井口健二のOn the Production
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2015年01月04日(日) 2014年Best10、TM NETWORK THE MOVIE 1984 30th ANNIVERSARY

 明けましておめでとうございます。
 本年もよろしくお願いいたします。
 ということで、新年最初は2014年の僕的なSF映画ベスト
10の発表から。選考対象は2014年度の公開作品で、試写を観
せて貰った中から選びます。
1位:インターステラー(11月9日紹介)
2位:ホドロフスキーのDUNE(3月9日紹介)
3位:ガガーリン 世界を変えた108分(11月9日紹介)
4位:her/世界でひとつの彼女(4月6日紹介)
5位:茜色クラリネット(9月21日紹介)
6位:ヲ乃ガワ(9月21日紹介)
7位:エンダーのゲーム(2013年12月8日紹介)
8位:ALL YOU NEED IS KILL(6月8日紹介)
9位:スノーピアサー(2013年11月17日紹介)
10位:スガラムルディの魔女(10月19日紹介)
1位は、現時点で21世紀のSF映画ベスト1と呼べる作品。
実はこの試写に続けて別の試写を観に行ったら、同じ流れで
来たらしい人物が「『2001年』と同じじゃねえか」と怒鳴り
散らしていた。しかし本作がそんな単純なものでないことは
SF映画ファンならすぐに気付くところで、20世紀の名作へ
のオマージュも含めて実に周到に作られている。特に最後に
その名作に関りながら不満を漏らしていたアーサー・C・ク
ラークの映像が登場したのは驚き以上の感激だった。
2位は、ドキュメンタリーでフィクションではないが、SF
映画に関るものだし、ある意味フィクション以上にファンタ
スティックと言える内容の作品だった。しかも本作の中では
作られなかった映画の重要な部分がメビウスらのコンセプト
アートに基づくアニメーションで再現されており、これには
半分映画を観たような気分にもさせてくれた。それにしても
とんでもない映画を作ろうとしたものだが、これが実現して
いたらSF映画は根本から違っていたのだろう。
3位は、この作品も史上初の宇宙飛行士の伝記映画であって
フィクションとは言い難い。しかし映画の背景は宇宙旅行が
まだ夢物語=SFであった時代のものだし、その点ではSF
と言っても良いものだ。しかも映画の中では、話には聞いて
いたがまさかと思っていた宇宙からの帰還の様子が目の当た
りの映像で再現され、これは興味のある人には最高の見もの
と言える。ソ連=ロシアは国家の体制が変って、このような
作品が次々出てくるのも楽しみだ。
4位は、スカーレット・ヨハンセンが声の出演だけで映画祭
の女優賞を獲得したという作品。ヨハンセンが絡んだ作品で
はこの後に『LUCY/ルーシー』(8月17日紹介)が公開され
て、内容的にも対のような2本のどちらを選ぶかは迷ったと
ころだ。実は他のサイトでベスト10を頼まれて、そちらでは
男性向け映画という括りもあったので、ベッソン作品の方を
選んだが、純粋にSFならこちらにするかな。それにしても
ヨハンセンはマーヴェル物にも出てSFが満開だ。
5、6位には、日本映画を選出。実は日本SF作家クラブが
贈賞するSF大賞の推薦も依頼されていたが、この賞は選考
の対象期間が9月まででこの2本は来年度。去年はその辺が
モヤモヤして推薦自体を止めてしまった。特に『茜色…』は
もっと話題を盛り上げたいという気持ちもあるので、来期の
推薦は忘れないようにしたい。『ヲ乃ガワ』は自らスチーム
パンクと名告る洒落っ気も気に入ったが、内容でもSF的な
捻りもいろいろあって面白い作品だった。
7位は、ベストセラーにもなったというSF小説の映画化。
原作はミリタリーSFと言う触れ込みもあったので読まない
でいたが、映画化は確かにその見方も出来るものの全体的に
は反戦的な色合いも強く感じる作品だった。それで原作にも
目を通したが、その結末では微妙に暈されてはいるものの、
確かに映画の結末も読み取れる。映画の製作者には原作者も
名を連ねているから、これが本心なのだろう。その点も巧み
と言える作品だった。
8位は、トム・クルーズ主演作で、前年は『オブリビオン』
を1位に選んだが、今年はこの順位。RPGから想を得たと
思われるアイデアは面白いが肝心の話の詰めが甘い。後半の
新たな超能力も唐突だし、ゲームならもっと何度も繰り返し
トライして徐々に進んで行くはずのものが、後半を素っ飛ば
されると達成感も乏しくなる。この展開は原作通りなのかも
しれないが、登場異人物のキャラクターも変えたという脚色
は、もっと徹底して欲しかったところだ。
9位は、フランスのコミックスを韓国の監督が脚色・映画化
したという作品。話はそれなりに壮大で、映像も悪くない。
それに韓国映画にありがちなアクションに走ることもなく、
真面目にSF映画が作られている。しかし全体的に何となく
物足りなさも感じてしまった。何が足りないのかその辺も定
かではないが、ポン・ジュノ監督の作品では『グエムル−漢
江の怪物−』のときもどこか違うと感じたもので、結局この
種の作品に合っていないのかな。
10位は、毎年1本はエントリーされるスペインからの作品。
と言っても今年はお得意のダークファンタシーではなくて、
ちょっとオフビートな感じのコメディ作品だ。映画マニア的
には好む人も多いと思われる作品だが、SF映画ファン的に
はちょっと違うかもしれない。でも公開前に来日した監督の
イヴェントでの見るから「映画が好きです」という雰囲気が
嬉しくて、この監督の作品には1票入れたくなった。ポラン
スキーほどスマートではないが『吸血鬼』を思い出した。

