井口健二のOn the Production
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2015年03月22日(日) シグナル

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『シグナル』“The Signal”
2011年“Love”というヴィデオ作品(日本では2013年劇場公
開)で映画祭の監督賞など受賞しているウィリアム・ユーバ
ンク監督による2014年制作の第2作。
マサチューセッツ工科大学に通う男女3人の学生がアメリカ
南西部を旅行中、大学のセキュリティー・システムにハッキ
ングしたノーマッドと名乗る人物の挑戦を受け、その人物の
居所を突き止めに行くことになる。
ところが辿り着いた場所は廃墟で、しかもその廃墟を捜索中
に仲間が姿を消して行く。そして主人公も暗黒に包まれ…。
意識を取り戻した主人公は何かの施設に監禁され、防護服に
身を包んだ人物から、何かの感染を告げられる。
しかしその処遇に疑問を感じた主人公は施設からの脱出を試
み、その過程で仲間たちの運命を知ってしまう。それでも仲
間を助け出し脱出の道を探る主人公たちの前に、思わぬ展開
が待ち受けていた。

出演は、2014年6月紹介『マレフィセント』でエル・ファニ
ングの相手役を務めたブレントン・スウェイツ、2013年から
放送“Bates Motel”でレギュラーのオリヴィア・クック、
2011年6月紹介『スーパー8』がデビュー作というボー・ナ
ップ。それにローレンス・フィッシュバーン。
実は試写会で配られるプレス資料にハリウッドレポーター、
ヴァラエティ、ロサンゼルス・タイムズなど、アメリカでも
著名な映画評が幾つか転載されていたが、その歯切れが実に
悪い。正に意味不明のSF映画というところだろう。
僕も正直に言って物語の展開にはついていけないというか、
果たしてこの作者たちは物語を作ろうとしたのか疑問にも感
じてしまうところだ。特にフィッシュバーンの演じるキャラ
クターが意味不明。
これは、多分上からの命令で動いているだけ、という設定な
のだろうけど、それならさらにその命令者の立場や意図が何
だったのか? その辺が明確でないから上記の映画評のよう
なことになってしまうのだ。
ただまあヴィジュアル的にはかなり凝っていて、そこはSF
映画ファンが今まで観たかったものがかなり本気で描かれて
いると言える。そのレヴェルはシッチェス−カタロニア国際
映画祭で受賞を果たしているくらいのものだ。
「SFは絵だね」と言ったのは、SF翻訳者でアメリカパル
プ雑誌の研究者でもあった故野田昌宏氏だが、近年SF映画
ではCGI=VFXのお蔭で観たい絵はほとんど完璧に映像
化できる時代になっている。
そんな中で本作は、確かに観たい絵は見事に描かれている。
でも、せっかくここまでの絵を観せてくれるのなら、そこに
もう少し物語も描いて欲しかったかな。それが正直な僕の意
見だ。

公開は5月、TOHOシネマズ新宿ほかでのロードショウが予定
されている。
        *         *
 インターネットラジオの「ブルー・レディオ」というサイ
トで、「映画ナイト」というプログラムにゲスト出演させて
いただきました。3月20日の午後8時から1週間放送されて
いますので、よろしかったらお聴きになってください。


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井口健二