| 2020年03月29日(日) |
アンナ・カリーナ(いつくしみ、グッド・B、さらばわが愛、ひまわり、許された子ども、今宵、鵞鳥湖、ランブル、バナナP、燕)pandemic映画 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』 “Anna Karina, souviens-toi” ヌーヴェルヴァーグの申し子とも言われ、2019年12月14日に 他界した女優の生前に制作されたドキュメンタリー。 映画が始って直のアーカイヴのモノクロ映像で、「どこから 来たんだ?」という男に問いに「アルファヴィル」と答える シーンが登場して心を鷲掴みにされた。勿論これは1965年の ジャン=リュック・ゴダール監督作品の1シーンだが、実は デンマーク出身の女優にこれは見事なプロローグだ。 1940年生まれの女優は、幼い頃の家庭環境はあまり恵まれて いなかったようだが、船乗りの夫と別れて再婚した母親の連 れ合いがジャズを好んで、コンサートに連れて行って貰った 思い出話などを語る女優の姿は微笑ましかった。 本作は女優の生前パートナーだったデニス・ベリー脚本、監 督によるもので、女優がアーカイヴの映像を見ながら自身を 語る構成。2004年5月紹介『ぼくセザール10歳半1m39�僉戮� も出ていた女優の正に宝箱という感じの作品だ。 それにしても故郷を飛び出してパリにやってきた女性がモン マルトルのカフェでモデルにスカウトされる下りは、状況は 違うが2020年3月1日題名紹介『ANNAアナ』に似ている感じ がして、ひょっとしてリュック・ベッソンはオマージュを捧 げたのか、とも思えてきた。 それくらいにフランス映画界にとって愛されてきた女優なの だろう。 その一方でナチス占領下での戦争の記憶や、パリ・カルチェ ラタンの闘争の思い出、そして映画撮影で訪れていたチェコ で遭遇した「プラハの春」の弾圧の模様などは、いずれも市 街戦という状況でその恐怖も伝わってきた。 正に20世紀を生き抜いてきたという感じもしてきたもので、 それが1949年生まれの自分にとっても、特に後半の2つの状 況から同時代を生きたという感覚が生じたものだ。 個人的には彼女を観たのは1967年の『気狂いピエロ』からだ と思うが、その中で上半身裸の彼女が窓を通して監視されて いることに気付き、あるものを使ってそれを誤魔化すシーン は鮮烈な印象を残してくれた。 残念ながらそのシーンは本作には登場しなかったが、本作に 引用された作品の中には著作権などの関係で日本では上映で きない作品/シーンもあり、今回はプロヂューサーの尽力に より今年限りの限定での上映が許可されたものだそうだ。 今観るしかないという作品だ。 公開は6月13日より、東京は新宿K's cinema他にて全国順次 ロードショウとなる。 なお同じく著作権の関係で来年以降日本での公開が困難にな る『気狂いピエロ』もディジタルリマスター版により同劇場 にて上映される。
この週は他に 『いつくしみふかき』 (劇団チキンハート主宰の遠山雄企画、出演で、ベテラン俳 優の渡辺いっけいが映画初主演を果たした作品。山間の村に 死ぬためにやってきたという男は、村の娘と結婚し妊娠させ るが、出産当日に実家で空き巣を働き、村を追い出される。 それから30年が経ち、成長した子供はぐうたらで、ダメ男に なっていた。そこに父親が戻ってくる。しかしともにダメな 親子は村を追われ、反発しながらも叔父が神父を務める教会 に身を寄せる。そして一つ屋根の下で暮らし始めるが…。脚 本と監督は遠山の盟友で舞台演出家の大山晃一郎。共演は平 栗あつみ、榎本桜。他に黒田勇樹、三浦浩一、眞島秀和、塚 本高史、金田明夫らが脇を固めている。渡辺と遠山がダメな 父子を演じて展開などは面白いのだが、何というか2人の関 係のバランスが悪くて、結局どちらを見れば良いか判らず、 僕は消化不良のまま終ってしまった。公開は4月17日より、 東京はテアトル新宿他で全国順次ロードショウ。)
