| 2023年03月26日(日) |
光をみつける、Rodeo/ロデオ、アダマン号に乗って、修験ルネッサンス |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『光をみつける』 全盲でヴァイオリン奏者/ヴィオラ奏者/作・編曲家/講演 家と称する穴澤雄介氏の姿を追った作品。 ジャンルとしてはドキュメンタリー映画だと思うが、副題に 「ヴァイオリニスト穴澤雄介からのメッセージ」とあり、正 しくそういう感じの作品だ。 プレス資料に記載のプロフィールによると、穴澤氏は1975年 の生まれ、生まれつき目と心臓が悪く幼い頃に心臓の手術を 複数回受け、心臓手術は成功したものの徐々に視力が減退、 高校生時代に完全に失った。 学歴は筑波大学付属盲学校高等部本科音楽科、同専攻音楽科 卒業。COVID-19禍以前は年間 150本以上のライブ活動の他、 学校関係を中心の年間30回以上の講演活動を行う、とある。 本作はそんな穴澤氏の姿を追う。 作品内容としては、配信番組と思しきスタジオでのお絵描き への挑戦や、ナレーターを務めた舞の海秀平氏との対談、陶 芸への挑戦などの様子も描かれるが、作品の本質は副題にあ る通りの穴澤氏のメッセージだ。 それは障害を持つ人だけでなく、健常者にも将来への希望を 持たせてくれるものであり、特に今の時代には傾聴に値する 重要なメッセージになっている。増してや自分の未来に不安 を抱えている若い人たちには、ぜひ聞いて貰いたいものだ。 監督は永田陽介。村上龍監督作品の海外での映画賞やセール スに関ったという人のようだが、監督作品は初のようだ。 という作品だが、実はプレス資料には書かれていないが穴澤 氏が語る自身の人生が壮絶で、それにはまいってしまった。 しかもそれを淡々と笑いも交えながら語る。その強烈さにも 衝撃を受ける作品だった。 そんな中で、目が見えない恐ろしさとして駅のホームから転 落したこともあると軽く語るシーンもあるが、実は自分の娘 が視覚障碍者の世話をする仕事についていたことがあり、娘 からはホームからの転落なんて日常茶飯事と聞かされていた ことも思い出した。 折しも大阪駅地下ホームの開設で、ホームドアのない線路を 貨物列車が轟音を挙げて通り抜ける映像を観ていて、この恐 怖は如何ばかりかとも思ってしまったものだ。多様性の時代 を目指して発信するべき作品と感じた。 公開は5月30日より、恵比寿の東京都写真美術館ホール他で 全国順次ロードショウとなる。
『Rodeo/ロデオ』“Rodéo” 2022年のカンヌ国際映画祭ある視点部門で、本作のために設 けられたとされるcoup de coeur du jury 賞を受賞したフラ ンスの新星ローラ・キヴォロン監督の長編デビュー作品。 主人公はバイクに跨る為に生を受けたと言える女性。物語は 彼女が盗まれた自分のバイクを探すところから始まる。そし てネットで売りに出ていたバイクを見付けた彼女は、巧みな 交渉でバイクを奪い返す。 そんな彼女は公道で曲芸のような乗車を披露するグループと 出会い彼らに接近するが、女性は仲間に入れないとあしらわ れる。それでも徐々に仲間の信頼を得た彼女はバイク窃盗の 一味として仕事をこなすようになるが…。 グループのリーダーは収監中で、盗みの指示は携帯電話を通 じて行われ、獲物のバイクは仲間のガレージで改造され転売 されていた。その一方で彼女には、リーダーの妻子の面倒を 見る仕事も割り振られる。 そんな中で妻子の苦境を感じた彼女はとある大きな仕事を思 いつく。それが成功すれば、リーダーの妻子も自由になれる 筈だった。 主演は、監督が脚本を書く合間の気晴らしに観ていたインス タグラムで見つけたというジュリー・ルドリュー。実際のバ イカーだという女性が迫真の演技を見せている。他に脚本に も参加のアントニア・ブルジらが脇を固めている。 パリ郊外育ちの監督は幼い頃から周囲にバイカーが多くいる 環境で育ったのだそうで、本作はそんな出自から自然に出て きた物語のようだ。そして2016年に短編で同じくバイカーを 描いた“Au loin, Baltimore”を撮ったことから4年を掛け て本作を描いている。 バイク映画というとアメリカや日本の映画では1000�侫�ラス の大型が格好良いとされるが、本作に登場するのはヤマハや ホンダなどの 500cc以下の車種がほとんど。実際ヨーロッパ では、シティバイクとしてこの方が好まれているようだ。そ んな現実味にもあふれた作品になっている。 ただ結末に関してはこれがベストだったのかな。ここは何か 常識に囚われているようで、理想を高く掲げている割には少 し物足りなくも感じてしまった。実際にプレス資料によると 別の結末も検討されたとあり、その結末に至るストーリーも 観たかったものだ。 公開は6月2日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 渋谷、UPLINK吉祥寺他にて全国順次ロードショウとなる。