 後は一般映画でこちらはベスト5だけ書いておこう。
1位:サード・パーソン(3月23日紹介)
2位:KILLERS/キラーズ(2月2日紹介)
3位:監視者たち(8月10日紹介)
4位:ディス/コネクト(3月23日紹介)
5位:イフ・アイ・ステイ(8月24日紹介)
 この5作にSF映画枠で選んだ上位5作を加えた10本が、
僕の2014年の映画ベスト10としておきたい。

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『TM NETWORK THE MOVIE 1984 30th ANNIVERSARY』
1980年代〜90年代に絶大な人気を集め、その後の日本の音楽
シーンに多大な影響を与えた音楽ユニットTM NETWORK(TMN)
のデビュー30周年を記念して製作されたライヴムーヴィ。
内容は、1984年のデビューから最初の10年間に各地で行われ
たライヴコンサートの模様を纏めたもので、その中には当時
としては珍しい演奏者の宙乗りなどもあってファンの人には
懐かしい貴重な映像が集められているようだ。
僕自身は、正直に言って音楽のことはよく判らないのだが、
流石にこのユニットは知っていたし、相当数流れる楽曲の中
でも2曲くらいは聞き覚えがあった。それはそれなりに僕に
も懐かしかったが、これはやはりファンのための作品だ。
そんな訳で僕は、内容よりも技術的な面に興味を持ったのだ
が、作品の全体は4:3のスタンダードの画面で、しかも最
初の方はかなり画質も劣っている。しかしそれが後半になる
と格段に画質が安定してくる。
これは最初の部分は当時普及が始まった民生用VTRで保存
されていたと思われ、後半になるにつれてプロ機材での保存
が行われたのだろう。素材はソニーに保存されていたという
ことだが、案外プロ機材の普及は遅かったようだ。
因に最後の楽曲だけが複数のライヴ映像からのコラージュに
なっていて、その中には16:9のハイヴィジョン映像が含ま
れる。ただし今回は全体がスタンダードのためレターボック
スだが、これは次の10年分には高画質を期待させるものだ。
一方、画面に映る機材の中では小室哲哉が演奏するシンセサ
イザーの中央にCRTディスプレイが置かれていて、これは
マニアックに懐かしさを感じさせた。他にも照明など観る人
が観たら懐かしいものがありそうだ。
また当時のTMNのコンサートでは、舞台でパフォーマンス
するユニットを支えるサポートメンムバーもいろいろいて、
その中には後にブレイクするミュージシャンの姿もあって、
その人たちのファンにとっても貴重な映像になるようだ。
ただしこの情報は著作権の関係なのか公式には流されないよ
うで、ファンの人で自分の好きなミュージシャンが昔TMN
に関っていたと判っている人はチェックしてみると、かなり
若い時の姿が楽しめることになる。
往年のミュージシャンの映像は、2012年11月紹介『クイーン
ハンガリアン・ラプソディ』などもあったが、日本ではかな
り以前からVTRでの記録があったと思われ、今後このよう
な作品が続くことも期待したい。

公開は1月17日より、全国の映画館で上映される。


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井口健二