井口健二のOn the Production
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2017年12月31日(日) レオン

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『レオン』
2007年12月紹介『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』など
の塚本連平監督が、清智英+大倉かおり原作コミックスを、
K-POP「KARA」の元メンバーで、2017年10月紹介『DCスー
パーヒーローズvs鷹の爪団』の声優も務めた知英の長編映画
初主演として描いたファンタシーの要素の強い作品。
内容は1982年『転校生』の大人版というところかな。大手食
品会社のワンマン社長と、同社の経理部に派遣で勤務してい
た冴えない女子社員の精神と身体が交通事故で入れ替わって
しまうというもの。
しかもその会社では、社長の甥と経営コンサルタントによる
乗っ取りが図られており、そのコンサルタントは女子社員に
も手を付けていた。そこで女子社員の身体に宿った社長の精
神は、乗っ取りを阻止すべく行動を開始するが…。

脚本は、2017年8月紹介『恋と嘘』などの吉田恵里香。共演
は竹中直人と、2013年12月紹介『仮面ティーチャー』などの
大政絢、2017年10月紹介『斉木楠雄のΨ難』などの吉沢亮。
さらにミッツ・マングローブらが脇を固めている。
なお、知英の変身ぶりも見所となる作品だ。
大林宣彦監督の作品以降、同旨の映画ドラマは多数作られて
いると思うが、その中ではうまく作られている方かな。ファ
ンタシーの設定はすでに定番という感じで破綻が生じる要素
もない。
その一方で、会社経営の背景や経営コンサルタントの暗躍な
どは、それなりにうまく戯画化されている感じがした。勿論
コミックスのレヴェルではあるが、昨今の日本の同族系会社
の混乱ぶりなどを見ると、あり得るかもしれない。
そんな社会的な要素も、映画以上に各局のテレビドラマを数
多く手掛けている塚本監督が卒なく描いている作品だ。さら
に過去作へのオマージュみたいなシーンもちゃんと設けられ
ているのは感心した。
ただし竹中の怪演振りなどは、テレビの演出が色濃く出てい
る感じかな。映画に馴れた目には多少戸惑いもあるが、これ
が今の日本の演技レヴェルということだろう。その意味では
竹中の演技は嵌っているものだ。
その他にもテレビ的な演出は処々に観られる作品だが、最近
のテレビの人気ヴァラエティ・ディレクターと称する連中が
片手間で撮ったような映画とは一線を画している。さすがに
映画作品の実績も増えてきた監督というところだろう。

公開は2018年2月24日より、東京は新宿バルト9他にて全国
ロードショウとなる。

この週は他に
『修道士は沈黙する』“Le confessioni”
(2007年4月紹介『そして、デブノーの森へ』などのロベル
ト・アンドー原案、脚本、監督による作品。前作もそうだっ
たが、この監督の作品は背景が特異で僕にはなかなか理解し
辛い。本作ではG8財務相会議を背景に、出席者のIMF専
務理事に呼ばれた修道士が告解を聞く。その翌朝理事が不審
な死を遂げる。しかし修道士は自分が被疑者になっても告解
の内容を話すことができなかった。政治的な訴え掛けがある
ようにも感じるが、自分が根本的に宗教に関っていないと、
修道士の行動などを何と評価して良いかも判らなかった。出
演は、2013年9月紹介『眠れる美女』などのトニ・セルヴィ
ッロ、『デブノーの森へ』などのダニエル・オートゥイユ、
2017年6月紹介『ワンダーウーマン』などのコニー・ニール
セン。公開は2018年3月17日より、東京は渋谷のBUNKAMURA
ル・シネマ他で全国順次ロードショウ。)
『Лайка/ライカ』
(2014年12月紹介『クレヴァニ、愛のトンネル』などの今関
あきよし監督の新作。片仮名の題名を見て不覚にもドイツの
カメラを先に思い浮かべてしまった。しかし物語は地球生物
初の宇宙旅行をしたソ連の犬に準えたもの。そして登場する
のはロシア人と日本人の2人の女性。俳優の卵のロシア人の
部屋に日本人が入り込むが、その日本人は自分はライカ犬の
ようだと称している。そんな2人の暮らしにはいろいろ行き
違いもあるが…。ロシア人がいつも薬を飲んでいて、チェル
ノブイリの絡みかと思ったが、試写後に監督に訊いたら「今
回はそれには触れなかった」との回答だった。出演は長編作
品は初めてというクセーニア・アリストラートワと、2008年
12月紹介『クジラ』に出ていたという宮島沙絵。R15+指定
となるシーンもある作品だ。公開は2018年2月17日より、東
京は新宿K's cinema他にて全国ロードショウ。)
を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。


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井口健二