井口健二のOn the Production
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2018年12月30日(日) あした世界が終わるとしても、緊急検証!THE MOVIE、コンジアム、サスペリア(美人が婚活してみたら)

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『あした世界が終わるとしても』
2018年9月紹介『INGRESS THE ANIMATION』でも取り上げた
セルルックの3DCGI「スマートCGアニメーション」に
よるオリジナル劇場用作品の第1弾。
主人公は突然死で母親を亡くした男子高校生。時代背景は現
代だが、何故か突然死が急増する状況になっている。そんな
中で主人公は、父親が務める軍事産業の社長の娘で幼馴染の
同級生に恋心を抱いていたが…。
そこにもう一つの日本からやって来たと称するもう一人の自
分が現れ、彼はある使命を帯びてこの世界にやって来たと告
げる。そして彼の世界では独裁政府が圧制を敷いており、そ
れを覆す手段がこの世界にあると。
しかしそれはある究極の手段だった。

声優は、アニメ版『GODZILLA』シリーズや、2018年5月20日
題名紹介『アーリーマン』の日本語版吹替えなどの梶裕貴、
2016年1月紹介『頭文字D−夢現−』などの内田真礼。他に
中島ヨシキ、千本木彩花、悠木碧、水瀬いのり、森川智之、
津田健次郎、水樹奈々らが脇を固めている。
脚本と監督は『INGRESS』と同じく櫻木優平。
前作は途中までなので物語の評価はできなかったが、本作で
は設定や結末などもドラマティックで、中々考えて作られて
いる感じがした。特に結末は微妙な展開を破綻もなく、納得
できるものにしている。
しかもそれが物語全体の結末を象徴的に描いている点も巧み
と言いたくなるものだった。一般にパラレルワールドもので
は、2つの世界の関連性で物語が破綻し易いが、本作ではそ
の点もしっかりと構築されていた。
ただまあこれが日本アニメの宿命なのかもしれないが。特に
後半が戦闘シーン過多なのは、それが巧みに演出されている
ことは認めるにしても、やはりもっと人間的なドラマを見せ
て欲しいとは思ってしまうところだ。
また2つの世界がこの様に密接な関係になってしまったこと
にも何か理由付は欲しいところで、そこには監督なりの考え
もあったと思われるが、その辺にも何か人間的なドラマがあ
るように感じられた。
それを描いてもアニメとしての評価には繋がらないのかも知
れないが、その辺の周到さが全体の評価をさらに高めるよう
にも感じる。それをバランスよく描けたら、ある種の名作に
もなり得る物語だ。

公開は2019年1月25日より、東京は新宿ピカデリー他で全国
ロードショウとなる。

『緊急検証!THE MOVIE
       ネッシーvsノストラダムスvsユリ・ゲラー』
CS放送ファミリー劇場で2012年から放送されているという
オカルト・ヴァラエティ番組の劇場版。
僕は見たこともないが、番組のコンセプトは現在では正しく
オワコン状態のオカルトを再度ブーム化しようという魂胆の
ようだ。そこで番組では、過去に話題になった種々の超常現
象をそれぞれの研究者がプレゼンターとなって新たに解説す
るものらしい。
そして本作に登場するのは通称「オカルト三銃士」とされる
中沢健、飛鳥昭雄、山口敏太郎の面々。彼らがプレゼンター
となってUMA、大予言、超能力をそれぞれ新たな角度から
再検証して行くものになっている。しかも巻頭と巻末には、
彼のユリ・ゲラーも登場する。
ということで最初のプレゼンターは中沢健という人物だが、
これがまあ呆れるほどに酷い。どういう経緯で彼が三銃士に
なっているのかは判らないが、UMAの研究家と言う触れ込
みなのに、ネス湖に行くのは初めてだというのだ。これには
僕自身が行ったことがある者としては耳を疑った。
しかもプレゼンの前半では、日本に居てもネス湖には行った
ことになっているという怪しげな理論を振りかざして自己弁
護する始末で、これは真摯な研究者ではないというのが僕の
結論になった。ただ僕が行ったのは40年も前のことだが、今
回の映像で風景があまり変っていないのには感激した。
それにしても自費でネス湖に行ったこともないのに研究者を
騙るのは論外で、このパートで僕は席を立つことを真剣に考
えていた。しかもそこからの探索の模様もスタッフに踊らさ
れているのだろうが、本人に自覚がないことも明白で、これ
は本人も騙されていると感じたものだ。
とは言うものの僕は我慢をして観続けたのだが、次の「ノス
トラダムスの大予言」のパートではそれなりに納得できた。
ここでは「1999年7月に世界が滅亡する」としたのは五島勉
の解釈の誤りとしているもので、そこからの論理の展開にも
巧みな論証ができていたものだ。
そして最後の超能力に関しては、映画の中でパネラーの大槻
ケンヂも「手品でもできる」と論破しているもので、それを
科学的に論証するでもなく、ただ「俺の目を信じろ」的に主
張するプレゼンターには呆れ果てた。これではブームの再燃
も覚束ないと思わされる顛末だった。
兎にも角にも僕自身はオカルトが嫌いではないし、信じる信
じないは別として研究することに異論は挟まない。しかし、
斯くも大袈裟に持論を相手に押し付けることには迷惑と感じ
るし、やるならもっと大人しく、地道に続けて欲しいと思う
ものだ。
ただし映画は、正月明けにボーと見るには適当な作品ではあ
りそうだった。

