| 2022年11月06日(日) |
若者は山里をめざす、スクロール、仕掛人・藤枝梅安 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『若者は山里をめざす』 2016年2月紹介『無音の叫び声』などの原村政樹監督が、埼 玉県で消滅可能性都市No.1とされる東秩父村に近年移住した 若者たちを取材したドキュメンタリー。 所在地は名前の通り秩父の東側。地図で観ると埼玉県のほぼ 中央だが、深い山懐に抱かれ、正に自然の真っただ中という 感じの場所だ。東京の都心から60kmということだが、アクセ スは電車とバスで80分だという。 60kmと言うと自分が生まれ育った平塚市がほぼ同じ距離だと 思うが、東京駅からJRで50分足らずだから、不便と言えば 不便なのだろう。特に鉄道1本で行けないというのは大きい かもしれない。 そんな村に移住した若者で最初に登場するのは31歳の女性。 元々東秩父村の出身だった彼女は10代の頃には都会に憧れた が、東京の大学では同級生に羨ましがられ、さらに消滅可能 性都市No.1とされたことに反発して村にUターンした。 そんな彼女は村の老人たちと積極的に話し合い、新たな村の 魅力を発見して村を再生させようと頑張っている。特に不便 かも知れないが豊かな暮らしぶりと、老人たちが孤独ではな いということに惹かれるのだという。 次に登場するのは25歳の男性。元々旅好きだった彼は農村の 暮らしにも憧れていたが、勤め先でのパワハラなどから退職 を決意、東秩父村の地域おこし協力隊に応募して村にやって きた。そんな彼は村の特産品に着目する。 他にユネスコの無形文化財にも指定されている村の伝統工芸 和紙作りを継承するため、職人の募集に応募して移住してき た26歳の男性や、京都の芸術系の大学で和紙の技術を学んで 移住してきた23歳の女性など、様々な若者が描かれる。 題名からは五木寛之の小説、若しくはザ・フォーク・クルセ ダーズの楽曲「青年は荒野をめざす」を思い出したが、監督 はその世代なのかな? いずれにしても都会生活に違和感を 持った若者が目指した先に山里があったという作品だ。 ただ展開としては理想論かな。もちろんここではこれが現実 なのだろうけど、別の場所でも同じに行くのかどうか。とは いうものの、実は上映後に監督の挨拶があって、そこでは若 者にもっと村に来てもらいたいという言葉もあった。 つまりそのためのPR映画という側面もあるようが、それは 同時に村に住む老人たちにも、若者との付き合い方を教える ノウハウ映画というような感じもしてきた。それらが上手く 行けば、きっとより良い村生活が実現するものだ。 それにしても村の特産品のノゴンボウ餅というのは一度食べ てみたくなったものだ。 公開は2023年1月14日より、東京は新宿K's cinema、続いて 1月21日より埼玉県川越スカラ座他で全国順次ロードショウ となる。
『スクロール』 1991年生まれで若者に強い影響力を持つという作家、橋爪駿 輝のデビュー作を、2019年9月22日題名紹介『MANRIKI』な どの清水康彦の脚本監督、北村匠海、中川大志、松岡茉優、 古川琴音の共演で描いた作品。 いつも「死にたい、死んでしまいたい」とスマホのメモ帳に 書き込んでいる若者と、仕事も恋もいつも刹那的に生きてい る若者。そんな2人が学生時代の同級生が自死したことで、 人生の新たな局面に向き合うことになる。 そんな若者に付き合いことになった2人の女性も、男性たち の運命に巻き込まれて行く。物語の背景にはパワハラやセク ハラなど、正しく現代社会の様々な側面が見え隠れする作品 だ。 上記以外の出演は水橋研二、莉子、三河悠冴、MEGUMI、金子 ノブアキ、忍成修吾、相田翔子らが脇を固めている。 