『グッド・ボーイズ』“Good Boys” (2018年3月紹介『ワンダー 君は太陽』などのジェイコブ ・トレンブレイの主演で、2016年10月16日題名紹介『ソーセ ージ・パーティー』などのセス・ローゲンが製作を務め、初 キスに憧れる小学生を描いた作品。12歳の主人公は憧れの同 級生も参加する初キス・パーティに誘われるが、キスの仕方 がよく判らない。そこで父親のドローンを無断で借用してキ スの実態を探ろうとするが…。脚本と監督は2012年4月紹介 『バッド・ティーチャー』の脚本を手掛けたジーン・スタブ ニツキーの監督デビュー作。日米共にPG12の指定だが、以前 だったら恐らくR18指定は免れなかっただろうと思われる台 詞や小道具が満載の作品。これが時代の流れなのだろうとは 思うが、やはり子供を育てた親としては眉を顰めたくなる。 とは言うものの面白いことは間違いなく、大人は苦笑いしな がら子供は大笑いして観るのだろう。公開は5月22日より、 東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)
『さらばわが愛、北朝鮮』 “굿바이 마이 러브 NK: 붉은 청춘” (1956年「8月宗派事件」を切っ掛けにソ連に亡命した北朝 鮮からの留学生8人の消息を追ったドキュメンタリー。元は 10人の若者がモスクワ国立映画大学に留学していた。しかし 祖国で金日成の個人崇拝を確定する政変が起きた時、その内 の8人が亡命を決意する。ところが個人崇拝は批判しても国 家間の友好は損なえないソ連政府は、彼らが一か所に留まる ことを認めず、遠隔地への移住を強制する。こうして各地に 散らばった8人の中には映像制作や作家として名を成した人 もいるが、全員が成功者ではないようだ。そんな歴史に翻弄 された人たちの姿が、制作時には2人だけだった生存者と、 1人の未亡人へのインタビューで描かれる。監督は「女性史 三部作」や「亡命三部作」の連作ドキュメンタリーで知られ る韓国のキム・ソヨン。本作は後者の掉尾となるものだが、 まだ語り足りないものがある感じの作品だ。公開は5月2日 より、東京は新宿K's cinemaにてロードショウ。)
『ひまわり』“I girasoli” (ヴィットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マ ルチェロ・マストロヤンニの共演で、第2次大戦のロシア戦 線に赴いたイタリア兵の悲劇を描いた1970年の名作がディジ タルリマスターにより再公開される。映画はイタリアの名優 2人の共演だが、実は1970年当時に僕が見たかったのは彼ら ではなかった。その数年前に2部作で公開されたモスフィル ム版『戦争と平和』で鮮烈な印象を残した女優リュドミラ・ サヴェーリエワが、当時のソ連政府から唯一国外出演を許可 されたのが本作だったのだ。しかし今回のプレス資料には彼 女の紹介文はなく、その点では多少ショックを受けることに なってしまった。そこで調べてみたら、1942年生まれの彼女 は2009年放送のテレビ版『アンナ・カレーニナ』に登場人物 の親の役で出演、また70歳の誕生日にはパーティも催されて 健在とのことだった。再公開は5月1日より、東京はヒュー マントラストシネマ有楽町他で全国順次ロードショウ。)
『許された子どもたち』 (2012年3月紹介『先生を流産させる会』の内藤瑛亮監督が 再び青少年が犯した犯罪をテーマにした作品。内藤監督はこ の間に『ドロメ』や『ミスミソウ』などの作品も撮っている が、本作では自主制作映画のスタンスに立ち返って作り上げ ているものだ。物語は少年が故意か事故か微妙な状況で同級 生を殺してしまうというもの。ところが愛情過多の母親や自 信過剰の弁護士が自らの目的のために少年の気持ちを覆し、 無罪に相当する不処分を獲得してしまう。しかしそれは少年 を地獄に落として行くことになるが…。出演はテレビ番組で サッカー大久保嘉人選手の幼少期を演じたことがあるという 上村侑。他に黒岩よし、名倉雪乃、阿部匠晟らが脇を固めて いる。内容的には2012年作と似通っているが、さらに深みを もって厚く描き込んでいると感じる作品だ。監督には生涯離 れられないテーマになるのかな。公開は5月9日より、東京 は渋谷のユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『今宵、212号室で』“Chambre 212” (2013年5月紹介『愛のあしあと』などのクリストフ・オノ レ脚本、監督で、恋する女の不思議な体験を描いたファンタ シー要素の強い作品。