公開は2019年1月11日より、東京はヒューマントラストシネ
マ渋谷他で全国ロードショウとなる。

『コンジアム』“곤지암”
2012年には青木ヶ原樹海、軍艦島などと並んで世界7大心霊
スポットの一つにも選出されたという韓国広州市に実在する
昆池岩精神病院の廃墟を舞台にした韓国ホラー作品。
物語は、その廃墟に入ったまま行方不明になった高校生が写
したとするヴィデオを許に、YouTubeで恐怖体験を配信する
サイトが一般参加者を募って、廃墟への潜入を試みるという
もの。
そこで集まった参加者たちはGo Proの小型カメラを装着し、
廃墟の裏山に設置されたテントの本部にディレクターを置い
て廃墟への潜入を開始する。その模様がLive配信されるとい
うものだが…。

出演は、いずれも新人かデビュー2作目、若しくはテレビに
ゲスト出演している程度のイ・スンウク、ウィ・ハジュン、
パク・ジヒョン、パク・ソンフン、オ・アヨン、ムン・イェ
ウォン、ユ・ジェユン。
脚本と監督は、2007年キム・ボギョン出演『1942奇談』や、
2012年『ホラー・ストーリーズ』、2013年『同2』などを手
掛けたチョン・ボムシク。過去作はオーソドックスなホラー
だったようだが、本作ではちょっと手法で挑戦をしている。
また上記の作品はいずれもオムニバスの1篇か共同監督だっ
たが、本作では初の単独クレジットになっているものだ。
本作は、韓国ホラーでは2003年の『箪笥』に次ぐ歴代2位の
興行成績を記録したということだが、今回のプレス資料によ
ると韓国ではホラーは中々ヒットしないとのことだ。
僕自身は、2003年11月9日付「第16回東京国際映画祭」で紹
介『リング・ウィルス』や、2007年10月紹介『黒い家』など
の韓国版リメイクは、日本版より面白いと感じたものだが、
韓国の観客とは嗜好が異なるのかな。
その本作は、内容では2012年4月紹介『グレイヴ・エンカウ
ンターズ』や、2013年1月紹介『同2』を思い出すもので、
特に途中にやらせのネタばらしが入るところなどは、展開も
ほぼ同じということになる。
ただし以前の作品では、POVと言ってもいずれも手持ちの
カメラだったもので、それが身体に装着されたGo Proの小型
カメラというのは以前には実現できなかったところだろう。
ただしそれで写っているのが顔のアップばかりなのは…。
正直に言ってこれは、ジェットコースターに乗っているタレ
ントを写すには適当だが、廃墟への潜入では顔よりも周囲の
状況が観たいのであって、ここで顔や鼻の穴のアップが続く
のには美形俳優でも辟易した。策の弄し過ぎかな。
また逆に、2018年12月紹介『岡本太郎の沖縄』で途中に挿入
された劣化の激しいフィルムの映像には、かなりファンタス
ティックな感覚もあったもの。新しい技術だけでなく、過去
の技術の再利用も、この種の作品には生きてきそうだ。

