※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『女神は二度微笑む』“कहानी” 2012年9月に『カハーニー/物語』という原題のまま紹介し たインド映画の一般公開が決定、上記の邦題が決まった。 実は試写状には2012年に上映されたことの案内がなく、僕は 同じ映画と気付かずに2度観をしてしまった。しかも冒頭の 1シーンでそれに気が付いたもので、そのくらいに印象の深 い作品だ。ところが2度観するといろいろ細かいところにも 鑑賞が深まり、これは2度観する価値のある作品だった。 その冒頭のシーンは、1995年の「地下鉄サリン事件」を思わ せるコルカタの地下鉄を襲う毒ガステロ。その多数の死者を 出した事件の2年後から本編の物語は始まる。 英国発の航空機で臨月間近と思わせる1人の女性がコルカタ の空港に降り立つ。そこでタクシーに乗り込んだ女性が指示 した行先は、観光スポットでもなく、ホテルでもなく、下町 の警察署だった。そして女性は1か月前から行方不明の夫の 捜索を依頼する。 IT技術者の夫は1か月前にロンドンから短期出張で当地を 訪れたはずなのだが、突然その音信が途絶えたのだという。 そして、彼女が臨月間近で行き渋る夫を無理やり渡航させた 事実を告げ、理由もなく音信が途絶えるはずがなく、事件に 巻き込まれた可能性を示唆する。 しかし彼女の訴えにも事件性を確認できない警察は、若い警 官を1人付けて彼女を宿に送らせるのだが、そこで夫が宿泊 していたはずの安宿にも、夫が勤務したはずの会社にもその 痕跡がなく、しかも夫が残したスナップ写真の顔が2年前の テロ事件の首謀者に似ていることが判明する。 果たして夫はその首謀者と間違われて消されたのか、さらに 夫の跡を追う彼女と接触した人物が次々に殺され始める。 インド映画ではあるけれど歌も踊りもない作品。しかし2時 間3分の上映時間では、たっぷりとしたミステリーとサスペ ンスが描かれる。しかも構成が緻密で、最後に全ての謎がぴ たりと収まる展開には、久々に物語の醍醐味も感じられた。 主演は、本作でインドのアカデミー賞とも呼ばれるフィルム フェア賞の主演女優部門に輝いたヴィディヤー・バーラン。 その脇を東京国際映画祭で上映された『オプーのうた』など のパラムプラト・チャテルジー、日本公開された『めぐり逢 わせのお弁当』などのナワーズッディーン・シッダルディー キーらが固めている。 物語の原案・脚本と監督は、本作でフィルムフェア賞の監督 部門を受賞したスジョイ・ゴーシュ。因に監督の次回作は、 日本映画『容疑者Xの献身』のインド版リメイクだそうだ。 一方、本作にはハリウッドリメイクも計画されている。 映画鑑賞において結末を知ってみることの是非はいろいろと 言われているが、本作の場合は結末を知っていたら面白さは 半減するだろう。しかしその結末を知った上で観かえすと、 その面白さが倍加することも事実と言える。 特に回想シーンと現在との綾なす巧みさは、主人公の女性の ここに至るまでの心情を浮き彫りにし、彼女のそれまでの思 いを考えると、これは堪らなくいとおしい作品にも思えてく る。そんな感想は1度観ただけでは浮かばなかったものだ。 公開は2015年2月21日より東京渋谷のユーロスペースにて、 以後全国順次ロードショウとなる。
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