井口健二のOn the Production
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2014年06月22日(日) アバウト・タイム、イントゥ・ザ・ストーム、マレフィセント

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『アバウト・タイム愛おしい時間について』“About Time”
2003年12月紹介『ラブ・アクチュアリー』などのリチャード
・カーティス監督によるSFファンにはかなり微妙な感覚の
ロマンティックコメディ。
主人公はイギリス南部に住むちょっと内気な青年。彼は21歳
の誕生日に、父親から重大な事実を告げられる。それは一家
に生まれた男性にはタイムトラヴェルの能力がある…。彼は
教えられたまま少し過去に戻り、失敗の回避に成功する。
こうしてタイムトラヴェルの能力を会得した主人公は、様々
な失敗を修復してより良き人生を歩んで行くが、そんな中で
彼は理想の女性に出会う。そして最初のアタックで成功する
が、それは誤った選択かも知れなかった。

出演は、2010年12月紹介『わたしを離さないで』や、2012年
12月紹介『ジャッジ・ドレッド』にも出ていたドーナル・グ
リーソン。2012年4月紹介『君への誓い』などのレイチェル
・マクアダムス。
さらに、前々回紹介『アイ・フランケンシュタイン』などの
ビル・ナイ、2011年5月紹介『ハンナ』などのトム・ホラン
ダー、今年公開『ウルフ・オブ・ウォールストリート』など
のマーゴット・ロビーらが脇を固めている。
2005年3月紹介『バタフライ・エフェクト』はこの種の作品
の傑作だと思うが、本作はまさしくそのカーティス監督版。
『ラブ・アクチュアリー』さながらのシチュエーションの中
で、絶妙なタイムトラヴェルコメディが展開される。
と言ってもSFファンには微妙かな。せっかくの能力を持ち
ながら歴史を変えるでもなく、それを駆使して金儲けをする
のでもない。でも、こんな風にタイムトラヴェルを使ってい
る奴がいてもいいのかな。
そう考えると、これはカーティス監督流のSFに対する挑戦
状のようにも見えてきた。

公開は9月27日から、全国ロードショウが予定されている。

『イントゥ・ザ・ストーム』“Into the Storm”
2011年9月紹介『ファイナル・デッドブリッジ』のスティー
ヴン・クォーレ監督で、1996年ヤン・デ・ボン監督のヒット
作『ツイスター』を思い出させる最新VFXを駆使した竜巻
映画。
物語の舞台は、アメリカの中西部コロラド州シルバートン。
この町に巨大竜巻の脅威が迫り、その映像を至近距離で撮影
するべく重厚な機材で追跡するトルネードハンターや、アマ
チュアのネット投稿者らが集結する。
一方、その町の高校では卒業式が予定され、教頭はその準備
に追われていた。ところがそこに竜巻の襲来が通告され、さ
らに息子がガールフレンドと共に、その竜巻のコースにある
工場地帯に行っていることを知る。
こうして史上最大の竜巻が迫り来る中、家族の安否を求め、
その命を守るための究極のサヴァイヴァル劇が展開される。
そしてその竜巻の脅威が、トルネードハンターたちによって
記録されて行く。
因にVFXで再現される竜巻の映像は最新の研究成果を反映
したもので、上空で発生した竜巻が着地する瞬間など迫力の
映像が次々に登場する。地球温暖化の影響なのか、竜巻の脅
威は『ツイスター』の時代を上回っているようだ。

出演は、2012年12月及び2013年12月紹介『ホビット』シリー
ズなどのリチャード・アーミティッジ、2003年のP.J.ホー
ガン監督版『ピーターパン』でタイトルロールを演じたジェ
レミー・サンプター。
さらに2013年9月紹介『ウォーキング・デッド』シリーズに
レギュラー出演のサラ・ウェイン・キャリーズ、2010年4月
及び2011年5月紹介『ハングオーバー』シリーズのマット・
ウォルシュらが脇を固めている。
それにしても、これがVFXの進歩と言えるのだろうが、何
しろ映像化された竜巻が凄まじい。『ツイスター』の時も、
タンクローリーや牛が巻き上げられて行くシーンに驚嘆した
ものだが、今回の映像はそれを上回り必見。
お話は前半が多少もたもたするが、竜巻が襲来するとそんな
ものは一気に吹っ飛んで、正に想像を超える映像が展開され
ていた。それを観るだけで充分と言い切れる作品だ。

公開は8月22日から、東京は新宿ピカデリーほか全国ロード
ショウが予定されている。

『マレフィセント』“Maleficent”
1959年のディズニーアニメーション『眠れる森の美女』を、
同作の悪役であった魔女の視点から描いた実写作品。
物語は魔法界の住人であり守護者マレフィセントの若き日々
から始まり、その世界を掠奪者である人間から守る戦いが冒
頭で描かれる。しかしそんな中でマレフィセントは1人の人
間の少年と愛を誓うのだが…。
やがてその少年は人間界の王座に登り詰め、さらに王は魔法
界への侵略を推し進める。そして王家に姫が誕生した日。そ
の祝宴に現れたマレフィセントは幼い姫に最恐の呪いをかけ
てしまう。
オリジナルのアニメーションでは、姫の父王は能天気に描か
れていたが、原作とされる数多くの民話の中には国王が暴君
であったというお話もあるようで、本作はそんな点も巧みに
取り入れて語られているようだ。
とは言えその点を除くと、本作の物語は見事に1959年のアニ
メーションを下敷きにしたもので、そのキャラクターや展開
などには、観ていてニヤリとしてしまう部分が多々登場する
作品になっている。
これは、特にディズニーアニメーションのファンにお勧めの
作品と言えそうだ。

出演は、アンジェリーナ・ジョリーと、2011年6月紹介『ス
ーパー8』などのエル・ファニング、それに2013年5月紹介
『オン・ザ・ロード』などのサム・ライリー。
さらに2013年8月紹介『エリジウム』などのシャールト・コ
プリー、『ハリー・ポッター』シリーズなどのイメルダ・ス
タウントンらが脇を固めている。
因に、オーロラ姫の幼少期はアンジーとブラッド・ピットの
間に誕生したヴィヴィアン・ジョリー=ピットが演じている
が、これは角などのスペシャルメイクを施した魔女の姿に、
他の子役は泣き出してしまったからだそうだ。
そのスペシャルメイクは、大ヴェテランのリック・ベイカー
が手掛けている。
脚本は、『アリス・イン・ワンダーランド』などのリンダ・
ウールヴァートン。監督は2012年12月紹介『ライフ・オブ・
パイ』などのVFXを手掛け、本作で監督デビューを飾った
ロバート・ストロンバーグが担当した。
オリジナルのアニメーションを知っていればいるほど楽しめ
ると言える作品。そうでなくても楽しめるとは思うが、僕は
あらかじめ知っていて良かったと思えた。ただエンディング
に流れる歌声が今風なのはちょっと僕には気になったかな。

公開は7月5日から、2D/3D全国ロードショウとなる。


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井口健二