北方から渡り鳥の一家が飛来。
彼らは口々に南国の楽しさを吹聴して池を飛び立って行く。
その言動に心を動かされた母鳥と兄妹の若鳥は南国の暮らし
を夢見始める。
そんな家族の声に最初は耳を貸さなかった父鳥だったが…、
遂に家族の声に押されて渡りを決意。叔父鳥も巻き込んでの
初めての渡りが決行される。しかしそこにはとんでもない冒
険が待ち構えていた。

脚本と監督は、2012年6月「フランス映画祭2012」で紹介し
た『アーネストとセレスティーヌ』などのバンジャマン・ル
ネールによるハリウッドデビュー作。脚本には、2004年2月
紹介『スクール・オブ・ロック』などのマイク・ホワイトが
参加している。
声優はパキスタン出身で2017年12月24日付題名紹介『ビッグ
・シック』などのクメイル・ナンジアニと、2023年8月紹介
『コカイン・ベア』などのエリザベス・バンクス。他にオー
クワフィナ、キーガン=マイケル・キー、デビッド・ミッチ
ェル、キャロル・ケイン、カスパー・ジェニングス、トレシ
ー・ガザル、ダニー・デビート。
日本語吹き替えは堺雅人、麻生久美子、ヒコロヒー、黒川想
矢、池村碧彩、羽佐間道夫、野沢雅子、関智一、鈴村健一、
芹澤優、谷山紀章、喜多村英梨、愛河里花子らが担当してい
る。
単純にお子様向けと言ってしまえばそれまでなのだけれど、
物語はそれなりに考えられているというか。人間の登場には
多少のいやらしさはあるけど全体的には純粋な冒険譚として
楽しめる。それは大人の眼でも楽しめるものだ。
特に冒険心を失いつつある日本の若者には心に響く作品にな
るかもしれない。こんな冒険心が若者には必要なのだ。

公開は3月15日より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東宝東和の招待で試写を観て投
稿するものです。#映画フライ

『湖の女たち』
2019年9月8日付題名紹介『楽園』などの吉田修一原作を、
2019年6月23日付題名紹介『タロウのバカ』などの大森立嗣
脚本、監督で映画化した作品。なお吉田原作&大森監督では
2013年『さよなら渓谷』が作られている。
琵琶湖畔の介護療養施設で高齢の入居者が不審死。それは誤
動作はあり得ない人工呼吸器の停止によるもので、関係者が
そのアラーム音を誰も聞いていないと証言したことで事件性
を疑わせることになる。
このため地元署のベテランと若い刑事の2人が捜査を開始、
ベテラン刑事は1人の介護士を犯人と決めつけ、様々な手段
でその介護士を追い詰める。ところがそれが思わぬ展開を生
み、警察のやり方に批判が集まるが…。
そのベテラン刑事にはある事件で政治家の介入を受け、捜査
を打ち切られたという苦い過去があった。そして週刊誌の記
者がその事件を掘り返し始める。そこには戦争犯罪に絡む巨
悪が潜んでいた。
やがて第2の事件が起き、週刊誌の記者はネットに拡散され
た動画からある真実を見つけ出す。

出演は2018年9月9日付題名紹介『旅猫リポート』などの福
士蒼汰と、2022年9月紹介『夜、鳥たちが啼く』などの松本
まりか。そして2018年12月9日付題名紹介『あまのがわ』な
どの福地桃子。さらに財前直見、三田佳子、浅野忠信。
他に近藤芳正、平田満、根岸季衣、菅原大吉、土屋希乃、北
香那、大後寿々花、川面千晶、呉城久美、穂志もえか、奥野
瑛太、吉岡睦雄、信太昌之、鈴木晋介、長尾卓磨、泉拓磨、
伊藤佳範、岡本智礼、荒巻全紀らが脇を固めている。
物語は実に多岐に渉るもので、上に書いたストーリーはその
一面しか紹介していないし、恐らくは監督の意図とは異なる
部分かも知れない。従ってネタバレはしていないと開き直り
たくもなるが、この複雑な展開は魅力的だ。
一般的に物語の作り方として「起承転結」という言葉がある
が、起から承への広がり方が尋常ではなく、さらに転の部分
も意表を突く、しかも結の部分の納め方が賛否を生むかもし
れないのも見事なものだった。
こういうザ・物語という感じ作り方は映画の醍醐味と言える
ものだろう。原作小説がどのようなものかは知らないが、正
に映画という感じのする作品だ。これなら原作も読みたくな
る。

公開は5月より、全国ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社東京テアトル、ヨアケの招待で
試写を観て投稿するものです。

『彼女はなぜ、猿を逃がしたか?』
2023年12月紹介『雨降って、ジ・エンド。』の「群青いろ」
製作で、同作の高橋泉脚本・監督による2022年の最新作。
実際の出来事にインスパイアされたとする作品。その出来事
とは少女が動物園の檻を破り猿を逃がして逮捕されたという
もの。そんな少女の真意を探るため女性記者が取材を開始す
る。しかし少女は話をはぐらかし真意には辿り着けない。
一方、別の男性記者が当日少女と一緒にいた少年の存在を突
き止め、少年が撮影したフィルムを入手。その一コマから捏
造された記事が少女を追い詰める。このため女性記者は少女
を救うための行動に出るが…。
その行動は女性記者自身を窮地に陥れることになる。

出演は「群青いろ」共同主宰の廣末哲万。他に「群青いろ」
常連の新恵みどり、結。さらに藤嶋花音、萩原護、高根沢光
らが出演している。
正直に言ってかなり入り組んだ構成の作品で、物語としての
結末はそれなりに理解はしたのだが、何となくもやもやした
感じは残る。ただまあ高橋監督としては個人的な作品を狙っ
ているようで、その辺の思惑は了解できるかな。
でも不思議な感覚の作品でその辺が嵌ればそれなりに面白く
は感じられるだろう。あくまでも商業ベースの作品ではない
ということのようだ。

公開は2月10日から公開の『雨降って、ジ・エンド。』に引
き続き2月24日より、東京地区はポレポレ東中野他にて全国
順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社カズモの招待で試写を観て投稿
するものです。


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井口健二