『アダマン号に乗って』“Sur l'Adamant” 2019年9月15日付題名紹介『人生、ただいま修行中』などの ニコラ・フィリベール監督が、パリセーヌ川の左岸に設置さ れたパリ中央精神科医療グループの一部を成すデイケアセン ターを取材した日仏共同製作のドキュメンタリー。 川に浮かぶ木造船をモティーフに設計されたその施設には、 毎日朝から三々五々に人が集まってくる。そこには毎日来る 患者もいれば、定期的または不定期にくる患者もいる。そし て毎週月曜日には、介護者と患者が一堂に会するミーティン グが開かれ、日々のニュースの交換やその週に行う行事など の検討が行われる。そんな様子が記録されている。 また施設で開催される絵画教室やギターやピアノなどの楽器 演奏、またギターに合わせてのヴォーカルなども披露される が、患者特有の雰囲気はあるものの、ギターの演奏などはか なりのテクニックが披露されるものだ。さらに絵画も見事な ものが紹介される。そんな施設での日々の様子が、患者の中 に入り込んだ監督らによって克明に記録されている。 アメリカの映画評価サイトRotten tomatoesでは満足度100% だそうだが、正直に言ってこれに適う被写体は他にはあり得 ないと言えるだろう。監督らはそれをただ記録しているだけ のものであり、作為なども全く入る余地がない。つまりただ 写しただけで完璧な作品になってしまうものだ。もちろん編 集などの効果はあるがこれぞ映画の真骨頂だろう。 いやはや、これはずるいと言いたくなるような作品だった。 なお本作にはフィリベール監督とは20年来の交流を持つとい う配給会社のロングライドが共同製作として参加している。 そして本作は2023年2月開催の第73回ベルリン国際映画祭に おいて最高賞の金熊賞に輝いたもので、4月にパリでの一般 公開に続いて日本でも4月28日から緊急公開が決定。東京は ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国 ロードショウとなる。
『修験ルネッサンス』 2018年2月25日付題名紹介『熊野から』などの田中千世子監 督が、同作を含む三部作に続き紀伊半島を舞台に描いた紀行 ドキュメンタリー。 前三部作の舞台だった和歌山県新宮市に注ぐ熊野川、その源 流から紀伊山地を縦走して奈良県吉野川に至る熊野修験道。 それは飛鳥時代の役小角によって開設されたという日本最古 の修験の道だ。 しかし明治時代に修験道禁止令が発布されたことで荒廃し、 第2次大戦後に再興が始まったものの、多くの道は途切れて いた。そんな歴史に埋もれた修験の道が昭和63年に復興。そ こに至る道程や、以来35年を経た現状が紹介される。 実は田中監督自身は、2014年に三部作の第1作を撮った頃か ら当地の修験に参加していたそうで、以来10年に亙って取材 を続け、2022年春に行われた峰入りまでが撮影されて本作が 完成されている。 ただし修験の行程の一部は現代でも結界門によって女人禁制 とされており、その部分は男性のカメラマンによって撮影さ れているものだ。それによって熊野修験の全貌が記録される に至っている。 田中監督の作品では、前作まではいろいろと社会問題も織り 込まれていたが、本作は明治期の禁止令などの話題はあるも のの、社会問題というほどではなく、女人禁制に関しても事 実として描くに止まる。 その辺を敢えて追求しないのは見識だろうし、本作はそれよ り修験道への誘いを主眼として描いているものだ。それを補 佐するためのちょっとした仕掛けも施されており、それらを 含めて納得のできる作品になっていた。 公開は5月27日より、東京は渋谷のシアター・イメージフォ ーラムにてモーニングロードショウ。なお第1週の週末及び 第2週の木〜日曜日の上映ではトークショウも併せて開催さ れることになっている。
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