オープニングはかなりの長回しで、横浜にある1946年開業の ダンスホールが登場するなど、不思議な雰囲気が横溢する。 そしてラストでは大田区雪谷で1957年創業の銭湯が舞台にな るなど、昭和レトロが満喫できる作品にもなっている。 撮影監督は宇多田ヒカルやあいみょん、米津玄師、King Gnu などのミュージックヴィデオを手掛ける川上智之。映画の全 体がスタイリッシュとも言える見事な映像で綴りこまれてい る。 そんな映像の中で物語は正に現代の若者が直面している現実 が描かれているのだろう。僕自身は最早そんな年代からはか け離れた所にいるものだが、そんな僕にも共感はできる作品 には仕上げられていた。 清水監督は上記紹介作の後、昨年度には1997年『CUBE』 の公式に認められたリメイクなども手掛けており、かなり不 思議な雰囲気を描くことには長けている監督のようだ。そん な監督がリアルに挑んだ作品とも言える。 そしてそこに川上撮影監督の映像が絡んで、正しく不思議、 且つリアルな映画が作り出された。新しい映像世界の誕生、 そんなことも予感させる作品だ。 公開は2023年2月より、ロードショウが予定されている。
『仕掛人・藤枝梅安㊀』 『仕掛人・藤枝梅安㊁』 原作者・池波正太郎の生誕 100周年を記念してその代表作と も言えるシリーズが2部作で映画化された。実は第1作の試 写は先週観たものだが、2作纏めて紹介すべき作品と考え、 今週に先延ばしした。 江戸市中を少し離れた品川台町に居を構える鍼医者の梅安は 町人の治療も分け隔てなく、人望も厚い地元の名士だった。 しかし彼にはその表の顔とは背反する闇の仕掛人という裏の 稼業があった。 それは蔓と呼ばれる元締めからの指示を受けて、金子で人を 殺すというもの。しかも梅安の手口は本業の鍼を用いて証拠 を残さず、役人には自然死と納得させる巧妙なものだった。 そして2部作では江戸と京都での仕事が各々描かれる。 その1作目の江戸の話では、遊郭で繁盛店を切り盛りする女 将に纏わる話。第2作では、京の都を跋扈するやさぐれ集団 を相手に、梅安と相棒の彦次郎の仕事ぶりが描かれる。そし てそれに併せて彼らの出自が語られるものだ。 出演は2作通してのレギュラー陣が豊川悦司、片岡愛之助、 菅野美穂、小野了、高畑淳子、小林薫。加えて第1作には早 乙女太一、柳葉敏郎、天海祐希。第2作には一ノ瀬颯、椎名 桔平、佐藤浩市が登場する。 監督は2006年『星になった少年』などの河毛俊作、脚本は同 作や、2009年8月紹介『風が強く吹いている』などの大森寿 美男が担当している。 原作は、映画では田宮二郎、緒形拳、萬屋錦之介、テレビで は小林桂樹、渡辺謙、岸谷五朗など多くの映像化で知られ、 また人気シリーズ「必殺仕事人」の翻案元ともされるものだ が、本作ではかなりダークな仕事ぶりに驚かされた。 それは原作でも、仕掛人は蔓を信頼して仕事の背景などは問 わないとされているようだが、本作の中でも梅安の殺しが必 ずしも正義に基づかないし、さらに非情さでも、いわゆる正 義のヒーローとは程遠い。 そんなダークヒーローの話ではあるが、梅安の心の底にはそ の仕事への後悔もあるようで、そんな人間味も魅力というシ リーズではあるのだろう。その人間味を豊川悦司は巧みに演 じている作品とも言えそうだ。 なお第1作のエンディングロール後には第2作への繋ぎの仕 掛も設けられるが、第2作のエンディングロール後は、別の 仕掛けとなっていたようだ。でも出来たら第3作も観てみた い作品ではあった。 公開は第1作が2023年2月3日より、第2作は4月7日より いずれも東京は新宿ピカデリーをメイン館として全国ロード ショウとなる。
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