井口健二のOn the Production
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2015年08月16日(日) アメリカン・ドリーマー 理想の代償

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
                “A Most Violent Year”
1981年、統計的に史上最多の犯罪が起きたとされる年の米国
東海岸を舞台にした正しく骨太な人間ドラマと呼べる作品。
主人公は灯油の販売で財を成してきた男性。その男が人生を
賭けた勝負に出る。それはハドソン川沿いのニューヨークの
中心部に位置する土地の買収。そこにはオイルタンクが立ち
並び、そこを買収して基地とすればタンカーを横付けにして
直に市街地への油の配給が可能になるのだ。
実はその頃の彼は頻発するタンク車の強奪に悩んでいた。そ
れは郊外の基地から市街地へのルートの中でタンク車が何者
かに強奪され、灯油が抜き取られていたのだ。それに対して
労働組合からは運転手の武装も提案されていたが、クリーン
な商売を目指す彼はそれを拒否していた。
そのため彼は市街地の基地を緊急の必要事項と考え、その手
付金として今までに築き上げた全財産を支払い、残りは銀行
融資を充てる計画でいた。残金支払いの期限は3日間、それ
に間に合わなければ、すでに支払った手付金も戻らないとい
う契約だ。
しかし攻撃は郊外に邸宅を購入した彼の家族にも向き始め、
さらにはニューヨーク市の検事局も腐敗に屈しない彼の訴追
を目論んでいた。そのため彼は違法行為に繋がり易い銃器の
携帯を拒否していたのだが…。事態は次々に悪化の方向に向
かい、頼みの銀行融資も覚束なくなる。
果たして主人公は理想を貫き通すことができるのか?

主演は、2011年4月紹介『エンジェル・ウォーズ』や今年末
公開“Star Wars: Episode VII - The Force Awakens”への
出演も発表されているオスカー・アイザックと、2014年11月
紹介『インターステラー』などのジェシカ・チャスティン。
他に、2013年1月紹介『アウトロー』などのデヴィッド・オ
イェロウォ、2009年7月紹介『ココ・アヴァン・シャネル』
などのアレッサンドロ・ニヴォラ、2004年4月紹介『セイブ
・ザ・ワールド』などのアルバート・ブルックスらが脇を固
めている。
脚本と監督は、2014年公開『オール・イズ・ロスト 最後の
手紙』で主演のロバート・レッドフォードにNY映画批評家
協会賞をもたらしたJ・C・チャンダー。本作は長編3作目
にして大家の風格を持ち始めている。
1981年というと『E.T.』の前年で、僕自身も毎年夏休みには
アメリカに映画を観に行っていた時代だ。僕が行っていたの
は西海岸で、さほどの身の危険も感じなかったが、同じ頃の
東海岸は違っていたようだ。
そんな本作の後半では、実は少しご都合主義のような展開も
あるのだが、この点に関しては日本人なら後に大名になった
戦国武将の話を想えば納得できるのではないかな。
因にこの武将の話は1581年と伝えられているもので、本作の
物語のちょうど400年前。400年はグレゴリオ暦でカレンダー
が一周する年数でもあり、中々面白い符合と言えそうだ。

公開は10月1日より、全国ロードショウとなる。


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井口健二