主人公は法律が専門の女性大学教授。 20年間連れ添った夫はいるが関係は“家族”で、彼女はアヴ ァンチュールに明け暮れている。ところがそれが夫にばれ、 怒る夫から逃げるようにアパートを飛び出した彼女は、向い のホテルの212号室に宿を取って夫の行動を観察するが…。 そこに20年前の夫が現れ、さらに夫の初恋の女性や彼女の過 去の恋人らが次々に昔のままの姿で現れる。出演は13年作に も出ていたキアラ・マストロヤンニと、2018年東京国際映画 祭でグランプリ受賞『アマンダと僕』などのヴァンサン・ラ コスト。他にカミーユ・コッタン、バンジャマン・ビオレら が脇を固めている。辻褄は合わないところだらけだが、女性 の気持ちは判るような作品だ。公開は6月12日より、東京は Bunkamura ル・シネマ他で全国順次ロードショウ。)
『鵞鳥湖の夜』“南方車站的聚會” (2014年『薄氷の殺人』でベルリン国際映画祭金熊賞に輝い たディアオ・イーナン脚本/監督による2019年カンヌ国際映 画祭コンペティション部門選出作品。中国南部の湖の畔で、 再開発から取り残されたような街を舞台に、対立する2つの 犯罪グループと警察の三つ巴の抗争が描かれる。主人公は刑 期を終えて街に帰ってきた古参。ところがバイク窃盗団の縄 張りで若い兄弟が率いるグループと対立し、その抗争の中で 誤って警備の警官を殺してしまう。このため警察は懸賞金を 掛けて主人公を追うが、今度はその金を巡って新たな動きが 発生し…。出演はジャッキー・チェンの愛弟子で2011年10月 紹介『1911』などのフー・ゴーと、『薄氷の殺人』にも主演 した2002年10月31日付「東京国際映画祭」で紹介の『藍色大 門』(公開名:藍色夏恋)などのグイ・ルンメイ。展開はかな り判り難いが、結末は明快なお話だ。公開は5月29日より、 東京は新宿武蔵野館他で全国ロードショウ。)
『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』 “Rumble: The Indians Who Rocked the World” (1952年に発表されて歌詞がないのに放送禁止になった楽曲 を基に、その作曲・演奏者がインディアンだったという点を 踏まえて制作されたドキュメンタリー。もちろん中心テーマ は音楽だが、この作品ではそれに併せて黒人問題に隠れがち なネイティヴアメリカンの迫害の歴史が紐解かれる。それは 先住民として土地の権利を主張されることへの恐れから、そ の民族・文化を抹殺しようとした白人たちの企みの告発だ。 そして居留地を逃げ出したインディアンが黒人の居住区に隠 れたり、逆に逃亡奴隷の黒人が居留地に逃げ込むなどで両者 の混交が進み、その中から新たな音楽が誕生し、それが標記 の楽曲を生み、ロック、フォーク、ブルースからジャズ、ヘ ヴィメタル、ヒップホップを生み出した。これは今まで僕が 考えたこともなかった新たなアメリカ音楽史の提示だった。 正に眼を開かせてくれる作品。呆気に取られるほど面白い。 公開は5月26日より、東京都写真美術館ホールにて上映。)
『バナナパラダイス』“香蕉天堂” (2019年金馬奨で名誉賞の終身成就奨を受賞した台湾映画界 のレジェンド、ワン・トン監督が1989年に発表した148分の 大作。映画の始まりは1949年中国華北。国共内戦中に国民党 軍に潜り込んだ主人公は、敗残軍と共にバナナが実る台湾に やってくる。そこで故郷に帰る道も失ったまま名前を変え、 学歴を詐称して生き続けたが…。ふんだんに実るバナナだけ が心の慰みと言える悲しい人生の物語だ。日本軍兵士は敗戦 しても故郷が残ったが、国民党の兵士には故郷に帰る術も奪 われた。況してや身分を偽る主人公には故郷を求めることも できなくなる。僕には今まで想像もしたこともない物語だっ た。これをじっくりとした演出で克明に描いて行く。出演は 後に2010年11月紹介『モンガに散る』などの監督になるニウ ・チェンザーと、1997年の三池崇史監督『極道黒社会』に出 ていたというチャン・シー。4月18日−6月12日に新宿K's cinemaで開催「台湾巨匠傑作選」の中心作として上映。)