公開は2019年3月23日より、東京はシネマート新宿他で全国
順次ロードショウとなる。

『サスペリア』“Suspiria”
実はこの作品の試写は少し前に観たものだが、その時は内覧
試写ということで資料がなく。後日の資料の送付を待ってい
たが未着のまま。そこで年を越してしまうのも何なので、多
少あやふやではあるが記憶を頼りに紹介する。

1977年に公開のダリオ・アルジェント監督、名作ホラー映画
を、2018年1月28日題名紹介『君の名前で僕を呼んで』など
のルカ・グァダニーノ監督がリメイクした作品。
そのリメイクでは、時代をオリジナルの公開時期に設定し、
当時の社会情勢も絡めた物語に再構築している。
主人公はヨーロッパの名門バレエ団に入団するためアメリカ
からやってきた少女。才能豊かな彼女は入団直後のオーディ
ションで注目され、直ちに大きな役を与えられる。ところが
カリスマ振付師の直々のレッスンを受ける彼女の周囲では、
ダンサーたちが次々に失踪する事件が起きていた。
その事件には警察も動いていたが、バーダー・マインホフ事
件の影響などもあり、本件の捜査は中々進んでいなかった。
それでも姿を消したダンサーが治療を受けていた心理療法士
の博士の許にも捜査員が訪れる。そして独自の捜査を開始し
た博士は、徐々にバレエ団の闇に近づいて行くが…。

出演は、2017年4月16日題名紹介『フィフティ・シェイズ』
シリーズなどのダコタ・ジョンスン。
その脇をティルダ・スウィントン、クロエ・グレース・モレ
ッツ、2014年『ニンフォマニアック』などのミア・ゴス、さ
らにオリジナルに主演したジェシカ・ハーパーらが固めてい
る。因にスィントンは隠しキャラを含め3役を演じている。
1977年のオリジナルは、実はオカルトに狎れていなかった僕
にはストーリーが良く理解できなかった。しかしその点は、
2009年2月紹介『サスペリア・テルザ』などで明瞭になって
いたもので、それを踏まえた本作はしっかり鑑賞できた。
その本作の背景となるオカルトの物語はオリジナルと同じだ
が、それなりのスプラッター的なシーンはあるものの、敢え
て恐怖を煽るような演出はなく、むしろ文学的とも言える作
品に仕上げられている。
オリジナルの公開時には、サーカム・サウンド(インターナ
ショナル・サウンドを利用した疑似立体音響)などの仕掛け
も施されたが、本作は上映時間152分の重厚な大作。正直に
は、少女が1人で暗い街並みを歩くぞくぞくする感覚も味わ
いたかったが、評価が賛否両論というのも頷ける作品だ。

公開は2019年1月25日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他で
全国ロードショウとなる。

この週は他に
『美人が婚活してみたら』
(漫画アプリで長期間ランキング1位を続けたという原作コ
ミックスを、2017年9月24日題名紹介『勝手にふるえてろ』
などの大九明子監督が映画化。長年不倫の恋ばかりしてきた
30代の美人デザイナーが、大きな恋を終えた反動の燃え尽き
症候群から一念発起。婚活サイトに登録したり、婚活BAR
に通い始めるが…。出演は黒川芽以、臼田あさ美。相手役に
中村倫也、田中圭。他にレイザーラモンRG、矢部太郎らも
登場する。まあ正直に言って、今時ではない男性の自分には
よく判らないお話で、評価にも苦しんでしまう作品だった。
でもこれが今時の女性の姿なのかな。映画の流れとしては、
今時のデートの手解きみたいなものも欲しい感じもしたが、
それは今更なのだろう。いずれにしても僕が関る可能性は0
の話だから、これはこれで良しとしたい。公開は2019年3月
23日より、東京は新宿シネマカリテ、大阪はシネリーブル梅
田他にて全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二