井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2015年02月15日(日) パパ遺伝子組み換えってなぁに?、マッド・ナース/ブライド・ウェポン/ニンジャ・アベンジャーズ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』“GMO OMG”
日本では使用表示が義務付けられている遺伝子組み換え作物
に関して取材したドキュメンタリー。
原題のGMOとはgenetic modified organisms(遺伝子組み
換え生物)の略称で、本来的に作物に関してはgenetically
modified cropsの方が正しいものだが、合衆国を含め世界的
にもGMOの略称が通っているようだ。
そんなGMOに関して本作では、監督の息子が種子マニアと
いう設定でGMOに由来する種子の現状が紹介され、GMO
の巨大企業モンサント社が同社の製品を巡って世界中で展開
している所業などが報告される。
その一方で、GMOによって駆逐されそうになっている世界
の種子の保存を行っている組織などの紹介や、ノルウェー領
スヴァールバル諸島にある世界種子貯蔵庫の現地取材なども
織り込まれている。
ただ、作品全体としてはテーマが多岐に亘り過ぎてちょっと
散漫な印象かな。特にGMOの問題点に関しては、2009年に
フランスで行われたという実験の話が紹介されるが、これは
何となく歯切れが悪い感じがした。
因にこの実験に関しては、一昨年に公開の『世界が食べられ
なくなる日』でも紹介されていたが、そのドキュメンタリー
は問題点を原発に絡めて妙な色彩が付いていたもので、僕は
試写は観たが紹介に踏み切れなかったものだ。
さらに本音を言えば、日本では使用表示が義務付けられてい
るGMOが合衆国では現状野放しという状況があって、本作
はそれに対する警鐘の意味が強いようだ。その点は申し訳な
いが日本は部外者の話とも言える。
ただここでモンサント社の所業に関しては、早晩日本の行政
への圧力もあり得る話で、現実に今年1月に厚労省が発表し
た安全性に関するリストで、確認されたとする製品の大半が
モンサント社製という事実は考えてしまう。
個人的には僕自身が以前に特許業界にいて、モンサント社の
種苗特許を巡る係争での悪辣なやり方や、さらにそれを押し
通す強引さにも驚いたもので、その辺はもっと追求して欲し
かったところでもある。
いずれにしても問題は将来に繋がっているものであり、監督
には今後もこの問題を追及して行って欲しいと思うところ。
次回作に期待したい。

監督は、2010年に“Dive!”という作品が映画祭で受賞して
いるジェレミー・セイファート。前作に続いて製作、編集も
兼ねていて、本作は彼の第2作のようだ。
公開は4月25日から、東京は渋谷アップリンク、名古屋名演
小劇場ほかで、全国順次上映となる。
ところで原題“GMO OMG”の前半は上記の通りの略称だが、
後半はoh my Godの略だそうで、これは成程と思わされた。


『マッド・ナース』“Nurse 3D”
『ブライド・ウェポン』“In the Blood”
『ニンジャ・アベンジャーズ』“Ninja:Shadow of a Tear”
昨年12月に紹介した『余命90分の男』など49本が上映される
「未体験ゾーンの映画たち2015」のように、近年冬場の映画
館ではいろいろな特集上映が組まれている。
今回紹介するのは、その「未体験」に続きヒューマントラス
トシネマ渋谷で上映される「RED BAND」という特集の3本。
第1弾の『マッド・ナース』は、猟奇殺人鬼の看護婦が悪人
と思われる男たちを、魅惑的な姿態で次々に誘い出しては殺
害するというお話。因に、医療関係者が殺人に拘る確率は一
般人より高いそうで…
実は「RED BAND」の中で試写が行われたのは本作だけで、後
はサンプルDVDで鑑賞させて貰った。ところがこの唯一試
写の行われた作品が、僕が話した年配の評論家たちにはかな
り不評だった模様。
確かに殺される男たちは馬鹿すぎるし、描写も過激で辟易す
るシーンも多かったかな。でもまあ好きな連中にはそれが堪
らないらしく、若い人のブログなどでは評価しているものも
見受けられたようだ。僕は年配の方に属するが。

出演は2010年3月紹介『エンター・ザ・ボイド』などのパス
・デ・ラ・ウエルタ。監督は2012年に『THE DAY ザ・デイ』
という近未来終末物の作品が公開されているダグラス・アー
ニオコスキーが担当した。
原題を観ると判るようにオリジナルは3Dで公開されたよう
で、それならそれでまた意味も分かるような作品だった。
それで以下の2本はサンプルDVDを借りて鑑賞したものだ
が、正直にはこちらの試写をしてくれた方が年配には理解が
され易かったのではないかと思ったところだ。

第2弾の『ブライド・ウェポン』は、新婚旅行で中米を訪れ
たカップルの男性が事故に遭い、救急車で搬送されたまま行
方不明になるというお話。そこには裏の組織が絡んでいて、
さらにその手は警察にも及んでいるらしい。
この事態に残された花嫁は、真面な刑事の助けも借りて夫の
行方を追うのだが状況はさらに悪化して行く。こんな展開が
も中米のジャングルの見事な景観なども背景に進んで行き、
さらにこの新婦がとんでもないアクションも繰り広げる。

主演は、全米女子格闘技界でトップクラスの人気・実力を誇
るというジーナ・カラーノ。彼女は、2012年スティーヴン・
ソダーバーグ監督『エージェント・マロリー』で主演、また
2013年5月紹介『ワイルド・スピード6』にも出ていた。
他に、2009年7月紹介『サブウェイ123』などのルイス・
ガスマン、2011年7月紹介『プリースト』などのカム・ジガ
ンデーらが脇を固めている。
監督は2013年1月紹介『ダーク・タイド』などのジョン・ス
トックウェル、脚本は1995年『Mr.ダマー』などのベネット
・イェーリンが担当した。
物語は後半になかなかの展開があり、それはフィクションと
して面白いものになっていた。正直、試写はこちらを観せて
貰った方が良かったのではないかと思えるものだ。

第3弾の『ニンジャ・アベンジャーズ』もアクションが主題
の作品。主人公は甲賀流忍法を習得したアメリカ人。彼は学
んでいた道場の跡取り娘と結婚し道場の隆盛するが、そんな
時、妊娠した妻が暗殺される。
その妻子の復讐を誓った主人公は、かつてのライヴァルであ
り、今やミャンマーの麻薬組織を牛耳る男の犯行との確証を
掴み、単身男の居るミャンマーの奥地へと乗り込むが、そこ
には男の率いる軍団が待ち構えていた。

主演は柔道などの格闘技を極めたスタントマンで、アクショ
ン俳優として2012年9月紹介『エクスペンダブルズ2』など
にも出演するスコット・アドキンス。共演に2007年8月紹介
『ローグ・アサシン』などのケイン・コスギ。
さらに日本から2011年9月紹介『牙狼<GARO>』などの
肘井美佳、2012年10月紹介『北のカナリアたち』などの菅田
俊らが出演している。
こちらの話の捻りは、ちょっと捻りすぎかなとも感じたが、
本作ではアドキンスが唇を切ったまま演技をしているなど、
本気の感じが伝わってくる。物語上はそんな演出は不要なの
で、これは組打ちが過って入ってしまったのかな。
コスギも思い切りアクションを展開しているようで、これは
真剣勝負の作品のようだ。

公開は、第1弾が2月28日から、第2弾、第3弾は3月28日
からで、東京はヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順
次ロードショウとなる。


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二