『燕Yan』 (タレント本などの編集ライター鷲頭紀子の脚本を、2019年 12月22日題名紹介『サヨナラまでの30分』などの撮影を手掛 けた今村圭佑の監督デビューで映画化した作品。日本と台湾 を舞台に、幼い頃に日本に置き去りにされた若者と台湾人の 母親の確執が描かれる。母親は日本に居場所がなくて兄だけ を連れて台湾に帰ったというのだが、その経緯がどうも判ら ない。主人公の若者には日本人の実父とその妻の継母がいる のだが、この実父と台湾人の母親の関係は妾だったのかな。 それにしても幼い次男だけを置き去りにするという理由付は ちゃんとして貰わないと、主人公の怒りは理解を通り越して 母親の所業に呆れるしかなくなる。目先の流れだけを追って 本来の物語が見失われてしまったような感じの作品だ。出演 は水間ロン、山中崇、テイ龍進。他に田中要次、平田満、一 青窈らが脇を固めている。公開は6月5日より、東京は新宿 シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。 * * 全世界的にCOVID-19(新型コロナウイルス)が蔓延する中、 Netflix ではパンデミック映画の特集配信も始まったようだ が、アメリカのサイトでは‘7 best and 7 worst pandemic movies’という記事も紹介されていた。 そこでまず‘7 best’に挙げられていたのは 『コンテイジョン』(2011年10月紹介) 『アウトブレイク』(1995年) 『28日後...』(2003年6月紹介) 『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2017年7月紹介) 『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年) 『ゾンビランド』(2010年5月紹介) 『12モンキーズ』(1996年) この内の1番目と2番目の作品は間違いなくウイルスの蔓 延が描かれたものだが、それ以下の6番目まではどちらかと いうとゾンビ物のイメージが強い。そして7番目はタイムト ラヴェルが主題でこれも何かなあという感じがした。 因に‘7 worst’は “Resident Evil: Apocalypse” “Cabin Fever” “Survival of the Dead” “Carriers” “Nightmare City” “Zombi 2” “Pride and Prejudice and Zombies” だそうで、日本未公開の作品もあるので原題のみにするが、 こちらも何か本質からずれている感じがしたものだ。 一方、アメリカの映画データベース(IMDb)の投票サイトに は‘Most Dangerous Virus’というテーマで35作品が候補と して挙げられており、今日現在では 『コンテイジョン』(2011年10月紹介) 『28日後...』(2003年6月紹介) 『バイオハザード』(2002年) 『アイ・アム・レジェンド』(2007年12月紹介) 『ワールド・ウォーZ』(2013年7月紹介) 『12モンキーズ』(1996年) 『アウトブレイク』(1995年) が上位になっているものだが、この35本の中に何と小松左京 原作の『復活の日』がノミネートされていた。 深作欣二監督、草刈正雄主演によるこの作品は、海外では “Virus”“Day of Resurrection”などの題名で上映された ものだが、実は原作初版の発行日が1964年。つまり前回東京 オリンピックの年で何となく因縁を感じる。 さらに映画化の公開は1980年。この年にはモスクワオリン ピックが行われたが、ソ連のアフガニスタン侵攻に反対した アメリカ、日本が大会をボイコット。そして今回はドーピン グ問題でロシア代表の出場が拒否されているものだ。 この巡り会わせには不安も感じてしまうところだが、今日 現在の投票サイトでは35作品中28位となっており、もう少し 順位は上げたいかな? 投票はこちらへ https://www.imdb.com/poll/hQ3f0xVT-Q8/?ref_=po_ti
次回はコロナ禍で試写に行けないため休載とします。
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