| 2015年03月08日(日) |
ジュピター、Mommy マミー |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ジュピター』“Jupiter Ascending” 2012年12月紹介『クラウド・アトラス』のラナ&アンディ・ ウォッシャウスキー姉弟監督による2人単独では2008年5月 紹介『スピード・レーサー』以来となる最新作。 主人公は旧ソ連生まれの女性。木星の輝く夜に生まれ、天文 好きだった父親によってジュピターと名付けられた彼女。し かし文化人だった父親は粛清に遭い、母親と共に命からがら 渡ったアメリカで育ったものの今の生活は富裕ではない。 一方、そんな彼女の育った地球という惑星とそこに住む人類 を別の目で観ている連中がいた。彼らこそ宇宙の星々に生物 を植え付け、それを収穫することで巨万の富を稼ぐ銀河規模 の一族の末裔だったのだ。 ところが一族の支配者だった女王が亡くなり、3人の兄弟に よるその跡目争いが勃発した時、何と女王と全く同じ遺伝子 の女性が地球にいることが判明する。もしそれが事実なら、 その女性が一族を率いることになるのだが… 何より一族の利益を優先する長兄は地球での収穫を早めるこ とで女性の存在を消すことを画策し、次兄はその女性を守る ため、1人の戦士を地球に派遣する。こうして地球を舞台に 壮絶な戦いが始まる。 出演は、2013年7月紹介『サイド・エフェクト』などのチャ ニング・テイタムと、昨年12月紹介『余命90分の男』などの ミラ・クニス。 他に、2012年6月紹介『白雪姫と鏡の女王』などのショーン ・ビーン、同年12月紹介『レ・ミゼラブル』などのエディ・ レッドメインらが脇を固めている。 とにかく支配者一族の力は強大で、戦いによって破壊された ビルもあっという間に建て直されて目撃者の記憶にも残らな い。何ていう、如何にもアメコミ映画を意識した感じの設定 が散見される作品。 2月紹介『バードマン』のイニャリトウ監督も、アメコミを おちょくっているように見せながら、実は興味津々?という 感じがしたが、本作はもっとストレートにアメコミヒーロー 映画への憧憬が感じられた。 しかもウォッシャウスキー姉弟にはSFの素養があるから、 イニャリトウ以上にSF的な考証みたいなものにもしっかり 腐心されていてSF愛が感じられる。これを認めてあげない のは可哀想という感じもしてくるものだ。 殺伐とした時代にはこんな愛情も欲しくなる。 公開は3月28日から、全国一斉で2D/3Dロードショウと なる。
『Mommy マミー』“Mommy” 2013年6月20日付「フランス映画祭2013」で紹介『わたしは ロランス』や、同年10月27日付「第26回東京国際映画祭」で 紹介『トム・アット・ザ・ファーム』などのカナダの俊英グ ザヴィエ・ドラン監督による2014年の作品。 本作は昨年の第64回カンヌ国際映画祭コンペティション部門 に出品され、ジャン=リュック・ゴダール監督の『さらば、 愛の言葉よ』(昨年10月紹介)と並んで審査員特別賞を受賞 した。 主人公は障害を持った子供を産んだがために夫に捨てられた 女性。シングルマザーとなっても子供をしっかり育てようと する主人公だが、多動性障害の息子は時として母親に暴力を ふるうこともある。 そんな母親が隣家の主婦と親しくなったことから物語が動き 始める。その主婦もまた、教職にありながら精神的なストレ スによって吃音を発症し、その障害のために教壇に立てなく なっていた。 そして母親が息子の家庭教師を主婦に依頼し、息子も教師を 受け入れて事態はスムースな方向に向かうのだが… スクリーンのサイズは1.85:1だが、そこに映出される映像 の比率は1:1という実験的な作品。その比率は主人公たち の心情に連動しており、それが少しだけワイドに広がったり する。 そのワイドに広がる瞬間は、正に主人公らの溌剌とした心情 を観客も共有できるものだ。しかしそれがワイドに広がった 瞬間、観客は同時にまたこれが狭まってしまうのだろうかと いう不安にも捉われる。 そんな観客の心理をも見事にコントロールしてくれる作品。 審査員特別賞を同時受賞したゴダールの作品は3Dへの果敢 な挑戦だったが、本作はその挑戦にも匹敵する新たな映像表 現の創造と言えるものだ。 出演は、グザヴィエ・ドラン監督の2009年『マイ・マザー』 と2010年『胸騒ぎの恋人』に出ていたアンヌ・ドルヴァル。 『マイ・マザー』と『わたしはロランス』に出演し、後者で カンヌ国際映画祭“ある視点”最優秀女優賞に輝いたスザン ヌ・クレマン。それに『わたしはロランス』に出ていたアン トワン=オリヴィエ・ピロン。常連とも言える顔触れがしっ かりとしたアンサンブルを描き出している。 映画は2014年の製作だが、物語の背景は2015年で、そこには ある架空の法律がキーとして描かれている。そのような法律 を生み出す土壌がカナダにあるのかどうかは不明だが、その 辺の拘りがちょっと気になる作品でもあった。 公開は4月25日から、東京は新宿武蔵野、ヒューマントラス トシネマ有楽町ほか、全国順次上映となる。
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